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神からの贈り物を

 

 -----------


 


 

「おめでとうございます。おめでとうございます。

 貴方は、ゲームの世界へ行くことが出来る権利を手に入れることができました!!」



 目の前に、光の紙吹雪が撒き起こり、その紙吹雪の奥に天使が見えた。 


 


 え、なんだ、これ…


 フリーズした頭を無理矢理動かし、状況を整理する。

 確か、俺は、今さっきまで自分の家のベッドに寝転がっていたはずだ、

 それで七時になったことを確認した後、今日貰った機械を腕に付けて、

 画面をタッチしたら…


 

 次の瞬間には、まず寝転がってないし、場所が、ゲームで見た神殿のような建物の中になってるし、

  目の前には、 作り物のような整った顔付き、透き通るような白い肌で、月明かりのように微かに発光する金色の髪の美女が、

光を反射する様な純白の祭服と、蒼白く仄かに光る羽衣を纏って、パンパカパーンツと、屈託の無い笑顔で言いながら、こちらを見ていた。


 訳が分らんぞ…

 …これが、ゲームの世界なのか? 


 

 -----------



「さぁ、これは、

 大変、光栄な事であり、

 素晴らしく、名誉な事でもあり、

 これ以上無いくらい素敵な事なのです!


 わぁ、世紀的幸運!!」


 


 はぁ…

 全くの規格外さね、辺り1つ見ても、規格外よ。


 目の前に居る、やけにオーバーアクションのモナスチカル祭服を纏った美女、汚れくすみ1つ無い、真っ白の建物…


 あり得ない!どんなポリゴンよ!!?

 開く口に合わせて、喉が動き、頬が髪が、何から何まで、全てがそこに生きている様に動いている!!!

 これがゲームだなんて…


 それに、私の姿…

 今はまだ、手や足しかまだ分からないけれど…

 これは私、私自身の体だ。

 約20年、この体で生きてきた自分が、一番良く分かっている、間違いない。


「どんな規模よ!

 どんな技術を使っているのよ!!?」


 

 …あの豚が言っていた通りね…

 このゲームは… 普通じゃない!!


 


 -----------


 



「それがなぜならば、

 幻夢の存在とされてる、魔法

 架空、憧れの存在、モンスター

 幸せハッピー幸福な道具、マジックアイテム!


 それらが全て、現実の物として存在する、

 そんなドリームライフなエンジョイ生活が出来る世界に、行く事が出来るからです!!」


 

「ごめんなさい、お姉さん、痛いです!

 あ"あ"ぁ、アイアンクローやめぇ"ぁぁ"あ"!!」 



「ファンタスティック!

 それでは、あちらの世界へ行きましょう!!」


 

「逝っちゃうゥウヴ、逝っちゃいますからぁあ

 もう、いきなり、胸鷲掴みとかしないですからぁ"ぁあ"」



 -----------



「もし、この事例を例えるならば、超ホワイト企業!!

 さぁ、何も迷うことはありません

 何故なら、沢山のむせ返る人混みから、貴方は既に、選ばれているからなのです!」



 選ばれている…

 そうだよな! 俺は、リアルでもネットでも…


「最強、最高の、スーパースターだ!」


 


 -----------



「で、それは分かった。

 すまないが、時間を決めて他の人と合わせてゲームを起動したんだが、他の人は何処に居るんだ?」


「質問、承りました、解答を致します。

 ゲームを初回起動した場合のみ、各自、個人毎に、私の前に転送されることになっております。

 これが終わりましたら、しっかりと、皆様が居る町へ送りますのでご安心下さい!」



「…ふむ、チュートリアルか?

 確か、ゲームをスタートすれば、説明が入ると言っていたな。」


 

「そうでございます!

 それでは、まず最初に貴殿方に、神からの贈り物を授けましょう!」



 女はそう言うと何もない空間から、杖を、さも当然のごとく発生させ、上空に捧げる様に持ち上げた。


 すると、その杖の先端の青色の宝石から光が溢れだし、白い駒のような物が光から現れる。


「神は貴方に才能を授けました。

 その力を持って、新たなる冒険へ旅立つのです!」


 駒は、ゆっくりと俺の目の前まで降下し、手の届く高さで浮遊している…


 …取れ、ということか。


 チュートリアルということは、与えられるレクチャーを進めなければ先へは進まない。


 気が進まないが、そのまま、目の前に居る祭司っぽいのに見守られつつ、その駒を手にした。


 っ!!


