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君に触れるだけで

皇帝が魔塔を訪れた。

テオドールに謹慎を命じてから5日過ぎた日の事だった。


手の拘束を解いても、テオドールは壁に寄りかかり座ったまま。

リリィベルが映る水晶玉を見つめているだけだった。


食事を用意しても、手も付けず。

ただ黙って、時折映るリリィベルだけを見つめていた。


笑う姿はあまり見られず、マーガレットの話に合わせて少し微笑むだけで…

いつもの天使のような笑顔は見られなかった。


夜にはマーガレットに抱かれ眠り、食事もあまり喉を通らない様子だった。



水晶玉をただ見つめるテオドールの前に立ち、オリヴァーは口を開いた。

「テオドール・・・」


「・・・・・・」

テオドールは声がした方を一瞬見た。

「ギルドを3つ制圧した。明日貴族議会がある。」

「・・・・・・」

テオドールは無言のままだった。


「3つのギルドの中で、依頼主を三家、見つけたぞ・・・・」

「・・・・・」

「一つはホイストン伯爵家。年頃の娘がいる。お前がリリィベルを見初めた事に腹を立て、リリィを消すよう伯爵が、ギルドに依頼をした。

二つ目、マッケラン伯爵家。同様だ。お前を慕っていた。

三つ目、ランドール侯爵家。ヘイドン侯爵家に対抗心を燃やし、歳が同じライリーを出し抜こうとしていたが、リリィベルが現れ婚約者になった事で、対抗する事が出来ず、腹を立てリリィベルの暗殺を依頼をした。」


