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出発

 城のベッドで初めて眠った。隣で母様が眠っていた。


 明日は父様の異母兄弟のデビッドが処刑される。側室と侯爵家の人間。この謀反に関わった者たち。

 父様は俺たちの食事後に少し顔を出しただけで、すぐに仕事に戻ってしまった。



 慣れない場所で眠るのは落ち着かなった。明日死刑になる人間がこの城に存在する。

 悪いことをしたんだ。父様を殺そうとした。父様は立派な皇太子だった。

 きっと悪事を働くデビッドが皇太子についたら、せっかくのこの豊かな国が滅んでしまう。


 帝国アレキサンドライト 昔この地で発見された宝石。発見した初代皇帝となった

 アシェル・アレキサンドライトが、この宝石を元に国を発展させ帝国となった。

 アレキサンドライトの宝石があるこの国はとても豊かなのだ。貧富の差も激しくない。



 皇帝陛下の冠にアレキサンドライトが装飾されている。

 それをいつか皇太子である父様が引き継ぎ…いつか俺も…。



 部屋の本棚にあったアレキサンドライトに関する本を母様に読んでもらった。

 昼にはエメラルド色になり、夜にはルビー色に変わるらしい。


 アレキサンドライトには秘められた言葉がある。


 《誕生・出発》



 俺は前世の人生を終え、この帝国に誕生した。


 新たな出発…。



 偶然か、それとも意味があるのか…。




 この世界に、俺のつがいは存在するのか…?



 だからここに俺は存在しているのか?


 アレクシスは、導いてくれるだろうと言った。


 幸せになってほしいからと…。



 だとしたら、俺が記憶を取り戻せば…。いつか…。



 だからって、別に王子じゃなくても良かったはずだ。



 正直、王子って面倒じゃないのか?


 父様と母様は、貴族だったから、本来なら結婚しても問題はなかった。

 いろんな事情が重なっただけ…。


 無駄だったとは思わない。けれど。



 つがいがもし、平民だったら?

 いずれ皇太子となるであろう俺と平民が結婚するのは、難しいだろう。



 たとえ、そうであったとしても、俺は…どんなことがあっても…



 疑う事は疲れるし簡単だが、信じるている方が幸せだと言った。



 そして、信じた先には望む世界があるのだと…。



「そうだ…信じるんだ…」



 そう強く思って、俺はその日眠りについた。







 翌日の朝、今日は謀反人たちの処刑の日だ。俺と母様は皇太子宮に姿を隠している。



 けれど、城下の広場で行われるその公開処刑は、民たちの声で、

 まるで地響きのように、城に悍ましさを運んできた。



 広場にて、皇太子により次々と罪が公開される。


『第二皇子が側室の生家である侯爵家と手を組み、私兵を集め、謀反を企てたこと。』

『侯爵家が下級の貴族達から、財を不正に集め、民を貧困に陥れたこと。』

『皇后陛下を毒殺しようとしたこと』

『帝国の象徴であるアレキサンドライトを同盟国以外に不正に取引を行ったこと』

『民たちの生活を脅かし、国を混乱に陥れようとしたこと。』


「この国の第二皇子でありながら、帝国とその民を脅かし、皇后陛下と皇太子である私を殺そうと謀反を企てた罪。重罪に値する。よって、デビッド・アレキサンドライト並びにその母、エレナ・アンフォード、アンフォード侯爵家一族、そのほか侯爵家と手を組んだ貴族たちは死罪とする!」



 ワァァァァァァァ!!!!!!!!



