ノッておくのが正解
「さて、貰うもの貰いましたし、では計画通りに。マーガレット様、テオドール王子様、
次があるかわかりませんが。お元気で。」
ニコリと笑顔を浮かべてロスウェルは手をひらひらと振った。
「私に挨拶は?!」
仁王立ちした怒り顔の父様
「皇太子殿下、悪魔みたい!」
ニカっと笑って言い放った。
「このくそっ‥」
慌ててとっ捕まえようとしたオリヴァーをひらりと交わし
ロスウェルはまた指をパチンと鳴らした。
「あぁ、癖です。」
「いらん!そんな説明!」
ロスウェルの姿が一瞬で消える。父様が肩で息をしながら悔しそうに顔を歪ませていた。
皇太子に向かってこんな無作法をするなんて‥
いつか俺もあんな奴の‥‥
「父様、彼は‥‥」
ぽかんとするしかなかった。
「あいつは、実は幼い頃から知っている。その時は、魔術師とは知らなかったがな‥
あいつは城から出られないが、ちょこちょこ姿を現しては
生意気な口を叩くのだ‥」
ふぅ、と息を吐いて、父様はソファーにドサッと座り込んだ。
「ふふっ、面白い方ね!」
楽しんでいたのは母様だけだった。
「マーガレット‥そんな事を言ってはダメだ。あいつは変態だ。」
そう言って隣に腰を下ろした母様の腰を抱いてその肩に頭を置いた。
「けれど、私達の為に尽力してくださったのでしょ?
オリヴァー様だからあのように振る舞われ、気を許していらっしゃるのよ。」
「まぁ‥確かにあやつらは外へは出られぬし‥唯一の相手は私ぐらいなものだしな‥」
「信頼なさっておいでなのですね、私あの方、とても気に入りました。愉快な方だわ!もっと会えると嬉しいのに。」
「マーガレット‥そんな事言ったら後悔するぞ、
あいつは礼儀を知らんのだ。ところ構わず城の中なら現れてくるぞ‥」
「ふふふっ、これからも縁がありそうね。
私は本来なら誠の姿を見てはいけないのに、得した気分だわ?」
クスクスとマーガレットは笑っている。
その笑顔に、絆されたオリヴァーは穏やかに笑みを浮かべた。
俺ちっとも安心出来ない。
まるで、アレクシスの様な野郎だった。
アレクシスが増えた、最悪だ‥
ドサッと脱力して、ソファーに身体を沈ませた。
とにかく、ロスウェルがアリアナの偽の死体を作り、1ヶ月後には葬儀。
早急ではあるが、その後は俺達の存在が明るみとなり、神殿でも親子鑑定と、
認められたらお披露目式と、母様との婚約発表。
そして、結婚式が行われる予定だ。
無事に済めばいいけど‥大丈夫かな‥
時期を少しでも間違えれば、騒動になりかねない。
父様を信じて、俺も勉強しなければ‥
お披露目式で、格好悪い姿は見せたくない。
それから俺はこの一室で父様と母様に礼儀作法と、文字を教わるのだった。
1ヶ月はあっという間だ。
今日は、この世界のお金についての授業だ。
「‥‥‥これは」
「これはこの国のお金よ?見たことあるでしょ?」
「でも、お店でも母様がお勘定してたし‥よくわかっていません‥」
「学べば簡単よ!まずこれが‥」
あれ?
この小さなコインは‥
そのコインを手に取った。
「これは1ビートよ」
その次のコインを手に取った。
「それは5ビート。」
次々とコインを手に取る。
「10ビート、50ビート、100ビート、500ビート」
えっ、なんでこんなにビートかましてんの?
ノってんの?
「‥‥‥なんか、わかりやすいです‥‥」
ほぼ日本円と変わんない‥。なにこの都合のいい世界。
「あとはそうね、紙のお金が‥」
3種類の紙幣が出てきた。
想像つくな‥
1000、5000、10000ビートだろどうせ‥
「この紙のお金が、1000‥」
「ビートですか?」
「いいえ?1000ロック」
「あ?」
「1500ロックビートなら1000ロックと500ビートを一緒に渡して?どう?理解出来そう?」
「‥‥あ、はい‥」
「100ビートを5個で500ビートになるわよ!」
「じゃあ、他のビートそうですね?」
「そう!1ビート10個で10ビート、5個で5ビート。
5ビート2つで10ビート。10ビート5個で50ビート。
50ビート2個で100ビート、100ビート10個で1000ロックになるわ?紙の1000ロックが無くても、100ビート10個で1000ロックになるわよ!」
「あぁ、はい‥」
「じゃあ1750ロックビート!」
さささっ‥
「‥まぁ、テオドール‥すごいわ!」
そりゃそんなロックなビートならね‥‥
縦乗りするべき?
乾いた笑みを浮かべた。
俺に優しい世界だな‥‥ロックなんか聞かなかったけど、
こんだけビート踏まれたらノれるよな。
「テオドールは賢いわね。オリヴァー様に似たのね?
じゃあお金は大丈夫そうだし‥次は文字も覚えたし、
絵本読んで見ましょう。文字をちゃんと覚えているか試験よ。」
賢い?息子にテンションぶち上がるマーガレットは楽しそうに絵本を選び始めた。
‥‥母様ごめんなさい。
大丈夫です。
watashiniyasashiisekaiです。
俺、この世界で優秀に生きられそうです。
ありがとう。
「この調子なら大丈夫そうね!テオは運動神経もいいし、
剣捌きも上手だし、父様とても驚いていたわよ?」
まぁ、一応剣道やってたんで‥
ちょっと重いけど、竹刀が剣に変わっただけだし、
足捌きだけは、ちょっと違うけど‥
「まだまだ。これからです。頑張ります。」
「テオドールは努力家ね。母様誇らしいわ」
「ありがとう母様!」
イテテテテテ‥‥‥
ロックなビート踏みすぎてちょっと混乱してきた。




