ニートな女神と初めての野菜
野菜もちゃんと食べないと大きくなれないよ。
まあ、肉ばかり食べてても大きくはなれるけどね。横に。
部屋に帰ってきた私は、さっそく買ってきたパンを食べ始めた。
普通にお店で売っていた方のパンは夕食にする。だから先にヘスティアちゃんが作るのに失敗してしまったパンをたいらげた。
やっぱり使っている材料がいいのか失敗作でも普通においしいと思うんだけど。
私はパンをすべて食べおわえると残りのパンが入った紙袋は台所に置いておいた。
そうして今日も私はゴッドワールド・オンラインの世界へと旅立つのだった。
……ログインしたをちょっと格好良く言い換えただけだよ。なにか文句ある?
<第2階層:花の都フローリア>
私はもう沼地フィールドまで攻略は済んでいる。
レベルはすでに25とこの階層を攻略するだけなら十分以上に上がっていると思う。
残りは迷宮の突破、そして迷宮ボスの討伐だがそれは明日にしようと思う。
今日はまだ25あるこの街の住人クエストを片付けようということで私は冒険者ギルドへと向かった。
それからのことはまたすべては書いていられないので割愛させてもらうが、私は午前中にこの街の住人クエストをさらに12件片づけた。
意外と大変だったのが『雑草大量発生!』のクエスト。このクエストは牧草地帯で昼間であってもグラスウィードが大量に出現するというもので昼間しか受注できないという制限付きのクエストで。
それで昼間の牧草地帯を探索して30体のグラスウィードを見つけ出して討伐すればクリアだったのだけど、牧草地帯は一番広いフィールドである上にグラスウィードは普段はただの草むらに擬態しているので見つけ出すのが大変だった。
ただ、大変だった分報酬も良かった。というのも報酬は3000Gと、そして調合のレシピだった。
たぶんこのクエスト、調合のスキルを持っていなくても3000Gという報酬金額を見て結構多くのプレイヤーが受けるクエストなんだと思った。
事実私がクエストを達成してから1時間後にはこのクエストの依頼書が住人掲示板からなくなっていることを私は確認していた。私がクエストを終えてまたすぐに誰かがこのクエストを受けたんだろう。
けどそんな短時間のうちに2回も雑草が大量発生とか、ゲーム世界も大変だなとちょっと思ったりね。
それでもらった調合レシピなんだけど、これがまあなんというか、ね。
〇除草剤
毒薬+毒草+水
「おっと、レシピの材料の中に毒薬がある。じゃあやっぱりこれ……」
毒薬というアイテムはこの階層では市販されていない。
このアイテムは調合のスキルレベルがⅢに上がった時に覚えられるレシピでのみプレイヤーが作成できるアイテムなのだ、今のところは。
だからこのレシピをもらって、さらに調合のスキルをもっていたとしてもスキルレベルがⅡ以下の場合は現時点ではこのアイテムは作成できない。
私はすでに毒薬は大量に作っていたし、毒草もまだ余りがあったので街の公園のベンチに腰掛けると試しに1本だけこのアイテムを作成してみた。
〇除草剤☆
植物族のモンスターに大ダメージを与えることができる薬品。
「なるほどね、たしかに文字通りの効果だ」
元となったアイテムの毒薬は、敵を毒の状態異常にするけどダメージを直接与えないのに対しこちらの除草剤は植物族のモンスター限定とはいえどもモンスターに直接ダメージを与えるものだ。
そうか、調合のスキルレベルがⅣになった時に覚えたレシピで爆発薬っていうのがあったけど、たぶんそれもモンスターにぶつけると爆発して直接ダメージを与える系のアイテムなんだろう。
「うーん、まあ植物族のモンスターって大体ファイアーボールで片づけられるけど、これも10本くらい作って持っておくか」
ということで私は毒薬、毒草、水をそれぞれ10個ずつ消費して除草剤をまとめて10個作った。
先に作った1個と合わせて合計11個の除草剤が出来た。
ただ、この先使う機会があるかどうかはわかんないけど。
「まあ、火が効きにくい植物とかも出てくるだろうしね、この先」
だからこのアイテムも持っておいて損はない。
しかし実際にどのくらいのダメージが発生するのか確認のためになんか植物族のモンスター1体に向けて1回使ってみる必要はあるけど。
この階層で植物族のモンスターって言ったら、牧草地帯に出現する野菜モンスターと、あと夜に出現するグラスウィードしかいないんだよね。
「今すぐ確認する必要もないけど、絶対に忘れそうな気がする」
