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037_スーラ、滝で……

35話から39話まではスーラの過去です。

読み飛ばしても大丈夫です。

 


 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?

 今、俺は、めっちゃヤバい奴に追いかけられている!

 めちゃくちゃデカくて、口が顔の半分くらいあって、体は鱗に覆われているけど爬虫類ではなく、二足歩行をしているのに人間じゃない。

 わけ分からんだろ? 俺だって分からんぞ!

 ワニに近い顔と鱗にクマのような巨体、そして人間のような二足歩行のモンスターだ!


 ドドドドドドドドドッ。俺なんか喰ったって美味くないぞ!

 酸の体だから体の中から焼かれるんだからね!


 ドッシャーンッ! 思いっきり蹴っ飛ばされて俺はサッカーボールのように飛んでいった。

 これで痛みがあったら大変なことになりそうだ。


 ベチャッ! 俺は大木に当たり、へばりついてしまった。

 危うく完全に潰れそうだったよ。なんて言っている暇はない。あの顔面だけではなく全身凶器のようなワニクマが猛スピードで迫ってくる。


 なんで俺にそんなに固執するんだよ!? ちょっとニードルで攻撃しただけじゃないか。

 いかん、このままではワニクマにショルダータックルをされてしまう。

 急いで移動しないと! って、動かない!? 木にへばりついてしまって、動けない! うおーーー、くるなーーーっ!? ドッガーーーンッ。


「………」


 ワニクマが俺ごと大木にショルダータックルをして、大木が盛大に破壊されてしまった。

 俺もその衝撃で空中を舞って別の木に当たった。

 これで死なないのだからスライムの打撃耐性は高いようだが、さすがにここまでの攻撃をされると、俺の見えないHPもゼロの手前まで減っていることだろう。


『ギャオオオオオッ』


 怒り狂うワニクマが雄叫びをあげると空気が振動した気がした。

 ワニクマはそのまま俺を喰らおうと巨大な口を開け、俺に向かって走ってくる。


 えーい、ママよ! 俺はこのチャンスを逃すことなく、ニードル射出で攻撃した。

 狙いは口の中! いくら丈夫な鱗があっても、口の中ならなんとかなる!


『グラアァァァァァッ』


 俺のニードルを口の中に叩き込まれたワニクマは、めちゃくちゃ苦しそうな声をあげ、身をよじってのたうち回った。

 なまじっか丈夫な鱗に守られていることから、口の中への攻撃で受けた痛みには弱いようだ。ざまぁ!


 俺はこの隙に逃げ出した。とにかく速く、とにかく遠くへ逃げた。

 体を高速回転させて森の木々を縫うように走って逃げた。どう考えてもあの攻撃でワニクマを倒せるなんて思わない。ここは退くべきところだ。


「………」


 ドドドドドドドドドッ。ヤバい、あいつまだ俺を追いかけてくる。

 しつこい奴だな。そんなことでは女にモテないんだからな。俺だってモテた試はないけどさ。


 ドドドドドドドドドッ。足音が迫ってくるーーーっ!?

 もっと速く高速回転させるんだ! 速く、速く、はぁぁぁやぁぁぁくぅぅぅっ!? ジャバンッ。ブクブク……。


 え? うわ、川に落ちてしまった!? 激流だよ。勘弁してくれーーー!

 俺の悲鳴のような心の叫びは川の流れの音にかき消されてしまった。んなわけないだろ! 俺は喋れないんだよ!


 俺は激流の中でなす術がない。

 そもそもスライムは泳げるのか!? てか、呼吸はどうするんだ!? あ、俺、この世界にきて呼吸した記憶がないわ。ははは。


「………」


 どんぶらこ~どんぶらこ~と激流下りを楽しむ。

 さすがのワニクマもこの激流下りにはついてこれないようだ。

 くくく、俺は水属性のスライムだから水の中でも平気なのだ!


 あばっ、ぶへっ……。でも岩とかに当たるのは避けられないのである。

 いかん、いかんぞ、このままでは岩に何度も当たってHPがゼロになってしまう。

 ワニクマがいなくなったと思ったら、今度は俺の意思に関係なく岩への体当たりして死んでしまう。


 こうなったら、体の形状を変えて川の流れに上手いこと対応するしかない!

