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予期せぬ妨害

皇太子の執務室にて。


「フランク、これをブラックウォール家のタウンハウスへ送ってくれ。」


テオドールは皇族印を押した手紙をフランクに渡した。


「‥昨日の今日ですけど?」

「あぁ時間がない、あと4日で、ブラックウォール家は領地に帰る。どうしても伯爵の承諾無しでは事は進められない。

ブラックウォールは帝国の要だ。きちんと話をしねぇとな」


フランクは手紙を見つめて固まっていた。


「建国祭まで、まだ十分日はありますが‥」

「バカ‥北部は雪がすごくなる。そうなる前にリリィをこちらへ連れてこなければ、建国祭に、皇太后陛下をエスコートするぞ俺はっ」


「近くにも、エスコート出来るような令嬢はたくさん居ますが‥」

「お前、それ以上言ったらクビだ。」

「はい。すぐ届けます。」


「それでいい。」

ニコリと皇太子は笑った。

フランクはすぐに執務室を出ていった。


そこへ訪問者がきた。

扉の外の衛兵から声がかかる。


「‥‥‥お通ししろ」


テオドールは訪問者に眉を顰めた。


扉の向こうから訪れた人物へテオドールは頭を下げてる。



「皇太子、久しぶりね。」


ソファーに腰掛け声を掛けた人物。

「はい、皇太后陛下‥」


そう、皇太后がやってきた。妙な予感がして居心地が悪い。


「皇太子、誕生祭ではとうとうダンスを披露してくれたようね?私はとても嬉しいわ。」

「はい。」


皇太后陛下は、祖母であるが、前皇帝が亡くなってから、すっかり人前に出ることが無くなっていた。


そんな皇太后陛下が、皇太子を訪ねてくる理由は‥


〝皇太后陛下は、ヘイドン侯爵家のライリー嬢を推してくるだろう〟


つい先日言われたオリヴァーの言葉が頭をよぎる。


「今度の建国祭の事だけれど‥」

「皇太后陛下、その事でしたら心配ございません。」

「どういう事?」


「私は既にパートナーを決めております。

なので陛下の心配は無用ですよ?喜んで頂けますか?」

皇太后に向けて、テオドールはにっこりと笑顔を向けた。


「まぁ、それは本当?良かった。わざわざ言いにくる必要なかったわね?」

「私ももう16になりました。そろそろ今後の事を考えねばと思っていたのです。」


「皇太子、とっても嬉しいわ。あの子ったら私に内緒にしてたのね?」


「‥‥‥あの子とは、誰を指しているのです?」

鋭く皇太后を見つめた。


「誰ってヘイドン侯爵家のライリー嬢の事よ?」

「‥‥どういう事です?」


「この国で、皇太子の後ろ盾となれる者はヘイドン侯爵家が有力でしょう?度々お茶しているのよ。とても素敵なお嬢さんよ?あなたをとても慕っている様だし。私はライリー嬢をあなたの婚約者に据えたいわ」


テオドールは険しい顔つきで皇太后を見た。


「皇太后陛下、私がこれまで婚約者を作らなかったのには、ちゃんと理由がございます。私は皇帝陛下と皇后陛下の様に、愛する者と結婚し、この国をその者共に安定した国を維持し、更に発展していきたいのです。

私は信頼出来る者とこの生を全うしたい‥‥


誰かに命じられて、結婚するなど死んでも致しません。」


そう言ったテオドールの目はひどく冷え切っていた。



しかし皇太后は、クスっと笑った。

「皇太子よ‥信頼とは、会ってすぐできるものではない事は私もよくわかっている。だが、後に後継者ができればその子の後ろ盾となる然るべき家が必要であろう?」


「その侯爵家が、必ずしも味方になるとは限りません。

私は忘れておりません。初めて城にきた誕生祭で、

欲にまみれた目で、私を見ていた侯爵を。」


その言葉に皇太后は眉を顰めた。更に皇太子テオドールは続けた。

「皇太后陛下が何を信じ、侯爵家を推すのか理解出来ませんが、私は私が信じられる者しか側に置きたくありません。

皇太后陛下もよく、わかっているはずです。政略結婚の果てに側室が出来、産まれた子達が醜い争いをしたおかげで、陛下もその命を脅かされたではありませんか‥。


私がライリー嬢を妻にした所で、目を向ける事はないでしょう。私はもう訳が分からぬただの子供ではありません。

侯爵家と、令嬢がよからぬ欲望を抱く前に、手を引いてください。」


「テオドール!!私になんて口を聞くのです!!

会うくらい出来るでしょ!!!私に歯向かうつもりですか!」

皇太后が声を荒げた。


「会ったところで私の想いは揺らぎません。」


そう言ったテオドールに皇太后は目の色を変えた。

「‥‥ブラックウォールの血筋など私は認めないわ。」


静かに冷ややかに、皇太后は言った。

テオドールは更に眉を顰めて口を開いた。

「‥‥どういう事です?‥‥‥」



ギリッと唇を噛んだ皇太后がいた。


「私は許しません‥‥あの娘だけは」

「だから何故です!?」

テオドールの声も荒くなる。


「‥‥‥‥とにかく、明日の昼にライリー嬢を城へ招いています。あなたも同席なさい。彼女の素晴らしさを知るいい機会です‥。建国祭までにはまだ時間があるわ。その間、衣装の相談でもするのね。」


