星の記憶 3 〜今はただ、それだけ〜
暁の礼蘭は10歳になった。礼蘭には今年3歳になる妹がいる。
「真鈴〜」
礼蘭は妹をとても可愛がった。いいお姉さんになっていた。
タタタタと歩ける様になった真鈴は礼蘭の胸に飛びつく様に抱きついた。
その光景を暁も見ていた。カフェの一画が3人の遊び場になった。真鈴を可愛がる礼蘭だったが、
タタタタっと真鈴は礼蘭の後は暁に向かって歩いてくる。
「まーりんっ暁はダーメ」
「なんだよ礼蘭。せっかく走ってきたのに」
暁にたどり着く前に礼蘭が真鈴を抱き上げた。
ぷくっと頬を膨らませた礼蘭だった。
両親にこそ、ヤキモチは焼かないが、これは礼蘭のヤキモチだった。
「暁は遊んでくれるだけでいーのぉ!」
「もぉ、俺だって抱っこしたいのに、怖いお姉ちゃんだなぁ?」
と真鈴に話しかけるのだった。
礼蘭は不満気だったが、真鈴は可愛い。複雑な気持ちを抱いていた。
「ねーね、あっき!あそぶのぉっ」
真鈴は二人をそう呼んだ。もっと遊ぶと主張する。
「もぉっ‥可愛いんだからっ」
無邪気な笑顔に礼蘭もすぐに機嫌が治る。
「ふっ、わかんねぇなぁ、じゃあ礼蘭、俺もう稽古行くから、また明日な?」
「うん!気を付けてね!怪我しちゃだめだよ!」
カフェの入り口で暁を見送る礼蘭と真鈴。
暁が出て行くと、ふぅっと息を吐いた礼蘭だった。
「真鈴?暁は私のなの、だからダーメ。わかった?」
そう言う礼蘭を礼司と楓は笑って見ていた。
言葉にはせずとも、2人が特別な存在である事は
周りには見えていた。
まだ恋を知らないだけ‥‥
今でも、2人は一緒に学校に行き、同じクラスで、帰り道も一緒だった。
そんなある日のこと。
「礼蘭ちゃん、暁君と付き合ってるの?」
「…付き合う…?なんの…。」
「だから、彼氏なの?」
「えっ?」
マセた女の子達は礼蘭と暁の関係が気になり、ひそひそと噂をするようになった。
「暁は…あたしの彼じゃ…ない・・・・」
ポカンとした礼蘭だった。けれど暁は特別だった。
「彼氏じゃないなら、あたし達もチャンスあるよねっ!」
きゃっきゃと騒ぐ女の子達。
「みんな・・・暁の事。好きなの?…恋人になりたいって意味・・・?」
「そうだよ!暁君格好いいもん!剣道もとっても強いんでしょ?試合で優勝したって」
「それは…ちゃんと同じ学年同士の試合で…暁が一番強かったから…。」
「当たり前じゃん。だから優勝したんでしょ?ちょーかっこいい!」
「・・・・暁は・・・・・昔から・・・・・」
礼蘭は戸惑っていた。
小学生に上がってから、他の女の子たちが暁に近づくのが嫌だった事があった。
でも、それは自分が一番仲の良い存在であると思って、暁を取られるのが嫌だったから…。
そういえば、真鈴が暁に抱き着くのは、私も嫌だと思っていた。
なぜ?可愛い妹なのに…。
暁の隣は自分のものだと、信じて疑わなかったから。
自分を守るために始めた剣道で、稽古に励んで優勝するまでになった暁を。
ほかの子も特別に見ている…。
「礼蘭ちゃんが暁君の彼女じゃないなら、みんな話しかけに行こうよ!暁君優しいもんっ」
そう言って、女の子たちは散って行った。
「・・・・暁は・・・・・私の、幼馴染で・・・・・」
そう幼馴染で、特別で・・・隣いたい人。
振り返り、暁の方を見る。暁は大きくなるにつれて、男の子達とも頻繁に遊んで、今だって、男の子達と一緒で‥
学校でも常に一緒ではなかった。自分もそうだった。女の子の友達が増えた。
だけど、いつも一緒・・・・・。
暁は・・・・私にとって、本当にただの幼馴染・・・・?
