人が増えるということ
前書き
町は、仕事でできている。
そして仕事は、人でできている。
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本編
1.提案
ロッペンハイマー・便利屋ギルド支部。
午前の依頼が一段落した頃、ミンジュンは椅子に腰を下ろし、深く息を吐いた。
「……よし。今日の山は越えたな」
「ええ」
セシリアは帳簿を閉じ、控えめに頷く。
「今のところ、混線はありません。
カルロ村側とも、報告は一本化できています」
「助かるよ」
ミンジュンは素直に言った。
「正直、
この数を“二人半”で回してるのは無茶だ」
「半ってなんですか」
「カイラ」
「誰が半分だ」
ちょうど扉を開けて入ってきたカイラが、
乾いた声で突っ込む。
「……でも、実際問題」
ミンジュンは真面目な顔に戻った。
「ロッペンハイマー側、もう一人必要だ」
セシリアは少し驚いたように目を瞬かせた。
「受付、ですか?」
「受付と、外回りの中継」
「……私、役に立ってますか?」
その問いは、少しだけ不安を含んでいた。
ミンジュンは即座に首を振る。
「立ちすぎて困ってるくらいだ」
「……」
「だからこそ、だ」
カイラが腕を組んだ。
「セシリアが“判断役”に専念できるように、
実務を分けたい」
「……なるほど」
セシリアは考え込む。
「それなら……」
そこで、ミンジュンが言った。
「孤児院に、相談しに行こうと思う」
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2.孤児院へ
午後。
ロッペンハイマー郊外。
孤児院の庭では、子どもたちが洗濯物を干していた。
以前よりも数が増え、動きにも余裕がある。
「……ずいぶん落ち着いたな」
カイラがぽつりと言う。
「便利屋の仕事が回り始めたからな」
ミンジュンは言った。
「食料も、修繕も、配送も。
“途切れない”ってのは、強い」
院長の女性が二人を迎えた。
「今日は、どうされました?」
ミンジュンは、率直に話した。
「……仕事を、お願いしたい」
「仕事、ですか?」
「はい。
正式な、賃金の出る仕事です」
院長は、一瞬言葉を失ったあと、
ゆっくりと頷いた。
「……ありがたい話です」
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3.候補
集められたのは、
年長組の子どもたち。
その中で、ミンジュンが目を留めたのは二人だった。
一人は、背が高く、落ち着いた目の少年。
「……アレンです」
「数字が得意で、
倉庫の在庫管理をよく手伝ってくれています」
もう一人は、小柄で快活な少女。
「私はミリィ!」
「配達と、掃除と、
人と話すのが得意です」
ミンジュンは二人を見比べた。
「二人とも、
“仕事”だと分かってるか?」
「はい」
アレンは即答した。
「働いた分、責任がある。
報告も、確認も必要です」
「私は!」
ミリィが手を挙げる。
「怒られても、ちゃんと直します!」
その言葉に、
カイラが小さく笑った。
「……十分だな」
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4.役割分担
ギルドへ戻り、
セシリアを交えて話し合いが行われた。
「アレンくんは、
便利屋の“内勤補助”」
「倉庫、依頼の整理、
カルロ村との報告確認」
アレンは背筋を伸ばした。
「はい。
必ず、帳簿は二度確認します」
「ミリィちゃんは?」
セシリアが尋ねる。
「受付補助です!」
ミリィは元気よく答えた。
「来た人の案内、
依頼票の受け渡し、
簡単な説明まで」
「……大丈夫?」
セシリアが少し心配そうに言うと、
「セシリアさんの後ろで、
全部見て覚えます!」
その言葉に、
セシリアは小さく微笑んだ。
「……お願いします」
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5.初日
翌日。
便利屋ギルドの中は、
明らかに“音”が増えた。
紙をめくる音。
足音。
小さな声での確認。
「次の依頼、こちらです!」
ミリィが依頼人を案内する。
「少しお待ちくださいね」
セシリアは、
以前よりも落ち着いて全体を見ていた。
「……助かります」
ぽつりと漏らす。
一方、奥では。
「この報告、
時間がずれてます」
アレンが指摘する。
「カルロ村側は完了済み。
こちらの手配は不要です」
「……よく気づいたな」
ミンジュンが感心する。
「数字、好きなので」
淡々とした答えだった。
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6.夜
仕事が終わり、
帳簿を閉じる音が重なる。
「……今日、混線ゼロです」
セシリアが言った。
「……すごいな」
ミンジュンは素直に言う。
「人が増えると、
仕事は軽くなるんじゃない」
カイラが続けた。
「精度が上がる」
ミリィは椅子に座り、
へとへとになりながらも笑っていた。
「明日も、来ます!」
アレンは静かに頷く。
「続けます」
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エピローグ
夜のロッペンハイマー。
便利屋ギルドの灯りは、
今日も最後まで消えなかった。
帳簿には、新しい名前が並ぶ。
・受付補助:ミリィ
・内勤補助:アレン
セシリアは、それを見つめ、
小さく息を吐いた。
「……一人じゃ、なかったんですね」
ミンジュンは頷く。
「最初から、だ」
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後書き(作者視点)
“人が増える”回でした。
戦力ではなく、生活の重みが増える話です。
次は――
この体制が外からどう見られるのか。
あるいは、試される仕事が来るかもしれません。
続きも、このまま行けます。




