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星と月が出会う夜 第1夜


「殿下、こちらの書類もお願いします。」

「なぁ、フランク」

「はい殿下」


ここは皇太子の執務室。

テオドールが皇太子となり一か月が過ぎた。


「俺の肩、ちょっと揉まない?」


「‥終わりましたらメイドにマッサージをする様伝えましょう」


「やだっ!」

「もぉ!何故私なのですか!いつもいつも!」

「女にされんのは嫌なんだ!」


「そんなんだから未だに婚約者が‥‥」

「うるさい、俺はまだ婚約者はいらん!それは陛下も了承済みだ!」


「何故ですか殿下‥殿下ももうすぐ16になるのですよ?!

それなのに殿下ときたら!!宴ではダンスも踊らない!

令嬢達を悉く避ける!逃げる!私に押し付ける!

はっきり言って殿下はもう男が好きなのだの噂されてるくらいですよ?!」


「‥‥‥ふんっ」


テオドールは大いに不貞腐れた。そんなテオドールを見てフランクが肩を落としている。


「もうすぐ殿下の誕生祭‥今回は隣国のパラナウラ王国の使節団が来ます。クレア王女様もです。任されているでしょう?陛下から‥」


不貞腐れているテオドールを横目で見るフランク。


「皇太子なのですから、そーゆう事も今後増えますよ。

パラナウラ王国は大きな国ですし、皇帝陛下が代わったのを警戒し色々探りを入れてくる事でしょう‥‥そして、この帝国と縁を結ぶために恐らく殿下とクレア王女様と結婚させ、帝国と同盟条約を結びたいか‥はたまた、帝国と戦争して帝国を飲み込もうとするか‥


なんにせよ、殿下のもてなし一つで話が変わるのです。

クレア王女様とは、絶対に踊らなければなりませんよ?

分かってます?」


そう長々と話しながら、フランクは書類を纏めていく。

そしてあさっての方向を向いているテオドールを見た。


「結局‥‥意志なんかねぇじゃねぇか‥」


「はい?」



「味方なら結婚してそれを確固させる、ダメなら時期を見て戦争して国の争奪戦‥理解できねー事ばっかだな‥」


「理解出来ないと?殿下は王子教育では神童とまで言われるほど頭は良かったじゃないですか!口は悪いけど!」

「ふんっ・・・・」


それは元々日本の世界でここよりもレベルの高い教育を学校で受けていたからだ。なんでもやれば理解出来るし、神童なんて大袈裟な表現だった。


「そーじゃねぇよ‥‥御国のために、結婚しろって脅されてる王女様も、それを避けたい皇太子も、結局その身の振り方で、国が燃えちまうかもしんねーだろ‥それに、皇帝陛下から王女との結婚なんて一言も話題にすらなってねーよ。

お前の勘違いじゃねぇの?!ただ世代交代したからちょっと寄ってくぜくらいのノリじゃねーのか?」


「殿下‥どこに同盟国以外の国が気軽に寄っていくんです‥ましてや使節団と王女が‥バカですか。神童の言葉返上して下さい。」

はぁーっとため息をついたフランクだった。



「それとも、殿下には理想の女性像があるのですか?

夢見がちなのですか?」


呆れた口調で言われてしまった。けれど、

その言葉に、テオドールはひどく気分が良くなった。



「あぁ‥‥‥いるよ‥理想の女性が‥‥‥‥」


フランクには聞こえないように、そっと小さく呟いた。


テオドールは執務室の窓から空を見つめ、その言葉を空へ投げた。










〝空は繋がっている‥そう、まだ見ぬ彼女のいる空と〟


「お父様、このドレスどう?綺麗?」

「・・・リリィ、本当に今年は誕生祭に行くのか?」

「お父様!もぅ、約束してくれたではありませんか!