「・・・・・はっ・・・・・・」

声を発したと思ったら、テオドールは鼻で笑った。


「どれもが、独断の依頼だった。繋がりはない。ただの嫉妬と権力を欲しただけだった。

だが、この三家はリリィベル暗殺依頼の罪で、牢屋行きだ。」


「報酬額も少しは減るだろう・・・。だが・・・・」


「暗殺依頼が止まる訳ではありません・・・・。」

ぽつりとテオドールが呟いた。


「あぁ・・・まだな・・・・。だが、いずれ、大物が釣れる事だろう・・・・・。」

「それが・・・父上の、やり方なのですね・・・。」


「あぁ。そうだ。時間は掛かっても、三家摘発されれば貴族達は動揺する。私達が、リリィベルの為に動いている事は、知らしめることができるだろう。」


「・・・そうですね・・・・」

今は何も出来ず、からっぽなテオドールは少しだけ悲し気な笑みを浮かべた。



「明日議会で討論する故、お前もその場に立ちなさい・・・。謹慎は解除とする。」


狭い部屋の鉄格子の扉が開かれた。


「風呂に入って、身支度をして会いに行け…リリィがお前が居なくて泣いている。」


「・・・っ・・・・・」

テオドールは瞳を震わせて、立ち上がった。けれど、少しも食べ物を取らなかった身体はふらりと揺れた。

それを父は受け止め、その弱った身体を抱きしめた。


「・・テオ・・叩いて、すまなかった・・・・。お前はずっと心を痛めていたはずなのに・・・・

ごめんな・・・。つらい思いをさせた・・・リリィにも・・・・。」


「いいえ・・・力を貸して下さり・・・ありがとうございます・・・っ・・・不甲斐ない私を・・どうかお許しください・・・・」


「不甲斐ないものか!!!お前は、私の大切な息子だ!!私が生きている限り、どんな事をしても、お前を守る…。お前は・・・皇太子だが、私の愛する息子だ・・・・。」


「・・・はい・・・道を外さぬよう・・・まだ私を・・・導いて下さい・・・・お願いします・・・・」


「私はお前を信じている・・・・。きっと安心して眠ることが出来る・・・・。早くリリィのところへ行きなさい・・・。お前を待っている・・・・。」


「はい・・・・・・。」


ロスウェルが、テオドールの肩にそっと触れた。

「あぁ、同じ顔が抱き合ってる。いい光景ですね。殿下、浴場まで送ります。あと、何か食べて下さいね。リリィベル様が心配なさいます。」

そう言ってにこっと笑った。

「ありがとう・・・ロスウェル・・・・。」

「いいえ、さぁ、いきましょ?」

ロスウェルが指をパチンと鳴らした。


一瞬で浴場にたどり着いた。

「ロスウェル・・・なぜ私まで連れてきた?」


「ははっくっついてるからですよぉ。せっかくですから一緒に入ってはいかがです?この通り殿下はフラフラです。あ、私も一緒に入ろうかなー。」

「ふっ・・・そうだな。そうしよう。」


「えっ・・・やっ・・・いいですっ・・・・。」

テオドールは慌てて後退りした。


「テロンテロンなんですから、溺れて死にたいですか?」

ロスウェルがテオドールの服に手をかけた。


「あ、そうだ、従者に軽食と飲み物を持ってこさせよう。なにか食べなければ倒れる。」

父は早々にベルを鳴らした。


「ちょっ・・・やぁめ・・・・」

抵抗する力が残ってないテオドールは、2人の成すままだった。



結局、水分を取らされ、果物やパン粥などを食べさせられ湯船につかったテオドール。

広い浴場で父とロスウェルは至極の顔をして湯に浸かっている。


「いやぁ・・・やっぱ城の風呂は広くて最高ですね・・・誰も入ってこないし。」

「当たり前だ。誰が皇族の湯に浸かるんだ。そんな不届き者はお前ひとりで十分だ・・・。」

「権力最高ー・・・・」


「・・・・・・・」

もう訳が分からなかった。なぜ三人で風呂に入っているのか・・・・。


髪まで洗われた始末だ。完全に子供じゃないか・・・・。


「テオ、お前を謹慎してから、もう5日経っている。」

「へっ?」


そんなに時間経ってたの?


「その間、リリィベルは問題なかった。暗殺者もしっかり防げている。少しは安心してくれ・・・わかったか?」


「はい・・・・。」

不本意だが、納得せざる終えなかった。


「寂しいからずっとマーガレットと寝ていたが、問題はない。もちろん。狙われているリリィの部屋だ。お前も安心して、夜は寝るんだ。」


「はい・・・・父上・・・・・」


「殿下ぁ、眠れなかったら寝させてあげますよ?強制的に。」

その言葉にテオドールは笑った。

「いや・・・それはごめんだ・・・。」


表情が解れたテオドールを見て、2人はやっと安心したのだった。


身支度を整えて、テオドールはリリィベルの部屋に向かった。

いざ部屋の前に立つと、緊張した。

扉を叩こうとしたその時、内側から扉が開いた。リリィベルが部屋から出てきたのだ。


「・・・・・・・あ」


「・・・・・・・・」

リリィベルはぽかんとしながらテオドールを見つめた。


見つめていると、ほっとしてきたテオドールは、笑みを浮かべた。

「リリィ・・・・ただいま・・・・。」


そう言うと、リリィベルの眼から大粒の涙が零れ落ちる。

「テ・・オ・・・・様・・・・・」

そのまま泣き顔になり、リリィベルはテオドールに抱き着いたのだった。


「うぅぅっ・・・・テオ様・・・・っ会いたかったです・・・っ・・・・

どうしてそんなにやつれているのですかっ・・・そんなにお忙しかったのですかっ?


