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星と月が出会う夜 第6夜

テオドールは庭に出て辺りを見渡した。城の庭は広く、外灯が灯っている。

今日は魔術師達の魔術でより一層輝いていた。

外灯以外にも、まるで蛍がいるように、ふんわりと光は移動し木から木へ、花から花へ飛んでいく。


通路を辿れば噴水が見えてくる。

パシャパシャと水の音が‥一定のリズム流れ落ちゆく


「お前、本当に大丈夫なのか?」

噴水の淵に座り、その体を寄せ合っている。


テオドールは、その姿を影からそっと見た。



「はい‥大丈夫です‥お父様‥」


額に汗を浮かべながら、笑って返す彼女の声。


「‥‥‥‥‥‥」


木の陰で彼らに見つからないように身を潜めた。




胸が高鳴る‥‥


早く、間近で顔を見たい‥‥


手を取りたい‥‥‥





「お父様‥‥もう落ち着きましたから‥」

「そうか‥‥飲み物でも持ってこようか?」


「はい‥待ってますね」

笑顔でダニエルを見送った。


「‥ふぅ‥‥‥」


リリィベルは噴水を振り返り、その月の光で煌めき流れる水を見ていた。


「綺麗だわ‥この噴水も‥‥城も‥‥キラキラしてる」

微笑んでそう呟いた。



そんな時リリィベルに影が出来た。

誰かがそこに立っている‥



「?」



リリィベルは人影の方を見た。


「どなた‥?」


一瞬理解できなくて、首を傾げた。


「‥っ‥‥‥」

ドクンと胸が高鳴った。


テオドールは胸を弾ませた。その仕草が可愛らしくて‥


しかし、ハッとリリィベルはその身を立ち上がらせた。

「あっ‥‥」

リリィベルはテオドールの顔を見ようとしなかった。

1人でいる時、無闇に人に顔を見せるなと父から言われたのだった。


テオドールは穏やかな笑みを浮かべた。


「‥‥お前、どうしてここに?」

自分でもこんなに優しい声が出るのかと驚いたくらいだ。


「あ‥その‥急に胸が苦しくなって‥‥こちらで休んでおりました。」

胸をキュっと押さえてリリィベルは目を伏せた。



「‥‥‥身体はもういいのか?」



「はい‥」


「‥そうか‥では、顔を上げてくれないか?」



その言葉に、リリィベルは少し悩んだが、

スッ‥と顔を上げた。



目が合った。


時が止まった様な気がした。




「‥‥‥‥」

テオドールは、じっとリリィベルを見つめた。



やっぱり‥‥そうだ。


俺は知っている。



この、魂を‥‥‥




ハッと気付いて、リリィベルはまた頭を下げた。

「こっ・・・皇太子殿下っ・・・・。申し訳ありませんっ、ご挨拶もせずに‥」

慌ててドレスの裾を持って腰を折った。


「いいんだ。俺が勝手に来たのだから‥」


爽やかな夜風に吹かれて、長い髪が揺れる。


「‥‥名を、聞いても?」


「私は‥リリィベル•ブラックウォールと申します。」



テオドールはまたふんわりと穏やかな笑みを浮かべた。




リリィベル‥それがお前のこの世界での名前か‥‥‥



「リリィベル嬢、今まで1度も姿を見た事がないな‥

北部のブラックウォール辺境伯の?」


「はい、本来祝いに来るはずでしたが、

私の体が弱く、父が心配して、今日まで王都へ来られませんでした。どうかお許し下さい‥」


「いや、いいんだ‥こうして、今日来てくれたのだから‥」

「ありがとうございます。」



夜風がまた2人の髪を優しく撫でた。


「リリィベル嬢」

「はい、皇太子殿下‥」



テオドールは、リリィベルに向けて手を差し伸べた。


「身体が平気になったなら、頼みたい。俺とあのホールで踊ってほしい‥頼めるか?」


「そんなっ‥私などっ‥」

慌てて首を振ったリリィベルだった。

「誰かともう踊ったか?」


「いえいえいえっ‥‥‥」


どんな姿も愛おしくて、テオドールはニコリと笑った。


「じゃあ‥お前のファーストダンスを俺にくれないか?」

「殿下‥‥」


リリィベルがテオドールを見つめた。


「俺はさっき、不本意ながらファーストダンスを失ってしまってな。だが、お前のファーストダンスを貰えるなら、

全部綺麗さっぱり忘れられそうだ。どうだ?」


悪戯っぽくテオドールは笑って見せた。

そんなテオドールにリリィベルは目を泳がせた。

「‥私で、よろしいのですか‥?」


「あぁ‥私はお前と踊りたい‥」

「‥っ‥恐れ多くて‥‥私は今日っ、初めて社交場に‥」


「では、・・・・慣れろ?」


そう言ってテオドールは悪戯に笑って見せた。



その顔につられ、リリィベルもくすりと笑った。


「ふふっ‥‥光栄です。皇太子殿下‥‥」


リリィベルはテオドールの手にそっと手を置いた。

そして、ふわりと一歩テオドールに近付いた。


「っ‥‥‥」

急に近付いたリリィベルに、テオドールは頬を染めた。


「私のファーストダンスを捧げる相手が皇太子殿下だなんて私は運がいいみたいですね?」

穏やかな笑みをテオドールに向けた。



しかし、テオドールもニヤリと笑って、近付いたリリィベルの腰を抱いた。


「‥‥‥いいや?運がいいのは、どうやら俺だな。」


更に2人が体が近くなる。


「っ‥‥殿下っ‥‥」

リリィベルは頬を真っ赤に染めて俯いた。


「ダンスは、これくらいくっつくだろ?」

そう言って離そうとしなかった。



「‥急に‥ずっずるいですっ‥‥驚くではありませんかっ‥‥」

目を伏せながら、真っ赤な頬はとても愛らしかった。





〝‥‥急に‥ずっずるいよ!びっくりする!〟





あぁ‥‥‥‥やっぱりそうだな。





「お前が先に言ったんだぞ。運がいいと。

だが、私の方が運がいい‥お前と出会ったのだから。」




まだ、口にして言えないけど‥‥‥




「‥‥‥許せよ。」




俺は何度もお前に恋をする‥‥‥

良かったねテオドール!

読んで下さいありがとうございます!

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