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「村に、連れが増える」

前書き


村は、

人が集まる前に――

まず、場所が決まる。


 ミット打ちが一段落した頃だった。


 村の入口――

ロッペンハイマー側から伸びる土の道の向こうに、

三つの影が見えた。


 いや、四つだ。


 先頭を歩くのは、

白と茶の毛並みを持つ牧羊犬。


「……チューリップか」


 次の瞬間、低い声。


「ここか」


 ヨハンだった。


 その横に、アルス。

 少し遅れて、ボミエ。


 三人とも、旅装のまま。

 だが足取りは軽い。


「やはり来たか」


 ミンジュンが言うと、

ヨハンは周囲を見回し、鼻で息を吐いた。


「……噂以上じゃな」


 アルスは黙って、村を観察している。

 ボミエは、目を丸くした。


「ニャ……一日でこれはやりすぎニャ」


 チューリップが、誇らしげに尻尾を振る。



 ミンジュンは、三人を連れて村を歩いた。


「まず、ここが中心だ」


 村の中央広場。

 今はまだ何もない、踏み固められた円形の空き地。


「将来は井戸か、掲示板か、集会用だな」


 広場の南側。


「ここが居住区」


 すでに家が五軒。

 同じ造りだが、配置はずらしてある。


 風向き。

 日当たり。

 通路幅。


「間隔は最低五メートル。

 火事対策だ」


 ヨハンが、静かに頷いた。


「合理的じゃ」


 居住区の東。


「作業小屋と倉庫予定地」


 今は小屋が二つ。

 一つは道具用、もう一つは食料仮置き。


「倉庫は増やす。

 冬前に三つ欲しい」


 ボミエが口笛を吹く。


「本気で村ニャ……」



 さらに歩く。


 居住区から北へ、約三百メートル。


「畑だ」


 すでに耕された区画が、帯状に広がっている。


「水は?」


 アルスが聞く。


「西に小川がある。

 徒歩五分」


 指差す方向。


「飲料用は上流。

 洗い物と農業用は下流に分ける」


 アルスは、何も言わず納得した顔をした。



 村の西側。


「この先、一・五キロで森」


 針葉樹と広葉樹の混合林。


「薬草、木材、狩り。

 ただし深入りは禁止」


 ヨハンが低く言う。


「魔物は?」


「奥に行かなければ小型だけだ」


 さらに南西。


「二キロ先に湿地帯」


 完全な沼ではない。

 だが足を取られる。


「近づかない。

 害獣と病気の温床だ」


 ボミエが真顔で頷いた。


「了解ニャ……」



 最後に、村の北東。


「ここ」


 何もない、少し高台。


「見張り台予定地」


「……なるほど」


 ヨハンが初めて、はっきり笑った。


「防衛線も考えておるな」


「考えないと増える」


 ミンジュンは、遠くを見る。


 家。

 道。

 畑。

 ガイコツ。

 獣人。


 そして――

 自分たち。



「で」


 ボミエが言った。


「ワシらは?」


 アルスも、ヨハンも、ミンジュンを見る。


 チューリップが、当然のように座った。


「……宿、取るより」


 ヨハンが口を開く。


「ここで良くないか?」


 ミンジュンは、少しだけ考え――


「空き地はある」


 それだけ答えた。


 アルスが、小さく頷く。


「十分」


 ボミエは笑った。


「じゃあ決まりニャ」


 チューリップが、

「ワン」と一声。


 村に、

また一歩、音が増えた。


村は、

説明できる場所になったとき、

初めて“帰れる場所”になる。



次は

•誰がどこに住むか

•見張り・畑・調理・警備の役割分担です。

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