一度出てから発作を起こしてからずーっと、王都に行かせてくれませんでした!私はもう大丈夫なのに!!あれから一度も発作起こしてませんっ」


ぷぅっと頬を膨らまして、父を顔を見つめる。

リリィベル・ブラックウォール


彼女も今年16歳となった。成長した彼女は

それはそれは美しく成長を遂げていた。

金色の真っ直ぐサラサラな髪は些細な風に揺れ靡く。

その一本一本までも美しかった。大きな瞳に長いまつ毛。


小さな形の良い唇。誰もが羨むバランスの良さ。


神の与えし美貌、女神が天から舞い降りたのだと、

その地で知らぬ者は居なかった。


「だがっ‥こないだ少し調子悪そうにしてただろ?」


「うっ‥ちょっとですぅっ‥大丈夫ですってばぁ!」

「前皇帝陛下が亡くなられた頃、お前熱が出たじゃないか‥」


「熱ぐらい‥生きてれば誰だって出しますぅっ。

ねぇお父様、お願い。今度こそ私の願いを叶えて下さい。

良い子にしますから‥」


娘は父の弱点を知っている。


瞳をうるうるさせて、可哀想な声でせがむのだった。


「はぁ‥‥‥‥‥ちょっとでも具合悪くしたら、もう2度と帝都には行かせないからな!」

「うふっお父様大好きっ!」


ウサギが跳ねる様に飛び込んできた娘を受け止める父ダニエル。だがその心配は隠せない。


歳を重ねる毎に、発作は少なくなっていった。

けれど、時々熱が出ては倒れる。昔程長くはないものの、1日や、半日になる程度に、娘も体力がついたのだろうか‥


気分をよくした彼女は再び姿見の前に立ち、ドレスを身体に当てニコニコしながらドレスを選んでいた。


今年で16歳になった。これは初めての社交界デビュー。

この領土で過ごしていた彼女には、眩くそして、醜い世界に足を踏み入れる事となる。


父親から見ても、娘はとても美人だった。

だから余計に心配なのだ…。下手に目をつけられてしまうのを恐れている。


「・・・・リリィ、どのドレスもお前にとてもよく似合うよ。」


諦めがちにダニエルは呟いた。




誕生祭まであと2週間、アレキサンドライトの帝国の開城された門の前には、正装した皇太子は姿勢正しく立っていた。


「パナラウラ国、クレア・パラナウラでございます。アレキサンドライト帝国皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」


