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星の記憶 4 ~やっと言えた~

暁と礼蘭は15歳になった。同じ中学校に入学したが、2人は初めて別のクラスとなった。


思春期になった二人は、少し距離を置いて歩くことが多くなった。


二歩分くらいの距離をとって、それでも一緒に学校に行く。

帰り道も同じ、それでも二人は微妙な距離で側にいた。


中学に上がり、礼蘭はよく、男の子に告白されるようになった。

幼い頃の様に、くっついて離れなった二人じゃなくなった。それが火をつけたように。


だから、他の男に好きだと言われる礼蘭を目の当たりにしたときに、腹が立って、そして恥ずかしかった。

自分もそいつのように礼蘭を見ていたことに気づいた。


そして自覚した。礼蘭がただ特別だっただけじゃないこと。


礼蘭が特別で、好きな女の子だったこと・・・。


校舎の窓ガラスに映った顔が、礼蘭を思う男と同じ顔をしている事に気づいて…。



それでも、礼蘭はいつも、俺の側に寄ってきた。


明るい笑顔は可愛かった女の子から、綺麗な女の子に変身して・・・。


長く伸びたサラサラな髪が靡くと、とてもドキドキしていた。


大きな瞳で見られると、心臓が止まる思いがする事を知った。


「暁!私今日、友達の家に寄ってから帰るね。お父さんに言っておいて!」

学校の帰り際、礼蘭は眩しい笑顔でそう言った。


「おう・・・」

少し遅れて返事をした。


「礼蘭ちゃんかわわー♡なぁ、家近いの?」

俺と隣を歩いていた、中学に入ってから出来た友達が聞いてきた。こいつだって、礼蘭を一定の時期から、そう言うようになってきた。

「あ?隣同士だけど。」

「えーマジっ?あんな可愛い子と家近いとかマジ強運なー?」

「ふんっ・・・・。」


俺は鼻で笑った。みんなが礼蘭を可愛いという。そして礼蘭が俺に近づくから、

俺は礼蘭に関する質問攻めに合うこともあった。


そう過ごしていくたびに、俺の中学時代は、とっつきにくい男となってしまった。それでも友達は居る。


俺は、礼蘭に近づく男が嫌だった。だからそんな態度しか出来なかった。

俺だけが知っている礼蘭の可愛い所を、俺たちだけの思い出をなぜ話さなきゃいけないの?


礼蘭が綺麗になる度に・・・俺は胸が苦しむようになった。


だから、少し目線を外すようになった。

それでも、礼蘭は俺を見ている。


そして、俺はこっそり、礼蘭の横顔を斜め後ろから見ていた。


俺たちは・・・・幼馴染・・・・。


だから、こんなに近くて、今になって少し遠い・・・。


礼蘭は俺の事、どう思ってるんだろうな・・・・。


ただの幼馴染なんだろうな・・・・。


あんなに男に告白されて。いつか礼蘭を俺から連れ去ってしまうやつが出てくるかもしれない。



今日も3階の校舎の窓から下を見ると、また礼蘭が男に告白されている場面を見る。


話している声は聞こえない。けれど、最後は決まって、礼蘭はそいつに向かって頭を下げた。

「・・・断った・・・?」

俺はほっとしたけど、疑問が増えていった。


次も、そのまた次も、どんな時も、礼蘭が最後に頭を下げる。謝ってる。


男たちはみんな、それなりにいい面してたのに・・・。


そしてそんな光景を見た日は決まって、俺の剣道は荒っぽいと叱られるんだ。

素振り何百本、何千本やったって、消えない。

礼蘭に告白した男たちの幻を打っているようだった。



時が経って、今日もまた、礼蘭は男に告白されていた。

みんな高校受験前にいいの?