 民たちの怒号が街全体に響き渡る。

 広場に置かれた処刑台。



 次々と悪人たちの首が飛んでいく。これは見せしめでもある。

 悪事を企てれば、その罪は厳しく罰せられると。

 そして、皇太子の強さを示すものであった。


 朝から始まった公開処刑は夕方まで及び、デビッド・アレキサンドライトの処刑を最後に幕を閉じた。





 城に戻ってきた父様は、入浴を済ませて俺たちの前に現れた。

 少し疲労を感じさせた父様。それでも、母様と俺を抱きしめ、長い息を吐いた。


「待たせてしまったな…。もう大丈夫だ。」


 目を閉じて壮大となった物語のエンディングを迎えた。


「オリヴァー様…少しお休みを…」

 母様が心配そうに父様の背を撫でた。

「あぁ…でも、まだやることがあるんだ。アリアナとロイドにこちらへ来るように伝えている。」


 ゆっくりとソファーに座った父様。疲労している父様の膝に手を置いた。

「父様…無理しないでください。」


「なんの…これからはお前達を正式に迎え入れる準備をしなければならないのだ。

 そう考えるだけで、疲れなど吹き飛ぶ。こうして会える距離にいてくれるのだ。私は幸せだ。」


 俺の頭を撫でて、父様は満足そうにしていた。



 しばしの親子の時間を過ごした後、扉を叩く音が聞こえた。

「あぁ、アリアナ達だな。通してくれ。」


 部屋の隅に控えていた従者に伝え、外にいる従者が扉を開いた。

 父様のいう通り、アリアナとロイドが並んで入ってきた。


 そして二人は腰を折る。


「皇太子殿下、マーガレット様、テオドール王子様にお目にかかります。」

 綺麗な声でアリアナはカーテシーをし目を伏せたまま挨拶をした。

「あぁ、顔を上げてくれ。」


「皇太子殿下、マーガレット様、私の願いをお聞き下さって、本当にありがとうございました。

 このご恩は決して忘れません。今、こうしてロイドと共に居られるのは皇太子殿下方のおかげでございます。本当に…。ほん…とうに…」


 話しているうちにアリアナの頬に涙が零れていく。

 涙で言葉に詰まったアリアナの代わりに、ロイドがお辞儀をした。


「皇太子殿下、マーガレット様、本当にありがとう御座いました。

 明日、私たちは城を下がります。いつまでも、皇太子殿下に忠誠を誓い、

 皇太子殿下方の安寧をお祈り致します。」


「あぁ…お前達も、身体に気を付けて、幸せな人生を歩んでくれ。デビッドの事で、

 お前たちもさぞつらかったであろう。私の弟がすまない事をした。もう心配はない。

 1か月後には、アリアナの訃報が国に流れるであろう。生きているそなたを死人しまうのは胸が痛い。

 だが、事情を知らぬサフォーク伯爵がいる…二人でこの国を出るのは難しいだろうから…」


「私は構いません。元々…平民騎士のロイドと私が一緒になるのは、叶わぬ夢でございました。

 このまま二人で一から歩んでいける事を、私は幸せに思っております。

 そして、マーガレット様、大切な皇太子殿下の隣に私のような者がいた事、どうかお許しください…」


「アリアナ様、7年前にも言ったでしょう?オリヴァー様の隣をどうかお守り下さる様にと。

 私たちは元々同じ伯爵家であったではありませんか。お互いの愛を貫いたのです。


 どうか、笑顔で新しい時間を行きましょう。幸せになるのに、悲しい顔をしていては、幸せが逃げてしまいますわ?だから…どうか笑顔でいて下さい。私は大丈夫ですよ。オリヴァー様とテオドールがおります。どうか、アリアナ様も幸せな家庭を築きますよう、祈っております。」


「はい、ありがとうございます…」

 母様の言葉にアリアナはまた深く頭を下げた。


「あまり多くは持たせてやれぬが、私の私財から資金を用意する。

 帝国を出るまで、優秀な精鋭な騎士をつける。だから安心してくれ。」


「「皇太子殿下、このご恩は決して忘れません。」」




 4人のやり取りを俺は黙って聞いていた。


 皆が新たな出発をする。アレキサンドライトは本当に、出発を意味する国なのかもしれない。

 人生も…



 明日の朝、アリアナとロイドの二人で歩む人生が始まる…。

アレキサンドライトは実在する!探せ!この世のすべてをそこに置いてきた。



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