最初の契約
皇太子となった日、テオドールは皇帝陛下オリヴァーに密かに呼ばれた。
「テオドール、皇太子となったお前に、魔術師について伝える時がきた。」
「はい‥陛下‥」
皇帝陛下の寝室に飾られている一枚の絵画
大人の目線先にあるその絵画の右側一角をずらした。
すると、ずれたその一角に鍵穴が見える。
その鍵が開くと、壁に扉が現れた。
おぉ、ファンタジぃー‥
「これは私が持っていたものだ。」
そう言ってオリヴァーはテオドールにゴールドの鍵を渡した。
オリヴァーは前皇帝陛下の鍵を使い鍵を開ける。
「この皇帝の鍵は私に何かあった時、お前に渡るものだ。
場所は皇帝の執務室の2つの絵画を平行に並べるのだ。
あれはスライドさせることができる。そうすると、
左の絵画の裏に小さな隠し扉があるから、そこを開けるんだ。」
「はい‥」
えっ、待って?
寝室から出入りしてくんの?
オリヴァーの鍵で開けた扉がゆっくりとひらく、
中は薄暗く地下へと階段が続いていた。
蝋燭の火を灯し2人で階段を降りていく。
「あの‥陛下?」
「どうした?」
「魔術師達は、陛下の寝室に‥」
「あぁ、安心しろ、向こうから寝室に出てくることはない。あくまで、俺達が魔術師達の所へ降りる為のものだ。
ロスウェルが急に寝室に出たら、燃やしてしまいたいだろう?」
涼しい顔でさらりと言った。
あ、よかった‥
「あいつ、陛下にはちゃんとした合図をしてくるが、
私の所へは急にやってくる‥今後は急に現れたらあの髪を引きちぎって燃やすと警告しておこう。」
「合図とは?」
「あぁ、私の指に他の者には見えぬ指輪があってな。
これだけは譲り受ける事になる。その指輪の宝石が光るのだ。」
「へぇ‥」
「皇太子には、ブレスレットだ。お前に渡す予定だ。
今ロスウェル達が作っているはずだ。私の指輪も少し大きいのでな‥調整しに行くのだ。もちろんブレスレットも目には見えぬが、契約を交わす我々には、しっかりとそこに存在する。まぁ、私が付けてる間、ブレスレットの宝石は光った事などないがな‥。」
はぁ、とため息混じりに話した。
「魔術師がこちらに来る際は赤く光る。なので、人払いが済んだら宝石を指で叩くのだ。一回は待て、二回は良し。
3回は私達が呼ぶ時だ。そうすると奴らに伝わる。他の者にはただ腕や指を叩いているようにしか見えない。」
犬呼ぶみたいに話すな‥‥
「そうですか‥」
地下奥深くに扉が見えた。
「‥‥‥」
ここも無駄に扉たけぇな‥‥
オリヴァーは扉に手のひらを翳した。
そうすると魔術紋様が現れ、扉が音を立てて開かれる。
え?
それここにくる時もそーゆうので行けたらよくない?
「‥‥‥‥‥‥」
あ、でもそうすると俺が入れないか、
鍵大事だな。
「皇帝陛下、皇太子殿下」
ロスウェルが畏まって頭を下げて出迎えた。
「‥‥あ、あぁ‥‥」
ちょっと気持ち悪かった。
「陛下、指輪の調整のため、拝借します。
あ、皇太子殿下は、ブレスレット、出来上がってます。」
「それもそうだが、ロスウェル、皆を集めてくれ」
「承知しました。」
「‥‥‥‥‥」
どうしたロスウェル!!
いつもの感じはどこへ行った!
ロスウェルは癖の指先ではなく、両手をパンパンと叩いた。
その瞬間に、同じヘビーブルー色の髪の者達が5人集まった。その中にハリーもいる。
「陛下、呼びました。これで全員です。」
「あぁ、ありがとう‥」
オリヴァーはロスウェルを不審な目で見ている。
「さぁ、お前達、自己紹介だ。」
左から
「ピアーです。」
「ドラです。」
「フルーです。」
「リコーです。」
「ハリーです。」
ハリー以外の
なんか足りねえ?というこのモヤモヤ感。
「あぁ、テオドール・アレキサンドライトだ。」
モヤ感を胸にしまってテオドールは笑って挨拶を返した。
ピアはまだ10歳くらいの女の子だった。髪は肩ぐらいの長さで、好奇心旺盛そうな印象。
ドラはハリーとおなじくらいか?というそう変わらぬ元気っ子の印象だ。
フルーは少し鋭い目つきをしていてテオドールより年上で、寡黙な雰囲気だ。
リコーはフルーと同じ年頃のような女性で冷静さと知的な雰囲気を持っている。
そして、ハリーは変わらず短髪の生意気そうな顔そのままだ。
そして、ロスウェルだが‥なんだこの違和感は‥
「皇太子殿下!これあげますっ!」
元気いいピアがルンルンにブレスレットをテオドールに差し出した。
「あぁ、ありがとう。」
渡されたブレスレットは大きな輪で、テオドールの手を簡単にすり抜ける程だ。左手首に通すとブレスレットは手首にちょうど良く調整された大きさとなった。
「へぇー」
「かくほー!!!!」
元気よくピアが叫んだ。
逮捕か!
「こら、ピア皇太子殿下だぞ?」
目を伏せて慎ましげにロスウェルがそう言った。
「へへへっごめんなさいー」
にっこり笑ったピアだった。
「殿下」
「あ、あぁ‥」
ロスウェルがすっとテオドールに近づいてきた。
「契約のため、その尊き血を頂戴しても?」
「は?あ、あぁ‥あれだろ、ちくっと針刺すやつ。」
「殿下、申し上げにくいですが、最初の契約は‥」
リコーがそれを持ってきた。
「‥‥‥あぁっ!?」
テオドールは本性を隠せなかった。
「テオ、気持ちはわかる‥」
オリヴァーが静かに現実から目を逸らした。
リコーが持ってきたそれは直径5㎝程の丸いもの。
剣山の様に針がびっしり尖っていた。
いや、あれはもう剣山だ‥‥。
俺の手に風穴開けようってか!
「おまっ‥お前どんだけ‥」
「あはっ、申し上げにくいと言ったではありませんか‥
これで最初の契約を交わさなければ‥
今後殿下のお役に立てません‥どうか、刺されてください。」
ぺこっとお辞儀をしたロスウェルだった。
魔術師の名前、分かっていただけたでしょうか?
読んで下さり、ありがとうございます。




