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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第2階層―GREEN―
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ニートな女神と初めての運命

運命は決まっているものか、それとも自らの手で切り開いてゆくものか?

 私はそれから服を脱いでゆっくりと浴槽につかってお風呂を満喫すると、髪と体をちゃんと洗ってからまた浴槽につかって一息ついた。そこで昔よく聞いてた下界の曲をふと思い出して、つい鼻歌とか歌ったりしてね。とにかくリラックスできたと思う。


「あ、召喚:エリュマントスの効果の確認忘れた……まあいっかそれも明日で」


 今日はもう疲れているし夜中にまたゲームにログインして確認するのも面倒くさい。


 私はそれからしばらくして風呂をあがると浴槽の栓を抜いて、髪と体をちゃんとバスタオルで拭いてからドライヤーで髪を乾かした。そして浴室を出て下着と寝巻をしっかり着るとベッドへ向かった。

 ただまだ寝ない。もうちょっとだけゴッドワールド・オンラインについてスマホで調べてから寝ようと思ったのだ。


「そういやゲーム攻略の最前線が私がゲーム始めた時からずっと76階層で止まったままだけど。76階層ってそんなにやばいの?」


 と、最近ちょっと疑問に思ってたことを調べてみたら違った。

 76階層で攻略が止まっているのではなく、現在ゴッドワールド・オンラインの世界は第75階層の迷宮のボス部屋までしか存在していないのだ。

 もちろん75階層が最後というわけではなく、次回の大幅アップデートによって76階層から80階層までの5階層分が解放されるのだという。

 というよりも、ゴッドワールド・オンラインは当初は第1から第5階層までしか存在せず、その後の度重なるアップデートによって5階層ずつ先の階層が解放されていったらしい。


「ああ、5階層毎にゲームの難易度が上がっていくっていうのはそういうことなのか」


 たとえば今攻略最前線の75階層に留まっているプレイヤーというのは、先の階層はまだないからひたすらレベル上げとかクエストとかやっているんだろうけど。その後で76階層を75階層の続きの難易度として作って出したらその間にレベル上げしてたプレイヤーたちには楽勝で攻略されてしまう。


「プレイヤーのレベル上限が今のところ799で、今レベル799のプレイヤーも最前線で何人かいるって……こいつらはもうレベル上げもできないのか」


 おそらく次の大幅アップデートでまたプレイヤーのレベル上限も解放されるんだろうな。

 きっと76階層は最低でもレベル770とかないと辛いんだろう。わからんけど。


「そういや皐月さんって今レベルいくつなんだろう」


 第2階層の迷宮ボスであるマダムバタフライの情報を得るために接触した五条皐月さんというプレイヤーのことをそこで思い出した。


 仮にプレイヤーのレベルが到達階層×10よりも少し上だと仮定したら、50階層を攻略中のプレイヤーはレベルは500よりちょっと上というところか。

 あ、でも皐月さんって今何階層攻略中なのか具体的に聞いてないな、そういえば。

 もう50階層以上に進んでるベテランプレイヤーってことは知ってるけど。


「今度また会ったら聞いてみようかな」


 教えてくれるかどうかは別として。


 私はスマホを充電器にさしておくと、それから照明を消してベッドに入り込んだ。

 明日私は第3階層に向かうつもりだ。フローリアの街でちゃんと準備を整えてから。


 そういえば第2階層ではローズ達とは、マロンちゃん1人とは1度だけ会ったけど他のメンバーと会うことはなかったな。まあ逆に東也と再会したりもしたけど、やっぱりタイミングなのかね。

 東也たちのパーティはマダムバタフライに勝てたんだろうか。もしも勝っていて、それでもう第3階層に行っていたとしたら私が明日行った先でまた会うことになるかも。

 ローズ達は今どこらへん攻略してるのか、沼地か、もうダンジョンに突入したのか。あるいはもう第3階層に……さすがにそれはないかな。


「うーん、私も他のプレイヤーみたいにとっとと階層の迷宮突破してすぐに次の階層に進んだ方がいいんだろうか」


 もしもそうしたら少なくとも冒険者ギルドの住人クエストとかは大半やらないまま次の階層に進むことになるのだけど。というより階層のクエストを全制覇してから進もうとしているせいでこんなにもゲーム攻略が遅いのは紛れもない事実なんだけど。

