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073_大国との接触(序)

【告知】

・コミック1巻発売中です。どうぞ、読んでやってください。

・小説1巻近日発売(7/30)。


※毎月第一火曜日にコミカライズ更新ですよ。

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 073_大国との接触(序)

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「おおっ! デカいなぁー」


 ワーカーと言われる普通のジャイアントアントは1・5メートルほど、ソルジャーは2メートルほど、そしてクイーンは4メートルほどの大きさになる。

 しかも、ワーカーは茶色でソルジャーは焦げ茶、クイーンに至っては真っ黒な体をしていて、禍々しい気配を惜しげもなく垂れ流している。


「サミエル。あれは余が殺る」

「はっ! 陛下の戦いを見て学ばせていただきます」

「余の戦い方は魔法ありきのものだ。あまり参考にはならないぞ」

「それもまた勉強にございます」


 サミエルは万を越すジャイアントアントの大群と戦い、ソルジャーを殲滅してひと皮剥けた感じだ。

 それに、従順になった気がする。

 元々、僕に従ってはいたけど、僕の力に疑問を持っていた感じ。それがなくなったんだと思う。


 グラムを構え、巨大なクイーンに向ける。


「グラム。大物だぞ」

「ひゃっはー! あんなのは、ドラゴンやゴーレムに比べれば、大したことはねぇぞ!」


 クイーンもやる気満々で、僕を見据えている。


「潰れろ、グラヴィティ5」


 ドンッ。5倍の重力がクイーンを襲うが、5倍ではクイーンは潰れなかった。


「まあ、この程度で潰れるとは思わなかったよ」

「ギィィィィッ」


 耳障りな鳴き声を発し、口から何かを吐き出した。

 飛んできた何かを飛び退いて避けると、それがジュワーッと音を立てて付着した地面を溶かす。


「蟻酸か。それもかなり高濃度の蟻酸のようだね」


 クイーンは5倍の重力をやや気にするそぶりを見せるも、蟻酸を何度も吐き出してくる。

 このままでは地面が蟻酸だらけになってしまう。それがクイーンの思惑なのかもしれない。

 蟻酸で地面が埋まってしまえば、僕の動きがかなり限定される。そうなったら、かなり僕が不利になる。そう思っているようだ。


「モンスターのくせになかなか考えているようだね」


 でも、僕は重力魔法もあれば、創造魔法だってある。さらに、身体強化もできるんだ!


