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発表しますね

帝国民から見える。城の大きなバルコニー。それは皇族が特別な時に使用される場所だ。

そう、こんな発表がある時の場所だ。


帝国の旗が両端に掲げられると、帝国民たちがぞろぞろと集まってきた。


皇帝と皇后がバルコニーに笑顔で登場すると、帝国民たちは大きな歓声を上げた。

皇帝オリヴァーが、その口を開いた。


「我が愛する国民たちよ。今日は喜ばしい報告がある!我が世継ぎである皇太子がついに愛する者と巡り合い、今日ここで、皇太子の婚約を発表する!」


そう、オリヴァーが告げると、奥の扉から皇太子とリリィベルがその姿を現した。



更なる歓声が帝国中に響き渡る。


皇太子テオドールとリリィベルは笑みを浮かべ、帝国民の前に立った。


「皇太子テオドール・アレキサンドライトの婚約者は、リリィベル・ブラックウォール伯爵令嬢だ。」


その声にまた、割れんばかりの歓声があがる。

男たちはリリィベルの美しさに頬を染め、女たちは皇太子の婚約に悲し気な声をあげた。


「皆、2人の婚約を祝福してほしい。新しい未来が訪れた時、更に帝国を安寧へと導くであろう。」


テオドールとリリィベルは顔を見合わせた後、国民たちに手を振った。

そんな2人に拍手を送り、笑顔を向ける国民たち。


ニヤリと笑ったロスウェル。

「仕上げは…」

両端陰でロスウェルとハリーは目を合わせ、自身の両手をパンッと合わせた。


ぶぁっと花びらが舞い上がる。


綺麗な花びらに包まれて両陛下と、皇太子と婚約者リリィベルが笑顔で手を振る光景は国民たちの目に焼き付いたのだった。




婚約発表はすぐに帝国民だけでなく、貴族達にも伝わった。

婚約発表をしたすぐあとに、謁見の申し出が後を絶たず、皇帝と皇后は玉座に座った。



「陛下!我々にはなんの知らせもなく!皇太子の婚約を発表するとは何事ですか!」

声を上げたのはヘイドン侯爵だった。

そんなヘイドン侯爵をみたオリヴァーの目は、疑いの目を隠していた。


「何がいけなかった?喜ばしいだろう。知らせを出さずにしたのは余興だ。

驚いたであろう?」

オリヴァーはニヤリと笑った。


「っ…陛下!それでも!我々には知らせて下さるべきでした!」

悔しそうにオリヴァーを見上げるヘイドン侯爵。

「そうか、すまなかった。2人の結婚式はしっかりと知らせをするからな。」


「そういう問題ではっ・・・・」


「ヘイドン侯爵?」

マーガレットが・・・珍しく口を開いた。

「なんでしょう…皇后陛下…。」


「ヘイドン侯爵は、皇太子の婚約を喜んではくれぬのか?」

「いっ…いえ…そんな事は…っ…」


「そう、これはただの喜ばしい事だ。皇太子が自ら愛する者を見つけ、その手を取り合ったのだから。

事前に知っていたら、何をしてくれた?花でも送ってくれたか?」


「・・・・・っ・・・・・・」


ヘイドン侯爵は黙り込んだ。


「わかっておる…。そなたの娘も皇太子と同じ年であったな。そなたの娘にも相応しい相手が見つかる事を私は切に祈っている。皇太子が婚約したからと焦っているのだな?」


そう言ってマーガレットは笑って見せた。

それに続きオリヴァーも笑みを浮かべ口を開いた。


「あぁ、そうであったな。ヘイドン侯爵。娘も良き相手に巡り合える事を我々も祈るぞ。

さぁ、言いたいことは分かったから、下がるが良い。」


そうして、侯爵を下げさせたのだった。


次々とやってくる貴族達の半分は、年頃の娘がいる者たちばかりがやってきた。

そしてその半分は皇太子の婚約を祝福してくれる貴族達だった。





「・・・・・やられたわ・・・・・・」

ヘイドン侯爵家で、新聞の記事をぐしゃりと握りつぶしたライリーがそこにいた。

側にいたメイドがその姿を見て狼狽えている。


「皇太后陛下…っ私を…妃にしてくれると約束してくれたもの・・・・・」


ぶつぶつとそう呟いた。


そうだ。まだ結婚したわけじゃない…。まだ婚約しただけ…。


何度でも覆せる…。


