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満月の夜に

寝支度をして、テオドールとリリィベルはベッドに入った。


テオドールはリリィベルの身体を抱き締めてその洗い立ての甘い香り漂う髪に口づける。リリィもテオドールの胸に頭を寄せていた。


「‥リリィ‥?」

「はい‥」

「‥大丈夫か?」

「ふふっ‥はい。テオ様?何度お聞きになるのです?」

「‥わりぃ‥」

クスクス笑ったリリィは、テオドールの背に手を回した。


「私が、抱き締めていてあげます‥‥安心して下さい。

私は、どこにも行きませんよ?もちろん‥この命も、

全部テオ様のもの‥他の誰かに取られるつもりはありません。」


優しい声がテオドールを今はつらかった。


「縁起でもない事言うな‥。誰が、くれてやるものか‥‥」

抱きしめる手に力がこもる。


「テオ様‥‥愛しています‥」

「あぁ、俺もだよ‥‥」


痛いくらいに、愛してる‥‥



しばらくして、リリィの小さく穏やかな寝息が聞こえてきた。


「ふっ‥‥大したもんだよ。お前ホントに‥」


暗殺者が、ウヨウヨ来てるって、聞いたばっかりなのに、

信じてくれてるんだな。


今日も、何人の奴らが来るだろうか‥‥‥


リリィからそっと離れ、ベッドから降りた。



ブレスレットを3回叩く。

「眠いです殿下。」

目を擦りながら現れた。

「よぉ、ハリー。ベッド見るな」

「見ませんよ。」

「ロスウェルは寝てるか?」

「昨日は1日働いてましたからね。そりゃ、寝かしてやって下さいよ。」

「文句じゃない。」

「それで?どうしたんすか?」

「このバルコニーを開けたら、結界解けちまうか?」

「まぁ、殿下が明ける分には問題ないっすけど。

契約者は陛下と殿下で、我々はお二人の血で結界張ってますから。」

「そうか‥‥」


そう言ってテオドールは急に衣装部屋に行き着替え始めた。


「えっ?開けるんすか?」


「あぁ、外に出る。リリィを中で守っててくれないか?」

「いいっすけど‥てか、ロスウェル様のアンクレットだけで、ロスウェル様連れて歩いてるようなもんっすよ?」

「あぁ、信じている。外の音が周りに聞こえない様にするのは?出来るか?」


ハリーは露骨に嫌な顔をした。

「えぇっ?外の声ですかぁ?周りにぃ?規模でかいんっすけど‥‥マジで言ってます?」


衣装部屋から出てきたテオドールを見て、ハリーは更に顔を青くした。


「殿下ぁ、それ‥」

「文句あっかよ」


テオドールが着ていた服は道着袴だった。

「それ、殿下がオーダーメイドして作った訳わかんない服ですよね‥マジなやつ‥てか、よくそんな長い裾で剣術できますよね‥剣だって‥なんでしたっけ、刀?でしたっけ?

