勇者の称号を持つ村娘メアリーとの出会い
- 異世界転生して数日後 -
海獣ひしめく深海でヤツらの核である魔石を吸収したらスキルを入手しまくり〜っ!?これは楽しくなってきたわ。オーホホホッ!あなた達の能力を沢山いただくわよ〜っ!!
おかげで能力がかなり向上したわ!
海の魔物との連戦で流石に疲れてきたのか深海の底で急に眠くなり、どんなヤツにも接近されないよう岩場のなかに入り込んで眠りに入る。
意識の中にポツンと小さな光が差し込み、それが強く輝き出し勢いよく広がった瞬間
気付いたら、空がしばらく見入ってしまうほどの凄まじい夕焼けのように赤くなぜか何もない所で雲の上に浮いている?
えっ?なんで浮いてるのかしら?
何で雲の上…? まさか眠っている間に何者かに襲われて…? いやそんなまた死ぬなんて…
「違う!貴方は今、深海の底でぐっすりと眠りについておるのだよ
意識だけ私が引っ張ってきたのだ。」
声に反応して後ろを振り向くと目の前にいかにも神様のような姿の男性がそこにいた。
手入れが行き届いてそうな長く美しい髪、
蓄えた髭、長身
そして中性的な顔立ちで威厳に満ちた表情
で腕を組んでこちらを見ている。
何よ! 何よ! その長い金髪バリカンで全部剃り落として着てる物を剥ぎ取って逆さ吊りにして蝋燭垂らしてヒイヒイ泣かせてやるわ!!
でも……今はそうだわアタシ…お魚なのよね
……そうお魚なのよ……手も足も出ない……っていうかそもそも無い! お魚なのよね!……
残念で仕方がないわね
あ〜っ!悔しい! 悔しい!
もうハンカチを噛んで三角にしちゃって悔しがりたい気分よ〜っ!!!
「えっと?大丈夫なのか?何か不都合でも?」
「い〜え何も無いわよ!特に何もありませんのでお気になさらず!オーホホホっ!
それでアナタは何者なの??」
「お前達からすれば神のような存在に当たる者である。今回は1つお願いがあって貴方の前に現れたのだ」
「お願いって何なのよ?」
「実は貴方が今いる場所からそう遠くない所に勇者とその仲間らしき者が潜伏しており、彼らを始末して欲しいのだ!」
「何言ってんのよ! そもそもアタシ今は見ての通りお魚なので海から出る事が出来ないじゃない」
「うむ、言われてみればそうだなぁ それではこの能力を授けよう」
( 確認しました。新たな能力- 浮遊 (レビテーション)-を獲得に成功しました。)
( 確認しました。新たな能力- 呼吸法-を獲得に成功しました。)
でも勇者達をどうこうするって話は受けるつもりないわよ
「いや実はその勇者なんだがこれがまたなかなかいい男でな……まぁダメだと言うのなら仕方がないので他に当たるとしよう」
「あらやだわ〜!?
もうなんでもっとはやくそれを言わないのよ〜!
それなら見てきてあげても良いわよん♪」
さて、どのくらいレベルアップしているのか気になったので一度鑑定スキルで自信のステータスを確認してみようかな
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名称 なし
種族 深海魚
Lv30
HP725 MP0 SP500
攻撃408 防御509 速さ470
装備
無し
スキル
虚空庫、鑑定Lv3、探知Lv3、自動回復 Lv3、念話Lv3、能力吸収Lv3、念力Lv3、透明化Lv3、毒付与 Lv2、浮遊Lv3、呼吸法Lv3、硬化 Lv2、倍化Lv3、炎念力Lv3
進化:条件を満たしていません
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おーっ!!
ものすごくアップしてんじゃないのさ?
「満足頂けたかね」
「ところでその勇者とやらはどこにいるのさ アンタの能力で場所を示してくれないかしら」
「うむ、いいだろう」
男の掌から白い光が出て真っ直ぐ飛んで行った
光が飛んだ方向へ指差して魚をドヤ顔で見ている。
「ねぇっ 最後に1つだけ聞いていいかしら?」
「かまわない、何でも聞くがいい」
「アタシを転生したのはアナタなの?」
「イヤ私ではない、もっと上の者が選定している」
「そう」
魚は無言で頷き、男も頷き返した。
すると海の底ですぐに目覚め
魚は勢いよく水面 から飛び出し、浮遊で輝く光を追いかけ、勇者のところへ向かって行った。
それにしても胡散臭い奴だったわね?
全く信用しょうとは思わない……けど今のアタシじゃ何も出来ないのよね…でも目標が出来たわ
1つ目はこの世界について知る事
もし勇者とやらが話の通じるヤツならば共にいろんなところへ行って情報収集してもいいわね
2つ目はさっきの神様気取りの奴らについて知る事
さっき他にもアタシみたいな転生者がいるような事言っていたわね〜?
だったらアタシ以外にも疑問に思うヤツはいるハズだわ! そういう連中を探しだす。
もしかしたら何か情報を得ているかも知れない
奴らの正体は何者なのか?
一体何が目的でこんな事しているのか?
そうこう考えているうちに目的地に着いたみたい
アラっ、おかしいわね??
