ニートな女神と初めての進化
次回から玲愛には一緒に戦闘に参加してくれるパートナーが出来たりして?
そのクエストは、もちろん住人クエストの中にあった。
クエスト名は『短剣入門』というものでそのクエストをクリアしたら何の武器が装備可能になるのかまるわかりだったけど。
短剣とはようはナイフのことで、これは弓や銃のように遠距離の敵に投擲して攻撃することも出来るしリーチは短いが近距離の敵も普通に攻撃できるという武器だ。
もちろんこのゲームの開始時に初期武器の1つとして選べるものの中にもあった。
しかし短剣は、使いにくい上に攻撃力も高くはないため初期武器として選ぶプレイヤーはまずいないという話も聞いたことがあったのだけど。
「あれ?、それって初期武器に短剣を選んだプレイヤーはどうなるんでしょうか?」
このクエストをクリアしたら短剣が装備可能になるスキルがもらえる。
だけど初期武器に短剣を選んだプレイヤーはすでにそのスキルを持っているはずであり、その場合そのプレイヤーはこのクエストを受ける意味がなくなる。
「はい。そのプレイヤーの方にはスキルの代わりにギルドから別に報酬が支払われます」
「え?」
ああ、そうなんだ。それはちょっと、でもなんか可哀想な話だな。
でも、そうか。ならこの先もしも片手剣が装備できるようになるスキル、片手剣術のスキルが報酬のクエストでは私が今回のような処置というか、クエスト報酬が別なものになるわけか。
最初に選ばなかった武器も絶対にどこかのタイミングでこうしてクエストの報酬で装備可能になるのだろうということを考えると、一応は理に適っているとは思うけど。
例えばの話だけど片手剣を装備できるようになる片手剣術のスキルが、もしも10階層の街の住人クエストのクリア報酬とかだった場合は、初期武器に片手剣を選ばなかったプレイヤーは10階層にたどり着くまでは片手剣は装備できない。それなら初期武器は片手剣を選んだほうがいい、とか。
でも実は杖を装備できるようになるスキルが報酬のクエストは、11階層にありましたとか。
その場合は初期武器は杖を選んだほうがいいような気もする。
プレイヤーが初期武器にそれを選ばなかった場合に、1番遅くその武器を装備できるようになるスキルがもらえるやつが、その理屈でいうならもっともオススメの初期武器というわけだが。
でも結局は自分の好みの問題だからね、初期武器って。
「どうしますか。このクエストを受注なさられますか?」
「うーん、と。また明日の朝ここに来て、その時に誰もそのクエスト受けてなければ受けることにします」
「そうですか、わかりました」
もっとも、短剣が装備できるようになるクエストを果たして受けるやつがいるのかということに関しては、まあまずいないだろうとは思うけど。
でも冒険者ギルドの住人クエストをコンプリートしてやろうと考えているプレイヤーや、色々な武器が装備できるにこしたことはないと考えているプレイヤーもいるだろうしね。
私は……まあ第1階層の冒険者ギルドではクエスト全部コンプリートクリアしたけど。
でも別にこのクエストってわざわざ全部クリアする必要なんてまったくないただのやりこみ要素だし、せいぜい便利なスキルがもらえるクエストを受けるくらいで、プレイヤーの多くは基本的に冒険者ギルドのクエストはほぼ手つかずのまま次の階層に移動して行ってしまう。
コンプリートしようと思ったらボスクエストもクリアしなきゃいけないからそもそもそれは不可能に近いということもある。
第1階層で受けられるクエスト、とくに住人クエストではダッシュとバックガードのスキルがもらえるクエストとかが人気というか、プレイヤーは皆受けてるっぽかったけど、それ以外のクエストについてはほとんど手付かずに近い状態だったからな。
「あ、そうだ。お金を預けておこう」
私はギルドの受付カウンターから銀行の窓口に移動した。
なんだかんだでこの階層に来てからお金を預けに来たのはこれが最初だったし。
「いくらお預けになられますか?」
「じゃあ、5万ゴールドで」
「はい。5万……ゴールドですね。たしかにお預かりいたしました」