 機械を手にした時と同じく、突然、握った駒が俺の手を貫通して発光し、あまりの眩しさに目を瞑る。


 それと同時に、俺の頭に、記憶が流れ込んできた。


 『母さん!俺、王宮魔導騎士の弟子になれたよ!認めて頂けたんだ、あの方に!』

 『俺さ、この間、巨大な熊のようなモンスターを倒したんだぜ。』

 『王に最大の敬意と忠誠を、与えられた双剣に誓い、国を守り抜くとここに誓う!』

 『我死すとも、ただでは死なぬ… 我が命、総て懸けて、この扉を、国を… 守る!』


 流れ込んできたのは、俺ではない他人の記憶、頭がグラグラする、あれは俺ではない、だが、彼のしたことは俺にも出来るだろう、

 何故か、そう思える、彼と俺は違う。

 だけど、彼の事が良く分かった。


 頭の整理がつき始めたからか、ぐらつきが収まり始め、少し余裕が出てくる。


 …双剣の、駒?


 手に握った駒は、色形が変わっており、

 今、俺の手の中にある駒は、二対の剣が刺さった、赤と青の色の駒になっていた


 


 -----------


 

「ねぇ、待って?

 何?茶葉とコーヒーの兼業農家って何?」


「神からのお導きです。」


「え、なんでそんなにニッコニコなの?

 おばちゃんが茶葉摘んでたり、お茶淹れてる記憶が頭に流れてきたんだけど、何?」


「神からのお導きですよ。」




「ねぇ、本当に神様に告げ口とか、本当にしてないです?

 …おねぇさん、なんで目を逸らすの?

 実はまだ、怒ってますよね?

 本当にごめんなさい、謝りますんで、お願いします、

 もう一度チャンスを、やり直」

「それでは、夢と希望の溢れる、未知の世界へ、レッツゴーです!!」








 -----------


 


 目が覚めると、六時半だった。

 布団の上に転がったまま、寝てしまったみたいで、掛け布団が体にかかってすらいない、


 暑い時期で良かったぁ、涼しい時期にこんな格好で寝ちゃってたら、風邪引いちゃうからね。


 …そういえば、もう休みに入ってたよね…

 カレンダーを遠目で確認し、ゆっくりと起き上がり、目を擦りながら、台所へ向かう。

 休みならもう少し寝てても良かったかなぁ…


 あれ?

 そういえば、何かあったような…


 冷蔵庫の前に立ち止まり、扉に手をかけた瞬間、身体中の血の気が引いた。


「あ、あ…」


 震えながら冷蔵庫の扉を掴む手には、ゲーム機が、

 ただ、腕に付けたままの状態で、放置されたゲーム機が、視界に入った。





 ……


 全力で冷蔵庫から手を離し、廊下を駆けて、自分の部屋へ飛び込み、布団の周囲をひっくり返す!


 …あった! 布団の下に、携帯! 携帯電話!


 集合時間は、昨日の夜の7時だったはず、 

 ヤバい、ヤバいじゃすまないよ、これ…

 だって2回目だよね? 昨日一日だけで、連絡が付かなくなるの、

 ヤバいよ、不在着信どうなってるんだろう


 見たくない…

 けど、こうなった場合、いち早く連絡を返さないと相手に失礼… 今さら失礼とか度が過ぎた案件というか、もうヤバい。


 …えい!


 意を決して、携帯を、開く!



 

 …あれ?、TEL'rに個人のメッセージが一件と、電話が一回だけだ…


 …

 とりあえず、メッセージから確認しないと、

 教わった通りに携帯を操作し、アプリを立ち上げる。

 メッセージの送り主は、予想通りカズだった。


 『カズ:

 電話しても出ないってことは寝たな?

 正直、今日のはしゃぎ具合から予想は出来てたから、今日はゆっくり寝とけ!

