プロローグ
恋文。
秘めた想いを手紙に込めた古式ゆかしい様式美。愛する人への気持ちを込めたこの手紙、受け取った人間は青春の勝者と言っても過言ではないだろう。つまり、俺は今日この時を持って勝者となったのだ。
放課後、手紙で指定された屋上にて待っていたのは同級生の小柄な少女だった。
肩まで伸びた姫カット、制服は着崩しておらず校則通り。だが、野暮ったい感じはまるでない。派手ではないが要所を押さえてお洒落しているところがなかなかにポイントが高かった。内気な美少女、といったところだろう。
風に吹かれてわずかに揺れるスカートに少し胸をときめかせていると、少女は意を決したように口を開いた。
「あの、手紙読んでくれましたか?」
「はい、もちろん返事はイエスです!」
苦節15年。小学校のころから「彼女」という存在に憧れながら未だに彼女いない歴15年。しかし、そんな悲しき記録はついに今日で終わりを告げる。
ラブレターの少女は俺の返答に目を潤ませ、口元に手を当てていた。
手紙に名前は書いていなかったが、確か彼女は校内で見かけたことがある。
名前は何だったかな、と考えていると、その美少女から衝撃的な台詞が飛び出してきた。
「あ、あの、ごめんなさい。これ、友達との罰ゲームなんです」
「……はい?」
「だから、その、すみませんでした!」
愛染時雨、15歳。身長172センチ、体重61kg。特技は筋トレ、趣味は読書(恋愛小説に限る)、彼女いない歴、―――今日も記録更新中。
一月弱くらいで完結すると思います。ブクマ・評価・感想など作品に対する反応があると喜びます。