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046_サイドス国王、開発するが……

 


 コロッセオという競技場を創造魔法で建設した。

 貴賓席などの細かいところは総務省が手配した職人たちに任せて城に帰る。


「今さらですが、立派な競技場ですね。陛下の魔法は本当に底が知れません」


 アンジェリーナに呆れられてしまった。


「僕もそう思うよ」


 心の底からアンジェリーナの言葉に同意する。

 この城だって僕が数日で築いたし、港もそうだ。

 防壁も築いたし、町の区画整備も僕がした。

 このサイドスは僕の創造魔法で築かれた部分が多い町だ。


「陛下、レオンの王国軍第二軍が駐屯地を発ちました」


 レオンの王国第二軍はこれからロジスタークに駐屯することになる。

 ロジスタークを拠点に、魔の大地の開発を行うための戦力だ。


「ゼルダ。僕も後詰として向かうから、準備を頼んだよ」

「承知しております」


 魔の大地は軍を入れたら済む話ではない。

 ロジスタークまでは人間の支配地域を確保しているけど、ロジスタークより東はモンスターの支配地域だ。

 そのモンスターが支配する地域からモンスターを排除し、人が入れる土地を確保して、モンスターを防ぐ拠点を造らなければならない。

 また、あまり奥へ向かうと他の国と国境を接してしまう。だからできるだけ東にいかずに、あるていどの資源を確保するのが今回のミッションになる。

 隣接する国は少ないに越したことはない。それが、レンバルト帝国のような大国だったらなおさらだ。

 ただ、あの土地は資源の宝庫だからサイドス王国が開発を進めれば、他の国も進出してくる可能性がある。

 開発は時間がかかるし、他国が魔の大地に入ろうと思うのであれば、今までにそうしていたはずだから楽観視している面もある。

 オスカーやマッシュ・ムッシュたちが探索したエリアは、それほど広くない。だから、そのエリアを開発して他国の出方を見ることにした。


 魔の大地の周囲にはサイドス王国、アスタレス公国、キリス王国、ザリバ王国、ソムノ王国、そしてレンバルト帝国がある。

 アスタレス公国が何か言ってきても、サイドス王国へ派兵する力はないのでいいが、他の国はそうはいかない。それに大国レンバルト帝国の介入は避けたい。

 だから魔の大地の開発は慎重かつ速やかに行い、他国の出方を見る必要がある。


 ゼルダからの報告が終わって、次は誰だったかな?


「次はオスカー・エリム様の研究成果の報告になります」


 オスカーの報告だった。

 僕が近衛騎士に頷くとオスカーを部屋に入れる。


「陛下、今日はとっても面白いものをもってきたのですぞ」


 オスカーは入ってくるなり挨拶もなく僕に話しかけた。

 それを見た近衛騎士たちがいい顔をするわけもなく、剣呑な雰囲気を醸し出している。まあ、オスカーには近衛騎士たちの機嫌なんて関係ないから、まったく意に介していない。


「それは楽しみだね」


 僕もオスカーのこういった性格は嫌いじゃない。

 むしろ、堅苦しくないから肩の力が抜けていい息抜きになるんだ。


「これを読んでくだされ」


 近衛騎士が間に入って受け取ろうとしたけど、オスカーは近衛騎士など目に入っていないかのように羊皮紙を直接渡してきた。

 そんなに睨んでもオスカーは見ていないよ。


 僕は羊皮紙の内容を読んでいく。


「ロジスタークのそばにミミックスライムというモンスターがいるのですぞ。そのスライムから抽出したエキスを使って作った薬なのですぞ!」

「ここに書いてある効果は……本当に?」

「某が嘘を言うわけないですぞ!」

「そうだね」


 なんて薬を作るんだよ!?


『てか、スーラ! これ、いいの? 同じスライムとして』

『いいも何も、そのスライムと俺は違うんだから、好きにすればいいじゃんか』

『そ、そうか……』


 スーラはスライムの同胞が薬のために狩られてもいいのか?

 まあ、スライムは普通に駆除されていたけど、今まで何も言わなかったし。いいのか……。


「この薬さえあれば、冤罪は消えるのですぞ!」

「たしかに、正直になる薬があれば、冤罪はなくなるね」


 スライムを元にどうしたらこんな薬ができるのか?