クレア・パナラウラ

綺麗な黒髪の女性だった。腰まである長い髪。桜色の瞳をしていた。華奢な割に凹凸ある体。顔も体も男にとっては魅力的な人だった。



「・・・・テオドール・アレキサンドライトです。我が国へようこそ。クレア王女。

滞在中はごゆるりとお過ごしできるよう、心を尽くしおもてなしさせていただきます。」


皇太子の微笑みは、テオドールにとってもはや装備であり技であった。


「有難う御座います。テオドール皇太子殿下。もうすぐテオドール皇太子殿下の御誕生祭。

心からお祝い申し上げます。」

「感謝いたします。クレア王女・・・。では、お部屋へご案内いたします。

フランク、騎士と共にご案内しろ。」

すぐ後ろで控えているフランクへ声をかけた。


「お待ちください。皇太子殿下・・・・。」


クレアが声を上げた。


「?どうされました?王女。」

もう難癖つける気かと、テオドールの本性は舌打ちしたい気分だった。

だが、現在皇太子装備中なのだ。ポーカーフェイス装備。


「あの・・・殿下?お忙しいですか・・・?」

王女は頬を染めていじらし気に俯いた。

「あぁ・・・・まぁ・・・・」


何の感情もなく呟いてしまったテオドールにフランクは肘鉄を食らわした。


「っ・・・王女・・・?どうされました?」

額に一筋の血管が浮き出たが、何度もこの先出るだろう。装備は簡単に外さない。


「あの・・・殿下に、えっ・・・エスコートして頂ければ・・・・とても嬉しいのですが・・・・。」



はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー。



「気が付きませんで、女性にそのような事を言わせてしまうとは申し訳ない。

私で良ければ、ぜひお部屋までご案内させて頂きます。こちらへ・・・・。」


スッとテオドールは、仕方ないけど腕を差し出した。服きてるんだ。


俺から触れてる訳じゃねぇし。

もういいや。


「はい、殿下・・・・」

クレア王女は嬉しそうな笑みを浮かべて、テオドールの腕に控え目に手を回した。




そしてクレア王女様とずらずらと使節団を引き連れて城に入っていった。


その光景を、皇帝陛下と皇后陛下は執務室の中から見ていたのだった。



「では、夕食の時にまたお会いしましょう。ごゆっくりお過ごしください。」

「はい。殿下。有難う御座いました。また・・・・」

礼をして、テオドールは王女の部屋を出た。


「皇太子殿下。」

テオドールを呼んだのは、使節団の代表者ブルックス公爵という人物だ。


「フランク、他の使節団の方々を部屋にご案内しろ。」

後ろに控えているフランクにすっと手をやんわりと振り、下がれと合図した。

「はい、皇太子殿下。」


フランクが頭を下げ、他の使節団の者を連れて去っていく。


「ケイン・ブルックスと申します。アレキサンドライトの皇太子殿下にお会いできて光栄です。

「ブルックス公爵、私もそなたらを歓迎している。どうぞ、ゆるりと休んでくれ。」


「お気遣いありがとうございます。殿下。クレア王女様は大層皇太子殿下を気に入られたご様子で。」

ニヤリと笑ったブルックス公爵だった。



あぁ・・・そういう顔は見たことあるよ。欲のある目だからな。



「・・・・それは、とても光栄だな。」

静かに笑みを返した。


「此度の殿下の誕生祭、ぜひとも、クレア王女様をパートナーとして頂けますか?」


「・・・それは、そなたの意思か?、クレア王女の意見か?そなたはもう聞いたのか?

