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069_サイドス国王、貴族軍と戦う2

コミカライズ2話

明日更新です。

 


 アマリエの部隊が敵右翼と戦闘を開始した。

 カルモンが突っ込んだ敵本陣よりも、アマリエが戦っている右翼のほうが動きがいい。

 兵士の質ではなく、将の質による差だと思う。つまり、それだけ優秀な将が右翼を率いているということだ。ただ、率いている兵数が少ないため、その地位はあまり高くないと思う。


「シバ・シン。アマリエは苦戦しているようだな」

「アマリエ殿も将の器はありますが、相手のほうが1枚上手のようですな」

「そんな将がアスタレス公国の貴族軍にいたとはな……」

「優秀な人材は必ずしも有名というわけではありません。そういった人材を拾い上げることも、これからは必要になりますでしょう」

「そうだな」


 シバ・シンもそうだけど、無名でも優秀な人材はいくらでもいるということか。


「シバ・シン。余の目となり耳となり、そういった在野の人材にも目を光らせてくれ」

「承知しました」


 そうだ、スーラにも頼んでおこう。


『スーラ。今、大丈夫?』

『いいぞー』

『シバ・シンのような優秀な人材は、多いにこしたことはないと思うんだ。だから、無名な人材の情報を集めてくれるかな』

『なんだ、そんなことか。リスト化してやるから、シバ・シンにでも渡してやれ』

『もう人材を探していたの?』

『なんでも先読みするのが、できる奴の条件だぞ』

『それはスーラができる奴と言っているんだね?』

『ふっ、言わずとも俺は優秀だがな』

『……未来予知だっけ? あれとは違うんだよね?』

『バカ野郎! あれはスキルだが、先読みはプレイヤースキルだ!』

『なんで怒るのか分からないけど、共にスキルだよね?』

『ちっちっちっ。プレイヤースキルはスキルではない。才能と経験に裏づけられた能力のことだ』


 分かったような分からないような。まあいいや、あまり言うと、うるさいし。


「シバ・シン。アマリエの部隊をどうする?」

「左様ですな……。と私に聞きますが、陛下のお心は決まっておられるのでしょ?」


 バレていたか。やはり、シバ・シンは人の考えを読む天才だ。


「余がいく。シバ・シンには左翼を任せる」

「承知しました」


 頼もしい軍師殿だ。


「アルタ。いくよ」


 僕の言葉に反応し、アルタが嘶き加速する。

 僕に従うのは10騎の騎馬兵のみ。その騎馬兵もアルタの速度にはついてこれない。


 グラムを抜いて振りかぶる。


「はっはー!」


 グラムが歓喜して声をあげた。


「ザック・サイドス見参!」


 アルタがさらに加速し敵部隊に突っ込んだ。


「陛下!?」

「アマリエ。何も考えず前に進め!」

「は、はい!」


 敵の兵士をアルタで踏みにじり、グラムで切り飛ばし進む。


「サイドスの恐ろしさを、その身に刻むがいい!」


 僕が通った後に屍の道ができ、アマリエたちがその道を広げていく。


「私はアスタレス公国子爵、ボリス・アダマン! ザック・サイドス、その首をもらい受ける!」

「余の首はそんな鈍らな剣では切れぬぞ!」


 がっちりとした体格をした赤毛の20代後半の青年が、この部隊の指揮官のようだ。


 ボリスの剣をグラムで受ける。

 なかなか重い一撃だ。ジャスカがいた頃、鍛えてもらってなかったら、受けきれなかったかもしれない。


 このボリスは、間違いなく強者だ。


「私の剣を受けるとは、噂に違わぬ腕ですな!」

「ボリスのほうこそ、余と打ち合えるとは驚いたぞ!」


 ガンッガンッ。

 金属が打ち合う音というよりは、鈍器が打ち合ったような鈍い音がする。


「だが、残念だ」


 僕はわずかに首を振って見せた。


「なんだと!?」


 その瞬間、ボリスの剣が粉々に砕け散った。


「その剣では、このグラムといつまでも打ち合えるわけがないのだ」


 ボリスの首筋にグラムを添える。


「くっ、殺せ!」

「お前のような男を殺したら、もったいない。余に仕えぬか?」

「アスタレス公王陛下を裏切ることなど、できぬ!」

「あんな公王など、戴く価値などないだろ?」

「そういう話ではない。我がアダマン家は公王家に忠誠を誓っているのだ」


 不器用な奴だと思う。

 だけど、こういった不器用な人物が僕には必要だ。

 ボリスを捕縛し、アマリエに彼を任せる。


 戦場を見渡すと、カルモンのほうも決着がついたようだし、シバ・シンのほうは戦闘らしい戦闘にならなかったようだ。


 僕を中心に僕の軍が集まってくる。

 敵将だけ殺すか捕縛すれば、新兵と老人は自分たちの村に帰っていくだろう。


 ▽▽▽


 貴族軍5万を打ち破った僕たちは、ゆっくりと公都に迫る。

 公都では民が逃げ出すのではなく、貴族たちが逃げ出していると、シバ・シンの手の者から報告があった。

 公都の民はなかなか肝が据わっている。いや、いくところがないのかな?


 公王はベッドから起き出せず、公王の座を狙うホリス・アスタレスは貴族や軍をまとめることができていない。


「城は更地にしましょう」


 僕が思ってもいないことを、シバ・シンが提案する。


「その後の統治はどうするのだ?」

「新しい城を築けばよろしかろうと、存じます」


 あ、なるほど。僕に城を築けと言うのだな。

 シバ・シンもスーラ同様に、人遣いが荒い奴だ。


「貴族たちはどうするのだ?」


 カルモンが鋭い視線でシバ・シンを見る。


「降伏すれば、生かしましょう」

「しかし、生かす価値もない奴が多いのではないか?」

「獣人たちのことですね」

「うむ。人を人とも思わぬ者たちが、この国には多すぎる」


 カルモンは獣人たちを酷い目に遭わせていた、公国の貴族たちに思うところがあるようだ。

 僕だって、彼らがやってきたことを許せるかと聞かれたら、無理だと答えるだろう。

 でも、支配者というのは、清濁併せ呑む必要があると思うんだ。

 目標とするべき姿を思い描くのは大事だけど、綺麗ごとだけで国は治められない。

 僕だってそのくらいのことは分かっているつもりだ。


「降ってきた者の身辺調査はしっかりとします。あまりにも酷いことをしてきた者は、そのことが判明した時点で処分すればよろしいかと」

「まあ、妥当なところだろう。カルモンもそれでいいな」

「はっ」


 獣人を殺して楽しんでいたと公言しているならすぐに分かるだろうが、誰がどんなことをしてきたかなんて簡単に分かるものではない。

 だが、シバ・シンならそういった情報をすでに掴んでいそうだ。

 そして、僕にはスーラがいる。スーラであれば、そういった過去のことでも、探し出してきてくれると思う。



「あと、公都に入っても、略奪や暴行は許さない。兵士たちに徹底しておいてくれ」

「「はい」」


 これから僕が治める土地で略奪などしたら、後が面倒なだけだ。


「分かっていると思うけど、軍規違反には厳しく対処する」


 2人もそれは分かっていることなので、頷いて同意した。


 

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