ぐしゃぐしゃになった新聞を広げて、笑顔のテオドールとリリィベルの絵姿を見た。

「殿下・・・・・・っ・・どうして・・・・・・・」


どうしてこんな屈辱を私に与えるのですか・・・・・。


あなたが今、その地位に居られるのは、我が家の力があってこそ・・・・。


皇帝陛下がその椅子に座っていられるからなのに・・・・。


その為に、我が家が力を尽くしたから・・・・。

そう言われ続けて育った私。殿下の隣は私のものだと・・・・。



「・・・このまま・・・・奪われてたまるものですか・・・・。

そこは・・・・・私の場所よ・・・・・。」






皇太子の自室にて、テオドールとリリィベルはソファーに寄り添って座っていた。

「なんだか・・・・夢みたいな時間でしたね・・・・。」

「ははっ・・・婚約で夢のようなら、結婚したら天にも昇る気持ちだな・・・」

「ふふっ・・・嫌です。天には昇りません・・・テオ様のお側にいるのです・・・・。」


その言葉にテオドールは切なく瞳を揺らした。

「あぁ・・・・そうしてくれ・・・その身体はもう、俺の身体に括り付けて離れんようにしておく。」


「俺たちが出会うのは、運命だったのだから・・・・。」

リリィベルの肩を抱く手に力がこもる。


油断はできないが、これで、リリィベルが俺の婚約者となった。


下手に手出しをすれば、罪に問われる事だ。


だが…。皇太后とヘイドン侯爵家…。それに手を組む貴族達もいるだろう。


「私たちがいるのお忘れなんですね?」

向かいのソファーには、変装したロスウェルとダニエルが居た。


「「あっ・・・・」」

2人はパッとそちらを見て頬を赤く染めたのだった。


「ははっ・・・娘の幸せそうな顔は見ていて良いものだ。嬉しいよ。リリィ。」

ダニエルはそう言って笑った。

「えぇ?そうですかぁ?殴りたくありませんか?娘を数日で搔っ攫うんですよ?この人。」

「おいロスウェル!やめろ!せっかく喜んでくれてるんだ!」

「行動力と決断力は必要なのですよ。ロスウェル殿。」

「えぇ???この人陛下そっくりなんですよ?」

「ロスウェル!陛下を侮辱したと言いつけておくからな!」

「もう同じ顔してぇ。憎たらしいんだからぁ~」


「ふふっ、面白い方…。」

リリィベルはクスクスと笑ったのだった。



だが、その和やかな雰囲気は、訪問者によって遮られる。

「皇太子殿下、皇太后陛下がいらっしゃいました。」


「・・・・きたか・・・・」

小さくテオドールは呟いた。

テオドールは、ロスウェルに目配せをした。


テオドールはふんわりとリリィベルの目を覆った。

「伯爵、フランク目を瞑っていろ。ロスウェルは姿を部屋に隠す。ロスウェルの事は口にするな。」

「え?、あ、はい」

「は、はい‥」

ダニエルとフランクは言われるまま目を閉じた。


ロスウェルは静かにその姿を消した。


「‥‥よし‥‥いいぞ。」


「お通ししろ・・・・。」

扉の前に立っていたフランクにそう告げた。

「はい。」

フランクはそっとその扉を開けた。


「皇太子、ご機嫌よう。」

「皇太后陛下…。」


その場にいる皆が頭を下げる。

テオドールが一足先に頭を上げた。


皇太后はリリィベルを見た。

「お前が、皇太子の婚約者・・・?」


「リリィベル・ブラックウォールで御座います。お会いできて光栄です。」

頭を下げたまま、リリィベルは美しいその声で動じずに言った。


「そう…。顔を上げなさい?」


スッとリリィベルは顔を上げた。

「まぁ…お可愛らしいわね。ふふっ…誕生祭で出会ったと聞いたわ?」

「はい。皇太后陛下。」

「そう、運よく皇太子の目に留まって良かったわね?」

「はい。私は運が良いようです。」

「…ふっ…それにしても、婚約とは…なぜ、私になんの知らせもなく発表を?」


テオドールは皇太后をまっすぐに見た。


「それは、皇太后陛下が、私の意向を聞いて下さらないと判断したからです。

私に婚約者が出来る事は慶事であるはずですのに…。陛下は、お喜び下さらなかった。」

「あら、婚約者の前でそんな事を言っていいの?そのか弱い身体が縮こまってしまうわよ?

