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幽霊屋敷② — 幽霊屋敷の正体 —

  ――んっ……


「先生、大丈夫ですか?」


 ゆっくりと目を開けると、すぐそばにメアリーの顔があった。

 心配そうに覗き込むその表情に、どうやら意識を失っていたのだと気づく。


「……あら。ここ、どこなのかしら?」


「あの……さっきの光で、ここに飛ばされたみたいです」


 体を起こすと、すでに周囲を警戒している者たちがいる。


「全員、無事のようだな」


 老騎士ヨハンが剣に手を添え、低く言った。


「転移直後に奇襲が来ないのは珍しいにゃ」


 ボミエが、床に描かれた文様をちらりと見下ろす。


「……でも、ここ。

 血の流れが変」


 アルスが、空気を嗅ぐように小さく眉を寄せた。


「新しい血じゃない。

 何度も“使われてる”場所だ」


「つまり、使い捨ての罠じゃないってことね」


 どうやら、設置型の転移トラップで間違いなさそうだ。





 広間を見渡すと、天井は高く、壁には装飾、

階段脇に西洋騎士の甲冑が飾られている。

 ……なんというか、ものすごく「ヨーロッパの館」って感じね。



「あぁっ! 先生、見てください!

 すごく立派な鎧が飾られてます!」


 メアリーが少し興奮気味に声を上げる。

 確かに、波打つ装飾や花を模した意匠が施されていて、かなり華美だ。


 私はちらりとカイラを見る。


「嗚呼……あれは、昔の戦争の名残だね」


「戦争?」


「隣国との戦があった頃、貴族たちは地位を誇示するため、

 ああいう過剰に装飾された鎧を競って持ったんだ」


「なるほど……派手なわけね」


「……先生」


 メアリーが声を潜める。


「その鎧、ガクガク動いてません?」


 次の瞬間。


 甲冑が、剣を掲げて一歩踏み出した。

 ガチャガチャと金属音を立てながら――明らかに“動いている”。


「……リビングアーマーか」


 しかも、それだけじゃない。

 奥から、不穏な音が重なって聞こえてくる。


 現れたのは、

 リビングアーマー三体。

 そして、スケルトン十体。


「先生……中の人は、どうしたんですか?」


「低級霊や低級魔が、鎧に憑依して動かしてるのよ」


「そうだね。リビングアーマーは、

 精神アストラル系の魔物に操作されていることが多い。

 聖魔法が有効だ」


「……なるほど」


ヨハンが、即座に前へ出た。


「……来るぞ」


 甲冑が、ガチャリと音を立てて動き出す。


「にゃー、典型的にゃ」


 ボミエが尻尾を揺らす。

 私は軽く腕を回す。

「魂じゃない。

 精神アストラルが鎧を“借りてる”だけにゃ」


「……やっぱり」


 アルスの赤い瞳が、黒い影を捉える。


「鎧の中、空っぽだ。

 でも、動かしてる“何か”はいる」



 リビングアーマー三体。

 スケルトン十体。


「前に出すぎるな、メアリー」


 ヨハンが低く言う。


「じゃあ、試してみましょうか」


 念力サイコキネシス


 リビングアーマー三体をまとめて宙に浮かべ、

 岩壁へと何度も叩きつける。


 ガシャン、という音と共に、鎧の中から

 黒い上半身だけの魔物が現れた。


 影のような姿。

 目も鼻もない、ただの輪郭。


【鑑定結果:シャドー

 実体を持たない精神系魔物。

 物理攻撃は無効。聖属性が有効。】


「……やっぱり、厄介ね」


 スケルトンとは違う。

 あれは物理が通じる分、まだ対処できる。


 だがシャドーは、すり抜ける。


「メアリーちゃん」


「はい!」


んっ……

「先生、大丈夫ですか?」


 ゆっくり目を開けるとすぐそばにメアリーがいてアタシを心配そうに見ている。


「アラッここは一体どこなのかしら?」


「あの……何かさっきの光によってここに飛ばされてしまったようです?」


「ああ、おそらく設置型トラップの類だろうな」


 少し離れた所にカイラもいた。

 どうやらアタシ達はさっきの魔法によって先程いた一軒家よりも広い建物の中にいるようだ。

 何かこの部屋ものすごくヨーロッパの館って感じの雰囲気ね〜


 とりあえず周りをぐるっと見渡すと目の前の階段の横に西洋騎士の甲冑が飾ってある。