それもオーダーメイドですよね‥‥。」

「これが、いいんだよ。俺は‥」


帯にテオドールは刀を指した。


「暗殺者を減らしてやるんだ。弾くだけじゃもうダメだ。周りに知らしめたい。暗殺者は謎の服を着た奴が斬り捨ててるてな。」

そう言いながらニヤリと笑みを浮かべた。

「うわー‥悪い顔ぉ‥てか、その姿の殿下、結構知ってる人居ますけど。」



「無駄話はもういい、出来るんだろ?」

「分かりましたよぉ‥‥」

はぁっとハリーはため息をついた。

「ついでに、今日はもう来たか?」

「いえ、まだです。」

「そうか、では迎え撃とうではないか‥‥」



「開けるぞ?」


「はい、どうぞ?」


ギィ‥っとバルコニーが開く。



テオドールはバルコニーに立った。


満月が、テオドールを迎えた。


「さぁ‥‥‥斬り捨ててやる‥‥‥」




テオドールは、バルコニーにある大きな観葉植物の陰に身を隠し、腰を下ろした。



いつ来るかは分からない。だが、人の気配は、わかる。


どんな暗殺者も息をする限り‥‥


しかも、ここはギリギリ結界の領域、気付かれない範囲だ。


そうして1時間が過ぎた頃、サァーっと夜風に木々が靡いた。それと一緒に、別の風が、遮って向かってくる‥


静かな音も立たずバルコニーに立つ人影が出来た。

満月に来るのは愚かだ‥‥‥



右足で一気に踏み込み出て、その存在を睨みつけた。

「よぉ、おそかったじゃねぇか。」


相手の胴を斬り抜いた。


暗殺者は声も無く横腹から喉にかけて斬り捨てられた。


バタンっ‥と音を立てて倒れた。


返り血を浴び、真っ赤に染まったその目で睨み付ける。

「お前、このまま見せしめだ。」


バルコニーにそのまま捨て置き、次を待った。


そして1人、また1人、また1人‥‥

最初の暗殺者に気を取られるうちに、


頭を斬り叩き、喉を突き貫いた‥。




「ハリー、開けろ。」

やがて朝日が登る頃、ようやく‥テオドールは中のハリーに声を掛けた。


中から開けたハリーはその光景を見て唖然とした。


銀色の髪が真っ赤になる程血を浴びたテオドールがそこにいた。


「俺を浴場まで連れて行け。そしたら、戻ってコイツらを牢にぶち込んでおけ。あと、血は全部消しておけよ‥」


「魔王?」

「早くしろ」

「はい‥」

ハリーはバルコニーの窓の隙間から手だけを出してテオドールの身体に触れ1秒で移動させ、2秒後すぐに部屋に戻ってきた。外に立つ訳にはいかない。でもその光景は、自分には見た事のないものだった。


「‥‥えっぐ‥‥‥殿下の剣術すごいって知ってたけど、

暗殺者って弱いの?それとも殿下がすごいの?」


ちょっと混乱した。

部屋の中から、魔術を展開して、パンっと両手を合わし、

バルコニーにある死体全てを地下牢に転移させ、大量の水をバルコニーに雨の様に降らし、水を弾き飛ばした。


「ふぅ‥‥‥疲れるって‥‥‥」


対象を見ずに事を及ぶのは、ロスウェルなら簡単かもしれないが、ハリーにはまだまだだと身を持って実感したのだった。しかも4体も‥‥


「毎晩やるとか言わないよねぇ‥‥‥」

ハリーはくたぁっとその場に座り込んだ。

けれど、またすぐ宝石が叩かれたようだ。

一度殿下達に呼ばれて引き受けたら最後、帰るまでが自分の担当だ。すぐに分かる。多分迎えに来いとの事だろう。


「ヘイヘイヘイヘイ!」

秒でテオドールの元へ向かう。


そして、秒でテオドール連れで戻った。


「助かったハリー。戻っていいぞ。」

「あ、‥はい、おつかれっした」

テオドールの表情は見れなかった。


ハリーは少し複雑だったが、部屋から魔塔に消えていった。





静かに息を吐いた。

「‥‥‥‥‥」


まだ、血が沸いていた。


リリィを狙いきた者達だ‥‥


腹が立った。


俺から



リリィを奪おうとする者達‥‥‥



「‥‥‥‥‥」

虚な瞳でベッドに近付き、リリィベルを見つめた。

そして、リリィベルの手を握りしめ頬に当てた。

「っ‥‥‥」






なくしたくない‥‥



なくしたくない‥‥‥



なくしたくない!!!!!!






静かに、想いが流れ落ちる。


「リリィ‥‥‥愛してるよ‥‥‥」


テオドールの瞳に溜まった涙は、ギュと目を閉じると、

想いと共に、頬を流れ落ちていった。

読んで下さりありがとうございました!

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