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051_サイドス国王、相談する

聖騎士の犬と言われた僕はガチャに目覚めて最強を歩む ~最強になりたいわけじゃない。ただ、誰かに引け目を感じたくないだけなんだ~

もよろしくお願いします。

 


 ここ最近とても忙しかったので、ユリア妃とゆっくり話す時間がなかった。それに、忙しさにかまけて妹弟たちのこともユリア妃と叔父に任せっきりになっている。ダメな兄貴だ。


「ミリアムたちのことを任せっきりにして、すまないね」


 ユリア妃とお茶会も久しぶりだ。


「陛下の妹なのですから、私にとっても妹なのです。お気になさらないでくださいまし」


 金色の髪の毛が揺れるたびに光り輝く。容姿も美しいが、心も美しい。

 僕にはもったいないほどの妃だ。


「そう言ってもらえると助かるよ」


 お茶を飲む。美味しくて心が落ちつく味だ。


「そのミリアムのことなんだけど」

「ミリアムさんがどうかしましたか?」

「ミリアムもそろそろ年ごろだから、その……」

「うふふふ、ミリアムさんの縁談ですか?」


 さすがはユリア妃だ。僕の言いたいことを察してくれる。


「しかし、ミリアムさんは縁談を望んではいないと思いますよ」

「……ミリアムには思い人がいるのかな?」

「いえ、ミリアムさんは男性に興味がないようですよ」

「え!?」


 男性に興味がないって、まさかミリアムは女性が好きなのか!?

 それならそれで考えないではないけど……。


「うふふふ、陛下の思っているようなことではないと思いますよ。ミリアムさんは剣によって身を立てようとされているのです」

「ミリアムが剣で……」

「はい、最近は近衛騎士の訓練に参加させてもらっているようですよ」


 知らなかった。

 ミリアムが剣を使うことも知らなかったし、近衛騎士の訓練に参加しているのも知らなかった。

 はあ……。僕は本当にミリアムのことを知らないんだな。こんなことで兄と言えるのか……?


「身を隠す前から剣を学んでいたようですし、身を隠している間はモンスターを退治して糧を得ていたと聞きました」


 そんなことが……。


「ですから、ミリアムさんは自分の力で身を立てると考えているようです」


 ユリア妃が細い指でティーカップを持ち上げて優雅にお茶を飲む。


「そうか、一度ミリアムとしっかり話し合うことにするよ」

「そうしていただけますか」


 そうか、自分で……。

 僕が言うのもあれだけど、それは茨の道だ。

 僕の妹として嫁ぐのであれば、嫁ぎ先を見つけるのはそれほど難しい話ではない。だけど、剣によって身を立てるのは、簡単じゃない。

 数日後、ミリアムと面会しようと思う。でも、どうやって話をすればいいのか分からない……。


『スーラ、僕はどんな顔でミリアムに会えばいいのかな?』

『俺はザックが何を悩んでいるのか、理解ができない』

『だって、僕はクソオヤジを殺した張本人なんだよ。僕にはクソオヤジでもミリアムにとっては父親なんだから、ミリアムが僕を恨んでいるのは当然だと思うんだよ』

『いや、それっておかしいだろ。そもそも、ザックのオヤジが処刑されたのは、自業自得だ』

『そうだね……』

『それにミリアムだって、虐げられているザックを庇うこともなかったんだぞ』

『だけど、ミリアムはまだ子供だったから』

『ザックが家を出る時、ミリアムは10歳だった。10歳と言えば、物事の良し悪しを理解できる年齢だぞ。大っぴらにオヤジに意見できなくても、隠れてザックに話しかけることだってできたはずだ』

『………』

『それをしなかったミリアムにザックが卑屈になる筋合いはないだろ』

『………』

『ザックは、俺が正しく、オヤジがクソ野郎だと声高に言ってやればいいんだよ』

『それだとミリアムとの溝が深まるだけなような……?』

『いいじゃないか。妹だからってザックがすり寄る必要はない。俺が正しいんだから、お前が反省しろと言ってやれよ』


 スーラに相談したのが間違いだったのだろうか? なんだかもやっとしてスッキリしない。

 だけど、スーラの言うことも分からないではない。僕はどうしたらいいのか。


「陛下、キリス王国より使者がお越しになっています」

「キリス王国?」


 執務室で悩んでいたら外務大臣のハイマン・アムリッツァから報告を受けた。

 しかし、キリス王国とはまた珍しい国の使者がきたな。


 キリス王国といえば、魔の大地やレンバルト帝国を挟んだ東側の国だ。

 キリス王国との往来はレンバルト帝国を通るか、魔の大地を通らなければいけないから、これまでほとんど国交はなかった。


「陛下がお作りになったモンスター除けのマジックアイテムを使って、魔の大地を越えてきたようです」

「なるほど、その手があったか」


 気づくべきだった。

 僕のサイドス王国でも、ロジスターク以東の魔の大地の開発にモンスター除けのマジックアイテムを使っているんだから、モンスター除けを持って移動すればモンスターと遭遇しない可能性が高いわけだ。


「それで、そのキリス王国の使者はどのような案件を持ってきたの?」


 ハイマン・アムリッツァは目にかかった明るい茶色の髪の毛を手ですっとかき上げ、その藍色の瞳で僕を見た。

 武術大会にはまだ早いので、そのための使者ではないだろう。他に考えられることといったら……。


「我が国との国交を求め、このサイドスに大使を置きたいと申しています」


 これまでキリス王国と国交はなかったが、モンスター除けの効果によって魔の大地が通行できるようになった。

 しかも魔の大地にサイドス王国軍が入って開発をしている。

 キリス王国は小国なので王国軍が魔の大地に入ったのを威圧と感じたのかな? いや、違うな。キリス王国も魔の大地の開発がしたいのだ。キリス王国が魔の大地の資源を得られれば、国が富む。

 魔の大地(あそこ)はまだほとんどが手つかずで、どの国も手にいれていない。あえて言うなら、サイドス王国だけが唯一の勝ち組だ。

 モンスター除けのマジックアイテムがあれば、キリス王国も開発が可能になる……だけど、モンスター除けのマジックアイテムは安くないので、その交渉なのか?

 それともサイドス王国に大使を置いて外交という名の諜報活動をしたいのだろうか?


「魔の大地の開発かな?」

「ご明察、恐れ入ります」

「開発は分かるけど、何を言ってきたのかな? 援助?」

「まずは魔の大地の境界について話し合いたいと申しております」


 魔の大地の境界か……。


「笑える話だね」

「左様で」


 何が笑えるって、今現在魔の大地の境界のことを言える国は、サイドス王国しかないのだ。

 どの国も魔の大地に入植していないし、実効支配をしていない。

 つまり、キリス王国は実効支配もしていない土地に境界を設けようと言っているのだ。

 キリス王国としては、サイドス王国がどんどん進出することに対して釘を刺しておきたいんだろうけど、こんな話に乗るわけにはいかない。


「大使をサイドスに置く件は構わない。だが、魔の大地は領地が接したら交渉しようと返答するように」

「承知しました。そのように手配します」


 やっと国内のことが片づいたらこれだ。

 外交って面倒だけど、疎かにはできないんだよね。


 

<<お願い>>

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