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072_ジャイアントアント殲滅戦

【告知】

・コミック1巻発売(7/21予定)

・小説1巻発売(7/30予定)

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 072_ジャイアントアント殲滅戦

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 草原だった場所にジャイアントアントの巣がある。草原だった(・・・)と過去形で話しているのは、そこにすでに草原がないからだ。

 草は全てジャイアントアントに食べつくされ、周囲には草一本生えていない。

 土が盛り上がった塔のような巣は、高さが100メートルはある大きなものだ。


「デカい」

「左様にございますな、陛下」


 僕が築いたサイドス城も大きいが、この巣の高さはサイドス城よりも高い。そんな巣を僕とサミエルが見上げていると、スーラが首を振った。


「大した大きさではありません。この数倍の巣を見たことがあります」

「この数倍って、どれだけのジャイアントアントがいたんだ?」

「およそ12万です。その時は3つの国が滅びました」

「じゅ……12万……」


 サミエルが絶句している。


「その巣と12万のジャイアントアントはどうなったのかな?」

「もちろん、巣は破壊しました」

「破壊……って、12万ものジャイアントアントがいたのでは?」

「ジャイアントアントは殲滅しました。皆殺しです」

「………」


 サミエルはまた絶句した。

 スーラのことだから、誰かのためではないと思う。多分、巣の近くをたまたま通りかかって、ジャイアントアントがスーラにちょっかいを出したんじゃないかな?

 サミエルに聞こえないように小声でスーラに聞いたら、そうだと返事が返ってきた。


「しかし、スーラ殿は若いのに博学ですな。陛下の側近になられるお方は違いますなぁ」


 サミエルはスーラが何かの本で得た知識だと、完全に思い込んでいる。スーラの正体を知ったら卒倒するんじゃないかな?


「陛下。お客様です」


 スーラの視線の先に、10匹ほどのジャイアントアントの姿があった。

 体高1・5メートルほどの茶色の体をしたジャイアントアントたちは、僕たちのほうに真っすぐ進んでくる。すでに僕たちを標的と定めているようだ。


「ジャイアントアントと戦端を開いたら最後、全滅させるまで戦いは終わりません。サミエル殿、覚悟はよろしいですね」

「は、はい」


 サミエルはゴクリと喉を鳴らしてから返事をした。


「サミエル。これを」


 僕はサミエルに槍を差し出した。


「これは……」

「ジャイアントアントの甲殻は非常に硬いと聞いた。サミエルの槍はモンスターとの戦いでかなり痛んでいるだろう。これを使うといい」

「某に……よろしいのですか?」

「それは余が創造魔法で作り出したものだ。ちょっとやそっとでは痛んだりしないはずだ。使ってくれ」

「ありがたき幸せにございます。このサミエル、感動に打ち震えております」


 サミエルは跪いて槍を受け取った。そんなに仰々しくしなくていいのに。


「それでは、蟻退治、開始だ」


 僕は重力魔法でジャイアントアントを圧し潰した。


「ギチッギチッ……」


 体を圧し潰したというのに、ジャイアントアントは耳障りな鳴き声を発した。


「仲間を呼んだようです」


 どうやら今の耳障りな鳴き声が、仲間に危険を知らせるもののようだ。


「きました」


 巣からぞろぞろとジャイアントアントが出てくるのが見えた。

 黒茶色の体をした虫の大移動は、見ていて気持ちのいいものではない。


「サミエル。行くぞ!」

「はっ!」


 サミエルに身体強化魔法をかけ、僕自身にも身体強化を施す。


「アルタ、駆けろ!」


 僕の声に反応し、アルタがジャイアントアントの群れに突撃する。その後をサミエルが僕の与えた槍を掲げてついてくる。


「はぁぁぁっ!」


 一気にジャイアントアントの群れに突っ込んだ僕は、グラムを振りジャイアントアントを屠る。


「てやぁぁぁっ!」


 サミエルも負けじと槍でジャイアントアントを突き刺す。

 あの槍はアダマンタイトとミスリルの合金製なので、ジャイアントアントの体内にある蟻酸が付着しても溶けることはない。もちろん、僕のグラムも蟻酸ごときで溶けるものではない。