女の子達が騒ぐように、格好いいと思っている。
自慢だって思ってる。
それは、私の為に、強くなるって言ってくれた暁だったから・・・・。
だけど、暁はなぜ、私の為に強くなろうとしたの・・・・?
どうしてこんなにモヤモヤするんだろう・・・。
モヤモヤした気持ちのまま下校時間だった。
雨が降っていた。
いつも同じだった帰り道だったけれど、今日は暁が、女の子に呼び止められているのを知って、
黙って玄関まで来てしまった。
「あ・・・傘・・・ないや・・・・。」
暁を引き留めた女の子は、暁の事が好きなの?
好きだったらどうなるの?
私との時間は無くなるの?
それは・・・・とっても、寂しい事なんだと思う・・・・・。
「いいやっ・・・このまま走って・・・・・」
外へ飛び出そうとしたその時だった。
「礼蘭!」
聞きなれた声に振り返った。
「・・・・暁・・・・?」
暁と、さっき呼び止めてた女の子が居た。
あぁ・・・・嫌だ・・・・。
暁の隣に他の子がいるのは・・・・。
どうして?
「礼蘭!何先に帰ろうとしてるんだよっ。しかも雨降ってるし・・・・」
そう言って少し怒りながら暁は礼蘭に近づいてきた。
「暁・・・。傘・・・・」
「俺も持ってないよ。」
「暁・・・」
「なんだよ。」
「あの子、いいの?」
後ろの子を指さしてぽつりと言った。
「・・・・あぁ、別に・・・お前が気にするような事ねぇよ。」
暁はちらっとその子を見ただけで、本当になんでもないというトーンで話した。
「それよりそのまま出てったら濡れるだろうがっ。ちょっと待ってろ!」
「?」
そう言った暁は、自分のジャンパーを脱いで、礼蘭の頭にかけた。
「ないよりマシだろ?走って帰ろ?手引いてやるから。」
そう言って、手出してきた暁。
「うん・・・・。」
言われるがまま、礼蘭は暁の手を握った。
そして、暁のジャンパーに包まれて、手を引かれて走り出した。
「・・・・・・・・・。」
暁の後ろ姿を見た。同じくらいの背だったのに、暁は私より大きくなって。
弱々しかった、剣道で負けて泣いていた暁はもういなくて・・・・。
それでも、今の様に、私の手を引いて、私が濡れないように・・・・
転ばないように手を引いて・・・・。
胸がドクドク音が鳴ったような気がした。
暁の髪から滑り落ちる雨がキラキラして見えて。
繋がれた手は暖かくて・・・・胸がいっぱいだったから。
私は、こんなに暁の事で頭がいっぱいで・・・・
大切にされて・・・・・
ただの幼馴染だと・・・ずっとそうなんだと思ったの?
カフェにたどり着いた。
「うわぁっ暁っ礼蘭!すごい濡れてるじゃないか!
それにこのジャンパー・・・暁、礼蘭に被せてくれたのか?だからそんなに?」
「だって、礼蘭濡れたら嫌だし・・・・。被せるもん他になかったし・・・・」
当たり前のように暁は言った。
礼蘭よりもびしゃびしゃな暁を見て慌ててバスタオルを取りに行った礼司だった。
やがてバスタオルを2つ持ってきた礼司だったが、
受け取ると暁は自分より先に礼蘭の頭を拭き始めた。
「礼蘭、風邪ひいちゃうから・・・」
わしゃわしゃと頭を拭いてくれた。自分の方が濡れてるのに・・・・。
「あきこそっ・・・びしょ濡れじゃないっ・・・・」
少し浮かんだ涙が雨と混じっていて良かった。
暁のやさしさに胸がいっぱいで、泣きそうだった。
こんなに、私を大事にしてくれるのは、暁しかいない・・・・。
暁以外は、私には・・・・。
そっか・・・・これが、男の子に思う、〝好き〟なんだね?
