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高い壁

「‥‥‥‥‥リリィ?」


テオドールはリリィの涙を拭った。


「‥っ‥私‥‥‥なにか‥‥っとんでもないことを‥」

ハッとしたリリィは、どんな想いが溢れたのか、

どうやらあまり覚えてない様子だった。


「大丈夫だ。心配するな‥‥‥」

そう言って、テオドールはリリィベルの額に口づけを落とした。


「‥‥‥テオ様‥‥‥」


少し落ち着きを取り戻したリリィベルの額と頬に口づけた。


「もうじき、日が暮れるだろう‥‥

離れたくはないが、父君の元へお前を送らなきゃな‥


お前の家族に恨まれたくない‥‥」


そう言って頬を一撫でした。


「ありがとうございます。テオ様‥‥」


「その前に、お前に伝えたい事がある。今年は10年に一度の建国祭がある‥。

お前に、俺のパートナーを頼みたい。

いいか?皆から注目を浴びる‥俺は誕生祭でパラナウラの王女だけしか、エスコートした事がない。だから、お前が妃候補だと、世に知れ渡るだろう」


「‥‥テオ様のお妃候補‥‥‥」


テオドールはリリィベルの額に自分の額をくっつけた。


「あぁ、皆がそう思うだろう‥‥覚悟はいいか?」

少し申し訳なさそうにテオドールは言った。


「‥‥テオ様と居られるなら、私はどんな事も乗り越えます。北部の黒い壁の下で産まれた者は、とても頑丈なのですよ?」


その言葉にテオドールは笑みを浮かべた。


「頼もしいな‥‥初めて宴が楽しみに思える。」

「私も、お側に居られるのを楽しみにしています‥」


見つめ合った2人は、自然と唇を重ねた。



2回目の口づけは、当然のように‥パズルのピースがはまる様に‥。長く、深く、思いを確かめ合った。





夕焼けに染まる空の下、2人は馬に乗りタウンハウスへと戻ってきた。2人は正面から戻ってきたのだった。

テオドールはブレスレットの宝石を2回叩いた。


タウンハウスの玄関にはダニエルが心配そうに待っていた。


2人の姿を見て慌てて駆け付けてきた。


「リリィ!!!」

「お父様‥‥」

リリィベルはダニエルの表情に罪悪感を感じてしまった。


テオドールはリリィを馬から下ろし

ダニエルと向き合った。


「ブラックウォール伯爵、勝手をして申し訳ない。」


「殿下!恐れながら申し上げますっ‥どうやってリリィをっ?勝手に連れて行かれては、私の寿命が縮まりますっ!!」


「あぁ、申し訳なかった。少し話をしたいのだが‥」


だが、ダニエルは厳しい顔付きで言った。


「申し訳ございませんが‥殿下をお出迎えする準備は出来てありませぬ故、今日は‥お引き取り願いたい‥」

「お父様!殿下になんて事をっ‥‥」

慌ててリリィベルが止めに入ったが、ダニエルは真剣だった。


そのダニエルをみて、テオドールは真剣に返答した。

「わかった。今日は私が無礼な振る舞いをしたのだ。

心から詫びる。近々、正式に訪問する故、

その時はどうか、拒まないでほしい。大事な話がある。」


「‥‥畏まりました。その際には、謹んで歓迎いたします。」


ダニエルは腰を折り、リリィベルの肩を掴んだ。

「さぁ、リリィ‥中へ‥」

「待ってっお父様っ‥‥‥」


そう言って、リリィベルは、テオドールに駆け寄った。


「殿下‥‥申し訳ありませんっ‥」

「お前は悪くない。俺が悪かった‥大切な娘を攫ったんだ。

改めて来る‥‥ゆっくり休んでくれ‥」


そう言ってリリィベルの髪を一掬いしてキスをした。


「おやすみ、リリィベル‥」


「お会いできて、とても嬉しかったです‥」

名残惜しく、悲しげにリリィベルは微笑んだ。


馬に乗り、リリィベルを見て笑みを浮かべるテオドール。

そして、ダニエルを見てから、すぐに前を向き馬を走らせたのだった。


門を出る前にブレスレットの1回叩く。


テオドールを見つめていたリリィベルは

夕焼けの中、消えていくテオドールを姿が無くなるまでみていた。




城に戻るまでの道、テオドールは、眉を顰めていた。




あれは、レイラの想いが‥‥


リリィの口から溢れてきたんだ‥



レイラはどんな想いで、前世の俺を残していった‥‥



胸が張り裂けそうだった‥


そして、自分の中の暁が、悔やみ涙が溢れた。



けれど、俺とリリィは暁と礼蘭‥‥


こんなに違う世界でも


どこまでも、俺達は一緒なんだ‥‥



リリィは、暁を覚えている訳じゃない‥


ただ、魂の奥底で、礼蘭の想いが強く残っている‥



俺はリリィのままでいて欲しいのか、


暁を思い出して欲しいのか‥‥‥



答えは見えない‥‥



ただ、一緒に居たいのだと‥‥


前世も今世も、そう強く思い合う俺達は‥‥‥


運命のつがいであることに間違いはない‥‥



まだ、俺達に何があったのかわからない。



だから取り戻すんだ。前世の記憶を‥




テオドールが城に戻り、自室まで戻った。

「ふぅ‥‥」

緊張していた。けれど、心が苦しくも喜んでいる。

リリィベルは俺の手を取ってくれた。


自然と心が満ちてきて、笑みが浮かぶ。


とても、苦しくて、とても、嬉しかった。


この世でも、リリィベルは俺を選んだ。


なんの迷いもない‥俺も、リリィベル以外を選ぶつもりはない。




そのまま、テオドールはベッドに横たわった。


満たされて、何もいらない‥


リリィベルが居てくれるなら、俺はなにも‥



日が暮れ、夜が来た。軽く食事をして湯に浸かり、少し湿った髪をそのままにテオドールはソファーに座った。


「‥‥ダニエル・ブラックウォール‥‥」


妻を亡くしたダニエルは、リリィベルを大層大事に育てただろう‥‥。


北部の黒い壁、他国からの侵入を防ぐ要。

ダニエルは強い戦術マスターだ。戦いに置いて右に出る者は少ないだろう。


北部は帝都から10日かかる距離。簡単に会える場所ではない。


皇族は魔術師の力で、移動は可能だが説明する事は出来ない。


リリィベルが領地に戻ったら‥‥



俺は耐えられるだろうか‥


いや、耐えなければならない。



建国祭が、その年の栄目であり、皇帝と皇后の誕生祭の意味もある。規模は大きく、街中が祭りムードとなる。



そこで、皇族は象徴としてその立場を世に知らしめる大事な時。リリィベルは、確実に、注目を浴びるだろう。


ダニエルは、この事を承諾するだろうか‥


いや、承諾させなばならない。



「‥‥俺はどんな憎まれても、お前を越えなければ‥」


星と月が輝く夜。


テオドールはそのまま瞳を閉じた。


読んで下さりありがとうございました!

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