私はそうつぶやいた。別に野菜モンスターに使ってもいいんだけど、あいつらって見た目は普通に野菜の姿かたちだから。野菜に除草剤ぶっかけるって、なんか違う気がするんだよね。
もちろんゲーム上はあいつらも植物族のモンスターだから何の問題もないんだろうけど。
「どうせなら先にこのレシピが欲しかったな」
そうしたらクエストの中で大量発生したグラスウィードに向かって使えたのに。
夜を待ってから牧草地帯に行って使ってみるか。いや、もういっそのこと夜には迷宮攻略に行ってしまうかな。ダンジョンの中は昼夜の差なんてないし、途中の沼地でゴーストの大群に遭遇でもしない限り大丈夫だろうと思うけど。あいつらマジでやばいから。
「んー、もうお昼だけど、お昼ご飯はいいか。朝パンたくさん食べたし。……それじゃあ例のボスクエストをやってみるかね」
残った13の住人クエストについてだが、時間がかかりそうなものが多く残った。
午前中は割と短時間でクリアできそうなものを選んで片づけたからな。
それで残りの13ある住人クエストのうちの2つはボスクエストだ。
この階層で一番難易度が低いとされる『花畑に咲く悪の花』のクエストでさえ、ボスにはそれなりに苦戦させられたのだけど、やっぱりボスクエストは当然のように難易度が高い。
残った2つのボスクエストについてだがクエスト名を先に言っておく。
1つは『草原の守護者』というもので、これは登場するボスがあのヤタガラスと同じレベルのモンスターということもあってか受けるプレイヤーはほぼいない。間違いなくこの階層で最も高難易度のクエストだ。というかもうクエスト名からして強敵との戦いがありそうなんだけど。
もちろんこのクエストは受けるとしても1番最後だ。ボスにソロで勝てるかどうかも怪しいし。
もう1つは『野菜大作戦!』というクエスト。私がさっき冒険者ギルドで受けてこれから依頼人の元へ向かおうとしているクエストだ。
このクエスト、依頼人はなんとあの牧場の主であるアーネルで、クエストの内容は牧場内の畑で野菜が大量に採れたので収穫を手伝ってほしいというものだったけど、一見してボスモンスターとの戦いなどあるようにも思えないし、報酬もかなり良いので知らずにクエストを受けたプレイヤーが最後にボスモンスターとの戦いに負けてクエスト失敗となり、この階層一番の内容詐欺クエストと呼ばれている。
うん、まあ気持ちはわからんでもないよ。
だって私も事前にほかのプレイヤーに聞いていなかったらろくに準備もせずにこのクエスト受けてたと思うし。クエスト名も、なんだかすごく平和そうで可愛い感じだし。
「でも、じゃあどんなボスモンスターが出るんだろうか。牧場だし、柵を飛び越えて巨大なイノシシでも乱入してくるのかね……」
残念ながら私はこのクエスト内で実際に何が起きて、どんなボスと戦うことになるのかまでは知らなかったのでちょっとドキドキしていた。いや、ワクワクの間違いか。
クエストボスに今の私のレベルで通用するのかどうかわからないけど、まあ死んだら死んだで諦めよう。
ソロプレイヤーなんて本来は負けてなんぼみたいなものなんだしね。
<第2階層:牧場>
牧場についてから、私はさっそく畑にいた牧場主のアーネルに話しかけた。
私が冒険者ギルドで『野菜大作戦!』のクエストを受けたと言ったらすぐにクエスト内容の説明をされるかと思ったら、まずは牧場内を案内された。
「いやあ、うちには前まで使っていた裏の畑があったんですが、この前その畑を見た時になんと撒いた覚えのない種から野菜が実ってるのを見つけましてね」
「はぁ……」
「ああ、ちょうどあのあたりです。私は表の畑の方の収穫をしているんで、こっちの収穫が終わったらまた話しかけてください」
「わかりました」
ということで私は牧場内の裏手の端、私が前に草を取ったあの区画からちょっと離れた位置にある裏の畑という場所に案内されると、アーネルはそれだけ言って自分だけまた元の場所へと帰って行った。
けれども収穫と言われても、私はそもそも収穫した野菜を入れる袋とか籠とかももらっていないし、そもそもその肝心の実っている野菜というのがどこにも見当たらないのだけど。
「え?……それでこれ、どうすればいいんだ?」
すでにアーネルは去った後であり私はそれからどうすればいいのかしばらくわからずにその場で立ち尽くしていた。そして何か手がかりでもないかなとその裏の畑に足を一歩踏み入れた瞬間に、私の視界が切り替わった。
ああ、これは戦闘フィールドに移行したな、剣と盾が現れたし。
