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074_大国との接触(破)

・コミック1巻発売中

・小説1巻発売中

どうぞ、読んでください。

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 074_大国との接触(破)

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 ウインザー共和国のブルドング州アラゴス地方に入った僕。

 追撃戦を行っていたレオンと義兄ザバルは、ウインザー共和国軍がたてこもるロットジャグ城を包囲していた。

 戦力は圧倒的にこちらが上だけど、ロットジャグ城は山の上に建てられた堅城。城攻めをすれば、それ相応の被害を覚悟しなければならない。

 僕はレオンと義兄ザバルを呼び、軍議を開くことにした。


「まずは、レオンとザバル。先の戦い、ご苦労であった。両名の活躍に、必ず報いると約束しよう」

「ありがたきお言葉」

「感謝いたします。陛下」


 彼らにだけではなく、今回出征した皆に褒美を与えないといけない。

 国王というのは、非常に面倒な職だとつくづく思う。

 だって、働きにあった褒美を与えないと、臣下に不満を持たれる。それに、しっかりと褒美を与えても、他の人と差があると不満に思われてしまう。


「では、ロットジャグ城をどのように攻めるか、軍議を始める。シバ・シン、進めよ」

「はっ」


 シバ・シンが立ち上がって、地図を広げた。

 その地図はかなり精巧に描かれている。

 地図は戦略上、非常に重要なもの。こんな精巧な地図、どこで手に入れたのかな?

 いや、手に入れたのではなく、シバ・シンの手の者が描いたのか。


「ロットジャグ城の攻め口は、4カ所。どこから攻めても、それなりの被害が出ると思われます。よって、4カ所を同時に攻め立て、敵の兵力の集中を防ぎ、休まず攻め立てることで疲弊させます」

「なるほど、少ない数で複数の防衛をしなければならないため、疲弊させやすいというわけか」

「はい。こちらは交代で攻めます。さらに、敵を無理に攻めるのではなく、疲弊させるのが目的ですので、昼夜問わず攻めます。さすれば、数日で落ちましょう」


 シバ・シンの案はえげつない。昼夜問わず攻められては、休むことも寝ることもできないのだから、疲弊は促進されるだろう。

 シバ・シンが味方でよかったと、つくづく思う。

 でも、この作戦では僕のいいところがない。せっかく出てきたのだから、僕の力を使って、味方の被害をさらに少なくしたい。


「シバ・シンの案は素晴らしい」


 僕がそう言うと、皆の視線が集まった。


「だけど、もっと面白い案がある。聞いてくれるか?」

「もちろんです。面白い案をお聞かせください」


 シバ・シンの案を否定することになるのに、シバ・シンはまったく意に介していない。


「余の案は―――」


 僕は皆に作戦を語って聞かせた。

 皆はポカーンとした後に、笑いが起こった。


「なるほど、それであれば、被害は最小。まったくもって、陛下を敵にしたウインザー共和国の者たちに同情を禁じえません」

「誠に」


 カルモンが楽しそうに語り、レオンが同意する。


「陛下の作戦であれば、共和国の使者がやってくる前にロットジャグ城を落とせましょう。反対する理由がありません」


 シバ・シンも作戦に同意。


「では、某に斬り込み隊長をお任せいただきたい」

「あいや待たれよ。その役目は某に!」

「いや、某にお願いしたします。陛下」


 義兄ザバルが斬り込み隊長を希望すると、カルモンとレオンもと言う。

 3人は誰が斬り込み隊長になるかで、バチバチと火花を散らした。


「え、余が斬り込むけど?」

「「「えーーーっ!?」」」


 義兄ザバルとカルモンとレオンが叫ぶ。


「陛下。それはさすがに容認できません」

「左様! シバ・シン殿の言う通りですぞ。ここは我ら3名から斬り込み隊長を選んでください!」


 カルモンの鼻息が荒い。


「陛下。我らの活躍の場を奪わないでいただきたい」


 レオンが腕を組んで、首を振った。


「陛下のお言葉であっても、それは聞けません」


 義兄ザバルも僕が斬り込むのは、反対。


「陛下。年寄りたちではなく、ここは若手の俺を斬り込み隊長に!」

「「誰が年寄りだ!?」」


 カルモンとレオンが、ガレリオンの言葉に反応した。

 反応するということは、2人が年を気にしているということだろう。

 その証拠ではないが、30代の義兄ザバルは反応しなかった。


 カルモンとレオン、そしてガレリオンが殴り合いの喧嘩を始めた。

 レオンとガレリオンでは、まだまだレオンのほうに軍配が上がる。でも、カルモンとレオンではカルモンに軍配が上がった。

 カルモンが2人の屍の上で高笑いをする。さすがは元剣聖。カルモンに勝てる者はサイドスにはいない。


「そんなわけで、某が斬り込み隊長をさせていただく!」


 勝ち誇ったカルモンが、高らかと宣言。

 義兄ザバルは喧嘩には加わらず、首を振って呆れていた。

 いつもでは困るけど、たまにはこういうのもいいと思う。今回はカルモンを斬り込み隊長に任命した。


 夜を待ち、僕は創造魔法を発動させた。

 地面に穴ができて階段も。

 僕が考えた作戦は、ロットジャグ城までトンネルを掘ること。

 創造魔法なら、それができる。


 地面を掘り進み、目を強化して上を見つめる。

 目を強化することで地面や岩を透過して地上が見える。これは、視力強化の副産物。


 ロットジャグ城の真下に到着したので、ここから上りのトンネルを掘る。

 階段をジグザグに設置し、どんどん上に掘り進む。

 昔なら魔力切れになっていたと思うけど、僕の魔力は今でも成長しているとスーラが言っていた。

 それに、精密な魔力操作ができるようになって、魔力を効果的に使えるため魔力切れになることはない。


「カルモン」

「はっ」

「あと1メートルほどを掘れば、地上に続く穴が開く。準備は?」

「問題ありません。いつでもどうぞ」

「分かった」


 カルモンの顔が怪しく歪む。

 これからカルモンという化け物の蹂躙劇が、ロットジャグ城で起こるのだ。


 魔力を込めて、最後の1メートルを掘った。

 地面に続く穴が開き、その穴からカルモンが率いる近衛騎士団がロットジャグ城内へと斬り込んでいく。


「歯向かう者は、斬り殺せ! 容赦はするな!」

「「「おおおっ!」」」


 カルモンの檄が飛ぶ。

 ロットジャグ城で寝入っていたウインザー共和国の兵士たちは、右往左往して統制がとれない。

 奇襲、しかも、城外からではなく城内からの奇襲に、混乱の局地だ。


 穴から続々とサイドスの兵士が城内へ入っていく。

 僕も行こうとしたら、腕を掴まれてしまった。


「陛下はこちらで、某と待機をお願いします」

「ザバル……」

「陛下はここまでトンネルを掘られ、十分に実績を残されました。あとは、臣下にお任せください」


 柔和な笑みなんだけど、目が笑っていない。

 どうやら僕の傍付きにされて、フラストレーションが溜まっているようだ。

 こういう目をする人には逆らっていけない。それは人間にとっての不文律なんだ。


「わ、分かったよ……」


 この日。夜明けを待たずして、ロットジャグ城は陥落した。

 僕は義兄の傍でその報告を聞いた。


 

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