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032_サイドス国王、ロジスタを平定する

 


 僕はアルタに跨り、グラムを構えてモンスターの大群に突撃した。

 アルタはモンスターを踏み殺し、僕はグラムでモンスターを切り飛ばす。


 カルモンは右側から、ジャスカは左側からモンスターを挟み撃ちにするので、僕は中央からモンスターを倒していく。


「逃げるモンスターに構うな! 確実に一体一体倒すんだ!」

「おおぉぉぉ!」


 そんな僕の視界が、巨大なモンスターを映した。

 アースドラゴンに似た顔を持っていて、ヘビのように長い胴体にコウモリのような羽根、そしてムカデのように多くの足を持つモンスターは、胴体の長さが30メートルを優に超えている。


「殿、あれはアシュマンドレイクです!」


 ゼルダはあのモンスターを知っているようだ。


「アシュマンドレイクは毒のブレスを持っている危険なモンスターです」

「あのアシュマンドレイクは僕が倒す! ゼルダは雑魚を頼んだ!」

「了解です。ご武運を!」


『アルタ、あのアシュマンドレイクに突っ込むぞ!』

『うん!』


 空から現れた巨大なアシュマンドレイクに向かってアルタは空を駆けた。

 天翔けるアルタイルホースであるアルタは空も飛べるのだ。


「お前がモンスターたちを追い立てているのか!?」


 強いモンスターが弱いモンスターの生息域に現れると、弱いモンスターが生息域を追い出されることがある。

 もしかしたらアシュマンドレイクのような強いモンスターが現れたことで、弱いモンスターが追い立てられるようにロジスタ領へ現れたのかもしれない。


 天翔けるアルタに乗った僕はアシュマンドレイクに迫ったけど、アシュマンドレイクは毒のブレスを吐いてきたので回避行動をとった。


 あのブレスがあると簡単に近づけない……。

 こんな時、スーラならどうするかな……?


『そうかっ!? アルタ、アシュマンドレイクへ突撃だ!』


 アルタが大きく(いなな)いて、速度を上げる。

 アシュマンドレイクは長い体をくねらせて僕たちを迎え撃つ体勢をとり、大きく口を開けた。

 毒々しい黒紫色の毒のブレスが広範囲に発せられたが、僕は創造魔法で魔力の障壁を作って自分たちを包むように展開した。


『アルタ、そのまま突っ込むんだ!』

『うん!』


 障壁を展開させたまま僕たちは、アシュマンドレイクに突っ込んだ。


『グラム、いくぞ!』

『おう!』


 僕の創造魔法は魔力を消費して何でも創造できる。スーラはそう言っていた。

 つまり魔力さえあれば、人間だって創造できる。

 もちろん、人間なんて創造しようとは思わないけど、それでもこういう風に障壁を出すことくらい今の僕には簡単にできる。


 魔力の障壁はアシュマンドレイクが吐き出した毒のブレスを防ぎ、僕たちを毒から守ってくれる。

 それを見たアシュマンドレイクは毒のブレスが効かないと見ると、長い体をくねらせて尻尾で僕たちを薙ぎ払おうとしてきた。


「させるか!?」


 僕がグラムに魔力を纏わせ振りきってアシュマンドレイクの尻尾を切り飛ばした。

 アシュマンドレイクは痛がって絶叫をあげたけどこのていどでは死なず、僕をその大きな口で食らおうとしてきた。


 空を駆けてアシュマンドレイクの攻撃を躱していると、切り落とした尻尾の部分が再生していくのが見えた。


「あれ、反則だと思うんだけど!?」


 どうしたらアシュマンドレイクを倒せるのか?


『アルタ、頭だ! 頭を狙うぞ!』


 ダメで元々、頭を狙うことにした。


『分かった』


 アルタはアシュマンドレイクの長い体の上を一気に走り抜け、頭部へ接近した。


「くっ、硬い」


 僕はグラムを振ってアシュマンドレイクの頭に切りつけたが、頭はかなり硬く切り落とすことができなかった。

 でも、これで分かった。アシュマンドレイクの弱点は頭だ。

 あれだけの硬さで守っている頭を破壊すれば、アシュマンドレイクでも死ぬ!


「いくぞ、神々の怒り!」


 僕は創造魔法によって雷を発生させてアシュマンドレイクへ落した。

 バリバリバリッという轟音と稲光による発光で視界と聴覚が奪われるが、魔力の流れでまだアシュマンドレイクが健在なのは分かる。


『アルタ、左だ』

『分かった』


 左に進んだアルタの上から、グラムを振って斬撃を飛ばす。

 斬撃がアシュマンドレイクに命中したのが分かった。


 視界と聴覚が戻ってきた。

 見ると、アシュマンドレイクは右目が潰れていた。


『よし、あの左目に攻撃を集中する! アルタ、グラム、頼んだぞ!』

『うん!』

『任せろ!』


 アルタは一気に加速して、アシュマンドレイクへ迫る。

 僕はグラムに魔力をこれでもかと纏わせて振り上げる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 アシュマンドレイクが口を開けて僕たちを喰らおうと突進してくる。


「いぃぃぃぃぃぃぃぃっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 僕は渾身の力を込め、重力魔法で十数倍にまで重くした斬撃を飛ばす。

 煌めく斬撃がアシュマンドレイクへと向かって飛んでいく。


「とぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 僕は斬撃を後押しするように声を発し、魔力を供給し続けた。

