たまごの花
「る、ルーペ?!」
私のその声に驚いた二人は駆け寄って私の手元を見る。
二人のたまごの花はどうなったんだろう、と私が見ると、雅の持っている物は【ランプ】になっていた。
キナコはというと、
「すまぬすまぬ、つい朝食が足りなくて食べちまったにゃあ」
とのことだ。なんてこった…
「私のこの、ルーペになったやつって、どうなの??一応、変なものでは…無い…のよね?」
「そうですね…このルーペ型に変化した花は、私も初めて見ますし…。ちょっと見せて貰えますか?」
雅にルーペと化した花を渡す。
「これは…うん、【ルーペ】ですね…っと、おわっ?!」
突如、雅の手にしたルーペが大きくなったり、小さくなったりし始めた。
そして、ぐぐ…と縮こまったかと思うと、ギュンっと、1mくらいの大きさになった。
「「ええ?!」」
雅と私の声がハモる。いや、そこじゃなくて。
「これはこれは。御二方と……お猫様が1匹…と。お初にお目にかかります。私の名は………。ゴホン。失礼、名前はまだありません」
ルーペが喋った?!
「おい、わっちは、猫じゃあにゃい。立派な神獣にゃあ」
「えっ、そうだったの?キナコ?」
「前にも言ったじゃろうがにゃ……」
「むぅ?神獣…ですとな?もしや、あなた様は……!」
ルーペの言葉を遮り、
キナコは咳払い──猫(神獣)の場合それは咳払いなのか──をして、ルーペに向き直る。
「おい、そこのルーペに、ちいと話があるにゃあ。顔をかすにゃあ」
そして、キナコはルーペを追い立てて、離れた所に言ってなにやら話をしている。
私は呆然として、
「あの…たまごの花が、いやルーペが、喋ったりすることって……あるのかしら」
「……私も聞いたことありませんが…まあ、多分、大丈夫でしょう…多分……」
なんか、雅がモゴモゴしている。
嫌だなぁ。なんか不安すぎる。
それに、なんかルーペとキナコ不穏そうだし…。お猫様という呼び方が気に食わなかったのかしら。
そうこうしているうちに、ルーペとキナコが帰ってきた。
「綾乃。このルーペの名前、おめゃあが決めるにゃあ」
「え。私??」
「ゴホン。ええ。召喚されたご主人様に名前をつけて頂けるとなると、私めも光栄でございます」
ルーペもこう言っているが…。
名前なんて、すぐには思いつかない。
「ちょっと、今すぐには思いつかないから、また後で考えていいかな?」
「承知致しました」
「綾乃。そこのルーペは、きっと植物を探す時に役にたつにゃあ。きちんと名前を決めてやるにゃあ」
「わ、わかったわよ…」
「あ!それでキナコ!!私のこのランプは、どういうものですか?こう、綾乃さんのルーペみたいに、喋ったりとか……!」
「それはないにゃあね」
キナコはバッサリ切り捨てる。
「まあでも、綾乃の植物探しに役立つやもしれんから、そっちも大事にするにゃあ」
「なるほど…。それならば、よけいに大事にしなくては!」
そうして、また数日後。
私たちは、たまごの花を乾燥させていた。
「これを、乾燥させれば非常食になるって言ってたけど…これって、食べても大丈夫なの?」
「はい!大丈夫ですよ。味も美味しい…らしいですし!いざと言う時に役立つはずです!」
「いざと言う時…か……。そんな非常事態、起きなきゃいいけど」
笑いながら話していると、ひょっこりとキナコが顔を出す
「お取り込みのところ申し訳にゃあが、そろそろ旅に出るにゃあ」
お、満を持して出ますか!
どんな旅になるんだろう…?
やっぱり、旅といば映画みたいに、色んな山脈とかを超えたりして行くのかな……
体力の無い私には不安すぎる……。
「雅のテレポートを使って、まずは金の国に出発するにゃあ」
「ん?!テレポート?!そんな便利な機能持ってたの?!」
「はい。あれ、言ってませんでしたっけ?」
「言ってない!!」
「まあ、なにはともあれ、金の国に出発するから、さっさと支度しろにゃあ」
テトテトとキナコは走り去って、またルーペと話している。
ほう…。仲良くなったのか。
──1時間後。
「それでは!金の国に出発しますよ!みんな私のどこかに触れていてくださいね。じゃないと、取り残されますから!」
ルーペは、元の大きさくらいに小さくなって、今は私のポケットの中。
……ごくり。
雅の手を掴む。
「それでは──
導きまたえ。六つの国のしるべを、我が魂に」
そう雅が唱えた瞬間、世界が真っ白に染まって、次に目を開けると、そこは。
金ピカで出来た目にも眩しい世界が広がっていたのである。