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沖縄の海の色

「頭痛て~.. 」

「なに? 峰岸さん、そんなにお酒弱いんですか? 」


「いや、いつもはもっと飲めるんだけどね」

(うわっ、よかった。あれで泡盛飲んでたらアウトでしょ)


「萌恵ちゃん、明里さん、こっちです! もう車、来てますよ!」


私たちは那覇のダイビングショップ『オール―』の送迎車に乗り、港へ向かった。


ボートはショップ専用の船になっていて、ゆっくりとくつろげる仕様となっている。


「峰岸さん、EVEありますから飲んでMPを回復してください! 」

「あ、ありがとう」


ボートで慶良間には70分ほどで到着した。


その間、私は沖縄の海を眺めて旅情に思いを馳せていた.. なんてことはなかった。

ボートは終始フルスロットルで バイン! バイン! と海を進んでいる。


乗客の中には排気ガスと揺れにやられている人もいる。

やっぱりと言うなかれ、峰岸さんもそのひとりだ。

でも萌恵ちゃんが甲斐甲斐しくケアしていたので逆に良かったかな?


ボートはスピードを緩める。

水の波紋の下に透明な世界が丸見えなのに驚いた。


私たちは招かれるようにその青く透明な世界に入った。

伊豆の青とは違っていた。

そう、群青ともいえる伊豆の青ではなく、慶良間の青は透明感のある水色に近かった。


ゆるやかに続く斜面。

大小さまざまなテーブル珊瑚。

その間を埋め尽くすように枝珊瑚がひしめき合っていた。


ふと右側の白い砂地に目をやると大きなロウニンアジが泳いでいた。


左側の珊瑚礁から青い魚の群れが流れ込む、それを阻むようにもうひとつの群れが交差する。背中から尻尾にかけて黄色の魚は伊豆でみたタカベにも似ていた。

その鮮やかなブルーに映える黄色は私たちの視界をふさいだ。


魚たちの群れの向こうにいるガイドさんが中層を移動し始める。

伊豆と違いガイドと客とのレンジが広い。

そのため青い海にひとりひとりの全身がはっきりと見え、吐く息が上に登っていく様子がわかる。


ガイドさんが何かの気配に気づき回り込むと珊瑚の間から海亀さん登場!

私たちの間をゆったりと泳ぎ、滑るようにスーっと方向転換しながら枝珊瑚の群生の向こうに消えていった。


パイ生地を何枚も重ね合わせたような大きな珊瑚。

地面にできた巨大なタンコブのようなミドリ石


そんな数々の珊瑚と魚の群れをまわり込むように水深をあげていく。


— ボートは渡嘉敷島から座間味の海へ移動する。


そういえば峰岸さんとの初対面は『座間味の海自慢』だったなぁ.. と懐かしく思いだす。

(ふふふ。あの時はあまり空気読まない峰岸さんに印象が良くなかったっけ..)



座間味の海はどこまでも白い砂地が広がる癒しのポイントだった。


砂地の上に置かれた枝珊瑚のテーブルには水色の可愛い魚が群れている。

ダイバーの姿に驚き、珊瑚の間に隠れたかと思えば、また一斉に姿を現す。

まるで波の音楽に合わせながら泳いでいるようだ。

その水色の魚たちに彩を加えるのはキラキラと輝くスカシテンジクダイの群れ。


砂地にはオニオコゼがノシノシと歩いている。


濁りがない透明な潮水は、真っ白な砂のキャンバスに私の影をクッキリと描いていた。

私はその影に向かって手を広げて振ってみる。

すると、砂上にいる影も私に手を振ってくれた。


午前のダイビングを終え、座間味の港で私たちは休憩をとった。


萌恵ちゃんと明里さんは2人で周辺を散策している。

きっとかなり打ち解けたのだろう。


休憩中、シュノーケルを楽しんでいる人もいたが、私は陽の光で冷えた身体を温めた。


沖縄は梅雨時なのに今日はなかなか良い天気。

私たちの誰かが晴れ女にちがいない!


休憩が終わると、ボートは3本目の黒島へ移動する。

それは、そよぐ潮を感じながら雄大な珊瑚礁の上を泳ぐダイビングだった。


そのどこまでも続く珊瑚の景観にただ、感嘆とするばかりだ。


やがて、やや水深を下げるとドロップ沿いに中層を泳いでいく。

砂による反射が少ない潮の色は、やや濃い目の蒼色だ。


太陽の光と岩の影、そして蒼の世界。

そのコントラストは脳裏に焼き付くように鮮明だった。

私はひとり水深を下げると仰向けになってみた。


そして蒼い世界から空を眺める。

いくつもの光の線が私に降り注いでいる。


これが沖縄の海の色。

これが沖縄の海の中の景色なんだね....


船に上がると、充実した気持ちとほんのちょっとの寂しさを感じる。


「柿沢さん、またみんなで潜りに来ましょう」


明里さんのこの言葉に、私の寂しさは、次への楽しみと期待へと変わっていった。


そして、私はこう言った。


「そうですね! また、みんなで潜りに来ましょう!! この素晴らしい海へ!」




****


那覇に帰るとその日の夜は旅の終わりを飾る夜となった。

峰岸さんの泡盛も萌恵ちゃんの許可がおりたようだ。


(あ~あ、あしたは私が運転するのかな? )


そう思うと私は梅酒をウーロン茶に切り替えた。




------

【参照ポイント】

渡嘉敷島:「アリガー南」

座間味島:「唐馬NO.2」

黒島:「ツインロック」

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