身も心も溶けて解放①
「で、どういうことなんだ? 説明してみろ。どうすればだだっ広い田舎の駐車場でこうなるんだ? 」
「いや、だからね、それ、それなの。だだっ広い田舎の駐車場のあんな場所に支柱があるとは思わなかったの。油断大敵ってこのことね。事故の実態の良い経験になったよ」
私と七海の「乙女2人、身も心も解放する旅in山形」(もはや名前が変わってる)の旅も終わった。
で、お借りしたプロボックスの後ろは...支柱の形を再現したようにぼっこり凹んでおります。
「これはお前の給与から少しずつ天引きだな」
「ふえ~。安く直すことできませんか? 」
「できん!! 」
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旅はカー用芳香剤を入れることから始まった。
ねぇ、もっちん、この車っておじさんぽいけど、匂いもかなりオジサン臭、半端なくない?
急遽、コンビニでファブリーズ+念のため眠眠打破2本購入!!
いざ、幡ヶ谷からひたすら山形県東根までの高速道路移動。
郡山付近と米沢付近のサービスエリアで休んだとはいえ6時間以上の運転を続ける七海のタフさには驚いた。
しかも本人曰く「まだまだいけるよっ! 」と力強いのだ。
私たちが東根市に着いたのが13:30くらい。
そして東根市のコンビニでおにぎりを買い、七海はこのまま『銀山に乗り込むぞ! 』と言ってのけた。
尾花沢への県道をさらにすすみ、銀山温泉に着いた。
私はやっと七海に休んでもらえることでホッとした。
共同駐車場から歩いて銀山温泉に入ると、すごくロマンチックな温泉街に写真撮りまくり。
そして悪魔の囁きにより「足湯」地獄に陥ってしまう。
木造りの足湯は、私たちの足を溶かしていく。
七海に至っては「体全てが溶けてしまいそうだ」と空を仰いでいた。
足の再構築が終わると、『さて、目的を果たすぞ』と七海が宣言する。
『ふふふ、私はここの蕎麦を食べるために来たのだ』と若干どや顔をしながら、そば処『伊豆の華』に私を連れていく。
吸収されるように蕎麦がどんどん腹に収まっていく。
この蕎麦のおいしさ、やばかった!
金欠リーズナブルプランの私たちは質素な素泊まり。ならば、宿に帰る前に銀山温泉を堪能しようと共同温泉場に向かった。
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湯上り湯気のかすかに残る乙女が2人、銀山温泉を散歩する。
灯り始めたランプの明かりが、切ないほどに、大正の風情を醸し出す。
七海は『もう、いっそここに泊まらない? 』と言い始めたが、運転報酬をソフトクリームにすると、天童の宿まで、もうひとがんばりしてもらうのだった。
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銀山に この身は溶ける 足湯、蕎麦 新井七海