ただ、これまでと違って周囲の景色はほぼ変化がなかったので、きっと決闘の時と同じようにどこかでバリアを張られて一定の空間に隔離されたのだろう。
そして私は、視界の端に現れたとあるカウンターをしめす数字を見てようやくこのクエストの趣旨を理解した。
私の視界の右上端に現れたカウンター、それは野菜カウンターだった。
厳密に言うと、その野菜カウンターの下にトマト×50、ニンジン×50、ナス×50という表示が見えていて、つまりこれは……
「ああ~、え、これってそういう?」
そう、まさかのモンスター退治だった。
しかもそれから出現したモンスターについて、まあもうわかると思うけど牧草地帯の昼間に出現するあの野菜モンスター3種類。 すなわちデビルトマト、ダンシングキャロット、エッグプラントがそれぞれ5体ずつ戦闘フィールドに出現した。
「うわ、1人で同時に15体もモンスター相手取らないといけないわけ?」
幸いにももうすでにどのモンスターも私は一撃で倒せるし、モンスターたちの攻撃がどれだけ苛烈を極めたとしても私には1ダメージを与えられないことは明白だったけど。
でも、私でなかったら1人で1度に15体のモンスターと戦うというのは完全に自殺行為だ。
ソロでこのクエストを受ける奴がどれだけいるのかはわからんけど。
しかもこのクエスト、単に野菜モンスターをそれぞれ50体ずつ倒せばいいわけでもなかった。
なぜならこのクエストの目的はあくまで野菜の収穫であるからだ。
どういうことかと言うと、たとえば私は最初にデビルトマトを1体倒したが、視界の端の野菜カウンターのトマトの数字は50のままで変化なしだった。
それが変化したのはデビルトマトがドロップしたトマトを私がアイテムボックスに収納した時だった。トマトのカウンターの数字が50から49へと変わったのだ。
「なるほど、つまりこのクエストは野菜モンスターを倒し続けてトマト、ニンジン、ナスのドロップアイテムをそれぞれ50個ずつ拾えという……うわ、面倒くさい!!」
何が面倒なのかというと、それは私以外のプレイヤーはモンスターを倒してもドロップアイテムは100%の確率で落ちたりはしないということだ。
そしてこのクエストが終わるまで、デビルトマト、ダンシングキャロット、エッグプラントはどれを何体倒したところですぐに新しい個体が出現して常に5体ずつ、フィールド内に15体のモンスターが常に存在し続けるというプチ地獄と化している。これは集中力と忍耐力が試されるクエストだよ。
終わることのない果てしない野菜モンスターたちとの戦闘。ああ、しかもこれ、この野菜の収穫が終わってもさらにこの後でクエストボスとの戦いがあるんだよね。
プレイヤーたちはきっとブチキレるだろうなぁ……内容詐欺クエストって呼ばれるのも納得だ。
「私の場合は単にそれぞれのモンスターを50体ずつ倒して落ちた野菜を拾って行けばいいだけのクエストなんだけど」
私は、この時今までで1番自分の恩恵の効果に感謝したかもしれない。
だってアイテムドロップ率100%でもないと、こんなのやってられないしね。
しかも、その私であってもそれぞれのモンスターを各50体ずつ倒して野菜を50個ずつ回収し終えるのに30分くらいかかったから。私以外のプレイヤーたちがこれをやったら軽く1時間はかかるだろうか。いや、運が悪ければもっとかかるだろう。
ちなみに野菜カウンターが残り5を下回った時点で、その野菜に対応するモンスターもフィールドにそのカウンターの数しか現れなくなった。
(トマトのカウンターが先に0になったら、フィールドにデビルトマトはもう出現しなくなった。)
そしてついに私は最後のエッグプラントを倒して落ちたナスを回収し、ナスの野菜カウンターを0にしたところで野菜カウンターはすべて消滅した。
「あー、やっと終わったし。さて、お次はボスの登場かね。いったいなにが……」
と、私がいいかけたところで突然の地響き。
あ、これ前のデビルツリーと同じで地面の下から何か出てくるパターンの演出だ。
そうして私の目の前、ちょうど戦闘フィールドの中央付近の畑の地面、土を押しのけて現れたこのクエストのボスモンスターは……
「カボチャだぁぁぁぁ~~~~!!」
そう、カボチャだった。
モンスター名は……ベジタブルキング!、野菜の王様だった。
いや、野菜の王様がどうしてかぼちゃの姿かたちをしているのかはわからないけど、なんだろう、単純にすごくでかいからかな?
