「休みの日、村にて」
休みの日ほど、
村は増えている。
本編(ミンジュン視点)
休みの日だ。
店の看板は裏返し。
鍋も仕込みも、今日はなし。
それでも体は勝手に動く。
ミットを担いで、裏口から外へ出た。
「……さて」
魔法陣のある方角へ向かう。
ロッペンハイマーから開拓村までは、今や一息だ。
光が一瞬、足元を包む。
――転移。
土の匂い。
朝の冷えた空気。
……そして。
「……増えたな」
思わず、声が漏れた。
昨日まで更地だった場所に、
家が三つ。
しかも全部、きちんと建っている。
壁は真っ直ぐ。
屋根も歪んでいない。
簡易とはいえ、住める造りだ。
道もある。
踏み固められた土の線が、家と家を繋いでいる。
小屋。
畑。
柵までできている。
「……一日で、やりすぎだろ」
原因は分かっている。
ネロだ。
そして――
家の影から、ガイコツが数体出てきた。
木材を運び、
石を並べ、
黙々と作業している。
無駄がない。
音も少ない。
「……おはようございます」
声をかけると、
一体がカクッと礼をした。
いや、
増えてる。
昨日より明らかに数が多い。
「また召喚したのか……」
溜息が出る。
その時。
「ミンジュンさーん!」
元気な声。
振り返ると、
メアリーがこちらへ走ってきた。
後ろには、お魚先生。
「見てください! もう“村”ですよ!」
「……ああ、見てる」
見すぎるほど見てる。
「今日はお休みですよね?」
「だから来た」
ミットを地面に置く。
「体、動かすか?」
メアリーの目が、ぱっと明るくなった。
「はい!」
少し離れた空き地。
まだ建物のない場所だ。
ミットを構える。
「力、いらない。
昨日と同じ」
「はい!」
――ドン。
踏み込みは軽い。
体重の乗せ方も、覚えている。
――ドン、ドン。
風を切る音。
乾いた打撃音。
……いい。
その横で、
ガイコツが家を建てている。
その向こうで、
獣人たちが畑を耕している。
さらに遠く、
何かを運んでくる影。
「……」
ミットを下ろし、周囲を見る。
家。
道。
人。
「また増えたな……」
独り言だった。
メアリーが首を傾げる。
「何がですか?」
「……いや」
少し考えてから言う。
「守るもの、かな」
メアリーは一瞬きょとんとして、
それから、にこっと笑った。
「じゃあ、強くならないとですね」
「……そうだな」
ミットを構え直す。
「もう一回」
「はい!」
――ドン。
村に、いい音が響いた。
休みの日ほど、
拠点は勝手に成長する。
そして、守る理由も増えていく。




