ニートな女神と初めてのゴースト
神界にもレンタルビデオショップとかあるらしいよ?
マロンちゃんは笑いながらも私の座っているベンチの隣に座り込んだ。
私はそんなマロンちゃんを見て前に見た時と装備が変わっていることに気がついた。
前は、黒いつば付き帽子に黒いローブを着たザ・魔法使いもとい魔女みたいな恰好だったのが今はそれが紺色っぽくなっていた。
「装備変えたんだ」
私がそのことを言うとマロンちゃんはとても嬉しそうな顔をして答えた。
「うん、そう。すごい良くわかったね。他の皆もあれから装備変えたんだけど私が1番変化してないって言われたのに」
いや、さすがに色が黒から紺に変わっていたら……遠目じゃ分からないかもだけどこうして近くで見たら誰だって気づくだろう。
というより、それなら他の3人についてはもっと分かりやすく装備が変わったということなのか。
「あのね、ローズがお姉さんから聞いたって言う始まりの街の隠れた名店で買ったの」
「ああ、そうか」
そういやこっちに来る前に最後ローズと戦って、その後で私教えたなあの店のこと。
そうか、そう言えばローズも皆で行ってみる的なこと言ってたっけ。
私は、魔法使いが着るようなローブとかについては店のカタログなんて見てなかったけど、でもそれで装備を変えたということはやっぱりあの店は他の始まりの街にある武器屋よりも品ぞろえがいいんだな。
「お姉さんは、前見た時と変わってないね」
「ああ、うん。そうだね、変えてないよ。あ、そうだ調合スキルはもらったんだよね?」
私は前にマロンちゃんとラフィアちゃんの2人に最後に合った時に2人が、正確に言うとマロンちゃんだけだったみたいだけどリックスの薬屋で調合のスキルがもらえるあのクエストを受けて、見事クエスト達成した瞬間に立ち会っていた。
だからマロンちゃんも間違いなく今調合のスキルを持っているはずなのだけど。
「うん、もちろん。それでね、それから魔法屋さんのお婆ちゃんからのクエストを受けてね、野菜ジュースのレシピももらったんだよ」
「そう。でも素材集め大変じゃなかった?」
「うん。だから他の皆にも手伝ってもらったの。でもそれまで皆、モンスターからドロップしたアイテムはすぐに全部売っちゃってたから大変だったよ」
「ああ、そっか。普通はそうなんだよね」
ゲームの序盤ではまだアイテム作成のスキルは持っているプレイヤーはほぼいないし、稀に神様の恩恵の効果で最初から鍛冶のスキルとか持ってるプレイヤーもいるとかいう話も聞くけど、だから大体のプレイヤーにとって素材アイテムとかって基本は売ってお金の足しにするアイテムなんだよね。
「でも野菜ジュースだけでなくてポーションとかも何回も作ったんだけどね。どれも+とか、++とかいうのが付くだけでお姉さんからもらったあの☆付きのアイテムはまだ1個しか完成してない」
「うん。それは、別に気にしなくても大丈夫だよ。そっちが普通だから」
「そうなの?、でも、それじゃあお姉さんはどうしてあんなにたくさん☆付きのアイテムを作れるの?、何かコツとかあるの?」
「いや、コツとかはないよ。私の場合は……まあ色々とね」
そうなんだよな。普通はそんなに簡単にあの☆付きのアイテムは作れないんだよね。
「お姉さんは今調合のレベルはいくつなの?、私はポーションをひたすら作ってたらⅡに上がったよ」
「私は……Ⅳになったところ。調合のレベルは頑張ればこの階層でⅡからⅣに出来るんだ。でも、私でも相当苦労したから。マロンちゃんは、やっぱり他の皆に材料集め手伝ってもらった方がいいと思う」
「そうなんだ。うん、わかった。ラフィアちゃんとかは、私が調合スキルを使って作るアイテムがお店で売ってるやつよりも効果が良いっていうことを知ってから積極的に手伝ってくれるし。李ちゃんもローズも、自分じゃ持ってても使えないからってくれるんだ」
「ラフィアちゃんは調合スキルは取らなかったんだ?」
「うん。マロンちゃんが持ってるなら別に私はいらないって」
まあそうか。正直調合のスキル持ちなんてほとんどいないわけだし。
パーティ組んでたら1人いればいい方だと思う。戦闘には直接関係ないスキルだしね。
「後はね、あ、お姉さんは今レベルいくつ?」
「私?……23だけど」
「うわ、やっぱり凄いね。前よりもレベル差が開いてるよー」
