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青いカーテンの向こうに

土曜日 晴れ


プップー

クラクションが鳴ったのは10:00を過ぎた頃だ。


階段を下りると、優佳ちゃんが迎えてくれた。


「おねーちゃん、おはよう! 」

「おはよう! 優佳ちゃん」


「おお! 優佳と後ろ乗れ! 」

「はい。おはようございます」


「桃ちゃん、おはよう。何か突然で迷惑じゃなかった? 」

「いいえ、誘ってもらえてありがとうございます」


「さて、行くか」

「行こー! 行こー! 」


優佳ちゃんは今日も元気がいい!


車が甲州街道から首都高速に入ると涼子さんが宮野さんに尋ねた。


「ねぇ、あなた、今日はどこ行くの? 」

「今日は優佳と約束していた水族館に行くぞ」


そう言う宮野さんの顔を涼子さんが(いぶか)しげにのぞき込み、チラリと私を見たようだった。


「よかったねー優佳ちゃん、いっぱい魚見ようね。お姉ちゃんも水族館楽しみだ」

「うん。見ようね♪ 」


約40分の道のり、たどり着いたのは葛西臨海公園。


芝生が生えた開放感のある公園に海。

優佳ちゃんのテンションはMAXになっている。


「じゃ、優佳ちゃん、あっちに海を見に行こうか」

「うん。行こう! 行こう! 」


晴れ空の下、とても気持ちが良い。


「優佳ちゃん、おねーちゃんと写真撮ろう! こっち来て! 」


その間に宮野さんと涼子さんはレジャーシートをひいていた。



私たちが水族館に入ったのは、お昼を終えた後だった。


暗い館内は水槽を通してブルーの心地よい光で照らされている。

優佳ちゃんは宮野さんと手をつなぎ館内の水槽をひとつひとつ巡っていく。


私は館内で一番大きい水槽前のイスに腰をかけた。


水槽の中には大きなマグロが泳ぎ回っている。

しばらく泳ぐマグロを眺める。

隣にいる涼子さんが心配しているのはわかっていた。


「今日は凄く楽しかったです。ありがとうございます。私、いまやりたいことが出来たんです。海に潜ってみたいなって。これは前から思っていたことなんですよ。そして今は『いつか自分の目で沖縄の海の中を見てやるぞ! 』って思ってます。だから私は大丈夫です。そう宮野さんにも伝えてください」


私がそう語ると涼子さんは黙って私の肩に手を添えてくれた。


帰りの車中、優佳ちゃんは私の胸の中で寝息を立てていた。

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