ベジタブルキングは、全長10メートルはあろうかという巨大なオレンジ色のカボチャで、地面の下からはつる草がまるで触手のように8本も飛び出している。あれが主な攻撃手段っぽいぞ。
表面にはくりぬかれた目が2つと、そしてパックリと別れた大きなお口。
正直に言ってもいいかな。私は心の中でハロウィンか!、とツッコミをいれたよ。
HPケージはまさかの大ケージ2本と半分。今までのモンスターで言うならドラゴンについで高い体力を誇っていた。
「ああ、しかも絶対に耐久高いんだろうな、こいつ」
かぼちゃと言えば、もうめっちゃ固い野菜の定番だし、絶対そうに違いない。
ただ、だからと言って魔法攻撃が効くとも限らない。植物族のモンスターは賢さが低いことが多いけどこいつは仮にもクエストボスだし、キングとか名乗ってるからきっと賢さも相応に高いはずだ。
「どうやって攻めるかな…………あ、そうだ。いいこと思いついた!」
私はベジタブルキングを見据えながらまずはどうやって攻めようかと考えていた。
そこで私はあることを閃いたというか、思いついたのだ。そういえば良いアイテムがあったと。
それは今日、ついさっき作ったばかりのアイテムで……
「除草剤使ってみるか。んー、まあ相手はかぼちゃで、結局野菜に除草剤ぶっかけることにはなるけど。まあそれはそれ、あいつはボスモンスターだしね」
と、私は自分にちょっとだけ言い訳をしてからアイテムボックスから除草剤を1個取り出し出すとベジタブルキングに向かって投げつけた。
するとどうだろう、なんとたったの一撃でベジタブルキングのHPは大ケージ2本と半分から、大ケージ2本と1割にまで減少した。
つまり今の攻撃で一気に大ケージの4割程度のダメージを与えられたことになる。
「うわぁ、さっすが☆クオリティ。クエストボスでもそんなにダメージを与えちゃうんだ!」
私はそれに驚きつつももう今回の戦闘の方針についてははそこで決定した。
「そうだな。どうせこれ(除草剤)持っててもこの先そんな使う機会あるかわかんないし」
私はダメージを受けてなんか激怒してるっぽいベジタブルキングのことを冷静に見据えると。
「今全部使っちゃってもいっか。どうせまた作れるんだし」
それから、ベジタブルキングとの戦闘は5分もかからずに終了した。
もちろん向こうも多種多様な攻撃をしてきて私も無傷ではいられなかったけど、ただ、今までの戦闘の中で1番労力をかけずに倒せたかもしれない。
だって、薬品なげつけるだけで良かったし、だから剣も魔法をいらなかった。
ベジタブルキングは体が大きくて敏捷は低いから投げつけた除草剤が当たらないわけなかったし。
「いやー、先に雑草駆除しておいて良かったなー」
それがベジタブルキングを倒した後の、私の感想だった。
雑草駆除とは何のことかって?……この話の最初の方に書いてあったやつだよ。
ああ、除草剤についてだけど、結局全部は使わなかったよ。
使ったのは7個。まあ6個目が命中した時点でベジタブルキングの体力はもう風前の灯になっていたから最後の一撃くらいは剣で止めさしても良かったとは思うけど。
そう言えば私は前のボスクエストのボス、デビルツリーから植物殺しのスキルをもらっていて植物族のモンスターには物理攻撃で通常よりも大きなダメージを与えられるのだから、普通に剣だけで戦っても勝てたかもしれない。
「まあ、もう終わったことだしいいけど」
そしてベジタブルキングを倒した後で私は1350の経験値と3000Gを獲得した。
さらにベジタブルキングからはもちろんスキルも手に入れたのだけど。
<新しいスキルを入手しました>
スキル:大地の恵み
〇大地の恵み
効果:植物族モンスターを倒した時に得られる経験値の量が1.2倍になる。
「うーーーーん……いや、微妙かな」
決して悪い効果ではないのだ。
だけど、クエストボスを倒して手に入れたスキルにしてはね。
経験値アップのスキルはこれが初めてだからそれは素直に嬉しいんだけども。
植物族と倒すモンスターの種族が決められている上に上げ幅がたったの1.2倍なのだというからあまり意味はないかな。
せめて1.5倍くらいだったらもうちょっとテンション上がってたと思うけど。
「でも、まあそれもいいか。割と簡単に倒せたからスキルもこんなものだろう」
もしもこれがすごく苦労して倒した上での結果だったとしたら私はもっと不満を口にしていたと思う。