私はっ・・・寂しくてっ・・・会いたくてっ・・・苦しかったですっ・・・」

か細い腕で、必死にしがみ付き泣く姿を見て、テオドールは切なく目を細めた。


「一人にして・・・すまなかった・・・・」

そう言って、リリィベルを力いっぱい抱きしめた。


抱き合う二人を、後ろから見ていた父とロスウェルだった。

「あぁあぁあぁあぁ・・・・」

「なんだ?」

「ありゃ、今日が初夜になりそうですね?」

「馬鹿者・・・暗殺者が来てるのにそんな事できるか」

「それもそうですね。ただ勢いだけなら、懐妊しそうな勢いで。」

「その口を閉じろはしたない!」

「避妊魔術掛けときましょうか?」

「あるのか?」

「いいえ?」

「時間返せくそがっ」

オリヴァーは肘鉄を食らわそうとしたが、ロスウェルはそっと掌で魔術盾を広げた。


「ほんっと‥‥‥ムカつくその盾」

オリヴァーがギラリとロスウェルを睨んだ。


「つい癖で‥申し訳ありません?有能なもので」

「ハッ‥‥‥その口を縫い付けてやりたい」

「自分で出来ますよ?」

「おぉおぉじゃあやってくれ俺の為にな!」

「ははっ、お断りします。」

「お前を炙るのが楽しみだ。イカのようにな」

「陛下ぁ‥‥私は、イカよりタコがいい‥‥」

「あぁっ?」

「この口から墨を吐いてやります」

「クソボケてめぇこの」

「あぁあぁあぁあぁ汚い汚い皇帝とは思えない」

「おめぇがそうさせて」



「父上、ロスウェル‥‥」

言い合いしていた2人に声をかけた。


オリヴァーとロスウェルは、ハッと声のした方を見た。


真顔のテオドールと泣いてるリリィベルが見ていた。

「うるさいです。お帰りください。」



「「‥お邪魔しました‥」」

2人はぺこっと頭を下げた。

そして、身を寄せ魔術により姿を消した。



テオドールは、ため息をついて、そのままリリィを抱き上げて部屋の中へ入った。


ソファーに座り、リリィベルを膝に乗せ向き合った。

「リリィ?」

「‥‥うっ‥‥‥うぅっ‥‥‥」

口許を押さえて小さく泣くリリィベル

テオドールは、そのままリリィベルの手の甲に口づけした。


「テオ様‥‥‥どうしてそんなにやつれているのですか‥っ

何も食べていないのですかっ?」


「お前こそ、痩せたんじゃないか?また羽が生えたのか?」

「揶揄わないで下さいっ‥‥私が聞いてるんですっ」

「お前に会えなくて、食べる気になれなかった‥

そんなにひどい顔か?泣く程嫌か?」


「そんな訳ありませんっ!怒りますよっ!」

そう言ってテオドールの首に抱き付いた。

泣きながら怒ってるリリィベルにテオドールは目を細めた。


「あぁ‥‥怒ってくれ‥‥‥俺を殴っていい‥‥」


「‥‥‥っ‥テオ‥様‥‥」


「お前を1人にした‥‥こんなに泣かせた‥‥

苦しめた‥‥こんな俺を、殴ってくれ‥‥‥」


リリィベルは身体を少し離し、テオドールの顔を見つめた。


「悪かった‥‥‥お前を、泣かせてしまった‥‥‥」


今にも泣きそうなテオドールに、リリィベルはまた顔を歪ませて、その頬を包み込んだ。


「では‥‥我儘な私も叱って下さいっ‥‥」

「なぜ?お前は我儘じゃないだろ?」


「いいえ‥お仕事のテオ様を労らずに‥‥ただ泣いて過ごした私は、婚約者として失格ですっ‥‥。


けれどっ‥‥いっぱい怒っていいですからっ‥‥‥

どうか私を側に置いてくださいっっ‥‥っ‥」


「俺が‥‥お前を離すことはねぇよ‥‥‥」

そう告げてリリィベルを引き寄せて口付けた。



俺が、勝手に、震える手で刀を握り‥‥


この国の皇太子としての品格を保てずにいたんだ‥


側に置いてほしいのは、俺の方だよ‥‥


血濡れた手で、お前を抱き締めた、俺は罰を受けた。

まだ、この手は血まみれだ‥でも、


お前に触れるだけで‥



「リリィ、愛してるよ。」

「私も愛しています‥‥」



俺は、生きていける‥‥


もう、無くしたくないと、心が叫ぶんだ。


お前を知らない、俺にはなれない。


お前に触れられるが、どんなに幸せか‥‥‥


お前は知らないだろう‥‥?




今、目の前にいるお前が‥‥‥夢の様に消えないように‥


必死に、しがみ付いているんだよ‥‥

読んで下さり、ありがとうございました!


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