太郎丸推参!!
「おはようございます」
「桃ちゃん、おはよう。あれ? 社長は? 」
「さぁ、いつもは誰よりも早く来るのにね。寝坊かな? 」
「おはよう」
「おはようございます。相良さん、社長はどこ行ってるか知らない? 」
「ああ、社長なら朝に高岡鈑金に寄ってくるっていってたぞ」
「鈑金にだしてた車ってあったっけ? 」
「知らないけど、何か用事でもあるんじゃねーの? 」
・・・・・・
・・
「はい。そうですね。払込票に記載してありますので。はい。はい。」
私はお客様から保険料のお支払いについての問い合わせ対応をしていた。
すると、床から[チャリチャリ]と何かを引きずるような音が..
「ええ。そうです。お近くの..キャ!!? すいません!!どこのコンビニでも大丈夫です。はい。ありがとうございます。では、失礼します」
[ファグギュ~グググキュ~ン]と鼻を脚にこすりつけて甘えてくるのは、まだ耳がたれて、モフモフのハスキーの子犬だった。
「きゃー!! なに! なに! これ、ヤバイ! 」
「よぉ。どうだ。」
「どうだじゃないよ。この子どうしたの。めちゃかわいいんだけど。これハスキー犬じゃない?」
[キャン、ググゥ..]
「高岡鈑金に番犬になる犬を頼んでたんだ。そしたらこいつを探し当てた。まだ2カ月らしいぞ。」
「え? じゃ、この子うちで飼うの? うわ~可愛いー! ヤバいよー」
「こいつはおまえが育てればいい。そうすれば頼もしい番犬になるだろ。階段下に犬小屋置いておけば、こいつが見張るからな」
(そっか。お父さんはあの時のことをまだ気にしてるんだ.. )
「そっかぁ。君、うちに来る? きゃ~可愛い」
子犬の鼻に鼻を押し当てると子犬独特の香りがした。
「なになに? おお! ハスキー犬じゃん」
「太刀さん、可愛いでしょ。この子うちの子になるの」
「へ~、じゃ名前考えないとな。ポチとか」
「ポチじゃないよ。この子は。ねー!? 」
「適当に太郎とか次郎でいんじゃねーの? 」
相良さんがまた適当な事を言っていた。でも..
「んん..太郎か。太郎は和的だね。じゃ、もっと昔風に『太郎丸』とか。」
子犬は私の手をペロペロし始めた。
「よし、決めた! 太郎丸!! 君の名前は太郎丸だ!」
[ グゥ~..フガフガ....グシュン ]
「まぁ、お前が名付けたならいいけど、そいつ、メスだぞ」




