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星と月が出会う夜 第5夜

「ふふっ、このドレス・・・本当に綺麗・・・・。」

うっとりする様にリリィベルはドレスを眺めていた。


皇太子殿下の誕生祭に着ていくドレス。

シルバー色の生地に濃紺が胸元から裾まで流れるようにグラデーションされている。

濃紺の中は金色とシルバー色で星が散りばめられたように細やかに刺繍されている。

チューブトップのマーメイドドレス、右胸には月を彷彿させる金色の花のブローチ。

腰元から淡い水色のレースがふわりと裾まで流れ、マーメイドラインを綺麗に魅せた。



とうとう明日は、誕生祭だ。


「リリィ…そろそろ休んだらどうだ?こないだもつらそうにしていただろう?」

「もう寝ます。それにお父様、大丈夫ですよ?」


苦しい…と思うけれど、リリィベルにはそれはつらく無かった。

それを伝える術はない。


「おやすみ、リリィ・・・。」

額にそっとキスをして、父はリリィベルの部屋を出て行った。


ベッドに入ったリリィベルだったが、いつまでも飾られたドレスを見ていた。


着るのがとても楽しみだった。


誰かに、見てもらいたい・・・。


ふとそう思って、不思議に思った。


一体誰に・・・?お父様?会場にいる人たちにこの綺麗なドレスを・・・?