しかし今回はむしろあっさりと倒せてしまったのでそれで得たスキルがしょぼくても文句は言わない。
戦闘が終了すると私は元の牧場フィールドへと戻ってきた。
そうしてすぐに牧場の表へ戻ってくるとそこにいたアーネルにクエストクリアの報告をした。
私はアーネルに、今回のクエストで収穫した野菜、トマト、ニンジン、ナスを50個ずつ渡すとアーネルはそれを受け取って、そこでクエスト達成の文字が私の眼前に表示された。
「これからも野菜をたくさん食べて、体を大切にな」
「あ、はい」
と、まるで田舎育ちの農家のおじいちゃんみたいことを言われた後でクエストの報酬としてもらったスキルは、もう本当にどうでもいいスキルだった。
〇ベジタブルパワー
効果:アイテムカテゴリーが[野菜]に分類されているアイテムを食べた時、食べた野菜に応じてHPを回復する。
正直このスキル、オンにしていてもオフにしていてもどうでもいい。
だって野菜アイテムを生で食べることなんてないもの、ゲーム内で。
なんか食べた野菜によって回復量は違うっぽいけど、どの野菜がどれくらいのHP回復効果を発揮するのかということを調べる気にもならない。どうせたいしたことないんだろうし。
というか、このクエストの報酬って本当にこれだけなの?
「また野菜が大量に実ったら、収穫の手伝いを頼んでもいいかね」
「はい。それは、もちろんいいですけど」
「そうかい、それじゃあ次があったらまた頼むよ」
アーネルは最後にそう言ったけど、でも住人クエストって同じクエストは1人につき1回しかクリアできないから次の機会とかないと思うんだけどな。
いや、まさか。もしかするとこの先それが起こりうる可能性も完全に否定はできないぞ。
先の階層に進んだところで、まさかの階層を戻って第2階層のこの牧場で今日みたいな感じで新たな野菜モンスターたちと戦って。クエスト名は『野菜大作戦2!』みたいな?
「いや、もう野菜はいいや。っていうかしばらく見たくないかも」
クエストはクリアしたものの、ずっと野菜モンスターと戦い続けていた私は、もう当分は野菜は勘弁してもらいたいと思った。現実に戻ってもトマトとニンジンとナスはしばらく食べたくないなと思うくらいには。ああ、でもなんかちょっと今、かぼちゃを食べたい気分かな。不思議とね。
<モンスター辞典>
〇ベジタブルキング
植物族。第2階層のボスクエスト『野菜大作戦!』のクエストボス。
見た目は10メートルほどある巨大なかぼちゃの形をしている。ちなみに頭の上の部分にあるへたが王冠の形になっていたのだけど玲愛はそれには気づかなかった模様。
HPが多く、耐久も植物族にしてはすごく高い。加えて植物族の多くが弱点としている火属性に耐性があるのでかぼちゃだからといってなめてかかると返り討ちに遭う。
本編内で省かれた攻撃方法についてだが、主な攻撃は本体の下部から伸びる8本のつる草を鞭のように高速でしならせてからの物理攻撃。
この鞭草攻撃は攻撃範囲が非常に広く、パーティを組んでいてもパーティメンバーが全員食らってしまうことも少なくない、かつ攻撃速度も速いため回避も非常に困難。
さらにこのつる草は攻撃して個別に倒すこともできるがまたすぐに再生するので大変。
あとは口から触れると爆発する種を飛ばす攻撃、巨体なのに大きくジャンプしてプレイヤーを踏み潰す攻撃や地面のしたから根っこを突き出し貫く攻撃など本当に多くの攻撃方法を持ちそのすべてに対応するのはベテランのプレイヤーでも至難の極みと言われる。
弱点は雷属性。火属性、水属性、土属性に耐性がある。
ドロップ:なし
なお、筆者はこのモンスターは第2階層の迷宮のボスでも十分通用するくらいの強さがあると思っていますが、玲愛がまさか除草剤なんていうアイテムのみを使ってこのボスを倒したことについては、自分で書いていてちょっと酷すぎるかなとも思いました。
それと、モンスターではありますが野菜に除草剤をぶっかけるという表現につきましては、農家の方には絶対に許せない、普通の人でもありえないと非難されることもあるかと思いますが、そのことに関しましても、あくまでゲーム内のことなのでご容赦いただけると。ただ、一応謝罪しておきます。
一生懸命野菜を育てているであろうこの世界のすべての人に、ごめんなさい。