彼らはそれを他所に礼蘭に思いを募らせている。



その日の帰り道、俺は二歩分の距離を一歩詰めて歩いた。


「お前さぁ‥‥また告られてたろ?」

夕焼けに照らされた帰り道、礼蘭はくるりと振り向いた。

「えー?なんで知ってるの?」


あさっての方を見て俺は言った。

「‥俺の友達が2人でいるの見たって‥」

「そうなの?」

礼蘭は大きな目を真ん丸にして首を傾げた。


「おう‥」

その仕草が可愛くて、小さく返事を返した。


「そっか、でも大丈夫!ちゃんと断ったよ?」

俺はパッと顔を上げて礼蘭を見た。

「はっ?あいつイケメンで有名だろ?」


「そうなの?知らなかったー」

また前を向いて歩きだした礼蘭は興味がなさそうに言った。


「お前‥‥いっぱい告られてんのに、全然周りの事知らないよな。」

俺だってそれくらい知ってるぞとモヤモヤした思いを抱いた。


けれど、また足を止めて礼蘭は俺の方を向いた。

「んー、だってあたし、暁の事しか見てないもん!」


「・・・・えっ?」

俺の時は一瞬止まった。礼蘭が何を言ったのかよく理解できなかったから。

ぽかんとした俺に、礼蘭はぷくっと頬を膨らませた。


「だからぁ、暁しか見てないの!」

もぉって、その顔は小さな頃と一緒だった。


やっと言葉を理解しだして、途端に恥ずかしくなった。

「おまっ‥‥」

俺は咄嗟に口許を覆った。


礼蘭はただ、まっすぐに俺を見ていた。

「‥‥‥‥‥」


「だって、そんな、俺達ただの幼馴染で‥・」

少し頬を染めて、俺はぶつぶつと呟いた。



「暁、小さい頃にあたしの事守ってくれるって言ったじゃない…」

拗ねたみたいにそう呟く礼蘭を見た。

「あれはっ‥そ、そりゃそうだけど‥俺達別に付き合ってるとかじゃないのに‥俺しか見てないって‥」


なんで…なんでそんな事、今…?


切なげに瞳がキラキラさせた礼蘭がそこにいる。

「あたしは暁の事が好きなのに‥」


「あぁっ?」


頭がパンクしそうだった。


「‥暁はあたしの事、好きじゃない?」

真っすぐな礼蘭の瞳は綺麗すぎて恐ろしい気分だった。

「なっ‥そんな‥‥‥事は‥‥‥‥」

もう礼蘭から目を離せなくなるじゃないか…。


「あたしは小さい頃から暁が好きだよ?」


そんな事、そんな顔して言うんじゃねぇっ!


ゴクっと息をのんだ。呼吸を忘れそうだ。


「‥なっ‥なんで今、言うんだよ‥」

しどろもどろな俺に礼蘭は言った。

「暁はあたしをちゃんと見てくれてると思ってた!」


「んなっ‥‥‥」

俺を殺す気か!

