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月の輝く夜に

ゴロゴロ…ピカピカッ!ドドーン!


 突然、空が裂けるかと思う程の音を立てて雷が鳴り響き、ザーッと大雨が降って来た。


 アタシは念力サイコキネシスで木と葉っぱの傘を作り、メアリーに渡した。


「神さまが怒ってる?」


「違うの、これは自然現象なのよ」


 雷の発生する原理を説明したんだけど

 メアリーにとってはチンプンカンプンだったみたい


「あの、聖獣様はお一人で旅をされているのですか?もしよかったら私もお供に連れて行って下さいませんか?」


「えっ!何でよ??」


「実は私、家がなくて納屋で寝泊まりしていまして

 その…何処か住み込みで働かせてもらえる所を探したいのですが」


 うーんまぁ……考える余地はあるわね〜 そりゃ彼女は勇者の称号は持っているし何よりこの世界の事を少しでも知っている人が一緒にいると今後は色々と助かるだろうしね。


 あと………さっきの勇者達から色々と聞いたんだけどまずこの異世界には、人間に近い知性を持った異種族が多数存在するらしい。そして、魔物と呼ばれる、人に害をなすものも存在しているって……知ってるわよだってアタシこそがまさにそうじゃないのよ!


 次に今アタシ達がいる場所なんだけどシルヴェニア王国って国の領域内でここから30キロ程南西にロッペンハイマーという町があるそう。

 この国で王都の次に人口の多い町でこの辺りの領主様もそこに住んでいるらしい。しかも貴族にしては珍しくとても市民から尊敬されている人格者なのだとか爵位は男爵で名前はノイエ・フォン・ヴァイツゼッカーだって

 あと、意外だったのが人々のスキル保持数が少ないこと。ほとんどの人が持っていないかもしくは自分の作業用スキルだとか


 そしてファンタジーの定番である魔法なんだけど

 コレも残念ながらみんながドンパチ魔法が使えるわけでも無いらしく魔法使いの数も少ない、使えてもせいぜい生活魔法といった所だそうだ。


______________________


 メアリーに案内されて彼女が住む村に行く事になった。彼女は孤児らしく村長の家にある納屋で寝泊りしながら掃除女中として仕方なしに雇われているそうよ。それにしても納屋って何よ、 彼女の事を馬か豚だとでも思っているのかしら?

 まあ、彼女の着ている粗末なボロ布服を見ればここでどういう扱いをされているのか何となくわかる。それに臭いも……酷いわね特に髪の毛……

 彼女の髪は手入れどころかお風呂に入ってないんでバサバサでかなり傷んでるんだろうね。顔も体もよく見るとあちこちに痕跡が目につくし何より火傷の跡が特にひどいわ


 あと彼女、少し知識的な事を聞くと途端に答えられないのよね。

 元の世界ならこのくらいの年代の子は学校で勉強しているのでそこそこの知識はあるハズだけどこの子は………きっと


「ねぇメアリーちゃん、あなた昼間はちゃんと学校へ行ってるのかな?

 アナタくらいの歳の子は将来の事を考えるとやっぱり学校へ行ってたくさんお友達を作ったり勉強した方がいいと思うわ」


「メアリーで構いませんよ

 学校へ通えるのは町に住む貴族様や領主様の子供だけなんですよ。私、昼間はいつも動けなくなった老人の世話をしたり、村のゴミを集めて捨てたり、糞尿を集めて捨てる仕事をしたり、一生懸命やってるんですが……」


「老人の介護にゴミ処理にトイレ掃除!!偉いじゃない?アナタそれは大切な仕事よ。誰にでも出来る事じゃないわよ。胸を張りなさい!」


「といれ…とは何でしょうか?

 すいません私にはよく分からないです。」


 彼女の両親は2年前、家が火事に遭い火傷が原因で病死しており、そして彼女も顔に酷い火傷を負いそれが村全体での迫害に拍車をかける事となったそうよ。全くひどい連中ね! 親がいない事をいいことにこんな小さな子供にそんな仕事をさせて……

 両親がもし生きていたならこんな目には合っていないはず…


 村に着いたのだけど思った通りね、どう見ても現代とは思えず良くて近代、悪ければ中世かそれ以前の文化しかないようだった。それに雰囲気が暗いわ。あとなんだか視線を感じるわね。

もう既に日も落ちて、暗いのは当りまえなんだけれどもなんだか夜のせいばかりでは無く、村全体がやけに寂しく感じられる。 何というか人々の活気というかそういったものがまるで感じられないわね。

 それにしてもこの村、農業や林業をやっているようにも見えないし店があるわけでも無いのよね。 一体どうやって生計を立てているのかしら?