「マロンちゃんはいくつなの?」
「私は今日のお昼にまた1つ上がって14になった」
そういやパス太たちもそこらへんだったな。
おそらくこの第2階層はレベル15くらいあれば突破出来るというか、パーティ組んでれば攻略できる階層なんだろう。
それなのに私はソロなのにもうレベル20超えとか……でもむしろソロならそれくらいないとダメかな。
うーん、やっぱり自分のレベルやスターテスを基準に考えていたらダメだということはわかった。
「他の皆も?」
「ラフィアちゃんだけまだ13。ローズはすごく頑張っててもうすぐ15」
「そっか。……そうだ。ドラゴン戦はどうだった?」
「すっごく苦戦したよ!、もうなんなのあれ!?、ボスってあんなに強いのって思った!」
「ああ、うん。でも倒したんだよね?」
「うん。1回挑んで負けちゃったけどなんとか」
ということは報酬の宝箱は良くて銅、悪くて赤い宝箱だったわけか。
でも、もう別に中身とか確認しなくてもいいよね。パス太たちに銀の宝箱の中身聞いてから、金とそれ以下の宝箱には入っているもが大きく違うってことがわかったし。
「あ、そうだ。私お姉さんに1個聞きたいことがあるんだった」
「うん。何かな?」
「あの、最近噂になってる竜鱗の乙女っていうプレイヤーって、もしかしてお姉さんのこと?」
おおおおい!、それは、うん、その通りだけどね。
というか私もこの前ナポリさんに初めて聞いたばかりなんだけどね!
「う、うん。たぶん、そう、かな?」
「やっぱり!、だってお姉さんが今着ているやつって、噂で聞いたのとそっくりだったから。他の皆とも絶対にそうだよねって話してたんだ」
「そ、そうなんだ。ははははは」
くそう、なんだそれは。めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか!
あーー、なんだろうこの、早くドラゴンシリーズを超える性能の装備を見つけてそっちに着替えたいなとか思うこの感じ。
だけどもう私は竜鱗の乙女と言う2つ名を背負ってこの先やっていくしかないみたいだ。
それにここで下手に装備変えたりしたら、そのことでまた新たに別の名前つけられるかもしれないし。
「お姉さんは今何してたところなの?」
「んー。私は夜待ちかな。夜にだけ出現するモンスターを討伐するクエスト受けてるから」
「そうなんだ。私たちはこれから森のボスに挑むんだ。あ、そろそろ集合の時間かも」
マロンちゃんは現在時刻を確認すると慌ててベンチから立ち上がった。
森のボスってことはクイーンビーじゃないか。いや、マロンちゃんたちは皆レベル14か13で、4人パーティだから大丈夫だとは思うけど。
「あ、待って」
「なあに、お姉さん?」
「あの、良かったらこれ。使ってみるといいよ」
「え?」
私がマロンちゃんにあげたのはもちろん麻痺消し薬☆だ。
手持ちの全部をあげても良かったけどそれだと逆に余るだろうから、とりあえず20個渡した。
オレンジジュース☆をあげても良かったんだけどね。こっちの方がアイテム名がわかりやすいから。
「麻痺消し薬のいいやつ。森のボスは麻痺攻撃してきて、その麻痺はキラービーのやつより強くて店売りのやつじゃ直せないから。でもそれなら直せるよ」
「でも、私今お金持ってないよ」
「あー、そっか。じゃあそれ1個80Gだから。20個で1600G分。私からの前借り分のお金から引いておくようにラフィアちゃんにでも言っておいて」
「うん。わかった。ありがとうお姉さん!」
たしか私のマロンちゃんたちへの前借り分のアイテム代金は残り9100Gだったはず。
これで今1600G分さらに支払ってもらったことにして残りは7500Gか。
まだまだ返しきるための道のりは長そうだな。いっそのこと全部返した時にパーティに入れてもらうことにしようかな、なんてね。
「森のボスは強いし厄介なやつだけど、頑張ってね」
「うん。あ、お姉さんってまだこの階層にいるんだよね?、まさかもう第3階層に行っちゃうなんてこと……」
「いや、さすがにそこまでは進んでないよ。でも、あと2、3日で迷宮は突破できるかもしれない」
「そうなんだ。じゃあまだいるにはいるんだね。……あの、今度また私たちと一緒にクエストとかやらない?」