「泥沼!」


 創造魔法で地面を泥沼に変える。

 体の半分以上が泥沼に沈み込んだクイーンは、5倍の重力もあって動くことができない。

 ただし、蟻酸攻撃はまだ続いているので、僕は動きを止めない。


「硬化」


 今度は泥沼を固める。体のほとんどが地面に埋まったクイーン。

 僕はそのクイーンの後方に回り込んで、グラムをその背に突き立てた。


「ギィィィィィィィィッ」


 クイーンの顔が真後ろを向く。それは僕を正面に収める角度。

 その口が開かれ、僕に向かって蟻酸が吐き出される。


「グラヴィティ15!」

「ギシャッ」


 15倍重力を発動させると、クイーンの顔が潰れた。

 グシャリッと顔が潰れ、吐き出そうとしていた蟻酸が漏れた。

 硬化で固めた地面にダラダラと垂れる蟻酸が、悪臭を放つ。


「お見事にございます。陛下」


 サミエルがもろ手を挙げて僕を褒め千切る。

 これでジャイアントアント討伐は終了。

 ジャイアントアントに追い立てられて、魔の大地から溢れ出してきたモンスターも討伐が完了している。


「スーラ、サミエル。すぐに北に向かう」

「すでに戦いは終わっているかもしれませんが、それでも向かいますか?」


 真面目秘書官のスーラが、そう口にした。


「それならそれで、事後処理をしないといけない」

「承知しました」


 僕たちは急いで北上した。

 巣の中には卵があったけど、その卵はスーラの分体に任せた。


 スーラが言ったように、共和国軍はすでに壊滅していることだろう。

 でも、事後処理は僕がしなければいけない。国の代表者として大国としっかりと交渉しないといけないのだ。


 以前からスーラを通じてウインザー共和国を調査していた。ここでウインザー共和国のことを少しおさらいしておこうと思う。

 ウインザー共和国はアスタレス公国を事実上属国にしていた大国。およそ300年ほど前に9カ国が集まって、ウインザー共和国を建国した。

 今のウインザー共和国に国王はおらず、大統領という国家元首が居る。

 9カ国が集まってできた国なので、9つの州から成り立っている国。その9つの州の代表者は統領と言われていて、元々は各国の王族だった。その9人の統領の中から大統領が選出される。

 つまり、小国が寄り集まってできた国を、今も各王族が支配しているのがウインザー共和国だ。

 はっきり言って、寄せ集め集団。9つの州で文化も価値観も違うという歪さ。

 だから、今回の出兵も賛成と反対の統領が居たと聞く。


 僕たちがアスタレス公国の北部、ウインザー共和国との国境付近に到着した時には、本当に戦いは終わっていた。

 戦場だった場所には、多くの死体が転がっている。だけど、その死体はウインザー共和国軍の兵士である。サイドス王国軍の被害は軽微だった。


「当方の被害状況ですが、死者は3名、重傷者は32名、軽傷者は178名です。重傷者と軽傷者に関しましては、エリクサーを使っておりますので、後遺症もなく完治しております」


 シバ・シンが読み上げた数値は、かなり少ない。

 相手は10万を越える兵力を用意してきた。こちらも合わせて8万ほどの兵力を用意した。

 そんな戦いで死者が3名なのは、少なすぎるだろう。もっとも、僕の軍の被害が少ないことに文句はない。


「対しまして、敵、ウインザー共和国軍の被害ですが、死者はおよそ2万、重傷者はおよそ1万、捕虜にしたのは重傷者を除きおよそ2万5000になります」


 10万の兵力が、死者重傷者合わせて3万の被害を出した。

 さらに、2万5000もの兵士が捕虜になったことと合わせると、総被害は5万5000になり、総兵力10万の半数以上の数だ。

 これは一般的に壊滅と言っていい被害である。


 ウインザー共和国はこの敗戦を受けて、どういった対応をしてくるだろうか?

 僕なら素直に負けを認めて謝罪する。この首一つで許してくれるのなら、国を保つために差し出すのも吝かではない。


「現在、レオン殿の第二軍とザバル・シルバーホック殿の軍が、追撃戦を行っております」


 両軍がウインザー共和国領に侵攻。これは予定通りの行動。

 アスタレス公国だけを奪った場合と、アスタレス公国とウインザー共和国の一部を奪った場合では、今後の意味合いが違ってくる。

 アスタレス公国だけだと、最悪の場合、ウインザー共和国が手を引く可能性がある。だけど、ウインザー共和国領の一部を得ることで、ウインザー共和国は後に引けない状況になる。

 僕が目指すのは、大陸の統一。僕にとってウインザー共和国はアスタレス公国と同等であり、地図上からその名を消す国なんだ。


「サミエル」

「はっ!」

「兵2万を与える。この北部を安定させよ」

「承知いたしました!」


 僕と行動を共にしたサミエルは、魔の大地で僕の力を間近で見た。僕の力を知った彼は、僕を裏切らないと思う。


「ボリレック、オレル、アステラス、ドレルの四名は、舌の根が乾かぬうちに、余を裏切った。これを許すことはない。そのつもりで対処せよ」

「はっ!」


 アスタレス公国と戦争になった時、いち早く僕に下った四名。だけど、彼らはすぐに僕を裏切った。

 アスタレス公国を裏切り、僕を裏切った。次はウインザー共和国を裏切ることだろう。そんな彼らを信用なんてできない。


「カルモン、シバ・シン。余と共にウインザー共和国に向かってもらう」

「はっ!」

「承知しました」


 僕はウインザー共和国のブルドング州アラゴス地方へ軍を進める。


 

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次の更新は8/25の予定です。

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