050_サイドス国王、アイテムを作りまくる
聖騎士の犬と言われた僕はガチャに目覚めて最強を歩む ~最強になりたいわけじゃない。ただ、誰かに引け目を感じたくないだけなんだ~
もよろしくお願いします。
公共事業を支えるのは、取り潰した貴族たちから没収した財産、同じく罪を犯していた貴族からの罰金、そして僕の作るマジックアイテムの販売による収益だ。
モンスター除けのマジックアイテムは商人や、他国に飛ぶように売れている。
だけど、このモンスター除けのマジックアイテムは、サイドス各地に設置されている長持ちするタイプのものではなく、一度効果が発動すると半年ほどで効果が切れるものだ。
スーラが使い捨てのものを作れって言うから作ったら、飛ぶように売れて大金で国庫を潤してくれている。
それと効果を低くしたチープエリクサーも販売している。部位欠損までは治らないけど、大概の怪我や病気が治せることからこちらもかなり売れて国庫を潤している。
僕がガタガタにした経済を立て直すために毎日マジックアイテムを作るのだから、まったく苦にならない。
書類仕事も大事な仕事だけど、あれは精神的な疲弊が激しい仕事だ。それに比べたら鼻歌まで出てくるよ。
「陛下、こちらが今回の武術大会に呼んだ招待選手の名簿になります」
僕は総務大臣のメリーシャ・ドウバックから名簿を受け取り、確認する。
聞いてはいたけど、かなり多くの人を招待している。
「剣の部が130名、槍の部が90名、合わせて220名招待し、剣の部は108名、槍の部は80名、合計188名から出場と回答をいただきました」
僕は頷いてメリーシャ・ドウバックに応える。
「あとは直前に出場登録する一般枠がありますが、記念に参加しようとする者もいる可能性があります。正直言ってこちらは初めてのことなので、どれほどの数が集まるか不明です」
「そうだね、それに関しては不測の事態を考慮して人員を多目に配置するしかないか」
「はい」
「戦いの方法は?」
「これは剣部門、槍部門共に共通ですが、参加者をいくつかのブロックに分けて予選トーナメントを行います。そして各ブロックから勝ち上がった方々による決勝トーナメントを開催します」
「つまり、一度負けたらお終いってことか」
「はい。しかし、予選トーナメントに関しては、一般枠の参加者が少なかった時は、敗者復活戦を行うこともあるかと」
予選トーナメントは一般枠の出場選手の数が少なかったら、敗者を救済するかもしれないのか。
「分かった。引き続きよろしく頼むよ」
「はい、承知いたしました」
もうすぐ武術大会だ。楽しみだ。
僕が参加すると忖度があるかもしれないから、僕は参加できない。とても残念だ。
カルモンやザバルに勝てるとは思っていない。だけど、自分の力を試してみたいと思う。
「陛下、アスタレス公国即位式の臨席の件ですが」
総務大臣メリーシャ・ドウバックが下がって、今度は外務大臣のハイマン・アムリッツァからアスタレス公国の即位式のことの報告を聞く。
しかし、ハイマン・アムリッツァは必ず臨席という言葉を使う。徹底しているね。
「こちらは祝いの品々の目録になります」
受け取った目録に目を通す。
金の延べ棒が10本、銀の延べ棒が30本、絹10反、そしてチープエリクサーを20本。
僕の命を狙っているサンドレッド・アスタレスのためにこれだけの祝いの品を贈るのは不本意だけど、僕が命を狙われていることを知らないということになっているから、仕方ないよね。
僕は大陸の覇者になると決めた。だけど、今はまだその野心を見せて、レンバルト帝国などに介入させる理由を与えてはいけない。
戦って負けるとは思わないが、それ相応の被害が出ると覚悟しなければいけないからだ。
「アスタレス公国への移動は船で行います」
アメリカン級一番艦、ジョージ・ワシントン。
僕の旗艦の船だ。
アメリカン級は、外輪を備えた大型軍用戦艦になる。命名はスーラがしたけど、その名の由来は教えてもらえなかった。
「一番艦のジョージ・ワシントン、二番艦のジョン・アダムス、三番艦のトーマス・ジェファーソンの三隻が動員されます」
アメリカン級の軍艦は帆船と違って風の影響を受けない。自力走行ができるんだ。
だから、嵐などの悪天候は別になるが、風の有無で予定が大幅に狂うことはない。
「同行するのは、某とカルモン殿、スーラ殿、近衛騎士が300名、あとは兵士が2000名です」
「そんなに多いの? もう少し少なくてもいいんじゃないかな?」
「こういうことは、国の威信にかかわります。もっと多くてもいいくらいです」
ハイマン・アムリッツァの鼻息が荒い。
「分かった、分かった」
「それと、近衛騎士と兵士たちには、絢爛豪華な鎧を装備させます」
「絢爛豪華……?」
「近衛騎士は金色の鎧、兵士たちは白銀の鎧です。せっかくいくのですから、他の国々にサイドス王国の財力を知らしめましょう」
なんだか大ごとだな。
「すでに財務大臣が手配してくださっています。近々、納品があるはずです」
「……そう言えば、以前、アンジェリーナが決済してほしいっていってきたような……?」
まあ、僕がマジックアイテムを作ればいくらでも売れるんだから、お金は気にしなくていいか……。
しかし、こんなにマジックアイテムが売れるんだったら、東の大陸から輸入すればいいのに。
『外海は規格外のモンスターがうようよしているから、それなりの船じゃないと渡れないんだよ』
『そんなに強いモンスターがいるの?』
『まあ、俺の足元には及ばないが、海ってのはめちゃくちゃ広いからそれなりに強い奴もいるぞ』
『そうなんだ。モンスター除けのマジックアイテムがあっても?』
『ふ、効果次第だな。俺のようにモンスター除けのマジックアイテムの効果がほとんどない強いモンスターは海にたくさんいるからな』
『うわー。海ってヤバイんだ』
『東の大陸の奴らもそんな危険を冒して、こんな辺鄙な大陸にまでやってこようとは思わないだろうな』
『この大陸から輸出できるものはないの?』
『今のところはないんじゃないか? まあ、ザックが特産を作れば話は別だがな』
『特産なんか簡単に作れないよ』
『何を言っているんだ。エリクサーなんか輸出したら飛ぶように売れるぞ。チープエリクサーだって需要は高いから儲かると思うぞ』
『東の大陸はかなり進んだ文明なんだろ? エリクサーくらい作れないの?』
『作れるわけないだろ。だからエリクサーなんだよ』
『それならチープエリクサーを輸出できれば、東の大陸の品物が輸入できるんだね』
『どうやって輸出するんだ? 海を渡るのは簡単じゃないからな』
『ああ……。そうだね。……でも、スーラなら簡単なんでしょ?』
『俺に頼るのか?』
『ううん、違うよ。スーラなら海のモンスターを寄せつけない船が造れるんじゃないかと思っただけだよ』
『同じことだ。まったく。でも、まあ、対策がないわけではない』
『それを教えてくれないかな?』
『ザックがこの大陸を支配したらな』
『うわー、かなり先の話だね』
スーラが教えないってことは、今は必要ないんだろう。
今、必要だったらスーラは教えてくれるはずだから。
<<お願い>>
評価してくださると創作意欲もわきますので、評価してやってください。