さっき勇者って確か男って言ってたハズ
でも目の前にいるのは小汚い少女
そうよ!こういう時こそ鑑定スキルを使うのよ♪
少女に向かってロックオンし鑑定スキル開くと情報が開示された
【鑑定結果:メアリー:種族は人間、年齢は11歳。2年前に火事で両親を亡くし、本人は何とか一命を取りとめたが現在はカルロ村の村長の家の納屋で寝泊りしていると同時に虐待を受けている。
数分前、勇者 イ・ミンジュンは勇者にされた事が嫌で勇者の称号であるペンダントを引き渡しメアリーに付けた。】
続いてステータスオン!
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メアリー
クラス 村人
レベル 1
HP4 MP1 SP1
攻撃2 守り2 速さ1
スキル
なし
装備
ボロ布の服、勇者のペンダント
進化:条件を満たしていません
加護:古の精霊の加護
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何よ何よ何よ何よ〜!
こんな今にも死にそうな小汚い少女がターゲットって事なのかしら?
んじゃ、魔法陣の中で眠っている彼女に関してはひとまず置いといて、一通り作業が終わって帰ろうとしている勇者様にお訪ねしますかね〜っ♪
「ねぇアンタ達ちょっと待ちなさいな」
勇者イ・ミンジュンと騎士服姿のその仲間は後ろから聞こえた声により振り返ってあたりを見回すが誰もいない……
「ちょっと〜アンタ達どこ見てんのよ」
「さ……魚が喋ってるし、浮いてる?」
あらあら
頭上でアタシが浮いていた事に驚いて口を魚みたいにパクパクさせちゃってさ
「何なんだよ一体?」
「少し話を聞きたいだけよ。アンタ達、そこの子供に何をしたのさ??」
勇者の付き人が勇者を庇うように前に立った。
若くて真面目そうな騎士って感じね
「い…いや実は彼、勇者として国が召喚したんですがどうしても他にやりたい事があるらしく勇者の立場を捨てたいと言い出したので何度も話し合った結果、我々も仕方なくこの村の村長に誰か相応しい方をお願いしたら彼女を連れて来たんです」
下らない勝手な理由だわ!!そんなのアンタの勝手じゃないのさ!
それにあの子供が勇者の力を持ってしまうという事はアタシみたいな奴がまた勇者の特別な力を感知して攻めて来るかもしれない?
「だからといって押し付けはさすがにダメよね、しかも幼い少女に」
「いやっボク達は……」
念力で2人を宙に浮かべ、逃げられないようにした。
そして炎念力を使おうとしたその時、先程魔法陣の中で眠っていた火傷顔の少女メアリーが足を引きずりながら勇者達とアタシの間に入って来た。
「待ってください。勇者様達を許してあげて下さい」
少女メアリーはアタシの事をジーッと見て不思議そうに驚いた顔をした。
「あの…貴方はもしかして伝説の聖獣様ですか?」
「性獣ですって?…う〜んまぁ確かにそんな感じなのかしら、伝説になった覚えはないけど」
伝説の性獣ってどんなのよ一体???
とりあえず念力を解除すると
勇者達が駆け寄り、アタシの前で跪きだし頭を下げてきた。
何よコレ!意味がわからないじゃないのよ?
「偉大なるこの地を統べる聖獣様!
オレはカイラ・フォン・ヒンデンブルクと申します。どうかオレ達の話を聞いて頂けないだろうか?」
そこへ勇者達の元へメアリーが駆け寄り
「勇者様は何も悪くありませんよ。勇者様から顔の火傷と膝の治療費を頂けるという事なので私も承諾してやった事なんです。まぁ…確かに村長さんからは強引に押し付けられましたけど」
「メアリーさん……ありがとう」
あまり感情を表に出すのが得意ではないのか、控えめに微笑むメアリーを勇者は優しげな眼差しで見つめている
「ボクっ元の世界ではレストランで修行していたんです。いつか自分の店が持つ事が夢だったんです。
だからこっちに勇者として召喚されてもやっぱり夢を諦めたくなくて……
カイラもボクの夢に出資してくれるって言ってくれているのでボクは挑戦してみたい!自分の店の味をここの世界の人達にも食べてもらいたいんです。
あと、いつか店が成功したらメアリーさんにお礼がしたい」
ふ〜ん青っちろい夢ね!コイツ本当に勇者なのかしら? こんなニコニコした優男が……
「あの聖獣様?私、勇者様の夢の話を聞いて何か協力出来たらと思ったので むしろ少しでもお手伝いが出来て嬉しいです。
だからどうか勇者様を許してあげて下さい!」
「まぁいいわよただし1つだけ条件があるわ」
「そっ…それは何でしょうか?」
「メアリーちゃんとアタシに貴方の自慢の料理を
ご馳走するってのはどうかしら♪」
「そっ…そんな事当たり前じゃないですかーっ!
ボクは恩人であるメアリーさん、そして聖獣様からお金なんて取りませんので是非食べにロッペンハイマーの店へ来て頂きたいです。」
「えっ聖獣様だけじゃなく私も勇者様の作った料理を頂けるのですか??」
「良かったわねメアリーちゃん!」
せっかくなので勇者イ・ミンジュンと付き人のカイラにこの近くの町や首都についてなどこの国の事を教えてもらったわ。やっぱり情報収集しておかないとね♪
彼等は去って行き、アタシ達はその後ろ姿を見送った。