 でもそのおかげでソロプレイヤーとしてレベル上げには困らなかったしな。


「第3階層についてまたしばらく様子見てからそこら辺は決めよう」


 というところで私は目を閉じると、すぐに押し寄せてきた睡魔によって眠りについた。


 ――翌日――


 さあ、ついに運命の日がやってきた。

 今日、私はついにゲーム内でのアストレアの恩恵の効果を確認するつもりだ。

 それにもはや何の迷いもないし、とりあえずベッドから起きて昨日買ったヨーグルト食べるか。


 ヨーグルトを食べ終えた私は容器を洗って燃えないゴミの袋の中に放り込んだ。

 朝食はこれで終了。というわけで私は浴室の洗面台で顔を洗ってトイレを済ませると、準備は整ったとばかりに部屋に戻ってベッドの上に横になると、ゲーム機を装着して電源を入れた。


<第2階層:花の都フローリア>


 私の行動は極めて迅速だった。

 まずは薬屋に行ってポーションと聖水の両方をまた100個になるまで補充で買い足した。

 もちろん薬屋はルドルフさんご夫妻のところ。2人にこれから第3階層へ行くのでと別れを告げると、二人とも笑顔で送り出してくれた。ただ、エメリアさんの方は寂しくなるわねって言ってたけど。


 薬屋を出た私は道具屋、そして武器屋でいくつかの素材アイテムやドロップで手に入れた武器などをまとめて売ると、それから冒険者ギルドへ向かった。

 銀行で最後に5万ゴールドを預けるとこの階層での最終的な預金額は45万ゴールドに。

 何の因果か、この日の銀行の受付は私が最初にこの階層についた日に最初に銀行から2万ゴールドを引き落とした時に話したおばさんだった。


「この階層でも荒稼ぎしたようね。ふふふ。将来は億万長者かしら」

「いえ、そんな。ははははは」


 いや、このままのペースだと億万長者は無理でも第5階層くらいで100万ゴールドくらいに預金額がなっていそうで怖いよ。

 私はおばさんからも気をつけて行ってらっしゃいの言葉をもらうとそのままギルドの受付カウンターに、そこにいつも私の対応をしてくれたお兄さんがいた。


「こんにちわ」

「おはようございます。今日はお早いんですね」


 第2階層ではこのお兄さんにも色々とお世話になったから最後にちゃんと挨拶しておこうと思ったのだ。


「……そうですか、これから第3階層に」

「はい」

「また少しこの階層が寂しくなりますね」

「いつかまた何かあれば戻ってくるかもしれませんよ?」


 私がお兄さんにそう言ったらお兄さんは微笑んだ。


「そうですね。ではその時はまた当ギルドへもお越しください。冒険者ギルドはいつも冒険者様のご来訪を心よりお待ちしていますので」

「はい」


 お兄さんは最後までお兄さんだった。職務に忠実なイケメンってモテるのかな。

 私はお兄さんに一礼してから冒険者ギルドを出た。


「うーんと、後はアルベールの村のクローディアさんにも挨拶と、ついでに最後にまた調合させてもらおう」


 なにせ昨日のボスクエストで麺類トリオの3人にポーション☆と聖水☆を合計15個も渡してしまったから、減った分くらいは作っておかないと。

 ポーションの材料にはスライムの雫(青)が必要だけどまだ持ってたかな?、ないならわざわざ第1階層に戻ってスライム倒してくるのも面倒だからいいけど。


「あ、そうだ。エリュマントスのスキルの確認、と」


 私は花畑フィールドに出た直後に、昨日のボスクエストで手に入れていたスキルの確認を行った。


 〇召喚:エリュマントス

 効果:『エリュマントス』を召喚し使役することが可能になる。

 消費MP:発動中1秒経過ごとに1消費 リキャストタイム:――


『エリュマントス』が使用可能なスキル


 ①ダークネスフレア

 効果:闇属性の中級攻撃魔法。闇色の炎で敵を包み込み絶望させる。MPダメージ。

 消費MP:15 リキャストタイム:25秒


 ②グラウンドラインブレイク

 効果:土属性の物理攻撃。地面に衝撃を与えて直線状に亀裂を入れ、そこから大地を押し上げて攻撃する。押し上げられた大地は1分間その場所に破壊可能オブジェクトとして残る。