そう言って、皇太后はテオドールの部屋を出ていった。



「どういう事だ‥‥なぜ‥‥‥」

ブラックウォール家はこの帝国の要である。辺境地を守るその強さで、存在として、侯爵家にも引けを取らない。



なぜ、俺の邪魔をする‥‥‥。




俺は、リリィベル以外を妻に迎える事はない。


もう、2度と‥‥‥




どうやら、俺が立ち向かうのは、ブラックウォール伯爵だけでは無さそうだ。



「‥陛下に確認する必要があるな‥」

鋭い目つきで、呟いた。


認められないのは、こっちの方だ‥‥




ライリー•ヘイドン侯爵令嬢


初めて誕生祭で出会ってから、ずっと、俺に視線を送ってきた。幼かったその眼差しは、時間と共に膨らんで、

今では、見向きもしない俺に恋心と苛立ちを抱える目つきだった。


誕生祭で、リリィベルと初めて踊った時も、

ライリー嬢の目つきは、分かっていた。

だからこそ、彼女とは踊らなかった。


踊ってはいけないと。



力がある家柄だからこそ、どんな牙を向けてくるか分からない。ライリー嬢に、何の感情も持たない。

俺の心にはレイラしか居なかったのだから‥

そして今はレイラだったリリィベルがいる。


絶対に、邪魔はさせない‥‥






テオドールはすぐさまその足でオリヴァーの執務室を訪れた。

「皇帝陛下、お話がございます。」



そこには、マーガレットもいる。本当に仲のいい夫婦だった。


「テオドール、どうしたの?怖い顔してる‥」

マーガレットは、皇太子の顔色を見て心配そうにその頬に触れた。


「どうした?ブラックウォールの令嬢とはうまく行ったか?」

オリヴァー呑気は微笑んでそう言った。


オリヴァーはまだ何も知らない。


「‥‥陛下、先程私の部屋に、皇太后陛下がいらっしゃいました。」

「陛下が?‥何故だ?」

オリヴァーはきょとんと目を丸くした。


テオドールは腑に落ちない悔しいこの気持ちを抱き口を開く。


「ブラックウォール家の令嬢は認めぬと。

そして、建国祭には、ヘイドン侯爵家のライリー嬢をパートナーにするように言われました。私の後ろ盾となる家紋であると‥。」


「‥やはり、推してきたか‥」

「理由は?陛下は心当たりがございますか?」


うーんと、考え込むオリヴァーだったが‥

「まぁ、理由は家柄もあるだろうが、ライリー嬢が、皇太后陛下に近付いていたのは知っている。

元々、私が皇太子時代に侯爵家が尽力してくれたのを、皇太后陛下も知っているし、彼女が幼い頃から陛下と親交もある。それが理由とも考えられるが、お前はなんと答えたのだ?」


「その侯爵家が、必ずしも味方になるとは限りません。また、ライリー嬢を私の婚約者に据えたいとおっしゃるので、皇太后陛下が何を信じ、侯爵家を推すのか理解出来ませんが、私は私が信じられる者しか側に置きたくありません。侯爵家と、令嬢がよからぬ欲望を抱く前に、手を引いてください。‥と」


その言葉にオリヴァーはため息をついた。


「気持ちはわかるが、お前は素直に物を言い過ぎだ‥」

「私は自分の思いを言ったまでです。今まで婚約者に据えたい者などいないと言った私が、ブラックウォール家の令嬢を建国祭のパートナーにすると、誰から聞いたのか存じませんが‥」


「それはあの場にいた全員が思った事であろう‥」


「そうだとしても!何故ですか?!リリィは辺境伯の娘!

立派な貴族!反対される理由など私には思い当たりもありません!!なぜ!!


‥なぜ私が我慢をせねばならぬのですか?!

好きでもない女を娶れと!!


私は!リリィ以外の女性を愛するつもりはありません!!!」


悔しそうに訴える。肩が震える。虫唾が走る。


せっかく巡り合い、心を通じ合わせた女性がいるのに


なぜ、邪魔されなければならない‥



テオドールは、確固たる意志を持って告げた。


「私は、そんな無理強いをさせられるくらいなら、

皇太子の座を降ります。」


「こらっ!!なんて事を言うんだ!!」

慌ててオリヴァーはテオドールに近づきその両肩を掴んだ。


「お前はこの帝国の皇太子だぞ!!私の後を継ぐ者だ!」

「私は!自分の愛する人以外を娶る気はありません!!」

「分かってるから落ち着け!!そんな事はさせないから!!少し頭を冷やしなさい!!」


テオドールが唇を噛み締める、その唇に血が滲んだ。

それ程までに、悔しくて仕方がない。。。


なぜ、リリィベルではダメなのか。


なぜ、俺の邪魔をするのか。


なぜ、俺達を引き裂こうとするのか‥‥



「テオ‥‥‥」

テオドールの顔を見て、悲しむ父と母‥


テオドールは静かにつぶやく。


「‥明日‥ヘイドン侯爵家の令嬢を城に招いているそうです‥同席する様言われました‥」


「なんだと?」


フッとテオドールは乾いた笑みを浮かべた。

「優しかったお祖母様は‥‥もはや私の敵に見えます‥‥。

私の人生を邪魔する‥‥。お祖母様に取り入った侯爵も!

その娘も!!!私にはただの弊害です!!!


ブラックウォール家とお祖母様に一体何があるのか。

調べます‥。ブラックウォールの娘だけは認めぬとおっしゃった‥‥何かあるはずです‥‥。」


「しかし‥‥思い当たる事はなにも‥‥」


「‥‥だから探すのです‥‥建国祭まで時間はあります‥

私は絶対に、リリィを諦めるつもりはありません‥」



その信念だけは譲らないと強く訴えたけれど、

テオドールは、悲しげに肩を落とした。



当てのない話だった。



けれど、あきらめるつもりはない‥。



皇太后と、ブラックウォールに何の事情があろうと、

俺には関係ない。


俺はリリィと人生を共にすることが望みだ‥


ただそれだけなんだ‥‥‥。

ありがち弊害、いや老害?

読んでくださりありがとうございました!

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