第1階層で私はお金を20万近く稼いでいた。なおかつその稼いだ金の大部分はエリアボスからドロップしたレアアイテムを武器屋に売って得た金だったのだが。
そういや私、この階層ではそれしてないな。あ、でもそれも仕方ないか。
花畑のエリアボスのウェアウルフは一晩に一体しか現れない。
倒すと一応力の指輪というレアアイテムが1度に2個落とすとはいえそれまでだ。
他のプレイヤーが先にその日のウェアウルフを倒していた場合はもうその夜はいくら待ってもウェアウルフは出てこないし。
森のボスのクイーンビーは、まあ私はソロでも倒せるけどやりたくないからパス。
牧草地帯はエリアボスがいないという話だし、これはもしレアアイテムを大量に手に入れて売りさばくとしたら最後のフィールドの沼地のエリアボスに賭けるしかない。
「でも、この階層ではそこまで荒稼ぎする必要もないかな。いやでも……」
私はそうつぶやくと若干引きながらもちゃんとお金を預かってくれた銀行の受付の女性(最初に来た時に会ったおばさんとは別の人)にお礼を言うとギルドを出た。
序盤では家でも買うんでもない限りそこまでの大金は必要ない気もするんだけどね。
「お金はないよりもあった方がいい。うん、これはリアルでもゲームでも同じ」
私はそう言うとそれから夜の牧草地帯へと向かった。
たしか、牧草地帯はエリアボスはいないけど夜は昼とモンスターの分布とか大きく変わるって言ってたから。夜にだけ現れる新モンスターから、またスキルがもらえればいいなと思って。
「明日はまずギルドに行って『短剣入門』のクエストをやってから、牧場に行って再生してるだろう草を取って、その後でアルベールの村で調合を終わらせて。……それから沼地に行ってみるか」
明日はなかなかに予定が詰まっているから充実した1日になりそうだった。
ゲームの中での話だけども。
<第2階層:牧草地帯>
さて、牧草地帯の夜。私はさっそくフィールドの探索を開始した。
牧草地帯の昼では出現モンスターは9種類だったけど、夜も同じくらいかなとか思ってたら意外にも夜の方が出現モンスターは少なかった。
昼間出現したモンスターは、ゴブリンランス、ゴブリンメイジ、コボルト、ワイルドボア、ダンシングキャロット、デビルトマト、エッグプラント、スリープシープ、ワイルドカウ。
だけど夜には本当に驚くべきことに今あげたうちの多くは出現しなかった。
特に昼間はあんなに苦しめられたスリープシープが出現しないことには驚いた。
いや、それが出現しないこと自体にではなく、スリープシープがいないのこのフィールドも夜の方が昼よりも攻略難易度が高いということに私は驚いている。
だって正直言って、スリープシープがいなければ牧草地帯の昼間のフィールドなんて今の私にとってはもう無双できるしね。まずダメージ負うことがないから。
「お、あいつは……シャドーマンだ!」
夜の牧草地帯での初戦の相手は、なんと第1階層の迷宮地下3階に登場した影のモンスター、シャドーマンだった。それが同時に5体も出現して戦闘になった。
シャドーマンはとくに、歩いてたら突然道の真ん中にたくさん現れたり、物陰の中から飛び出して先制攻撃してきたりすることもあるので私はまずそれで1つ納得した。
なるほど、たしかに攻略難易度は高そうだ。
ただ私はライトボールとライトアローの魔法を上手く使いながらも5体のシャドーマンに対してはとくに苦戦もせずに倒すことができた。
もともとヒット&アウェイ戦法を使ってくるシャドーマンが5体いると、たしかに面倒ではあるけどこいつは1体がそこまで強くないからね。森で戦ったニードルラビット×6に比べたら全然余裕だよ。
夜の牧草地帯ではスリープシープの他にもあの野菜系モンスター3種も出てこなかった。
昼間はよく遭遇してたんだけどね。あのニンジンとトマトとナス。
さらにしばらく探索してワイルドボアも出現しないことがわかった。
それで減った5体分のモンスターの穴埋めとして今のシャドーマン、そして昼は出てこなかったワイルドウルフが出現するように。
ゴブリンランス、ゴブリンメイジ、コボルト、ワイルドカウは共通。
そしてここからが牧草地帯の夜に初めて登場するモンスターで2種類いる。
