言葉の重み①
団子を完食し、お月見会の片づけを私ともっちんで始めると、哲夫さんも手伝ってくれた。
その後、私が持ってきたビールとつまみで哲夫さんの部屋で少しだけ飲み会をした。
「今日は本当に良いお月見でした。ありがとうございました」
「でも、ちょっと団子固くなかった? 」
「そお? あんなもんじゃない? おいしかったし」
「七海は、いつも自分が作ったのおいしいって言うもんね? 」
「そんなこと言うと、もう何もつくってあげないよ」
「えー! 」
そんなたわいない話をしながらお酒はすすんだ。
「仲が良い二人は、いつからの友達なんですか? 」
「高校からだよね」
「一緒にバンドもやったもんね」
「仲がいいわけですね.. 僕もこの前、高校のクラス会で友達とあったんですよ。でも僕は二人ほど仲が良い友達はいなかった」
「でも、久しぶりのクラス会って面白そうですね」
「うん。みんなそれぞれいろいろな道を歩んでいました。結婚してる奴もいて」
「結婚かぁ」
「七海、早くしそうだね」
「みんな、それぞれの近況を話したりしながら、会は盛り上がっていました。で、その時、友人に言われたんですよ。 『司法試験でニート生活してるの? うらやましい』 ほんの冗談なのはわかってたけど、少しショックでした」
「 ....」
「でも哲夫さんは司法試験で弁護士になるじゃない。高給取りだよ~。そしたら私、玉の輿に乗ろうかな」
「ははは。でも次もしダメなら他の道を考えようとも思ってるんです。いろいろお金もかかるし親にも面倒かけるから。このままじゃ『役立たずのまま』ですからね」
「えー、じゃ、私の玉の輿の夢が途切れないように、今度、合格のお守り渡しますよ」
「 ....じゃない。 『役立たず』じゃないよ。哲夫さんは全然、役立たずじゃない! だって法律のこととか教えてくれたじゃない! 私には、哲夫さんは役立たずじゃないよ!! 」
「ちょ、ちょっと、もっちん.. あなた、泣いて.. の、飲みすぎたのかな? 哲夫さんも帰らなきゃいけないし、そろそろこの辺にしようか」
「 ..あ、あの.... 」
私は哲夫さんに目配せをすると、桃に肩を貸し、哲夫さんの部屋を出た。
「さぁ、桃、部屋に戻ろう」
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私は、桃をベッドに休ませると、歯ブラシを買いにコンビニへ向かった。
そして、その道中、哲夫さんと話をした。
「桃さん、大丈夫ですか? 」
「うん。泣いちゃって、飲みすぎだよ」
「僕のせいですかね.. 」
「うん。哲夫さんのせいだね」
「すいません」
「嘘ですよ。でもね.. 」
私は、哲夫さんに以前、桃から聞いた昔の話をした。