 消費MP:12 リキャストタイム:16秒


「燃費悪すぎるだろう……まあその分効果は強力なの知ってるけど」


 特に私が黒い炎ブレス攻撃と呼んでいた魔法、ダークネスフレアの恐ろしさはもはや語るまでもない。

 消費MPも高くリキャストタイムも長いけどあれ1発で敵の魔法攻撃を完封できるからな。


 モンスターにもHPの他にもちろんMPの量も設定されている。

 たとえばゴブリンメイジの場合、ファイアーボールを6発放ったとしたら7発目はない。

 ファイアーボール1発で消費MPが3だからつまりゴブリンメイジは最大MPが18はあるが、21はないという計算が成り立つのだ。(あくまで平均するとの話。)

 それ以外のモンスターでも、魔法を使ってくるモンスターについては戦闘開始からずっと倒さずに魔法を使わせ続けるとどこかのタイミングで必ずMPが足りなくなりもうそれ以上の魔法使用はしてこなくなる。ただし、自力でMPを回復するような手段を持っていれば別だが。


 ちなみに迷宮のボスモンスターについては全部のモンスターがMPの量は∞であり、どれだけ待っても魔法攻撃をしてこなくなることはないのでそうした持久戦は無駄とのこと。

 まあ普通のダンジョンのボスやエリアボスはMPの上限があるそうだけど、ボスモンスターってHPもそうだけどMPも高いようだからMP切れ狙っての持久戦はつらいところらしい。


「ダークネスフレア使えば普通のダンジョンのボスくらいなら一気にMP0にできる?」


 ただ、よくよく説明を見てみるとダークネスフレアは単にMPダメージと書かれているだけであり、命中したら問答無用で敵のMPを0にするとまでは書かれていない。

 そこが召喚された際にスキルの弱体化が図られたのか、それとももとからMP0攻撃というわけではなく単に威力の大きいMPダメージ攻撃だったのかということについてはわからなかったけども。


「岩盤ライン爆破攻撃って、物理攻撃だったんだ。魔法だと思ってたけど」


 正確にはグラウンドラインブレイクという技だそうだけど、あれって物理攻撃だったのか。

 私は1度も食らってないんで知りようもなかったけど、でも地面を足でたたきつけた結果として大地にひびを入れて岩盤を隆起させるから魔法ではなく物理攻撃扱いになるのか。

 とにかくエリュマントスのスキルはなかなか有用な分あまり普段使いには適さないスキルが多いからこれはここぞという時にだけ使うことにして、と。


「というより召喚スキルはあまり使わずできれば自力で倒せるのが1番いいんだけど」


 召喚スキルはおそらくこのゲーム内でも最大級のチートスキルだと思うから。

 これまでの冒険を振り返っても召喚スキルって本当にやばくて負けそうな時に形勢逆転の一手として使っているが、そういう時でもないと私は召喚は使いたくないのだ。使っちゃうこともあるけど。

 私にとって召喚スキルとは最後の切り札であり、切り札は温存できるならするに越したことはないのだから。


<第2階層:ダンジョン:森>


 それから数時間後の話だ。

 私は森の中にあるモンスターが発生しない安全地帯(ダンジョン内にいくつかあるルームの1つで主にプレイヤーたちの逃げ場所)の地面の上に寝転がっていた。

 理由は、まあなんていうかね。悔しさ半分憧れ半分、かな。


 私は花畑フィールドから森に入り、それを抜けてアルベールの村まで行った。

 村の薬局でクローディアさんに最後の挨拶と、ついでにこの階層最後の調合をさせてもらいそこでいくつかのアイテムを作成した。


「そうかい、もう行ってしまうのかい」

「はい」

「体には気をつけるんだよ。あと食べ物は好き嫌いせずに食べること。いいかい?」

「はい」

「また暇があったらいつでも遊びにおいで。いつでも待ってるよ」


 もうそれは完全に田舎のおばあちゃんの家から旅立つ日の孫との会話だった。

 なんだろう。きっと私にも祖母とかいたらこういう感じだったのかな。

 私の祖父母は父方のと母方のを合わせて4柱とももうすでに消滅してしまっていないらしい。1番長く生きていたのは父方の祖父で、祖父とは私がまだ小さい頃に何度か顔を合わせているという話だったけどまるで記憶になかった。