この2種類を加えて牧草地帯の夜には全部で8種類のモンスターが出現するということなのだが。
新モンスターの1体目はコボルトの強化版だった。
モンスター名はコボルトサーベル。文字通りサーベルという剣を装備したコボルトだったが。
もうね、こいつがすごく強いの。
まずもちろん手にしたサーベルがゴブリンの持っていた木製のものではなく鉄製の武器で、見た目通りに攻撃力が高く素でその一撃を受けたら私にダメージが発生した。
盾で防いでもダメージが発生したくらいだし、本当に攻撃力が高い。
何よりも、サーベルでの攻撃自体はめちゃくちゃだったけど敏捷もそれなりに高いようでサーベルの攻撃速度も速い。
ああ、まともな武器持ったモンスターってこんなに強いんだなって思ったよ。
「それでも、私の方が勝つけどね!」
ゴブリンサーベルは倒すともちろん鉄のサーベルという武器を落とした。
片手剣のカテゴリーの武器で、鉄の剣よりちょっとだけ性能がいい程度の武器だったからもちろん私は装備しないけど。でもこれ、ゴブリンたちからもらえる木製武器よりかは絶対に高く売れるよね。
「ふふふ、この階層での金稼ぎはこれにしようかな。倒すのちょっと大変だったけど売れそうだし。ザコだから何体も出てくるし」
でも、昼間は武装していなかったはずのコボルトが、夜になるとなぜサーベルを装備して襲い掛かってくるのか、そしてそのサーベルはいったいどこから調達してるかという疑問はあったんだけど。
まあ、そこはゲームだから。
私はもうたいていのことはゲームだからで片づけることにしていた。
イノシシ倒したのに豚肉が手に入ったり、熊から熊の木彫りが手に入ったりしてね。
だからもういまさらこの程度で驚きはしない。
ちなみにゴブリンサーベルからは倒してももちろんスキルの類はもらえなかった。
もう1体の新モンスターだが、これは系統で言うならトレントに近いモンスターだった。
グラスウィードというモンスターで、直訳するなら雑草。
トレントが木に擬態するモンスターだとするとグラスウィードは草むらに擬態する。
ただ、グラスウィードは4足歩行の亀のような生き物(ただし首と尻尾はない)の背中に草、茂みを背負っていて動きも亀のように遅いため倒すのは簡単……と思いきや結構強かった。
グラスウィードは、プレイヤーが接近することでアクティヴ(攻撃的)になり、背中に背負った茂みをガサゴソと揺らせるとそれから周囲に風を起こして葉っぱを飛ばして攻撃してくる。
そう、下界では有名なあのゲームにも登場する有名な技、はっぱカッターだ。
しかもこの攻撃、なぜか魔法攻撃扱いになっているのか私は普通にダメージを食らった。
けれどもファイアーボール1発でグラスウィードは倒せた。
すると私は新しい魔法を覚えた。それはもちろん今のはっぱカッターであり、魔法名はまんまリーフカッターという魔法で、土属性の攻撃魔法だった。
〇リーフカッター
土属性の初級攻撃魔法。先端の尖った葉を高速で飛散させる。
消費MP:4 リキャストタイム:5秒
「植物が関係しそうな魔法も全部土属性になるのか」
もしも今の攻撃が、風を起こしたことで葉っぱを飛ばすという風属性の魔法だったら、私は風魔法無効のスキルがあるためダメージは受けなかったはずだし。
「リーフカッター!……うーん、同じ土属性の初級攻撃魔法だと、ソイルボールがやっぱり1番ダメージは大きい。速さならソイルアローとストーンバレットだけど。……あ、でもリーフカッターは割と広範囲に攻撃できるのが利点、かな?」
リーフカッターはそこまで遠距離の敵を攻撃は出来ないが、近い場所に敵が密集していれば5体くらいならまとめて攻撃できそうな攻撃範囲があった。
攻撃の威力は残念なことにただの葉っぱだからかそこまで高くなかったけど。
(その後の戦闘で確かめてみて判明した。)
「なんか、土属性の魔法が増えていくな、私。……いや、そうでもないかな?」
店で買うことのできる巻物で覚えた魔法を除けば、まずウィンドステップ、ウィンドエッジ、ドラゴンハウリングが風属性。それで土属性は今のリーフカッターとストーンバレット。
あ、風の方が1個多く覚えてる。あとは、たしかパラライズが雷属性だったっけ?
