「究極のおっぱい」男性として生まれた場合、どうしても女性の魅力からは逃げることが出来ない話
やぁ またあったね。
此処はのんびり死体の酒場。
まぁまずは落ち着いて一杯飲んでいってほしい。
色々と言いたいことはあると思う。
でもまずは、バーボンを一口呑み込んでからにしよう。
そうだ、すまないね。
自己紹介が遅れてしまった。
僕の名前は「のんびり死体」。
そう、ここのマスターをやっている。
こんな、廃屋だか、幽霊屋敷にしか見えないような酒場にやってくるなんて、よほどタイトルに魅力を感じたんだろう。
だから謝っておくよ。
あるのは安酒ばかりだ。
ここに「究極のおっぱい」なんて大それた物はない。
あぁ、席を立たないで。
少し待ってくれよ。
ちゃんとそれなりの話がある。
そのバーボンはおごるから、聞いていってほしい。
とくにさ、できれば女性に聞いてほしい話でもある。
男性にも聞いてほしい。
共感できるとか、俺は違うでもいい。
俺の・・そう、俺の懺悔のような物さ。
笑ってくれていい。
とにかく吐き出さないと、俺がどうにかなってしまいそうなんだ。
だから聞いてくれ、頼むよ。
のんびり死体はさ、正直に言うと、おっぱいに振り回されて生きてきた。
今だって大して変わらない。
それでも何年も生きてきたんだ。
その話をさ、誰かに聞いてほしくなったんだよ。
おいおい、笑うなよ。
マジだ。
これは大本気の話なんだ。
すまない、つい興奮しちまったな。
どうかそいつを飲みながら、話をきいてくれ。
事の起こりは、中学2年生の夏だった。
いまでも忘れられないよ。
こんなことが、起こるなんて、予想もしていなかった。
さなぎが蝶になるように。
のんびり死体は、変わってしまった。
それまで、周りの女子は敵だったし、はっきりいってうざいだけの存在だった。
その日からは違ったんだ。
皆が花のように見える。
いや、もっとだな。
いいか、セクハラじゃない。
正直な感想だ。
歩くエロ本のように見えた。
いいか、これは普通に学校にいる、普通の学生を見ていた時の俺の感想だ。
のんびり死体はな、つねに下半身が硬直していて、授業中に制服から透けて見える下着のラインから、目が離せなくなった。
女子に話しかけられるとな、それまで敵兵として接していたにもかかわらずだ。
顔を真っ赤にしてドキドキしていた。
それで?
よくある思春期?
ちがう。
それは地獄の始まりでもあった。
俺は何度も何度も、自分の下半身を切り離すことを考えたくらいだ。
勉強は苦手だったが、生物や理科は得意だった。
好きな授業だったんだよ。
それすらも、耳に入らなくなった。
中学の時はそれでもよかった。
まだ、未発達だったんだな。
最初に死にたくなったのは高校生の時だ。
バイトをしているときに、無駄に胸だけでかい、非常に臭いおばさんがいた。
顔はハゼどんに似ていた。
これもマジだ。
あぁ、お前もわかるのか。
その苦痛に満ちた顔。
同じ苦しみを味わったんだな。
なら、話の続きは予想がつくかもしれないが、まぁ聞いてくれ。
良くある悲しい話さ。
俺は真面目に働いていた。
おばさんは無駄口と悪口ばかりで、贔屓目に見ても、最低のゲスだった。
それでも、そのおばさんの胸が気になって仕方ないんだ。
俺は自分で自分を殺したくなった。
幸い、おばさんは若いバイトの女の子を虐めていることが発覚して、すぐに辞めていった。
非常に危険なところをすくわれたんだ。
どうしてって?
俺がそのおばさんに気に入られていたからさ。
それなりのことを誘われたら、断れる自信が無かった。
あんた、俺のこと最低だと思うかい?
いや、慰めなくていいさ。
俺は俺を最低だと思ってる。
ちなみに若い女の子のほうが、当然好きだった。
当時19歳くらいだったろうか。
ぺちゃぱいだったけど、当時人気があったアイドルの真似が得意な、とてもかわいい子だった。
ぺちゃぱいだったから、まだ普通に話せた。
1週間だけ付き合ったけど、当然フラれた。
俺だって俺の中身を知っていたら、そうするね。
彼女は賢い。
正しい判断をしたんだ。
あぁ、話が長くなってしまったな。
すまない。
もう少し付き合ってくれ。
それから俺は大人になった。
あぁ、高卒で社会人になったんだ。
大人の女は凄かった。
なんというか、全部綺麗な気がした。
当然胸をガン見していた。
あれだ。
俺にとっては会社は歩くエロ動画だったな。
俺は気になって気になって、仕事を疎かにすることもあった。
叱られても、胸元ばかり見ていた。
あぁ 待ってくれ。
違うんだ。
もう一人の俺は、仕事がしたかった。
相手の話をしっかりと聞きたかった。
でも、奴は俺を支配していたんだ。
どうしようもなく、支配していたんだよ。
そんなどうしようもない俺にも、彼女が出来たことがある。
嘘じゃないぞ。
おっぱいも当然堪能した。
何、悪いことじゃないさ。
俺はそれを一生大事にすると思った。
俺は嘘は言わない。
少なくとも、この話の中に嘘はない。
でもなぁ、駄目だった。
他のおっぱいが気になるんだ。
どうしようもなく気になるんだ。
苦しいくらい、気になるんだよ。
違うな、苦しいんだ。
本当に苦しい。
優しいとか、賢いとか、綺麗だとか。
好きだとか、愛しているとか、相手を認めているだとか。
大切なことを全てすっ飛ばして、おっぱいが気になってしまう。
でもさ、同じ苦しみを味わった仲間たちよ。
安心してほしい。
その苦しみには、終わりがある。
本当だ。
年を取って、社会に揉まれて、ボロボロになってさ。
そうして初めて、気にならなくなる。
いや、ちがうな。
気になっても、気にしない様に出来るようになる。
今は、ようやくそれがわかったところさ。
それでタイトルの件なんだか・・・。
こんな答え方、卑怯かもしれないな。
でも、これが今の俺の答えだ。
あんたはあんたの答えを出せばいい。
ただな、聞いていってくれ。
愚かな俺が出した、漸く気が付いた答えだ。
笑ってくれたっていい。
年を取って、それでも大切に思える女性がいたとしてだ。
その女についてる胸が、お前の「究極のおっぱい」だ。
俺がいまどうしているかって?・・・無茶しすぎてさ。
生きているのが不思議なくらいさ。
今は女どころじゃないよ。
だから、こんな話を聞いてもらいたがってる。
愚かな負け犬が、俺さ。
あんたが女なら、この話を気持ち悪いで済まさないでほしいんだ。
目線が行ったり、考えてしまうのは、もうどうしようもない。
だからって、あんたを大切に思わないわけじゃないんだ。
信じられないかもしれないが、それは本当のことさ。
あんたが男なら、これを覚えておいてくれ。
若いうちは、どんなにいい女でも、絶対もっと上を求めてしまう。
男は愚かだ。いや、男の中にいる、もう一人の男が愚かなんだ。
何か行動を起こす前に、側にいてくれた女をもう一度よく見てみるんだ。
そうして深呼吸すれば完璧だ。
お前はお前として、やっていける。
そうやってお前が出した答えなら、どんな答えでも俺が応援してやるさ。
俺は・・そうだな。俺は後悔している。
だから聞いてほしい。
お前は俺のようになるな。
それだけだ。