 それを見たメアリーが少し興奮気味になり出した。まあ確かに身分の高い人がつけてそうね


「あぁっ! 先生コレを見て下さいよ。ホラっすごく立派な鎧が飾られていますよ?」


 甲冑の表面には、波型模様や、花を模した装飾が施され、非常に華美で仰々しい……かなと思って

 アタシはチラリとカイラの方を見ると……


「嗚呼っ あれは昔、隣国との戦争があった時に貴族が自分の地位を示すために、ふんだんに装飾を施した鎧兜を所有した名残りなんだよ」


「アラっそうなのね〜 確かに装飾が派手ね」


「アレ、 先生何かこの鎧ガクガク動き出しましたよ?」


 いきなり目の前に置いてある高級鎧は剣を掲げ、足を一歩踏み出すとガチャガチャと動き初めた。


「リ…リビングアーマーだったのか?」


 それって確か…意思を持って行動する動く西洋鎧じゃないの?あと奥から何やら不穏な物音が聞こえて来たのでアタシ達3人はすぐに身構えちゃったら

 リビングアーマー3体、スケルトン10体がアタシ達に向かってガチャガチャと歩いて来ているわね



「先生、何で鎧がガチャガチャ動いているんですか? 中の人はどうしたんですか?」


「さっきの幽霊レイスみたいな低級霊や低級魔が鎧に憑依しているのよ」


「そうだ! リビングアーマーはだいたいは精神アストラル系の魔物によって操作されているのでターンアンデッドなどの聖魔法などがよく効くとか……」


「んーあらそうなの

 じゃちょっと試してあげるわよ」


 念力サイコキネシスでリビングアーマー三体を宙に浮かべ何度も岩へぶつけると中から黒い上半身だけの黒い体の魔物が現れた。しかしそれは目鼻立ちはなく、ただシルエットだけが地面から生えている。その黒い魔物にロックオンさせて鑑定スキルで確認して見る。


【鑑定結果:シャドー

 実体を持たない精神系魔物なので攻撃力はあまり高くないが物理的な攻撃手段が無く聖属性の魔法などが非常に有効的である。】


 こちらからの攻撃は、純粋に物理的なものは通らないだって? けっこう厄介な相手じゃないのさ!

 それってたとえば、スケルトンはただ頑丈で死にづらいが物理的な攻撃は通じる。つまりは速度や力に優れているとはいっても、ただの人間だって集団でかかればどうにかなるって事よね。

 だが、シャドーが相手だとそうはいかない。

 物理攻撃しかできない場合、すり抜けるのでどうにもならないのよね。


「アタシ達がシャドーと戦うのでメアリーちゃんとヨハン爺、アルスはスケルトンの相手をしてくれるかしら?」


「ハイ先生!」


「了解です!」


「骨の群れはワシらが引き受ける」


「お願いします、ヨハンさん!」


 剣が閃き、スケルトンの動きを封じる。


「先生、鎧の中身――出すにゃ!」


「了解!」



念力サイコキネシス


 鎧を宙に浮かせ、叩きつけると、

 黒い影――シャドーが姿を現す。


「……やっぱり」


 アルスが一歩踏み出す。


「物理は通らない。

 でも“意識”は薄い。

 こいつら、命令されてるだけだ」


「ネクロマンス系の匂いがするにゃ」


 ボミエが、耳を伏せた。


「術者が近いにゃ」



 その瞬間。


「――おいおいおい」


 背後から、男の声が響いた。


「人の家に勝手に入って、何してんだ?」


 振り返ると、黒いローブを纏った銀髪の男が立っている。

 手には、先端が獣の頭骨のような杖。


 その隣には――


 全身鎧を着た骸骨。


(……あら?)


「ちょっとアンタ。

 アーヴァインじゃないの?」


「何……?

 なぜ貴様が我の名を知っている」


「海底で一緒に戦ったでしょ。

 水竜とか、海猿とか邪神とか」


「……おお。

 思い出したぞ。あの時の“魚”か」


 メアリーとカイラが、何とも言えない表情でこちらを見る。


(そりゃそうよね……)


 話し合いの末、奥の客間へ移動。

 銀髪の男はネロという死霊術師ネクロマンサーだった。


 仕事を求めてワーグハウゼンへ来たが、

 雇われず、腹いせに怪異を演出していたらしい。


「……つまり、悪意というより」


「寂しかった、ってやつだな」


 カイラの言葉に、ネロは黙って視線を逸らした。


 



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