「ウィンドステップはボス戦とかでよく使うけど、出来れば敏捷以外の能力も上げる魔法が欲しいところかな。あとはライトヒールよりも回復量が多い回復魔法も」
私はそう言うと立ち止まり、さてどうしようかと思った。
まだ夜は始まったばかりだし、でも今から街に戻ってまた冒険者ギルドに行ってなんかクエスト受けるのも面倒だしな。
「よし、今日はあと今までやってなかったレベル上げをしよう。コボルトサーベルが割と経験値多くて、しかも売りさばける武器落とすから、あいつを重点的に探して狩っていけばいいだろう」
ということで私は夜の牧草地帯で経験値稼ぎをしたのだった。
これは私の私見だけど、普通にフィールドを探索してモンスターを倒していくよりも、レベル上げを目標にしてモンスターを倒しまくる方が体感では早くレベルが上がっていく気がする。
もう今までの探索が嘘だったみたいに経験値が溜まっていくんだ。
夜は出てくるモンスターのレベルも上がっててもらえる経験値も昼よりちょっと多いということも、あるかもしれないけれど。
気がつけばなんと4時間が経過していた。
時刻はもう深夜真っ盛り。あ、やばいまたこれ集中していて気がつかなったし。
それでまあレベルの方だけど今の時点でさっきから2つレベルが上がってちょうど20。
レベル20になってまだ使わずに溜めているスキルポイントがちょうど50ポイントになった。
「あ、でもあとちょっと頑張れば21になるな」
私はそれでスキルポイントのことはまた放置してレベル上げを再開し、私のレベルはほどなくして21になった。
レベル21
HP:200/200 MP:126/126
STR:50
VIT:50
AGI:45
ING:42
DEX:26
LUX:25
「HPが200になったし、MPも120を超えたからこれで召喚スキルでモンスターを召喚しても何もしなければ2分は持つようになった。他の能力値も良い感じだな」
ただ、私は今回の探索で最も成果があったというか、驚いたことは私のペットに関してだった。
アスト。私に夜目のスキルをくれた夜目フクロウを覚えているだろうか。
私はこれでも、たまに街中でアイテムボックスから出してはちょっと触ったりしてきゃっきゃうふふと遊んだり、その姿を見て癒されたりしていた。クエストとクエストの合間とか、休憩中にね。
そして、そのアストなのだが。なんと!
…………進化しました。
――時間は遡って2時間くらい前のこと。
グラスウィードは、倒すとトレントと同じように赤い木の実というアイテムを落とした。
どうやらグラスウィードの背負っていた背中の茂みは木の実を生やす草だったみたいだ。
(もっともトレントとは違い見た目はただの緑一色の茂みだったけど。)
それでもちろん私は手に入れたその赤い木の実をアストをアイテムボックスから出すと食べさせた。
そうすることでアストのレベルが上がっていくのだが。今回の食事でアストのレベルは10になった。
そしてどうやら10がアストのレベルの最高値だったみたいで。
「お、なんだなんだ」
アストのレベルが10に上がったという表示画面の後に、さらに続けて2つほどメッセージ表示された。
1つはなんと、アストもついに攻撃方法というか、攻撃魔法を覚えた。
覚えた魔法はダークボールで、私が使うのと同じ効果だったけどついに覚えたよ。
いや、前からアストにもMPが存在していることに気づいてはいたんだけどね。
MPを使用して使う技や魔法がないんでおかしいなと思っていたんだけど。
ちなみにレベル10になったアストのステータスは以下のようなものだった。
名前:アスト 種族:夜目フクロウ(♂)
レベル10
HP:96/96 MP:87/87
STR:18
VIT:7
AGI:24
ING:23
DEX:5
LUX:14
「うん。なんか大目に見積もっても弱いから、間違っても一緒に戦闘には行けないな」
この階層でモンスターと戦うのにこれでは確実に一撃で死ぬ。
だからこそ私はアストを今まで戦闘には一切参加させてこなかったのだけども。
『ペットのレベルが最大になりました。ペットを進化させますか?』
はいorいいえ
私の前にそんなメッセージが現れたかと思うとそんな選択肢が。