 だからゲーム内でも、クローディアさんに限らずけっこうお年寄りのNPCと話すのは私は意外と苦ではなくむしろ楽しいとさえ思っている。リアルでお年寄りの知り合いっていえばトトおじさんくらいしかいないからね。


 私はクローディアさんとの別れをすませるとまた森に入ってフローリアの街に帰ろうとした、これはその途中で起きたそれこそ本当に偶然の出来事。


 私が森の中を歩いていると前方のルームに熊がいた。

 熊とはもちろんフォレストベアのことでありこのダンジョンの中ボス的な存在であるかなり強いモンスターだった。

 そしてフォレストベアは普段は温厚でこちらから攻撃をしかけないと戦闘にならないという特殊なモンスターだったが、私が遭遇したフォレストベアはどう見ても興奮状態、つまり誰か他のプレイヤーと戦闘中だったようだ。

 フォレストベアの陰に隠れて相対しているプレイヤーの姿はその時点では見えなかったけど。


「話し声が何も聞こえないってことはソロ、かな?」


 フォレストベアに遭遇し、あるいは戦いを挑んだのが複数人のプレイヤーからなるパーティだったとしたら、戦いのさなかで誰かしらが何かを言ったり、パーティのリーダーが指示を出したりとかする声が聞こえてくるものだけどそれがない。

 ということは余程の緊張で誰も声も出せない状況にあるパーティか、あるいはソロプレイヤーの腕試しか答えは2つに1つくらいだと私は思って少し離れたところから成り行きを見ていた。

 だけど勝負はたったの1秒で決着がついた。


「え!!??」


 フォレストベアの後ろ姿に何やら白い線のようなものが見えたかと思ったら次の瞬間フォレストベアのそれまで見えていたHPケージが消滅した。そしてフォレストベアの体もすぐに光の粒子となって砕け散った。

 そしてフォレストベアのHPはその直前まで満タンだったように見えた。


 つまりは一撃。相対していたプレイヤーはたった1回の攻撃でフォレストベアを倒したことになる。


 どんな化け物だよと思って私がそのプレイヤーの方を見たらその人は私の知っている人だった。


「……ふう、やれやれ」


 それはこの階層を攻略中のプレイヤーにしてはありえないほど豪華な装備を身に着けたソロプレイヤーであり、容姿端麗な女性プレイヤーだった。


「皐月、さん?」


 そう、それは現在50階層以上を攻略中のはずだが花が好きという理由でなぜかこの第2階層のフローリアの街にホームを購入し、第2階層に足しげく通っているという噂の(事実の)ベテランプレイヤー。

 五条皐月さんその人だった。


 いや、たしかに昨日の夜にまた今度どこかで会ったら今何レベルなんですかとか聞いてみたいなと思ってはいたけど、まさかこれから第2階層を離れて第3階層に行こうというこの最後の日にまた出会うことになるとは思ってもいなかった。


「あら、そこに誰かいるの?」

「え、あ、ごめんなさい。別に隠れてたわけでもないんですけど」

「え、その声。もしかして玲愛さん?」


 あ、皐月さんの方も私のこと覚えててくれたんだ。


「はい、そうです」


 私は改めて皐月さんの前に姿を現すとまずはお互いに挨拶をした。

 いや、今までだってフィールドでもちろん他のプレイヤーが戦闘しているのを見たことはそれこそ数えきれないくらいあったけど、私はソロプレイヤーだし向こうもこっちに気づいたら軽く挨拶する程度で早々に別れたというか、みんな自分たちの攻略がメインなわけだしね。

 もちろんそれが知り合いだったりした場合は世間話することもあるだろう、今みたいに。


「その装備は……そう。じゃあマダムバタフライもソロで倒したのね」

「はい。おかげさまで」


 皐月さんは私の装備を見て1発でそのことを見抜いてきたけどまあそれも当然か。

 というより皐月さん、私のこのはたから見たらちょっとぷっと笑ってしまうだろう蝶々の仮面を見ても顔色1つ変えなかったんだけど、すごいな。

 あ、もちろん皐月さんは仮面だけでなくマントとフードとかも見た上でその装備がマダムバタフライをソロ撃破したことの報酬の金の宝箱の中に入っていただろう装備と見抜いたのだろう。

 ……あれ、もしかして仮面見ただけで判断された?