「うん。タイミングが合えばいいよ。ほら、急がないと集合時間に遅れるよ」
「あ、うん。それじゃあお姉さんまたね!」
「またね」
私は走り去って行くマロンちゃんをベンチから立ち上がり手を振って見送ると、またベンチに座り込んだ。なんていうか、やっぱり私って誰かと話したりするのが好きなんだろうか。
現実じゃほとんどアパートの部屋にこもりきりで誰かと会話なんて……そういや最近ちょっと増えたような気もするけど。
「いや、現実がそうだから余計にゲームの中じゃこうなのかもしれないな」
きっと、他のプレイヤーの多くもこういう一面はあるはずだ。
つまりここはゲームの中で現実とは違うから、ゲームの中での自分は現実の自分とは違う、あるいは現実の方ではあまり表に出てこない自分の内面がでたりする。
RPGというゲームのジャンルのRとはロール、つまり役柄を演じることであり、プレイヤーはこの世界の自分のキャラクターを自身の第2の肉体として、そして第2の精神として操っているとも言える。
もしかすると、そこには第2の魂とかも宿っていたりして?……なんちゃって。
「はあ……人間って難しい」
神様以上に難解だと、私はこの時そう思った。
<第2階層:沼地>
結局夜になる前に私は一度ログアウトして、現実の私の部屋に帰ってきてそこで夕食、お昼にコンビニで買ってきていた菓子パンを食べた。
そしてしばらく部屋で時間を潰して8時を過ぎてからまたゲームへログイン。
さっそく夜の牧草地帯に赴いてコボルトサーベルとグラスウィードの討伐を終えるとフローリアの街の冒険者ギルドでクエスト達成の報告を済ませた。
これでギルドクエストは27個達成したことになり残るは18個。
沼地に9個、そして最後のダンジョンである迷宮内で9個。
私は沼地で受けられるクエストを今ついでに受けてやっておこうと思ったのでとりあえず適当に5個選んで受けたけど。夜の沼地は昼間でも割と暗くてじめじめしてたのがより強く感じるようでなんか気味が悪かった。
沼地の昼間には多くの新モンスターに苦戦を強いられた私だったが、どんなモンスターも1度戦ってからだとやはり動きに慣れるからか割と簡単に倒せるようになる。
まあそれでも森のニードルラビット×6との戦闘とかはちょっと勘弁願いたいところだけど。
昼間の沼地に出現するモンスターは全部で10種類にも上る。
新モンスターであるゴブリンシャーマン、スラッガー、ポイズンバタフライ、ブルーフロッグ、マッドマンとエリアボスであるマッドゴーレム。
さらに、もちろん既存のモンスターとしてゴブリンランス、コボルト、ワイルドボア、ワイルドウルフの4体も引き続き出現するけど。
ワイルドウルフが……これがまた獣の爪が所持数限界に近づいてきていた。
前にいっぱいになって500個ほど売ったはずなのにな。もう拾うのマジでやめてもいいかな。
とか言いながらもやっぱり拾ってしまうのは落ちてる物は拾うと言う私の主義に反するからなのか、それとももう拾わないという選択肢ははなからなくなってしまっているのかも。
別に持ってて不利益にはならないんだけどもね。使い道ないから溜まる一方なんだよな。
「さて、それで夜の沼地は……モンスターの変化は……あるけど」
変化と言えばまたコボルトがコボルトサーベルになっていたくらいで、1時間ほどの探索で昼間に出現したモンスターの大半とは出会った。ただ、ワイルドボアの姿がいまだに見えないことから、それが減った分夜に新しいモンスターがまた1体増えてるのかもと思っていた。
「うーん、これは考えすぎかな。よく考えれば昼にあれだけ新モンスターが出てきて夜にもそんなたくさんモンスターが入れ替わり出てくるなんて、序盤じゃまずないだろうし」
牧草地帯はむしろ昼と夜とでモンスターの分布が大きく変わっていたから難易度が高そうに思えたけど、それまでに見たことない新しく登場するモンスターってだけなら数はこことそう変わらないわけだし。それでもたしかに夜の方がモンスターのレベルは上がって強くなってはいるみたいだけど。
「ん、なんだろうあれ」
ただ、私の読み通りというか、ワイルドボアが抜けた分しっかりこの夜の沼地にも新しいモンスターが出現したよ。そのモンスターは一言で言うならすごく夜にふさわしいモンスターだったというか。