え、なになに。ちょっといきなりそんなこと言われても困るんだけど。
「ペットって、まあアストのことだよね。お前レベル10で打ち止めだったのか。でも、進化って。いや、わかるよ。あれでしょ、だから……強くなるんだよね?」
ただ、私はすぐに゛はい゛のボタンは押せなかった。
まず、進化というと間違いなくアストは夜目フクロウではない生物に変わると見て間違いない。
そうなった場合、今アストが覚えているスキルというか、夜目のスキルが引き継がれるのかどうかが不明瞭だったから。
もしも引き継がれなかった場合、私はその時点で夜目のスキルを失うことになる。
夜目は、夜のフィールド探索にはもはや必須のスキルであるためそれを失うわけにはいかなかった。
「でも、たいがいは引き継がれるよね。……ただ」
もう1つの懸念は、それで進化した場合にどんなやつになるのかまったく想像できないことだ。
このゲームのことだ。フクロウが進化したらワシとかになったとしてもおかしくはない。
私は今のアストの姿を結構気に言ってるから、あまり劇的に姿かたちが変わるならこのまま進化させずにあくまで私の心に癒しを与える存在としてこのままの状態で飼いたい。
「お前はどうしたい?」
私は腕の上に止まっているアストにたずねた。
アストはただ首をかしげた後に、でも私の問いかけに答えるように元気な声でホウと鳴いた。
これは、たぶん進化したがってるぽいな。
「そっか。それなら私はお前の意思を尊重するよ」
私は本当であればもっとちゃんとペットの進化について色々と調べてから選択すれば良かったのだろうけど、その時はその場でもう決断していた。進化させた結果、仮に夜目のスキルがなくなったり、アストの容姿が大きく変わったりしたとしてもそれは自己責任。覚悟の上だった。
そして私が゛はい゛のボタンを押すと進化はすぐに始まった。
アストの体が白い光に包まれたかと思うと光はどんどん強まっていき、そしてアストのシルエットがちょっとだけ変化した。そう、形は本当にちょっとだけ。
アストはもともと、真っ黒い羽と茶色い羽合わせたような色合いのフクロウだった。
しかし進化後のアストはなんと羽の色が黒から白へとチェンジ。茶色い部分もやや黄色くなり体や羽の模様、目の色などが変わった。けど形や大きさはそこまで変わってない。
ちょっとだけ大きくなったかもしれないという程度。
「うわぁ。すごい、白くなった」
「ホホゥ!」
私は新しく生まれ変わったアストをしばらく観察したりして満足すると、アストのスターテス画面を確認してみた。どうやらペットは進化するとレベルがまた1からやり直しになるようだったけど、私が気になったのはアストの種族名だった。夜目フクロウから別の名前に変わっていた。
名前:アスト 種族:予知フクロウ(♂)
「……予知、フクロウ?」
それはアストが、下手をすれば夜目以上に強力なスキルを覚えたことの証となる名前だった。
<モンスター辞典>
〇コボルトサーベル
獣族。サーベルを装備したコボルトでコボルトよりも知能が優れているとされる。
通常のコボルトよりも主に力と敏捷が強化されていることが、ゴブリン以降まともな武器を持って登場するモンスターは第1階層迷宮の中ボスであるナイトアーマー以来で、フィールドに普通に出現するザコモンスターとしては初めてのことであるためプレイヤーは結構苦戦するという。
なお、獣族は昼よりも夜の方が知能と凶暴性が増すと言われており、昼間はサーベルを装備していなかったコボルトが夜には装備して出現する理由はそこにある。
プレイヤー間ではこのモンスターに限らず、武器を装備しているモンスターの武器はいったいどこで入手しているのか気にする者もいるが、そこはほら、ゲームだから。
ドロップ:鉄のサーベル
〇グラスウィード
植物族。別名歩く草とも呼ばれるモンスターで普段は草むらに擬態しているが、プレイヤーが接近すると攻撃をしかけてくる。
敏捷が極端に低いが、それ以外の能力値は概ね平均的。しかし、主な攻撃方法であるリーフカッターの魔法は攻撃範囲が広いため固まって移動しているパーティは注意が必要。
なお、実は背中に背負っている草むらの部分が本体であり、移動のために亀に似た4足歩行の謎の生物に寄生しているらしい。
ドロップ:赤い木の実