 家屋は剥き出しの木と、固めた土……わらぶきの屋根もあるのかフーン簡素な家々ね。


「私が寝泊りしている納屋はこっちです」


 メアリーは足を引きずりながら歩き出した。

 どうやら膝が悪いらしいので左膝にロックオンさせて鑑定スキルで確認して見る。


【鑑定結果:メアリーの左膝:前十字靭帯損傷の為上手く歩く事が出来ない為、村で馬鹿にされイジメに遭っても自力で逃げる事すら不可能である。】


 その彼女の痛々しい後ろ姿を見ていると、物悲しい気分になる。誰も彼女を助けようとか思わないのかしら? 彼女の後ろを付いていきながら、村の中を見て回ったけど想像した通り、近代的な文明を感じる事は出来なかったな、どちらかというとアフリカとかにありそうな最貧困地域って感じかな?

 そこへいかにも村人A、Bって感じのマヌケ面の

 どんくさい感じの少年2人がゴソゴソと現れたのでアタシは透明化して見守る事にした。


「オイ見ろよウンコマンがいるぞ」


 ハァっ何がウンコマンよ?

 よくもまぁそんな事言えるわねこのおかっぱブタまんじゅうは?

 そもそもメアリーちゃんは女の子だし


「違うよコイツはモンスター人間だって〜なぁモンスター人間」


 モンスター人間ですって?自分のことを棚に上げてよくそんな事言えるわねこのモヤシ男は?


 村の少年の1人が石を投げて来たので念力サイコキネシスで石の飛ぶ方向を変えて投げた本人に当ててやったわ。


「イテーっ何でオレに当たるんだよ?」


 女の子をウンコマン呼ばわりした罰よ。

 念力サイコキネシスで肥溜めへダイブさせてあげるわ。さあ行ってこーい!


「何だ体が勝手に?うわぁーっ助けて!!」


 ドボーン


 よっし!キモメンコンビをやっつけたわよ!

 アラっ 彼等が勢いよく肥溜めに飛び込んだのでメアリーの足に少しかかっちゃったのでアタシはスキル倍化で体を大きくしてメアリーを念力サイコキネシスで背中に乗せる


「えっ何ですか体が浮いて…」


「メアリーちゃんゴメンね〜今からちょっと湖まで行って水浴びしに行こうか」


「あっはい」


 アタシはメアリーを乗せて空を飛び、近くの湖で水浴びする事にした。


炎念力パイロキネシス


 メアリーが風邪を引かないよう服を乾かしてあげようと念力サイコキネシスで木を集めて焚火を作った。


 そこにはパチパチと火の粉がはねるのを見つめながらリラックスした時間があった。


「あっ見て下さい聖獣様、お月さまですよ」


「えっアラもうこんな時間なのね」


 上を見上げると満天の星空の中に、満月がぽっかりと浮かんでいた。

「アラっ今晩は満月なのね。それにしても大きいわねこれがスーパームーンってやつなのかしら。」


 立ち上がって珍しいそうに湖の上に浮かんだ満月を言葉もなく見つめているメアリー

 アタシはまた倍加して念力サイコキネシス

 メアリーを乗せた。


「メアリーちゃん!もっと近くで見に行こうよ?」


「はい!」


 アタシ達は浮遊レビテーションで森林から離れ、空を飛んで満月に近づいて行った。


 そこには絶景があった

 満点の星々が夜空を輝き照らし、それが巨大な満月をさらに美しく魅せている。その吸い込まれるような輝きに2人は興奮と感動に打ち震えていた。


「すごい!すごい綺麗ですこんなの初めて見ました聖獣様?」


「その性獣様ってのやめてくれないかしら」


「分かりました聖獣様! あの聖獣様のお名前は何ですか?」


 全然っ分かってないし


「名前はないわよ」


「じゃ私がつけても良いですか

 えっとそれじゃ〜♪お魚先生なんてどうですか?」


 名前を聞いたその瞬間お魚先生は輝き出した


「そうだ!

 ねぇメアリーちゃんはジェットコースターって知ってるかな?」


「ジェ…何ですかそれは?」


「こういうヤツよ!」


 アタシはメアリーを乗せたまま90℃の角度で高速落下した。


「うわ〜っ!!」


 メアリーは両手を上げたまま叫んでいる。


 そこで急にクルクル回転したり、カーブを曲がるように飛んだりして最後に回転宙返りでおしまい♪


「ハイっおしまい!メアリーちゃん怖かった?」


「いえっ!こんなの初めてですよ。とっても楽しかったです。今もまだワクワクが止まりません!」


「ねぇメアリーちゃん、さっきの一緒に旅する話だけどやっぱりアナタにお願いしようかしら?」


「ホントですか!私嬉しいです。」


 思いっきりはしゃいだ後メアリーは納屋にもどりすぐに眠りについた。

 それを少し離れた所で見守るお魚先生


 そうねもしアタシが男として生きていく道をえらんでいたらこれくらいの年代の娘がいてもおかしく無いわよね


 父と娘か、以外に悪くないわね


 このきっとさっきみたいに誰かと思いっきり楽しんだりした事もないんでしょうね


 コツン!コツン!


 誰かの気配を察知したので急いで透明化した


 そこへ片側の壁に片手をつきながら、危い足取りでバーコード頭の村長が木の棒を持って入ってきた

 フラフラしながらやって来て大声でがなりたてた。

「おい起きろ糞ガキ〜っ⁉︎」


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