「お、お、お化けだ~!」
むしろ夜だけに出現することにここまで納得のいくモンスターは他にいないことだろう。
「ウケケケケケケ!」
モンスター名はゴースト。後にモンスター図鑑で確認したところによるとどうやらアストラル族という種族のモンスターだとあったが、そのアストラルっていったいなんなんだよ。
色は薄い青色でうっすらと光っていて、形はほぼ球状でそこに手と、あと目と口がついてた。
ゴーストとは幽霊のことで、それのイメージからか足はついてなかったけど。
しかし何故か、体の下の方にちょこんと尻尾のようなものがついていた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
私は初めて見る本物(?)のお化けを見て絶叫した。
ちなみに私はお化けとかそういうのは別に大丈夫だ。神界でも暇なときとかたまにビデオレンタルショップに行ってホラー映画とかよく借りて見てたし。
まあ、今は部屋にテレビもDVDデッキもないから最近は全然見てないけど。スマホの動画サイトで怖い動画とかは普通に見る。
だから別にお化けが怖かったわけではなく、単に驚いて声を上げただけだったのだが……
なんかちょっと、大げさだったかもしれない。というか、叫んだのはノリに近い。
それで問題のゴーストだけどこいつがもしかするとこの階層で1番厄介なモンスターだったかもしれない。
「えい、そりゃ!……え、うそでしょ!?」
ゴーストは体が霊体であるためかまさかの剣、いや物理攻撃がすべて無効になっていた。
つまり剣で斬りかかってもゴーストの体をすり抜けてしまいダメージを与えられない。
私の防御力も完全にチートというかほぼ無敵に近いけど、こいつの場合は素でそうなのだ。
ただし、効かないのは物理攻撃だけで逆に魔法攻撃はよく効いた。
「ライトアロー!」
「ギャアアアアアアア!」
光属性の攻撃魔法でも威力の低いアロー系の魔法一発で倒せるほどに。
物理攻撃が無効な代わりに魔法攻撃で受けるダメージが10倍にでもなってるのか。
まあでも物理攻撃のみでゲーム攻略を進めるプレイヤーにとっては絶対に勝てない強敵であることに違いはないか。そんなプレイヤーは少数派だろうけど。
それでゴーストの攻撃についてだが、もちろんゴーストの方からも攻撃をしかけてくる。もちろんそれは魔法攻撃だったんだけど。
いや、こっちからは物理攻撃しても体をすり抜けて当たらないのにむこうからは普通に殴ってくるとかそういう矛盾はないって話で。(あったら悪夢以外の何物でもないだろうし。)
ゴーストは、これもお化けのイメージなのか火の玉を飛ばす攻撃をしてきた。
それはファイアーボールとはどうやら違う種類の魔法だったようで、青い火の玉を飛ばしてくる攻撃だったんだけど、なんとそれを食らっても私にダメージはなかった。
そう、HPにはまったく。
「うわ!?……あれ?、直撃しちゃったけどHPは減ってない……でもMPが減ってる!?」
その青い火の玉攻撃を受けてもHPは一切減らない。
代わりにMPを削られる。そう、つまりこれはMPダメージ攻撃だ。
私のようにスキルや魔法を使うけど魔法使いではないからMPの最大値が低めのプレイヤーには絶大な威力を発揮する恐怖の攻撃だった。
「いやこれすごくやばいんじゃね?」
下手すると第1階層で、李ちゃんとの決闘の時に李ちゃんが使ってきたあの防御貫通の槍攻撃よりもまずいかもしれないと思った。
もう皆わかってるとは思うけど、このゲームではMPが0の状態だと仮にHPが全快の状態でも非常にまずいというか、多くの場合は戦闘でかなり苦労することになる。
とくにゴーストのようなやつと戦った時には、ゴーストは物理攻撃が一切効かず倒すには魔法攻撃でしか倒せない。なのに肝心の魔法を使うために必要なMPが0だとしたらもう絶望しかない。
ゴーストの場合は攻撃方法がその1つだけだったからまだ良いが、もしもさらに別にこちらのHPにダメージを与える攻撃魔法を持っていたとしたらそこで終わりだ。私はそのモンスターに手も足もでずにやられてしまうだろう。
「ライトアロー!……しかもこいつら数が多い。今まで1体も見かけなかったのに!?」
極め付きにどうやらこのゴースト。夜の沼地に入ってから一定時間が経過しないとプレイヤーの前に姿を現さないモンスターだったみたいで。