「・・・なんだか、はしたない事を考えてしまったかしら・・・・。」

少し赤面した後、リリィベルは枕に顔を埋めた。





「テオ・・・すまないな。」

「いえ・・・務めですから・・・」

オリヴァーの言葉に素っ気なく返事をした。

姿見の前でテオドールは、衣装部屋で金色のカフスボタンを留めていた。


銀色の髪をサイドパートで分け流し、その瞳を露わにする。

濃紺のジャケットに同色のベストとパンツ。繊細な三日月がいくつも連なって流れるようにシルバーの刺繍が施されている。濃いボルドー色のタイを巻いた。



「とても素敵よ?テオ・・・・」

マーガレットは、テオドールに微笑んだ。

「有難う御座います。陛下・・・」


テオドールの表情はただ鋭かった。


「・・・・・」

そんなテオドールを二人は少し沈んだ気持ちで見ていた。


結局、使節団として来ているクレア王女を連れ、会場に入場しなければならない。

それは皇太子として避けては通ることが出来ない事実だった。


「王女は客人ですので・・・・私が連れて行かねば、私の皇太子としての立場もありません。」

冷ややかに言い、サイドの髪を撫でて後ろに流した。


「心配なさらなくても、逃げたり致しませんので。」



やはり不機嫌だった。



「あぁ、皇太子としての責務だ。それ以上でも以下でもない。任せたぞ。」

オリヴァーはそう言い残しマーガレットと2人で部屋を出た。


「・・・・・・・わかってる・・・・・・・・」


自身を映す鏡を殴ってやりたかった。それでも、王女たちがやってきてから、

ほとんど会う事なく過ごせたのは幸いだった。



あの声を聴いていると、イライラが止まらない。



恋しい声がかき消されてしまうようで・・・・。




大ホールには、沢山の貴族達が綺麗に着飾って集まっていた。

玉座についた皇帝と皇后の元へ、入場の知らせが告げられる。



その知らせは珍しい人物で人々の目を引いた。

「ダニエル・ブラックウォール伯爵、ご息女のリリィベル・ブラックウォール嬢の入場です。」


「まぁ・・・珍しいわ。ブラックウォール辺境伯がいらっしゃるなんて・・・」

貴族たちが物珍しい目で見た。だがすぐに、初めて社交に出た娘の存在が輝いた。


父にエスコートされ降りてくるその姿はまさに女神の様に美しかった。マーメイドドレスの彼女の身体は凹凸があり魅力を倍増させていた。

男も女も皆その姿に釘付けだった。今まで姿を見せたことのないリリィベル。


その視線を受け流し、優雅に舞い降りる。


そして皇帝と皇后の前に現れた。


「皇帝陛下、皇后陛下、ご挨拶申し上げます。」

「あぁ、よく来てくれた。北部からは遠かったであろうに…」

「いえ、皇太子殿下の誕生祭で御座います。足を運べなかった無礼をお許しください。」

「気にするな。以前来てくれた時も娘が体調を崩したのだったな。」


「皇帝陛下、皇后陛下…リリィベル・ブラックウォールで御座います。お目に掛かれて光栄で御座います。」

綺麗で優雅なカーテシーをして見せた。髪飾りでハーフアップに、ふんわり巻かれた髪は些細な仕草でふわりと揺れる。


「まぁ、とても綺麗なお嬢さんだこと・・・」

うっとりとマーガレットは感心していた。

「有難う御座います。皇后陛下。皇后陛下の美しさには及びません。」

ダニエルはすっとお辞儀をした。隣で少し俯きリリィベルは目を細め微笑んでいる。


「せっかく親子共に来てくれたのだ、どうか今宵は楽しんで行ってくれ。」

珍しい来客にオリヴァーは機嫌が良かった。北部を治める強き要となっているブラックウォール家。



「では・・・。失礼致します。」

2人は腰を折り、両陛下たちの前から下がった。




何人かの貴族が続々と入場してくる。



そして、最後に・・・・・

「テオドール・アレキサンドライト皇太子殿下、並びにパナラウラ王国、クレア・パナラウラ王女様のご入場で御座います。」


従者の声に貴族達は一斉に扉に目を向ける。


テオドールと、クレア王女が、皇族の扉から現れる。

口を結んだテオドールと、満足気を隠さない堂々とした笑みを浮かべクレア王女はエスコートされ降りてきた。


拍手が鳴りやまぬ中、そっと、テオドールはオリヴァーの前に立った。

そして隣の王女を見た。

「では、クレア王女、どうぞ今宵の宴をお楽しみください。」

そう言って、王女から一歩離れたのだった。


「殿下?主役がファーストダンスを踊って宴が始まるのでは?」

無邪気にそう言ったが、テオドールにはそれが歪な笑みに見えていた。


「いえ、皇帝陛下のお言葉を頂戴してから宴は始まるのです。私のダンスは始まりの合図では御座いません。」

スッと少しだけ頭を下げ、その場を去った。


「ちぇっ・・・・」

頬を膨らませた王女だった。けれどその瞳はまだ諦めていなかった。



皇帝オリヴァーがグラスを掲げる。


「皆今年も集まってくれて感謝する。我が帝国の皇太子、テオドールの16歳の誕生日を祝ってくれ。」


拍手と歓声が響く。

オリヴァーの隣で、テオドールはまっすぐ前を見ていた。


こうして誕生祭は始まる。例年通りテオドールは椅子に腰かけ、動こうとしない。

頬杖を付き、ホールの蠢く人達を眺めていた。


中央では、皇帝と皇后が自分の代わりに目を引くように踊っていてくれていた。


だが、そんな時・・・。

「皇太子殿下っ、踊って下さいませんか?」

王女はテオドールの前に現れた。

客人である王女の誘いは、断れない。



「・・・・・・・」

無言で王女を見たテオドールだったが、

その重い腰を上げた。


彼女の手を取り歩き出す。




《別に・・・ファーストダンスなんて、特別じゃない・・・・。》



王女をホールの中心までエスコートして行った。



《俺は・・・・》



王女と向き合った。



《俺は・・・・》






《俺は俺のつがいに会いたいだけ》



音楽が始まる瞬間、自身の目線の先に星が輝いて見えた。

「!!!!!」


胸がドクンと鳴った。


音楽は鳴りダンスは始まる。リードすれば勝手についてくる。相手を見ずとも踊れた。視界にその頭さえ入れば。

ダンスなんてどうでもいい。踊り終えてしまえば・・・・・。


音楽がこんなに長いとは思わなかった。



目線の先、グラスを持って隣の男性と話している姿が見える。

その姿は眩しくて、とても綺麗だった。


こんなに綺麗な存在を・・・・。


「・・・・・っ・」


知らない・・・・・?


足は勝手に動く、一度も王女の目を見る事はなかった。

ただ、その額や頭のてっぺんを見ている様に



まわって動くその一瞬一瞬で・・・・その彼女を見た。




「?」



横顔しか見えなかった彼女は、ついに俺の方を見た。


目が合った。


その大きく開かれた瞳は、濃紺の瞳をしていた。

瞳の奥に星が輝いているように見えた。

可愛い唇‥



今度はドクドクと胸が高鳴った。





・・・・知っている・・・・・。




俺は知っている・・・・・・。




胸がギュウギュウに傷んだ。



あぁ・・・早く終わってくれ・・・・。頼む・・・・・。


その場から居なくならないで・・・・。


その瞳を俺から逸らさないで・・・・。



ジャン・・・・と音楽は終わった。


「王女、私はこれで失礼致します。」

王女を見ずに、その手を離して、目線の先を目指し人混みの中に消えてた。


だが、そこに彼女はいない。この辺だったはずなのに‥



「あれっ・・・?どこへ・・・・・?」


キョロキョロと辺りを見渡したが、見つからない。一緒にいた男性も。胸が苦しい。捕まえなければ‥‥


見渡した先、庭へと続く扉が開いていた。


「・・・・・・・」





導かれるように、庭へと足を進めた。




そして、ホールに残された王女は俯いたままその場に立っていた。次のダンスが始まり、人の気配に押されて、端の方へ流れ着く。



「なんで・・一度も私を見てくれなかったの・・・?」


やっとだー

読んで下さりありがとうございます。

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