岩にしみいるプラン
「桃ちゃん、久しぶりね。元気? 」
「元気、元気! このとおりですよ! 」
「いつぶりかしら? もう2年くらい? 」
「はい、おばさまもお変わりなく若くて綺麗ですね。」
「いやだわ。おいしいお菓子あとで持っていくからね」
「もっちん.... あんた世渡りうまくなったわね。お母さんを手玉に取るなんて」
今日は練馬区春日町にある七海の家におじゃましてます。
・・・・・・
・・
「ねぇ、2週連続でダイビングするなんて、両手でキューブする名人くらいにはまってるね」
「あははは。まぁね、ところで ..ジャーン!! これを見るがいい! 」
「アジデス? ははは..は.. あんた何着てんの? お土産ショップのTシャツじゃん」
「ふふふ、七海、笑ってる場合じゃないよ。これが、あなたの着る分だ!! 」
「っぶ.. 」
「言葉を失ったわね! 私はピンク、あなたはネイビーでいいよね。アジわい深いでしょ! 」
「おっさんか! 」
壁に目をやると、一枚のイラストが額縁に入れて飾ってあった。
「この飾ってるの、この前見せてくれたイラストだね」
「うん。やっと仕上がった」
七海は高校の時から、いや、もっと昔から好きだった絵・イラストを描いている。
「そのうち何かの案件取れるようになりたいけど、今はちょっとした挿絵とか頼まれるくらい.. 」
「もっといっぱい依頼来たらいいね」
「うん。 ところで、旅行のプランだけどさ.. 」
「私、提案があるんだ! ほら、この前のお月見かなり良かったでしょ 」
「あの後がなければね」
「へへへ、それはTシャツで水に流しておくれ」
「今回もその線でいくってこと? 」
「うん、今回もテーマは風情! 調べたんだけど山形には歌人、松尾芭蕉の歌が歌われている場所がいくつかあるらしいから、それを辿ってみるのって、面白そうじゃない? 」
「松尾芭蕉って帽子被ってるよね」
「そうそう、お茶立てる人みたいなの、それって風情の象徴だね」
「有名な俳句.. なんだっけ? 」
「『静けさや石にしみいる虫の声』とかじゃない?」
「それそれ! 」
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私たちは松尾芭蕉の一番聞いたことある俳句
『静けさや岩にしみいる蝉の声』を辿る旅をすることにした。
ちなみに、私たちは、芭蕉の石碑を見るまで、歌の間違いに気づかなかった..