それは花畑のエリアボスのウェアウルフと同じだったんだけど、ウェアウルフが一晩に1体しか出ないのに対しゴーストは1度1体と出くわすとどんどん仲間が集まってきて大変なことになる。スリープシープの仲間を呼ぶあの雄たけびみたいな感じで。
それでも私は青い火の玉をかわしながらも都合10体目となるゴーストを倒したらその時点でその戦闘は終わった。
実はまだゴーストは残っていたんだけど10体目を倒したらそこでなんか恐れをなしたのか勝手に消えて逃げて行ったのだ。だけどももしこのまま戦闘が続いていたら正直逃げ出していたのは私の方だったろう。
「戦闘前はほぼ満タンだったMPが、今はもう尽きかけてるとか。……いや、本当に危なかった」
今後はゴーストの姿を見かけても不用意に近づかないようにしなければならないと私は思った。
そしてゴーストについてだが、本当に何も落とさなかった。
つまり今までどのモンスターからも何かしらあったはずのドロップアイテムが、ない。
これはハニービーの時と違って本当に最初から何も落とさないモンスターだということは、さすがに10体も倒して1個も落ちてなかったからそうなんだろう。というよりも何も持っていないと言った方がこの場合は正しいだろうか。
ただ、経験値とゴールドはくれたけども、お前らどこに金隠し持ってたんだよって言いたくなった。
……だって体が透けてて全部丸見えだったし。
<新しいスキルを入手しました>
魔法:ブルーファイアーボール
〇ブルーファイアーボール
闇属性の初級攻撃魔法。敵に向かって飛んでいく青い火の球を繰り出す。MPダメージ。
消費MP:3 リキャストタイム:4秒
「名前もまんまだし。なぜか闇属性だし。……まあ、普通の火の玉とは違うってことなのかね」
ファイアーボールと消費MPは同じだったけど、リキャストタイムは倍の4秒あった。
そしてブルーファイアーボールはファイアーボールよりも火の球の速度がやや遅くよけられやすい。
けれども初めてのMPダメージ攻撃魔法だし、対人戦闘では役立つ魔法には違いない。
もっとも、対人戦闘なんて私はほとんどしないんだけど。
「なんだかなぁ。やっぱり全部が全部私が使えるスキルや魔法じゃないってことかね」
私は聖水を飲んでMPを回復させるとそう言った。
改めてこのゴッドワールド・オンラインというゲームの中にあるスキルや魔法の多さを実感した。
あとちょっとだけ。ゴーストを倒したらあの物理攻撃が完全無効になるスキルとかもらえるかなんて期待してたけど、さすがにそこまでは無理だったみたい。
しかし後に、これは本当にだいぶ後になってからのことなんだけど私はそのスキルを手に入れることとなるのだが、それについてはまだ内緒の話だ。
<モンスター辞典>
〇マッドゴーレム
物質族。第2階層の沼地のフィールドのエリアボス。
概要は第1階層の岩場のエリアボスであるストーンゴーレムの強化版であり、とくに力が上がっている。反面で耐久の値はそこまで高くはないため物理攻撃が意外とよく効く。
ストーンゴーレムをそのまま泥にかえただけであり、デザインの手抜き感は否めないが、戦ってみるとかなり強い(エリアボスだから当然なんだけど)ことがわかる。
詳しくは前回の本編で書いた通りであるが、特にストーンゴーレムにあった飛ばした腕を拾いに行くための隙がなくなっていることに注意が必要である。
ドロップ:マッドゴーレムの心臓、力の腕輪
〇ゴースト
アストラル族。つまりは幽霊……としか言いようがない。
薄い青色のまんまるボディで、そこに顔を手がついてる。ちなみに顔はとくに怖いということもなく、むしろ一部のプレイヤーたちからは可愛いと言われるほど。
ゲーム内で初めて出現するアストラル族のモンスターであり、また初めてプレイヤーのMPを減らす攻撃をしてくるモンスターでもある。
体が霊体であるため物理攻撃が一切効かないのだが、玲愛の読み通り逆に魔法攻撃では通常の10倍のダメージを受けるという特性がある。なお、これは他の多くのアストラル族のモンスターにも共通のため倒すのは割と簡単だったりする。……魔法が使えさえすれば(←重要)
なお、アストラルとは霊体のことである。
ドロップ:なし
 