 ただし、俺らとゲームで差が付けられても、文句は言わせないからなー!』



 このメッセージを見て、詰まっていた息を深く吐き、安堵する…


 『今起きました、ごめんなさい

 どんな感じだったか、後で聞きたいです。』


 っと。


 

 …流石カズ、完全に理解されてたね…

 安心と同時に、喉が渇いてる事を思い出す。


 携帯をポケットにしまい、再び冷蔵庫へ向かい、お茶を取り出して喉を潤す。


「ふぃー…

 あ、めっちゃ汗かいてる…」


 昨日の晩そんなに暑かったかなぁ、さっきの嫌な汗かなぁ、


 冷蔵庫前から離れ、脱衣場へ入り、服を脱ぐ。


 

 …あれ、外れない…

 服を脱いだ後、ゲーム機を外そうと引っ張るが、外れない…


「んんん…」


 取り外しボタンも無いし、画面に触ると始まっちゃうらしいし…

 

 …そういえば、僕の携帯、防水だったよね…

 なら多分、これも防水だよね!


 とりあえず、下手に触ると変な事になって、カズに後で起こられそうだし、無視しよう! うん!


 若干の不安はあるけど、とりあえず、どうにも出来ないし、残りの服も脱いで、シャワーを浴びる。


 

 途中、かなり機械が邪魔だったけど、なんとかシャワーで汗を流し、着替えも終えた。


 …水になるべく当たらないように頑張ったけど、普通にべちゃべちゃになっちゃったね、ゲーム機。

 家から出る予定も無いから、適当に服を着て、再び台所へ向かう。


 朝ごはん、お味噌汁とご飯と梅干しと鮭で良いかな…

 収納棚から雪平鍋を取り出して、お湯を沸かして、

 ちゃちゃっとご飯の用意を終えて、コーヒーを入れて、椅子に座って一息付く。


 …8時過ぎ、まぁ休みだしゆっくりでいいよね。


 机の上の、テレビのリモコンに手を伸ばし、別に何が見たいわけでもないけど、電源を入れる。


 

 『…といった、不可解な現象が発生し、国は総力を挙げての原因の究明、事態の解決を模索すると発表しており、』



 んん? この時間はニュースじゃないよね、

 あ、よく見たら画面上に緊急放送って書いてあるや…

 …複数人の異変を確認、未知の病気か、ってテロップが出ている…


 …あれ?

 この家、見た事ある…

 見た事ある?


  違う、知っている、

 でも、違う、そうであって…


 

 カシャン…


 手からカップが離れ落ち、自然と席から立ち上がる。

 目がテレビから離せなくなる。


 テレビが中継で周囲を撮している、その風景を知っている。

 幾分かは、モザイクがかけられているけれど、その中心にある、住宅が誰の家なのかも知っている…


 息が詰まる、呼吸が出来ない。

 体が動かない、どうすれば良いの?


 椅子からよろめきながら、携帯を取り出す。

 …携帯にかけるより、家に!


 素早く番号を打ち込み、耳に当てる、

 携帯から何回かのコールオンが鳴り、

 僕は、携帯を手から滑り落とした…


 

 テレビの場面が変わり、よく知っている部屋のベッドの上で、青白い結晶に被われるように固まっている男の人の姿が、映し出され、そして、

 テレビから電話の呼び出し音が鳴り響いていた。 


 


 



 


 

 どうすればいいの… 

 あの中継の後、映し出された感染者一覧に、カズの名前と、シルバさんの本名、それとチルさんも本名だったのか、そのままの名前が表示されていた。

 間違いなく、これが関係している。

 僕は、左手に付けたスケルトン仕様の機械の方を睨み、頭を抱える、


 

 合計で約百人、梅田中心に全国各地で、こんな現象が発生しているらしい。


 レオさんに、何が起きているのか、追及したいが、今思えば、連絡先も、ゲームの製造会社すら分からない…


 


 どうする

 このままじっとしているの


  怖い、これを付けていて、もし起動してしまえば、僕もあんな風になるって決まっている…


 何もしないの

 カズの事はどうするの


 …出来ないよ、何も分からない。

 カズを助けたいけど、カズが生きてるかすら…


 


 ……


「え、誰?」


 ただの自問自答

 最後に1つ、出来るとしたら

 皆を結晶から出してあげたい?


 


 


「…皆を、助けたいです。」


 

 それじゃ、ここに居たら始まらないよ


 不意に、右手が無意識に動き、機械へ手を伸ばす、


 

「…大丈夫なの?」


 

 皆を、助けるなら、これしかない


 

「…分かった、信じるよ、私」


 

 僕は、手に力を入れて、自分の手で、機械の画面に触れ、起動させた


 


 


 

 

1月3日 微調整、多分最終

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