 ふにゃ~……、ぷにゃ~……、ふんっ! あ、できた。

 体の形状を変えることで、なんとか川の流れに翻弄されず済むようになった俺は、水中から水面に浮かべないか、考えた。

 簡単だった。流れを下に受け流すように体の形状を変化させればいいのである。


 ぷっはーーーっ! スーラ潜水艦浮上完了しました!


 俺は太陽光を浴びながら激流を下っていく。ライン下りのように下流へ下流へと進んでいく。

 あ、魚だ。……近づいてくる? ん? ……デカくない?


 ザッバーーーンッ! パク。 ……俺は巨大な魚に喰われてしまった。

 うっそーん!? 俺喰われちゃったの!?


「………」


 俺はピノキオの気分が分かった気がする。

 魚とクジラの違いはあれど、同じ胃の中である。

 このままでは俺は胃酸に溶かされてしまうのか?


 ん? 胃酸? 酸? 俺の体は……酸……。

 なるほど、消化されることはないかもしれないな。


 どうやらゆっくりと対策を考えることができるようだ。

 とはいっても、俺にできることはニードル射出だけなので、やってみますか。

 ニードル射出! スパスパスパッ! 射出した棘が簡単に魚の胃袋を突き抜けた。

 どうやら、この魚はモンスターではなく、普通の魚のようだ。モンスターならこんなに簡単に俺の棘が胃袋を突き破っていくわけがない。


 魚が暴れているのが分かる。だけど、俺は手を緩めない。

 いや、棘を緩めない。スパスパスパッ!

 痛みに暴れまくった魚が動かなくなった。


 えーっと……体内からも取り込むことができるのかな? やってみれば分かるか。


『(ピコン)レインボウツナを取り込みました。水中適応をスロットにセットしますか?』


 ツナってマグロかよ!?

 しまった、せっかくのマグロなのに、まったく味が分からない!? もっと味わって喰いたかったよ。


 味のことは置いておいて、この水中適応はストックだな。


『(ピコン)水中適応をストックしました』


 レインボウツナを取り込んだ俺は、また川の流れに身を任せた。

 方向は変えられるが、泳ぐことはできないので流れ任せになる。

 川幅がどんどん広くなっていく。こういうのって、下流にいけばいくほど、人がいる可能性が高くなるんだよね。いっそのことこのまま川を下るか。


「………」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。なんだか嫌な音だ。


「………」


 ああ、滝か……。って、滝だよ! うお、どうする!? 滝から落ちたらHP大丈夫かな? やっべー、どうする? あ、そうだ! こういう時に水中適応が役に立たないか? 


『(ピコン)水中適応をスロットにセットしますか?』


 セットだ!


『(ピコン)ニードル射出を廃棄し、水中適応をスロットにセットしました』


 あ……そうきたか。あるていど予想はしていたが、セットしていたスキルがなくなると、凹むものだな。

 しかも、水中適応の使い方が俺の脳内に流れ込んできたが、水圧と水温に適応できるというものだから泳げないのには変わりはない。


 うおおおおおおおおおっ!? 俺は激しい流れに飲み込まれ、浮遊感を感じた。


「………」


 あ、これ死んだわ。そう思うほどの高い滝だった。

 泳げないし、滝には落ちるし、死ぬかもしれないし、仮に生き残ってもニードル射出はないし、もう踏んだり蹴ったりだよ。


 とりあえず……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 俺、高所恐怖症なんだよ! あーーーれーーーっ。とにかく怖い! とっても怖い。


 ジャブンッ! ブクブクブク……。ヤバい、これHPほぼゼロだわ。

 滝つぼの中の渦に飲み込まれて岩とかにぶち当たったら打撃に強くてもHPがゼロになる!?

 俺は体を変形させて岸に辿り着けるように必死にもがいた。ちょっとでもダメージを受けたらアウトなので、必死だ。



 スロット:水中適応

 ストック:狐火



 

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