「違った?」


心に留まっていた言葉はぽろっと飛び出してきた。

「‥‥‥俺、そんな、出てた?」

「うん、出てた!」

礼蘭ははっきりと頷いた。


俺は思わず顔を両手で隠した。


「‥‥‥‥‥‥恥ぃ‥‥‥」


そんな俺に礼蘭は笑った

そしてその思いを口にしてくれた。なぜいつも告白されていた後頭を下げていたのか…。


「だからね、暁が、そばにいるから‥誰とも付き合わない‥

あたしの好きな人は暁だから‥」

「そっ‥そんなハッキリ言うなよ!」


わーっとなった俺に、礼蘭は夕焼けでもわかるくらい頬を染めていた。

「だって、こんな事聞いてきたの初めてだし‥


‥暁は‥、暁は‥‥‥違うの?」



あぁ・・・・お手上げだ・・・・。

そんな顔されて、見透かされて、、


恥ずかしそうに頬を染めて、少し俯いて勇気を出してくれた。俺達の幼馴染の境界線を‥超えて‥


女にこんな顔させるなんて、俺は馬鹿だな…。


礼蘭は、小さな頃から一番近くで、一番大事で、一番好きな人…。



「‥‥‥‥‥‥‥‥そうだな。」




「‥‥暁?」

礼蘭は少し首を傾げた。


礼蘭、俺はもう、目を逸らしたりしない。



「‥‥好きだよ。礼蘭。」


「っ‥‥‥」

「ガキの頃からずっと‥お前しか見てなかった。

だから、‥これからの時間も俺にくれよ‥」


思い募った言葉は、簡単にスルスルと声となった。


「‥っ暁‥急に‥ずっずるいよ!びっくりする!」

礼蘭は少し後退りした。

けれど、俺は離れていたもう一歩を近づけた、


「お前が先に言ったんだからな。なぁ、いいんだろ?」

少し首を傾けて礼蘭を見た。


「‥‥うん‥‥」

頬を染めて頷く礼蘭が大事で、可愛くて・・・・。

俺はなんだか、少し馬鹿らしくなったんだ。


「なんだよ、バレてんなら言っときゃ良かった。

そしたら、お前が告白されてるのに、ムカついてなんか居なかったのに、いや、やっぱムカつくから面一本でも食らわせても良かったな。」


幻に面を打つ事なんてなかったのに…。


「‥はぁ‥‥はっ、知っちっまったら、なんか、恥ずかしくもなんともなくなった。」


幼き頃寄り添った時みたいに俺は礼蘭の目の前に立った。

「あっ‥暁っ‥なんか、男の人みたい」

俯いてそう言って礼蘭は俺のシャツを少し掴んだ。


「バカ言うな男だっての」

「っ‥急‥‥に、そーゆうのは心臓に悪いよ‥」


あー・・・・可愛いな・・・。

なんだ、お前も俺が好きだったんだ。


一緒だな。



「好きなんだ。許せよ‥‥‥」


そう呟いて、俺は礼蘭の綺麗な前髪にキスをした。



「うぅ‥‥暁‥‥‥」

礼蘭は顔を真っ赤にした。その顔を見て俺は久しぶりに笑えた。



恥ずかしがった礼蘭を見るのが楽しくて、嬉しくて‥


もう我慢しなくていいんだと思うと、気が楽だった。


「帰るぞ、礼蘭‥」


幼い頃みたいに、手を差し出した。


あの頃、当たり前みたいに手を繋いでたよな。


「うん!」


礼蘭はまたとびきりの笑顔を俺に向けた。


「次、告白されてるの見たら、そいつ、蹴ってもいい?」

「ぷっ‥‥怒られない程度ならね!」

「さぁ、わかんねぇけど」

「ダメだよ受験前に!問題起こしたらっ」

「じゃあ、俺と居ればいいだろ?」

「‥いてくれるの?」

「居ろよ。もうただの幼馴染じゃねーだろ?」


「そ‥‥そっか‥‥」


手を繋いで並んで歩いた。俺達の影まで手を繋いでる。



「俺、隠さねーから」

「ん?」

「親達。あと学校ー」

「そうだね!」

「今更恥ずかしくもねーしな。」

「ははっ‥‥」



久しぶりに、礼蘭の家のカフェに帰ってきた

手を繋いで。


それを見た礼司と楓、大きくなった真鈴とラン。

「おじさん、礼蘭、俺もらうから」

そう言われた礼司はプハっと笑った。

「ふふっ、あぁ、やっと恋人になった。あーよかった!」

「は?」

礼司も楓も、真鈴も礼蘭の方をニヤニヤして見てた。


俯いた礼蘭は顔を真っ赤にしてた。

「よかったね?お姉ちゃん!」

3人が声を揃えてそう言った。


「もぉぉぉ!!からかわないで!!」

3人は知ったのか‥礼蘭が俺のこと好きだって。



日が暮れて、夜に染まった空の下。

カフェの門の前で、俺は礼蘭に見送られた。


隣だけどね。


「じゃあな礼蘭。明日な。」

「うん‥‥」

まだ恥ずかしそうな礼蘭がそこにいた。


「俺の親父達には俺から話しておくから、

気にすんなよ。多分似たような事返されるんだ」

「似たような事?」


「あぁ、やっとだな‥ってな?」

ニヤリと俺は礼蘭に笑ってみせた。

「‥‥なんで全然照れないの?」

「だって、もうお前俺のもんだろ?」

「だからずるいってば!」


そういうと、礼蘭はその小さな手で、俺の胸をぽかぽか叩いた。だから、その手を引っ掴んでやった。



堰き止めていた思いは、止まらないんだよ。


俺は礼蘭の頬にキスをした。


そんな俺を見上げた礼蘭は、頬を染めたけど、

ずっと、俺を見つめてきた。

見つめ合う目はちゃんとわかってたから、

恥ずかしくないよ。


「‥‥‥」


礼蘭は少し踵を上げて、背伸びしたから

俺はちょっと膝を折った。この距離がちゃんと近づくように。




キスをした。



ドキドキはしてたけど


俺達、もう離れられないから‥‥‥


もう手を繋ぐだけじゃ、足りなかったから‥‥‥


「‥‥‥礼蘭」


「‥ん‥?」


ゆっくり離れたけど、まだすぐにくっつける距離だった。


「キスは‥‥毎日しような。」

「うん‥‥‥」

「俺、すげー好きだわ。」

「私も‥‥すごく好き。」


そう呟いて、もう1度、キスをした。



何度もキスしよう‥


今までの時間の分まで‥‥



どれだけ好きだったか、確かめ合おう?


俺はすごく‥‥‥お前が好きだよ‥‥



照れてる時間が勿体ないって思う程、




お前が、大好きだよ。


やっと、言えた‥‥


もう離してやんないから‥‥‥‥

読んで下さりありがとうございました!

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