 僕にはまったく理解できないんだけど、奇人変人マッドサイエンティストのオスカーにならできてしまうんだろうな……。


「この薬はどれだけ作ることができるの?」

「ミミックスライムを確保すれば、いくらでも作れるのですぞ」

「一度、効果を確認したい。罪人で試そうと思う」

「当然ですぞ」


 ミミックスライムというモンスターからどうしてこんな薬ができるのかは、不明だ。

 しかし、できてしまったものは有用に使うべきだ。

 別に悪い薬でもないようだし、使ってやるほうが世のためだろう。


 罪を犯した者で重罪の場合は重労働を課したり、死刑になる。

 今回は重労働を課せられている重犯罪者にその薬を使うことになった。

 首輪と両手両足に鎖がつけられている重犯罪者5人に、薬を飲ませる。

 この5人は取り調べ時にいずれも黙秘や嘘だと思われる自白をした人たちだ。

 黙秘はともかく嘘の自白をしたと思われる犯罪者は、誰かを庇っていることになる。今さらだけど、そういった犯罪の真実が明らかになるはず……。


「まずは取り調べ時に黙り込んで自白も否認もしなかった者です」


 3カ月前に殺人罪によって重労働の刑が確定して、今現在は道路工事に従事している受刑者。

 髭を生やしているので分かりづらいが、目がくぼんでいるところを見ると、かなり痩せているようだ。

 檻の中に3人の役人が入って受刑者にオスカーが作った薬を飲ませると、受刑者の目がとろんとしてきた。

 それを見た役人たちが頷きあって、犯行について質問をする。


「ローラを強姦したうえ、殺したのはお前だな?」

「あぁ……ちが……う……」


 取り調べ時にどんなに質問しても黙秘していたというが、重労働の刑が堪えたのか、この薬の効果なのか今回は否認した。


「お前がやったのでなければ、誰がローラを殺したんだ?」

「あぁ……バーズ……ハイマン……」

「バーズだと!?」


 役人はそのバーズ何某という人物を知っているようだ。

 僕はその役人を呼んで、檻越しにバーズについて聞いてみた。


「バーズ・ハイマンは……」


 役人が言いにくそうにしている。大物なのかな?


「正直に言うように」

「はい。バーズ・ハイマンは西C区の顔役です。実質的に西C区を支配している人物です」


 西C区を支配?

 このサイドスは僕の国であり、サイドスの町は僕の町だ。それを支配だって?


「そのバーズ・ハイマンを連行してくるように」

「し、しかし……」


 僕はその役人を睨む。


「余とそのバーズ・ハイマン。どちらの命令が優先されるべきか、考えるまでもないのでは?」

「は、はい!」


 僕のお膝元であるサイドスで好き勝手して、殺人まで犯している者がのさばっている。

 しかも、役人が僕の命令を躊躇する。

 まだこの町を築いて数年なのに、こんなに早く腐敗が広がっているとは思ってもいなかった。


『多少のことは大目にみるけど、強姦殺人を犯した者がこのサイドスの町で我が物顔でのさばっている。僕の不徳の致すところでもあるけど、そんなことは許しておけない。スーラ、何かいい対策はないかな?』

『ないでもない』

『どうすればいいの?』

『それをやれば、町に住む奴らが混乱するかもしれないぞ』

『どういうこと?』

『簡単な話だ。ザックが恐怖で支配するんだよ。町の隅々まで監視しているぞってな』


 恐怖で支配するのは、今とそれほど変わっていない気がする。

 貴族の多くは僕の力に恐怖して従っている部分がある。今、僕がいなくなればそういった貴族はサイドス王国に反旗を翻すだろう。


『恐怖で支配するっていっても、どうすればいいの?』

『犯罪者を根こそぎ摘発して、見せしめに皆殺しにすればいい』

『その犯罪者を摘発するのが、問題なんだけど……』

『そんなの簡単じゃないか。オスカーが作った薬を使えばいいんだよ』

『ああ……そうだね……』


 その後も4人の重犯罪者に薬を飲ませて質問していく。

 結果は5人中4人が冤罪だというのが分かった。5人しか調べていないのに、4人も冤罪がいたなんて信じられない。

 もっとも、この4人は自分が犯人にされるのを望んだ者たちなので役人に罪はないが、真犯人を知っていてミスリードしたような役人がいるとしたら、許せないことだ。

 だから、バーズ・ハイマンという人物を含めて、なぜこのような冤罪を生んでしまったのか調査することにした。


 

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