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細波に揺られた笹舟。

「太刀さん、太刀さん。今通った人」

「ん?ああ、哲夫くんのこと? 」


「哲夫くん?? 」

「ああ、そこの坂くだったところに看板屋があるでしょ? 」


「うん、うん、何か昭和の映画みたいな大きな看板あるところ」

「あそこの息子さんだよ。あそこうちのお客さんだから。なんで? 」


「おとといの夜、私シャワー借りた後、部屋に戻ろうとしたら、哲夫さん? がここにいて、『工場の人いますか? 』って」


「なんの用だったの? 」


「ちょうど工場前でチェーンが外れて、明かりがついていたから手伝ってもらおうと思ったんだって」

「たまに空気とかも入れていくからね。チェーンくらい自分ではめれないのかな? 」


「『誰もいないなら、いいです』って立ち去ろうとするから、呼び止めて少し手伝ったんだ。だって明かりがあるところで付けたほうがいいでしょ? 」


「ちゃんとできた? なんか哲夫くんは司法試験がんばってるらしいよ。勉強するときはそこの区民図書館にいくんだってさ」

「だから昼にここ通るんだ。そうなんだ。ふ~ん.. 」


「それより、工場のシャワー使う時は表のシャッター全部閉めとかなきゃだめだよ。社長に部屋のシャワー早く直してもらいな」


そのことがあってから哲夫さんとは道で会うとあいさつするようになった。


****


7月、まだ東京は梅雨が明けていない。

  梅雨明けにはあと1週間くらいはかかるだろう。


「おおい! 元気かぁ」

「ああ、宮野さん。どうしたんですか? 」


「いや、オイル交換してもらおうと思ってな」

「ありがとうございます。高級オイル入れてもらいますか? 」


「おまえなぁ.. 軽貨物にそんなの必要ないだろ」


・・・・・・

・・


「はい、冷たい麦茶、どうぞ」


「おお。 そういや、おまえメール打ってるんだって? 」

「え? 」


「水島から聞いたぞ~。砂川(さがわ)君とやりとりしてるって。遠距離か? 遠距離のアレか? 」

「そういうんじゃないけど、でもよく返事してくれたり、いろいろだから」


「ははは。青春だな。でも遠くだとなかなか難しいよな。おまえならいくらでもいるだろうに.... 」


「え? 別にそういうんじゃないですよ。でも、今度、沖縄に遊びに行くことがあったら案内してくれるって」


「浮かれてるな? ははは。しかし何でメールなんだ? LINEや電話は? 」

「最初LINEが来たんですけど、私から『メールにしてください』って言ったんです」


「なんで? 」


「うん、なんか.. 何かのついでに、何かをしながらLINEしてるのかな? TVみながらとかご飯食べながらとか、なんか、ついでにLINEしてるのかな? とか考えちゃうと、メールのほうがいいかなって」


「おお。こりゃ、まぁ.. まっ、また優佳連れてくるから遊んでやってくれ。あと、俺な、また涼子とやりなおしするから」


「あ、よかった。よかったですね.. 」

「ば、馬鹿、なんでお前が涙ぐむんだよ」


「だって.... 」


「まぁ、また飯でも食べにいこうぜ」


[宮野さ~ん、オイル交換できました~。]


「じゃ、またな」

「ありがとうございます。また来てくださいね♪ 」


宮野さんの車は少しバフバフと白煙を出しながら走っていった。


****


「柿沢.. やっぱり.... メールか.. さて、どうしたものかな.. 」

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