邪神ザミドとの最終決戦
海魔神官バジジが自らの命を捧げ、その血を吐きながら絶命した時、祭壇の奥に鎮座していた巨大な海神の石像がゆっくりと動き出したわ。石像の目が赤く妖しく光り、その全身から不気味なオーラが噴き出す。そして、石像が砕け散ると、その中から異形な姿をした邪神ザミドが姿を現したの。
「よくもバジジ様を…! 貴様ら、許さんぞ!」
邪神ザミドは、巨大な体から、強大な闇の力を放ち、アタシたちに襲いかかってきた。その威圧感は、バジジなんかとは比べ物にならない。ザミドの全身は漆黒の鎧に覆われてて、その鎧からは禍々しい闇のオーラが立ち上っていたわ。まるで深海の暗闇そのものが形になったみたいで、アタシの心臓がキュッてなるくらい怖かった。
「きゃああああ! なによ、この人! っていうか、神様なの? ちょっと、アーバイン! マジでどうするのよ!」
アタシはビビりながらアーバインに助けを求めた。アーバインは、ザミドの圧倒的な力にひるむことなく、静かに剣を構えたわ。彼の輝光剣アーマードシャイニングソードが、ザミドの闇のオーラに対抗するように、力強い光を放っていたの。
「覚悟しろ! 愚かなる人間よ!」
ザミドはそう叫んで、右腕を大きく振りかざした。すると、巨大な水流の塊がアタシたちに向かって放たれたわ。その威力は、地下1階のタコたちの攻撃とは比べ物にならないほど強力だった。
「ひゃああ! こんなの無理無理! アーバイン!」
アタシは叫んだ。アーバインは、水流を剣で真っ二つに叩き割り、その衝撃波でザミドの攻撃を相殺したわ。でも、ザミドの攻撃はそれだけじゃなかった。水流が消えたと思ったら、今度はザミドの体から猛烈な吹雪が吹き荒れたの。
「くっ、吹雪か!」
アーバインは、吹雪を剣で受け止めながら、少しずつ後退していく。アタシも、吹雪の冷たさに耐えながら、どうにかして反撃の糸口を探してたわ。
「これじゃ、埒があかないわ! 回復魔法を使えるって聞いたし、どうにかして弱体化させないと…」
アタシは、リアナちゃんからもらった輝きの玉のことを思い出したわ。輝きの玉には、邪神ザミドを弱体化させる力があるって言ってたもの。
「アーバイン! アタシに任せて!」
アタシはそう叫んで、吹雪の中から飛び出したわ。アーバインは、アタシの言葉を聞いて、すぐにザミドの攻撃を引きつけるように動いてくれた。ザミドは、アタシの存在に気づくと、アタシに向かって闇魔法を放ってきた。闇魔法は、アタシの体に当たると、体が痺れて動けなくなっちゃう。
「ふふふ…小賢しい魚め。私の闇魔法から逃れることはできんぞ!」
ザミドは、アタシを嘲笑いながら、闇魔法を連発してきたわ。アタシは、闇魔法を避けるために、必死に泳いだわ。そして、ザミドの回復魔法を阻止するために、毒付与ポイズンインフレクトLv2を放った。でも、ザミドは、アタシの毒なんて効かないみたい。
「無駄なことを。私の力の前では、お前たちの小細工など、無力だ!」
ザミドは、そう言って回復魔法を使い、アタシが与えたダメージを瞬時に回復させたわ。
「んもー、やっぱり効かないじゃない! どうすればいいのよ!」
アタシは焦った。このままじゃ、ジリ貧になっちゃう。その時、アーバインが叫んだわ。
「今だ、輝きの玉を使え!」
アーバインは、ザミドの攻撃を必死に受け止めながら、アタシに合図を送ってくれた。アタシは、アーバインの言葉に頷き、輝きの玉を握りしめたわ。輝きの玉は、アタシの手に収まると、さらに強く輝きだした。
「いっけえええええええええええええええええええ!」
アタシは、輝きの玉をザミドに向かって投げつけた。輝きの玉は、ザミドの漆黒の鎧に当たり、まばゆい光を放ったわ。ザミドは、輝きの玉の力に耐えきれず、絶叫を上げた。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああ!」
輝きの玉の光が消えると、ザミドの全身を覆っていた漆黒の鎧が、ボロボロになって剥がれ落ちていったわ。闇のオーラも消え去り、ザミドの体は、見る見るうちに弱体化していく。
「やったわね! アーバイン!」
アタシは叫んだ。アーバインは、アタシの言葉に頷き、ザミドに向かって突進していった。
「今だ! とどめを刺すぞ!」
アーバインは、ザミドに剣を振り下ろした。ザミドは、アーバインの剣を受け止めようとしたけど、鎧を剥がされた体では、その力に耐えきれない。アーバインの剣は、ザミドの体を深く切り裂いていったわ。
「ぐ、馬鹿な…! この私が…!」
ザミドは、信じられないといった様子で、アタシたちを見てた。その時、アタシの体に不思議な力が満ちてくるのを感じたわ。アタシの魚の体から、光が放たれ、ザミドの体に吸い込まれていく。
「お前は…新たな魔神となる存在か…」
ザミドは、アタシの体に宿った力に気づいて、静かに言ったわ。
「…かつて、私を封印した勇者たちのように、お前もいずれ、新たな勇者と対峙する時が来るだろう。未来が見える…すでに新たな勇者は誕生している。いつか…将来、お前と対峙するであろう……ぐふっ…」
ザミドは緑色の血を吐き、絶命したわ。その言葉は、アタシの心に深く突き刺さったの。
「なら、返り討ちにしてあげるわよ勇者だろうと……なんだろうと」
( 確認しました。新たな能力- 浮遊 (レビテーション)-を獲得に成功しました。)
お、新スキルかな??……
ザミドを討ち取った後、しばらくすると海の女神イケと精霊王メルニーナが姿を現した。
イケはアタシたちに優しく微笑んだ。
「…2人ともよく…やってくれた。君たちには…本当に…感謝してます。」
イケはアリアの頭を優しく撫で、メルニーナが勇者の剣の役目が終わったことを告げた。
「…それは返してもらおう、また、誰かが…この世界を…救う時まで…な!」
メルニーナは輝きの玉を光で包み込み、どこかへと送り返した。
「…みんな…本当に…ありがとう。君たちのおかげで…この海の底は…救われた」
メルニーナは深々と頭を下げ、イケも軽く頭を下げた。
「これで、海神の牢獄は完全に破壊されました。
この神殿に再び平和が訪れることでしょう。
私はいつまでもあなたたちを見守っています…
おお、すべての命を司る神よ!私の可愛い子孫たちに光あれ!さあ、お行きなさい!あなたたちが望む場所へ……地上へと……」
地上へのワープ部屋の場所を示すと2人はスッと消えていった。
とりあえずこれでアタシたちは海底神殿の攻略を終えて、神殿の外に出られたわ。そして、それぞれ別の道を進むことになったの。
「アーバイン、元気でね」
「うむ。お前もだ。いずれまた会うこともあるだろう」
アーバインは故郷へ、アタシは海神が言ってた新たな勇者を倒すために、旅に出ることを決意したの。
新たな旅の始まり。アタシは勇者と対峙する日を心待ちにしていた。
たとえ勇者がどんな恐ろしい相手だろうと今のアタシならやられる気がしない!!
待ってなさいよ、やられる前にやってやる!、




