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青と黄色

アドバンスド・オープンウォータープログラム最終日

開催地 東伊豆:北川(ほっかわ) 「カジカキ根」

ボートダイビング&ディープダイビング


この日、安良里ボートダイビングの予定だったが、強い西風の為に西伊豆の海況はすこぶる悪くなった。

急遽、ショップVisit の車は東伊豆の北川(ほっかわ)ボートへ向かった。

ちなみに今回も私のバディは峰岸さんだ。


「ねぇ、桜が咲いてますよ! あれ、桜じゃないですか? 」

「桃ちゃん、この辺は河津桜という寒桜の一種が咲き乱れるのよ 」


「いっぱい咲いてる。もう春も近いって感じがしますね 」


北川(ほっかわ)ボートは伊豆半島の真ん中位に位置する東伊豆の温泉街、北川(ほっかわ)温泉の港から出港するボートダイビング。

使う施設は北川(ほっかわ)ダイビングサービス。


私たちは施設の中でボートダイビングに関するルールや北川ダイビングサービスのスタッフさんに事故の場合の緊急連絡の仕組みや酸素供給セットなどを見せてもらった。


「すごく楽しみ。でもちょっと緊張する。うまくエントリーできるかなぁ。詩織さん、エントリーはジャイアントエントリーではできないんですか? 」


「桃ちゃん、伊豆のボートダイビングの多くはシッティングバックロールが主流よ 」


港ではセッティングした器材をスタッフさんが船に乗せ、続いて私たちが順番に船に乗り込む。

船上の椅子に腰かけながら器材を装着するスタイルだ。

器材を装着すると詩織さんがシリンダーのバルブとホース類がBCDジャケット内に入り込んでいないかを確認してくれた。


ほどなくエントリーロープがつながっているブイが見えた。

「はい、マスクをつけて、ヘリに座ったらレギュレターをくわえてフィンを履いてください。

 

ホース類をまたに入れこんだら、海面を確認してください。スリーカウントでエントリーしますよ。3・2・1・GO!」


エントリーすると私のマスクがはずれてしまった。

幸い手に引っかかっていたので、焦ることもなく装着し直し、ブイまで泳いだ。


「流れはないのでロープをなるべく使わず、できるだけ自分で浮力をコントロールして潜降しましょう。下でまた会いましょうね」


BCDの空気を抜き潜降が始まると、今度は急激な潜降をしないようにBCD内へ空気を送り込む。

途中で峰岸さんがロープにつかまり止まっている。

どうやら不得意な耳抜きをしているようだ。

バディである私もロープにつかまり耳抜きをしながら峰岸さんと歩調を合わせた。


その間、峰岸さんの排気の泡が私の顔にボコボコあたっていた。


透明度20mの海。


白い砂地が海を明るくしている。

のっぺり顔の魚が興味を抱いてこちらに近づいてくる。(*イラ)


キラキラした流星のような小魚の群れが斜め上から私たちを包み込む。

その流星群はいつ終わるかわからないほどだった。


ロープ下で準備OKのサインを確認すると詩織さんが親指を並べ進行方向にGOサイン。


砂地には大きな岩がいくつか乱立し、黄色、紫、オレンジ色などコーラルがいっぱい咲き乱れている。

ボートダイビングの醍醐味と言える見事な光景だ。


先ほどの砂地にいたのっぺり顔の魚が私の顔をのぞきこむとスっと離れていった。


詩織さんのベル音がなる方向を見ると長い背びれが美しいキンギョハナダイがいっぱい。


でも詩織さんは1匹を指し示すと『アカオビハナダイ』と水中ノートに書いた。

確かに、1匹だけ体の中心辺りに赤いオビのある魚が混じっている。

これは覚えやすい。

私の頭にまた1つ魚の名がインプットされた。


少し狭い岩の間をくぐり抜け、その先にある大きな岩の隙間から長い触角が出ている。

詩織さんは水中ノートに『時価額で結構です!』と指をチョキチョキする。

ライトを照らすと[ギィーギィー]という音と共に大きなイセエビの姿が見えた。


すこし中層を泳いでいると詩織さんが激しくベルを鳴らす!

興奮気味に指さす先には、ウミガメの後ろ姿が見えた!

峰岸さんはレギュレターをくわえながら「ウミガメー」て叫んでいる。

私たちに気が付くとスイーと海の中を滑るように立ち去ってしまった。


ウミガメって伊豆にもいるんだ.... すごい!


岩場を丹念の探す詩織さん。

何か見つけたようだ!

そこにはポケモンのピカチュウのような可愛い生物が2匹。

スレートにもそのまま『ピカチュー』って書いてあった(*ウデフリツノザヤウミウシ)


それを見ているときに目の前を黄色いラインが横切る。

周りを見渡すと私たちはいつの間にか無数の黄色いラインに取り囲まれていた!


青く澄んだ海の中、そのタカベの群れは感動的に美しくかった。


そして、大きな群れが上昇を始めたかと思うと、今度は一気に下降し左右に割れて私たちを通り過ぎていく。

ただ、ただ、その美しさと迫力に見とれていた。


やがてロープの根本に集まり浮上の合図。

ゆっくり、ゆっくり、自分の吐く息よりもゆっくりと。

ロープ5m地点で詩織さんがTの字サイン。

安全停止だ。

私はロープを軽く指でつまみながら中性浮力を保つ練習をしてみた。

その浮遊感の中で、前に詩織さんが言っていた事を思い出す。


ダイバーはいくつかのタイプに分かれる。

ただ海の中を泳ぐのが好きなダイバー、地形派ダイバー、マクロ生物が好きなダイバー、魚が好きなダイバーなど。


タカベの群れを思い返して思っていた。

どうやら私は魚の群れが好きなダイバーのようだ..


下を眺めていると、のっぺり顔の魚がロープ下でウロウロしているのが見えた。

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