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七十八話 擾乱の街㉓ 事件の終息

 チェスターの起こした大爆発によって、僕らに危機が迫っていた。

 爆風に乗った大量の瓦礫が、高速の砲弾となって降り注ぐ。


重力操作(グラビティ・ノア)!」


 セシリア姉さんの生成する重力場が、僕とリンジーを守ってくれた。

 加えて姉さんは、爆発の直前にも魔法を使用して、爆心地の瓦礫の中からヒサラ族を引っ張り出している。

 彼らも瓦礫から守られたが、その中に黒衣の男の姿はなかった。

 あいつはいつも、何らかの方法を使って、この爆発から逃げ(おお)せてしまうのだ。


「怪我はないわね、ダリオ」

「うん、ありがとう姉さん」


(助かった。おかげで、魔道具の消費(・・・・・・)も抑えられた(・・・・・・)


 実は僕には、この爆発から身を守る手立てがあったりする。

 少し前に、リンジーと一緒に購入しに行った、魔法障壁系の魔道具。

 あれらは、この瞬間に備えてのものだったのだから。


(いつもだったら、僕がリンジーの盾になっていた。そして、向こうの3人は……)



 チェスター、フランちゃん、アコシェさんは、目に見えない空気の壁に守られていた。


「魔道具、風絶雲掌スタグネイト・カーム・エア。みなさん、ご無事でいらっしゃいますな?」


 3人の背後には、杖型の魔道具を発動させる男性の姿。

 アイアトン商会の、ダニエル会長の従者さんだ。

 辺りの道路に瓦礫の破片が散乱しているなか、彼らの周りは透明な空気の壁に囲われて、塵のひとつも落ちてこなかった。


「あんた、さっきの……助かったよ。危うく心臓が止まるとこだった」


 お礼を言ったアコシェさんに、従者さんは微笑んで返礼してから、被害の元凶であるチェスターへと顔を向けた。


「まったく、今のは街中で使ってよい魔法ではありませんな。魔法本体より、爆風による二次被害が甚大ですぞ」


 うぐっ、と言葉を失くすチェスター。

 まさか、こんなふうに瓦礫が炸裂するとは思ってもいなかったのだろう。

 使用後の結果を想像できない未熟なチェスターには、やはりまだ、固有魔法の使用は早かった。


「あの、これは一体、どういった魔法なのですか?」


 落ち込む兄をそっちのけに、フランちゃんが、従者さんの使う魔道具について尋ねた。

 見たことのない防御魔法に、興味深々のご様子だ。


「空気の流れを完全に遮断する魔道具にございます。防御性能はもちろんのこと、気体の入れ替わりや、温度変化を防ぐ効果を空間にもたらすことから、高位の錬金術士などが実験に用いておられます。我がアイアトン商会の魔道具店にて取り扱ってございます」

「結構な金額のはずだよ、この魔道具は」


 商売人のアコシェさんは、市場価格を知っていた。


「たしか、年間の生産数が、両手の指で数えるほどしかないんだろ?」


 魔道具は、魔法を付与させた道具の総称である。

 魔法の付与は簡単でなく、高位の魔法になるほど難度が上がり、時間もかかる。

 生産数が少ない魔道具は、当然、希少価値が高くなる。


「そのような貴重な魔道具を、私たちのために……」


 申し訳無さそうな顔をしたフランちゃんに、従者さんは笑って言った。


「なあに、問題はございません。請求先は、バレスタイン公爵家にしておきますからな」


 フランちゃんは一瞬ぽかんとしてから、くすくすと笑い出し、対照に、魔法の無断使用が父親にばれてしまうチェスターは、ぞっと背筋を震わせていた。


***

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