暁は男の子で、私は女の子で・・・。
当たり前のように一緒に居すぎて、
暁の格好良さも、やさしさも、私は・・・バカだな・・・・・。
暁が・・・・好きなんだね。
暁が、大好きだったんだね・・・・。幼馴染としてだけじゃなく、男の子として・・・・。
「暁・・・さっきの玄関に居た子と何話したの?」
お互いをわしゃわしゃとタオルで拭きながら話しかけた。
「あ・・・なんか、俺の事好きなんだって。」
「そうなの?」
「うん、だから、ありがとうって言っておいた。」
「そうだね・・・好かれてるんだから。」
「まぁ、別に口に出して言わなくてもよくない?俺クラスの子好きな奴いっぱいいるよ?」
「そうなの?」
「別に、悪い奴いないだろ?そう考えたらみんな好きの部類じゃないの?」
「あははっ・・・・そうだねっ・・・」
暁にはその好きが、何か分からなかったんだね?
「それより礼蘭、なんで一人で帰ろうとしてたんだ?探したんだぞ?」
「うん、ごめんね?」
「雨の中一人で帰ろうとするし、焦ったじゃん・・・。
雨の中礼蘭一人で帰すなんて嫌だよ俺・・・・。ちゃんと待ってろよ。」
そう言って暁は笑った。
まだ、いいの、暁が分からなくても。
私が暁を見ているから・・・・。
私の好きとは少し違っても、暁はちゃんと私を見ていてくれる。
泣かないように、濡れないように、守ってくれるために・・・・。
私は暁の事が、こんなに大好きなんだ。
暁は礼蘭の行動を、予測できて居なかった。
礼蘭に帰ろうと言いに行くタイミングで、クラスの子に話かけられて、礼蘭にちょっと待ってて。というタイミングを逃してしまった。
いつも礼蘭なら、待ってる。って思ってたから。
人のいない所に呼ばれて、女の子は頬を赤くしてもじもじしてた。
「‥顔赤いけど、熱あんの?」
痺れを切らしてそう言った。
「‥なっ‥ないよ。」
「話ってなに?」
「あの‥あのね、私‥暁くんの事‥ずっと‥」
「俺がなに?」
「ずっと‥ずっと好きだったの!!」
意を決してそう言われた。
嫌いじゃないから、好きなんだろう。
「そう?ありがとう。」
きょとんと、お礼を言った。
「え?‥あ‥うん‥‥でね?暁くん。
礼蘭ちゃんと付き合ってないなら‥私と付き合ってほしいの」
「どこに?」
「えっ?」
「だから、何に付き合えばいいの?」
首を傾げて、俺はそう返した。
女の子は目をうるうるさせていた。
「そうじゃ、なくて‥‥あたしと、特別仲良くしてほしいの」
特別‥?
「俺が特別なの、礼蘭だけなんだ。」
「‥え?だって礼蘭ちゃん、暁くんとは付き合ってないって‥」
「礼蘭は俺の幼馴染だ。産まれた時からずっと一緒だもん。
礼蘭より特別な人は、俺はいらない。」
「あきらくん‥じゃあ、礼蘭ちゃんのこと好きなの?」
「当たり前だろ?」
俺は素直な気持ちを話した。
「‥‥わかった‥呼び止めてごめんっ‥」
「うん、礼蘭待ってるから俺行くな?礼蘭1人にさせるの嫌なんだ。」
そうして、教室にもどったけど、礼蘭の姿が見つからなくて、少し焦った。
「どこ行ったんだ?」
思いつく所を見に行ったけど居なかった。
靴があるか玄関まで見に行ったら、さっきの女の子に合った。
玄関で今飛び出そうとする礼蘭を見つけた。
「礼蘭!!」
呼び止めて振り向いた礼蘭が、悲し気だったのが、
俺は心が痛んだ。
どうしてそんな顔しているのか、分からなくて。
分かってた、今日ずっと寂し気な顔をしてたから‥
帰りに聞こうと思ってた。
今もそんな顔して1人で帰ろうとしてたのか?
ダメだよ。そんな事させたくない。
礼蘭は俺の特別だ。誰も礼蘭の代わりにはなれない。
俺が強くなりたいのも、なかせたくないのも、
礼蘭だからだ。
まだ、さっき言ってた女の子の付き合うという事はよく分からないけど。
俺がなんでも付き合うのは、礼蘭だけだよ。
ただ、それだけ‥
また赤き月の刻が来ます…テオドール、気を付けて…
パロッてすいません。
読んで下さり、ありがとう御座いました。




