じゃあね
こじれていた別れ話も、もつれた糸がほぐれたようにようやく解決した。
俺は少しホッとした面持ちで彼女に話した。
「これで、二人とも新しい旅立ちが出来るな。」
「そうね。言っておきますけど、別れたくないって未練がましかったのはあなたよ。
今言った台詞はそっくりお返しするわ。」
そうだった。
俺の方が、離れたくなかったんだ。
今日になって急に別れてもいいと思ったのは、なぜなんだろうか?
少し不思議な面持ちで、二人で喫茶店を出た。
帰る方向は途中までは一緒だ。
しばし無言で歩いていると、交差点に差し掛かってきた。
「ねぇ、この交差点ね…」
彼女が意味深な声で話し始めた。
「歩道橋と地下通路がある不思議なところだよね。歩道橋歩く分にいいんだけど、地下通路歩くと人生が変わってしまうらしいよ。」
そういえば、さっきここに来る時、地下通路を歩いてきた気がする。
それで別れる気になったんだろうな。
「じぁあ、心機一転するのに、地下通路を歩いて帰るよ。」
「そう、私は歩道橋から帰るわ。じぁね、さよなら。」
俺は地下通路を歩き始めた。
心なしか、さっきより距離が長く中々出口が見えて来なかった。
「どこまで続くんだ…」
俺は、叫んだ!
彼女は歩道橋を歩きながら、
「そういえば、あの地下通路、1回ならともかく、2回連続で入って出てきた人はいないって伝えるの忘れてた…
まさか、彼…
そんなことはないわよね。
でも、交差点は人生の岐路に似てるって言うけど、ここは特にそうね…」