 スーラもシルバーに乗って、上空から攻撃を開始した。

 青白い炎をばら撒き、ジャイアントアントたちを燃やしていく。スーラは狐火と言っていたが、青白い炎なんて見たことがない。

 スーラの引き出しには、いったいどれだけの不思議が詰まっているのだろうか?


 僕たちは無心でジャイアントアントを倒していった。100や200なら大したことはないが、さすがに1000を越えると疲れる。

 人間であれば恐怖を覚えて逃げ出すけど、ジャイアントアントにそういった様子はない。僕たちを殺すか、ジャイアントアントを殺し尽くすか、その二択しかないのだ。


「はぁ、ひぃ、ふー」


 サミエルは槍を杖代わりにしてなんとか立っている。僕もさすがに腕が重い。

 だけど、あれだけいたジャイアントアントで、動くものはいない。


「サミエル。大丈夫か?」

「は、はい……。なんとか生きております」


 生き残ったのが嬉しいのか、サミエルは涙と鼻水を流して破顔している。


「うわっ!?」


 上空100メートルほどの高さから僕のすぐ横に降り立ったスーラの姿に、サミエルが目を剥いているが、スーラは完全に無視している。


「スーラ。巣の中の状況はどうなっている?」

「ソルジャーが234匹。他に卵が1万以上あります。放置すれば、数日後には1000を超え、一カ月後には万を越える数に回復するでしょう」


 巣の中の状況を確認すると、スーラは無表情で答えた。


「よし、巣の中に入るぞ」

「えっ!?」


 サミエルの顔が絶望の色に染まる。


「巣の中にはジャイアントアントのクイーンがいる。クイーンを倒さないと、すぐに大量のジャイアントアントが生まれてくるぞ」

「う……。そ、そうですね……」

「なぁに、巣の中にはソルジャーと言われるジャイアントアントが、234匹いるだけだ。万を越えるジャイアントアントに比べれば、大したことはない」


 サミエルが真っ白に染まった。


「おーい、サミエルー。生きているかー?」


 ちょっと脅しすぎたかな? でも、これくらい笑って受け入れるくらいにならないと、サイドスの幹部にはなれないぞ。

 なんと言っても、カルモンを始めとして幹部たちは変人ばかりだからね。


「ほら、これを飲むんだ。体力が回復するぞ」


 創造魔法で体力を回復するポーションを創造した。怪我はしていないようなので、これで十分だと思う。

 僕も体力回復ポーションを飲んで、体力を回復させる。


「ぐえっ、不味い!」


 しまった、味を考えずに創造したから、すっごく不味い。


「陛下に頂いたものですが、かなり不味いですな」

「まあ、体力は回復するから、気合で全部飲んで」

「は、はい……」


 サミエルは鼻を摘まんで飲み干した。僕も一気に喉に流し込んだ。……不味い。


「よし、いくぞ!」

「承知!」


 体力が回復したサミエルは、槍を担いだ。

 そう言えば、巣の中は細い道になっているから槍は使いづらいかも。


「うおーっ! 今度こそ陛下にいいところをお見せしますぞ!」


 サミエルには狭い通路が逆によい感じらしく、取り回しが悪い槍を器用に扱ってソルジャーを串刺しにする。


「ハーッハハハハ! サイドス王国にサミエル・ボールクロスあり!」


 なんかハイテンションになってるね。まあ、いいか。


「おらおらおらぁぁぁっ!」


 サミエルは次から次に襲いかかってくるソルジャーを屠っていった。

 そして、とうとうクイーンのいる広い空間に出た。


 

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