 斬撃がアシュマンドレイクへ届く。

 アシュマンドレイクが絶叫をあげる。

 轟音が鳴り響く。


「………」


 アシュマンドレイクが頭から尻尾まで真っ二つに分かれた。


「や、やった……」


 アシュマンドレイクは力なく地上へ落ちていき、地上を埋め尽くしていたモンスターを巻き添えにした。


「ザック・サイドス様がアシュマンドレイクを討ち取ったぞ!」

「うおおおぉぉぉっ!」


 ゼルダの声によって、地上の兵士たちから歓声が上がる。


「ザック様が大物を倒したぞ。皆も負けずにモンスターを狩るんだ!」


 カルモンが兵士を鼓舞してモンスターを切り伏せていく。


「ザック様に続くんだ!」


 ジャスカが軽やかな動きでモンスターを翻弄する。

 僕も皆に負けないように地上のモンスターに5倍重力で圧力をかけ、皆の援護をする。


 万に届くかと思うほどいたモンスターを殲滅するのに時間はかかったけど、僕たちはモンスターとの戦いに勝利した。


「サイドス様。この度の援軍、かたじけのう存じます」


 ボッス伯爵が代表して頭を下げると、他の貴族たちも同様に頭を下げた。


「モンスターの脅威は去りました。しかし、全てのモンスターをロジスタから駆逐したわけではないので、しばらくは掃討戦をします」

「は、我らも及ばずながらお手伝いをいたします」

「いや、これまでモンスターと戦い続けてきた兵士は疲れ切っているでしょう。ロジスタのモンスターは僕たちが掃討します。諸侯は兵士を休ませてください」

「ご配慮、痛み入ります」


 諸侯が頭を下げてきた。


 それから僕たちはロジスタを周り、モンスターを駆逐していった。

 10日もするとロジスタ内のモンスターは掃討されたが、残念ながらロジスタの地は荒れ果ててしまった。


 ケントレス侯爵の屋敷に入って、僕たちは国内の各貴族が集まるのを待つことにした。

 その間に、ユリア殿との対面もある。

 どんな姫なのか、とても気になる。気が強いのはいいけど、性格が悪いのは勘弁してほしい。


「ユリア・アイゼンにございます。サイドス陛下におかれましては、ご機嫌麗しく、お喜び申し上げます」


 僕の前に表れたのは、美しい金色の髪の毛を腰まで伸ばし、透き通るような白い肌をした青い目の姫だった。

 不覚にも僕は、ユリア殿の美しさに目を奪われてしまった。


「陛下、お言葉を」


 カルモンの声がなかったら、僕はユリア殿をいつまでも見続けていただろう。


「あ……。うん。ユリア殿……。遠路はるばる大儀である」

「ありがとう存じあげます」


 別室に移った僕は、長い時間をユリア殿と語り合った。

 ユリア殿はとても心優しい女性だというのが、それで分かったのでほっとする。


「すでにアイゼン国はない。だからユリア殿はアイゼンの姫ではないけど、それは分かってもらえるかな?」

「民がモンスターの脅威に曝されているのに、権力争いしかできない王家になんの意味がありましょうか。私もその一端を担った愚か者にございますが、陛下はお赦しになり受け入れてくださいました。感謝こそすれ、お恨みはしておりません」


 よかった。恨まれていたらどうしようかと思ったよ。


「それに、父を殺した第四王子ゴウヨーと王太子マーヌンは赦せません。なにとぞ、マーヌンを処罰していただきたく、伏してお願い申しあげます」

「マーヌン殿は見つけ出して、この国に混乱を招いた責任をとってもらいます」

「ありがたいことです」

「そこで、ユリア殿に頼みがあるのです」

「なんでございましょうか」

「これ以上、血を見ないためにも、僕に従うように諸侯を説得してほしいのです。各地からこの地に諸侯が向かっています。しかし、彼らは心より僕に従うわけではありません」

「分かりました。すでに多くの血が流れています。これ以上血が流れないようにわたくしも努力させていただきます」


 それから一カ月ほどで、諸侯が集結した。

 その頃、王都では僕に反抗する勢力が蜂起したと、スーラの分体を通じて報告があった。


「アスマレッタ伯も無駄なことをした」

「反抗勢力を糾合したはいいが、スーラ殿に勝てるわけもないのにな」


 カルモンとゼルダが、反抗勢力の話をしている。

 アスマレッタ伯爵がいくつかの貴族と結んで王都に攻め入ったけど、3万ていどの兵数でスーラに勝てるわけがないと、知っているのだ。

 たしかにスーラがその気になったら、この国に敵う者はいないだろう。

 僕はもちろん、カルモンも勝てない。それくらいの化け物だと首脳陣は知っているんだ。


 諸侯が集まってくるのを待って、僕はユリア殿との結婚を発表した。

 初めて会ったその日に僕はユリア殿に心を奪われてしまった。まさかこれほど心惹かれるとは思ってもいなかったので僕自身かなり驚いている。

 そして、何よりもユリア殿が僕を受け入れてくれたことに驚き、さらに感謝する。


「おめでとうございます」


 諸侯がおめでとうと大合唱する。

 椅子に座った僕の横にはユリア殿が立って、諸侯の祝辞を共に受けている。


「陛下、この地へ(つど)わぬ者どもの討伐をお命じくだされ!」


 諸侯からそういった声が上がる。

 ユリア殿はこれ以上の流血沙汰にならないように願っているようだが、こればかりは手心を加えると同じように反旗を翻す諸侯があとを絶たないと思う。

 何ごとも最初が肝心だから。


「分かった。ボルドン伯爵に討伐軍の指揮を任せる」

「ありがたき、幸せ!」


 ここに集った諸侯にとっては家を大きくするチャンスだから、気合が入るのは分かる。

 しかも、今回は超大貴族だったアムリス家が潰れていて、アムリス家に連なる貴族も同様の道を辿っている。

 他にも大貴族と言われる数家が潰れていることから、勝ち馬に乗って領地を広げようと気合が入るのも分からないではない。


 

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