一緒に行くよ?
執務を終えてテオドールは、リリィベルの部屋へ真っ直ぐ向かった。
「リリィ、戻ったぞ」
「テオ!」
扉を開けると、笑顔のリリィベルが迎えてくれた。
お互い駆け寄りぎゅっと抱きしめ合う。
にこっと笑ってテオドールは言う。
「ほら、いつものくれよ」
トントンと自分の頬を叩いた。
「ふふっ」
リリィベルはテオドールの頬に口付けた。
「嬉しいよ俺の女神。」
「きゃあっ」
いつもよりも甘く優しいテオドール。
リリィベルを抱き上げて頬に口づけを返した。
「テオ、お疲れ様です。」
「お前を見れば疲れも忘れる。」
「嬉しいです。陛下達はご夕食はご一緒かしら?」
「あぁ、おそらくな。」
「良かった‥。」
「なんだ?俺と2人じゃ寂しいのか?」
「そんなんじゃありませんっ、4人でお食事すると楽しいでしょう?」
「そうだな。家族はみんなで食事をするもんだ。」
「ふふっ、テオのそういう所大好きです。」
そう言ってリリィベルはテオドールの頬にまた口付けた。
普段となんら変わりはないように見える。やはり心細い思いを朝に感じているのだろうか?
「呼びに来るまで話をしておきたい事があるんだ。」
「なんですか?」
リリィベルを抱えてソファーに座った。
「今回の件で没落した貴族が多いから、領主が不在なところがある。領民達が不安にならないよう
早くに次の領主を決めるのに視察に行くんだ。」
そう言うと、リリィベルの顔は一気に曇った。
「・・・・それは・・・しばらく城を開ける・・・と・・・?」
テオドールはリリィベルの手をぎゅっと握りしめて微笑んだ。
「あぁ、でもお前も一緒にだ。」
「・・・・・ほっ・・本当ですか?・・・・。」
ほっとしたようにリリィベルの顔は緩んだ。
「・・・・・・・・・」
リリィベルの様子はやはりいつもと違う。
明らかに恐怖の色が瞳に滲んだ。
「初めて二人で長い間城明けることになる。明日はベリーたちと荷造りをしてくれ。
あまり持っても歩けないし、道中の天候も分からないから、足りない物は現地でも買ってもいい。いいな?」
「はいっ・・・。」
テオドールの首にぎゅっと抱き着いてリリィベルは喜びを表した。
「リリィ?嬉しいか?ある意味旅行だな?貴族達の家を転々とするが、俺がずっと一緒に居るから、安心しろ。」
「はいっ・・・はいっ・・・・。」
満面の笑みで返事を返した。
その様子にほっとしたテオドールだった。
「どれくらいかかりそうですか?お妃教育は・・・・。」
「あぁ、教育係と話をしておいた。3週間は空けても問題なさそうだ。
お前が優秀で、こうして長く旅が出来そうだ。俺も嬉しい・・・。」
リリィベルに鼻先を寄せて、ニコリと笑って見せた。
「それに、今回は爵位を与えるのを見極めるものであるから、お前も、しっかり見ていてくれ?」
「まぁ・・・大変なお仕事ですね?」
「あぁ、期待しているぞ?私の妃・・・。」
そう言って額に口付けた。
その口付けを嬉しそうに受け入れたリリィベル。
「嬉しいです。テオ・・・・とっても嬉しいっ・・・ずっと一緒に居られるのですね。」
「あぁ・・・3週間みっちり一緒だぞ?でもこれは仕事だ。浮かれてばかりもいられない・・・。」
そう言いつつも、テオドールはふっと笑った。
「でも・・・やっぱり、お前と旅行をするような気分で嬉しいな・・・。
しっかり仕事をして、色々見て回ろうな?」
「はいっ」
今後の日程や、泊まる事になる貴族の屋敷など、地図を広げて話しているで時間はあっという間に夕食の時となった。
皇族のダイニングルームで、4人で食事を共にした。
「リリィ。テオと視察に行くそうね?」
「はい、お義母様!」
「ふふっあなたの教育の成果ね。本当に素晴らしいわ?
・・・結婚式、早めようかしら?」
そう言ってマーガレットは笑った。
「お義母様ったらっ・・・私は、テオ様とお会いした夏が良いのです。
お勉強は楽しいです。いつかテオ様にお役に立つためのものですから。」
「ふふふっ、素敵な結婚式をしましょうね。」
「はいっ・・・ふふっ」
笑顔で話しているリリィベルとマーガレットを皇帝は気にしてみていた。
テオドールが言っていたようにリリィベルの様子を伺っていた。
どこか普段と違うところは?今は楽しそうだ。
誰かといる時は平気なのか・・・?