「皐月さんはどうして森に?」


 私はまずそれを聞いてみたら皐月さんは答えてくれた。


「ああ、私はただの花畑の散歩のつもりだったんだけど。久々にこの森に入ってみようかなって思って」

「そ、そうだったんですか」

「でもその途中でなんか慌てて逃げ去るプレイヤーとすれ違ってね。それで少し先のこの部屋に入ってみたら怒ってるフォレストベアとばったり」

「ああ、なるほどそれで」


 つまりフォレストベアに最初に挑んだプレイヤー、あるいはプレイヤーたちだったのかもしれないが戦いになってすぐにフォレストベアの強さに恐れをなして逃走。

 そしてフォレストベアがまた元の温厚な状態に戻る前にそこに皐月さんがやってきてしまい、新たなプレイヤーの接近によってフォレストベアの敵意はそちらに向いて戦闘状態になってしまったと。

 モンスターって割と見境ないからな。たまにフィールドで自分が勝てないと思ったモンスターを引き連れて他のプレイヤーに押し付けるなんて悪質な行為をするプレイヤーもいるくらいだし。


「災難でしたね」

「そうなのよ。私がここに来たのは本当に偶然、ただちょっと気が向いたからって理由だったのに」

「でも皐月さん、あの、さっき熊を一撃で倒してましたよね?」

「まあね。逃げるより斬った方が早いし。逃げる必要もなかったでしょう」


 あのフォレストベアを相手に逃げるより斬って倒した方が早いとか、やっぱり皐月さんというかもうだいぶ先の階層を攻略中のプレイヤーならそういう次元に到達しているのか。


「あの、ちなみに皐月さんって今何レベルなんですか?」


 私はそこで聞きたかったことを聞いてみた。


「ふふふ。いくつくらいだと思う?」


 逆に聞き返されちゃった。えー、でもやっぱり500くらいかな。


「500、くらいですか?」

「ふふふ。残念。私は今レベル563よ」

「え、嘘!?」

「本当よ。なんならステータス画面見せてあげましょうか?」


 まさかの563って。でも、それなら皐月さんってだいたい55階層前後を攻略中ってことなのかな。


「あの、到達階層は?」

「55階層。今度また皆で56階層を目指すの。今はメンバー各自で階層のフィールドを攻略中ってとこだけど」

「そ、そうなんですか」


 やっぱりプレイヤーのレベルってだいたい攻略階層×10より少し上くらいが基本なのかな。

 いや、それだと第2階層のプレイヤーのレベルがだいたい20以上ってことになるから違うような気もするけど第2階層はまだまだ序盤だしね。


「それにしてもすごい偶然、今日また玲愛さんに出会えるなんて。街の中でならともかくこんな森の中でっていうのも」

「そうですね。ほんとあの、実は私今日これから第3階層に行こうと思ってたところで」

「そうだったの。じゃあ余計にすごいわね。これも何かの運命かな?」


 いや運命かどうかは知らないけど。「運命」を司る女神が聞いたら鼻で笑われそうだし。


「あ、そうだ。せっかくだし私と1戦交えてみない?」

「え?」

「ほら、前に会った時も今度会ったら1度手合わせしたいなって言ったでしょ?」

「あれ本気だったんですか?」


 てっきり皐月さんなりの冗談だと思ってたのに。


「もちろん私の方は目いっぱいハンデをつけるわよ。でないとさすがに勝負にならないと思うし」

「いや、それはそうなんでしょうけども」

「じゃあ決まりね」


 そう言った皐月さんに半ば強引にダンジョン内の安全地帯に連れられると、私はそこで皐月さんと決闘を行った。そして結果から言うと私はその決闘に負けた。

 皐月さんは宣言通りこれでもかというくらいにハンデをつけてくれたのに私は手も足も出ずに負けてしまったのだった。そして私は思った。やっぱり先の階層に進んでるプレイヤーは違うな、と。


次回、玲愛VS皐月さんの戦いが始まって終わり、そして玲愛はついに自分の恩恵の効果を確認する。


第2階層編の本編が終わった後でも、また第1階層編の終わりの時のようにゲーム内容紹介回と第2階層で玲愛が新たに手に入れたスキルと魔法の一覧まとめの話を入れる予定です。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハイパーコンピュータ? なにそれ、ちょっと考えればコンピュータの仕組みくらい分かるはずだから... 近未来設定ならせめて量子コンピュータとかがいいかと。
2020/02/16 13:35 参考までに
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