私に、嫌われていると…。」


「そんなか弱き者ではありません。もちろん、私が守ります故、そんな心配は無用です。陛下。」


皇太后の手にある扇子がピキっと音を鳴らした。


そして、皇太后は、ダニエルの方を見た。


「そなたが、娘の父、ダニエル・ブラックウォールだな?」

「はい、陛下。」

ダニエルは頭を下げたままだ。


「誕生祭から間もなく、娘を皇太子と婚約させるなんて、

皇太子妃の座に目が眩んだのかしら。」

「とんでもございません。私は、愛し合う2人を祝福しております。」

「口ではなんとでも言えるわ。せいぜい、北部から見ているのね。娘が幸せになれるかどうか‥‥」


頭を上げさせない、皇太后の顔は扇子の裏で歪んでいた。



最も憎い‥2人の子供‥‥


「皇太后陛下、どう思われようとも、これが私の意志でございます。それに、もう婚約を発表致しました。

皇太后陛下からも、祝いの言葉を賜りたく存じます。」


「ふんっ‥‥ふふっ‥‥‥はははっ‥‥


婚約、おめでとう。皇太子。せいぜい幸せにね?」



そう言って皇太后は部屋を出て行った。



「‥‥予想以上ですな。」

ダニエルがやっと顔を上げた。


「あぁ、すまない伯爵‥‥いらない屈辱を受けさせてしまった‥」


「‥‥ふぅ‥‥」


リリィベルも大きく息を吐いた。

「リリィ、大丈夫か?」

「はい、テオ様‥私は大丈夫です。」


3人はソファーに座り直し、メイドに新しい紅茶を頼んだのだった。


ちょうど、紅茶と一緒に、オリヴァーとマーガレットが部屋を訪れた。

「まぁ、私達のためのようなタイミングね。」


「皇帝陛下、皇后陛下」

リリィベルとダニエルが頭を下げた。

しかしマーガレットはすぐさまリリィベルに近づきその手を取った。


「リリィベル嬢?リリィと呼んでも?」

「もっ‥もちろんでございます。」

「うふっ嬉しいわ。女の子がいると華やかね。」

マーガレットはとても嬉しそうに笑った。つられてリリィベルも笑みを浮かべる。


「リリィ、これからどうぞ宜しくね?」

「こちらこそ、宜しくお願い致します。皇后陛下」

「私達の前だけでは、お義母さんと呼んで?」

「‥はいお義母様‥」


「じゃあ私はお義父さんだな。」

マーガレットの肩を抱き顔を覗かせたオリヴァー。

「はい、お義父様‥」


皇帝夫婦はにっこり微笑んだ。

「陛下、先程‥」

「あぁ、分かっている。皇太后陛下がいらしたのだろう。

そこで会った。」

はぁっとため息をついたオリヴァー。

「すごいお顔だったわね」

ふふっとマーガレットは笑ったのだった。


「母上、笑っている場合ではありません。

ブラックウォール伯爵に一度も顔を上げさせませんでした。」


「そうか‥それは申し訳ない事をした。伯爵‥」

「とんでもございません。私は大丈夫です。」

申し訳ない顔をするオリヴァーにダニエルは笑ってみせた。


「どうやら、聞いた話は誠のようだ。余程の執念だな。」

「婚約したとは言え‥油断は出来ません。」


テオドールとオリヴァーは同じ顔、考える同じポーズでうーんと唸った。


それを見てマーガレットとリリィベルは笑みをこぼした。



「ロスウェルは?」

「あぁ、隠れてます。(帰りました)」

「そうか。」


「伯爵よ、領地に娘と帰る予定だったはずなのに申し訳ない。不本意であろうがリリィベル嬢は、城で預かりたい。

皇太子の部屋の隣の皇太子妃の部屋がある。そこに居させたいのだが、それで構わぬか?」


「妃の部屋を?もうですか?」

ちょっとついていけないダニエルだった。

「あぁ、客人の部屋はダメだ。どんなに警備した所で、

くぐり抜けられては危ない。皇太子の部屋の側なら、

皇太子夫婦の宮だ。危険は減る。タウンハウスに娘を置いて北部へ帰るわけにもいくまい‥。我々のそばで守りたい。」


「それは心強いですが‥皇太后陛下のご様子では‥」


「だからこそだ。安心してくれ、もちろん結婚するまでは、皇太子に手は出させないから。」

「ん、父上?」

オリヴァーの言葉に首を傾げたテオドール。



「‥‥‥‥‥‥」


全員が揃って固まった。


「‥‥えっ、ちょっと。」


テオドールがキョロキョロと大人達を目で見て回る。

赤い顔をして俯いたのはリリィベルだけだった。


「だから、安心してくれ、伯爵、皇帝の言葉に嘘偽りはない。誓おう。」


時が戻った。


「‥‥‥自分だって作った癖に‥‥」

テオドールはブツブツと言った。



「‥‥‥‥‥‥‥」


オリヴァーの笑顔は、テオドールを見て時を止めた。


婚約発表でした。皇帝は結婚する前に子を作りました。

読んで下さりありがとうございました!

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