「リリィ?今回の視察は、貴族達をその目でしっかりと見てくるんだよ?
お前たちの為になる者に爵位を与えたいからな。」
「はい、お義父様。お世話になるお屋敷が候補であると、先程テオ様から聞きました。」
「あぁ、皆テオが直々に選んだ候補たちだ。テオの目に狂いはないと思うが、
万が一という事もある。お前もテオドールも、その容姿や地位が人の欲を出させてしまう事もあるから、
テオから決して離れないようにな?」
その言葉にリリィベルの笑顔は、少し陰りが出来た。
「・もっ・・もちろんです・・・。片時も、離れません。」
そう言うとリリィベルはにこっと笑った。
けれど、その一瞬の表情を見逃さなかった。
「・・・・あぁ、魔術師も同行できないから、ロスウェルのアンクレットが守ってくれるが、
テオの側に居なさい。」
「はい・・・。」
オリヴァーは、目の前の皿のステーキを切り分け下を向いた。
テオの言っている事は・・・どうやらこの事か・・・・・。
あの陰りと、歯切れの悪い言葉・・・・。
まるで離れる事に怯える様な目・・・・・。
なぜ・・・・・?
「リリィ、ほら、これも食べろ。あー。」
テオドールはその様子をすぐに察したようで、一口大に切ったステーキをリリィに向けた。
「テオったら・・・っ・・・恥ずかしいですっ・・。」
「なんでだよ。ほら、旨いものは食べ与えたいのが男なんだよ。ほら、あー?」
自分の口を大きく開けて見せて、そのまま食べる様促した。
頬を赤くしながらリリィベルは静かにその口を開いた。
「どうだ?うまいだろ?」
悔しいけれど、ニヤリと笑ったテオドールが、すごく格好良かった。
「っ・・・もおっ・・・・・。」
口元を隠して、もぐもぐとリリィベルは咀嚼した。
それを見ていたマーガレットは笑みを浮かべて口を開く。
「リリィ?恥ずかしい事なんてないのよ?ほら見て?オリヴァー様?
ほら、あーん?」
マーガレットがテオドールの真似をして、同じように小さくしたステーキをオリヴァーに向けた。
「あ。あー。」
オリヴァーはなんて事無く真顔でそれを受け入れた。
「ね?普通よ?オリヴァー様!私にも、下さいな?」
そう言ってマーガレットも食べ物をせがんだ。
「よしっ・・・この旨い所をあげるよ。」
そう言ってオリヴァーまでマーガレットに食べさせる。
それを見ていたリリィベルは衝撃だった。
オリヴァーとマーガレットまで、食べさせ合いをする。
父親と2人、使用人たちと過ごしてきたリリィベルには、驚く事も多かった。
婚約パーティーでも皇帝と皇后が飲み物を分け合いながら飲んでいた事も。
あれをしたいと思った自分にも驚いたけれど、この家族はこうして食べ物まで分け合って食べる。
なんて仲睦まじい家族だろう。
「ふっ・・・俺は、この両親を見て育ったんだ。愛しい人には食べ物を分け合うようにな?
それが普通だと思って生きてきた。慣れろよ?」
そう言ってテオドールが笑った。
「ほら、俺にもくれよ。」
テオドールが口を開けて見せる。
「ふふふっ・・・はいっ」
ついに笑ってしまって、リリィベルは、小さく切ったステーキをテオドールに差し出した。
「へへっ・・・うまいな。格別だ。」
口元を指先で拭って笑った。
「これは、恥ずかしがっては居られませんね?」
リリィベルの言葉にオリヴァーが笑みを浮かべた。
「そうだよ?皇族と言っても、私たちは、平民たち家族の様に食事を囲んで食べるのが好きだ。
1つの家の中で、家族楽しく話をしながら過ごすだろう?大事な事だと思うんだ。」
「はい、お義父様。とっても素敵です。」
「・・・あぁ、これからもみんなで楽しく過ごそう。リリィ。」
「はい。お義父様。」
オリヴァーとリリィベルは互いに微笑んだ。
その笑顔の下で、オリヴァーは確信を持った。
これは、テオドールの機転だった。もちろん、こうして食べさせ合う事がない訳ではない。
けれど、リリィベルの一瞬の陰りを察して、わざとこの流れを作り出した。
明らかに・・・リリィベルは、離れるという事に恐れを感じている。
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