それとも、パナラウラ国の意思か?」


「それは、皆同じでございます。我々は、皇太子殿下と良い関係を築きたいと願っております。」

「そうか、誕生祭までに検討しておこう。あぁ、クレア王女の意思もしっかり聞いておいてくれ。

では、私はこの辺で失礼する。皇帝陛下へ使節団が到着した事を報告せねばならんのでな。」


「では、夕食時、お会いできるのを楽しみにしております。皇太子殿下。」


「あぁ。ではな。」


スッと目を細め挨拶し、ブルックス公爵から遠ざかる。




あぁ・・・・うぜぇな。




テオドールの足音には苛立ちが漏れていたかもしれない。

その足で、オリヴァーの元へ向かった。


扉の前にいる従者に訪問を伝えた。扉の中から返事が返ってくる。


「陛下、失礼いたします。」

「あぁ、待っていたぞ。ご苦労だった。」

「はい、陛下。」

「テオ、お疲れ様でしたね。」


執務室には、皇后のマーガレットも居た。優雅に紅茶を飲んでいる。


「皇后陛下、おいででしたか。」

「立派でしたね。」

にこやかに笑みを浮かべたマーガレット。

「有難う御座います。陛下。」

「もぉ、3人しかいないのよ?」

「はい、母上・・・。」


そんな親子のやり取りもそこまでだった。


「テオドール。」

「はい」

「クレア王女はどうだった?」

「はい?」

「なかなかの美人だったな。歳はお前より一つ下だと聞いた。冬には15歳になるそうだ。」

「はぁ・・・・へぇ・・・・。」


親の前に、装備は少し崩れかけていた。


「お前がエスコートする姿を私は初めて見たぞ。」

「見て・・・いた?」


テオドールはそっと窓を見た。そして両親二人を見た。にっこり笑った二人だった。

「なかなかいいものね!オリヴァー様っ?息子が女の子をエスコートしている姿って!」

「あぁ・・・それにとても絵になっていたな!」


興奮気味の二人だった。ニコニコきゃっきゃと話し合う仲の良いただの夫婦。



はぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー。




「皇帝陛下!皇后陛下?」

テオドールは身を乗り出して両親二人ににっこりと笑みを向けた。

「「っ・・・・」」


2人は声を引っ込めた。


「陛下、私は陛下のご命令に従い、任を全うしただけでございます。」

「あぁ、わかっている。とても立派に勤めてくれた。見ていて感動していたぞ!」

必死にオリヴァーが労ってくれる。

「そっそうよ!あんな立派なエスコートが出来る男性に育ってくれて、この母はとっても嬉しいわ?」

「ですよね?有難う御座います。」


「お前も今年で16歳だ。そろそろ、女性をエスコートしダンスを踊って、お前の素晴らしさを知らしめたいのだが・・・?」

「私は、執務も、剣術も、外見も!すべてにおいて、陛下の血筋通り素晴らしいと自負しておりますが。

なにか?」


睨むようにオリヴァーを見た。


「・・・・テオ・・・・・」

呆れたオリヴァーだった。だが、隣では母はにっこりしている。母は父そっくりのこの顔に弱いのだ。

もちろん母として。


「だがな。テオドール。」

そんなテオドールに、とうとうオリヴァーは真剣に告げた。

「今回はパナラウラ国がお前の誕生祭にやってきたのだ。それは次期皇帝であるお前を見定めるも同様。

そして、我が帝国とパナラウラ国の未来もかかっている。私は戦争を恐れているのではない。

帝国民が安全に暮らしていける世を作りたいのだ。それはお前も知っているだろう。」



「・・・・もちろんでございます。」

その言葉には俯いた。何を言いたいのかわかるからだ。


「お前にその気がないのは仕方ないが、この国で婚約者を作らなかったお前がいるのだ。

年頃の王女とお前が婚姻を結べば、両国共に、利はあると考えている。」


「陛下!・・・・それは言わない約束ではありませんかっ・・・・」


「そう、言わない約束だった。だが、私は言ったぞ、いずれは誰かと踊る日は訪れると。

9年間、目を瞑ったんだ。婚姻は考えずともせめて両国が争う事のないよう、穏便に事を運んでくれ。

両国が穏便にこの機会を過ごせるか、お前にかかっている。お前は私と違って、この国唯一の皇太子。

2番目が控えている存在ではない。お前しかおらぬ。私の頃は継承争いもあった。

だが、前皇帝陛下が亡くなり、私が皇帝となり、お前が皇太子となった。

私も尽力を尽くすが、お前の振舞い一つで変わることもあるのだ。


しかと、心得よ・・・・。夕食時は我々も一緒なのだ。お前に不利になる事は避けたいが。


今年の誕生祭は、その役目を果たすのだ。わかったな。」



前皇帝を思わせるような、オリヴァー皇帝陛下の言葉だった。


これは皇太子として、避けては通れない・・・・。




俺にどんな願いがあろうとも・・・・。




「はい・・・。皇帝陛下・・・・。」


テオドールは、オリヴァーの前に跪いた。皇太子として・・・・。




その頃クレア王女は連れてきたメイドに髪を梳いてもらっていた。

「皇太子殿下、とっても素敵だったわぁ・・・・。

あんな綺麗な顔をした男性もいるのね。それにあの髪!皇后陛下と同じ銀色の髪よ?


あぁ・・・・なんて素敵なの・・・・。」


ぽぉっと頬を染めて呟いていた。

「王女様!まさか皇太子殿下に恋をっ?」


ひゃっっと身が跳ねるクレア王女。


「あぁ・・・これが恋なの?皇太子様の顔が頭から離れないのっ

胸は今でも高鳴っているわ?早くまたお会いしたいわ!」



「はぁ・・・・テオドール皇太子殿下・・・・・。


私のこと、可愛いと思ってくれたかしら?」


「王女様はとても可愛くて美しいのですっ!皇太子殿下もきっと王女様に好意を抱いているはずですよ」


「そうかしらっ?ふふっそうね!みんな私の事好きになってくれるものっ」


そう言った王女は無邪気にほほ笑んだ。


さて、そろそろ・・・・。

読んで下さり有難う御座います。

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