ニートな女神と初めてのボス戦
はい。これは正確にはダンジョンのボス。
もっというと階層最後に待ち受ける真のボスとの戦闘が初めてということで。
今までもエリアボスやクエストボスと戦ったことは何度もありますがタイトル間違いではないので。
さて、格好つけて接近してみたのはいいもののどうしたものか。
私はまず剣でドラゴンの足を切りつけることに成功したが。さすがに皮膚が固く耐久の値がずばぬけて高いのだろうかHPケージはほとんど変化はなしだった。
「グギャァァァァ!」
そして、うん。まあ攻撃されたことでちょっとキレたドラゴンさんは反撃してきますよね。
こう、馬鹿でっかい尻尾を振り回してズシーンと。
私はそれをスライディングで地面に伏せることで回避したけど危なかった。
頭の上をドラゴンさんの尻尾がこう、ブオオンって絶対に受けたらやばそうな感じの音が通り過ぎてね。
「いや、いやいやいや!」
ってなったよ。うん、これはダメだ。
まだ戦闘始まったばかりなのにまるで勝てる気がしないぞ。ははははは。
「はは、ははは。えいや!」
私は体勢を起こすなり今度はちょうど通貨したところだったので尻尾を切りつけてみる。
するとなんとドラゴンのHPケージは1段目の10分の1ほど削られた。
「あれ?」
どうやらドラゴンは、場所ごとに能力値に差があるようだった。
つまりは足よりも、尻尾の方が耐久の値は低かったということ。
いや、あるいは尻尾こそドラゴンの弱点だったり?
「ギャオォォォォ!」
「あ、やばい」
そして、さっきよりも大きな、明確なダメージを受けたドラゴンさん。
今度は何やら大きく息を吸い込んだみたいだ。
あ、これはあれですね。絶対に口から何か吐き出してくるやつですよね。
私は全力でその場を離れた。
そして案の定ドラゴンの口から放たれたのは火炎の息、ファイアーブレスだった。
ただ、何よりも恐ろしかったのはその攻撃範囲である。
円形上の部屋の中央に陣取っているドラゴンが、私めがけて吐き出したファイアーブレスは直線状ではなく放射状に広がってフィールドのおよそ3分の1ほどの範囲を焼き尽くした。
「いや、いやいやいやいや!!」
なるほど、たしかにこれはボスと呼ぶにふさわしいモンスターのようだ。
いや、もう見た目と名前でやばいのは十分理解してたつもりだけどまさかこれほどとは。
幸いというか、ドラゴンの吐いた火炎は地面の上に残るなんてこともなくすぐに鎮火したけど。
もしこれでビッグポイズンスパイダーの毒液攻撃のように地面の上にしばらく炎が残ってるようなら私はこの時点で諦めていただろう。
だって1発で地面の3分の1が燃えたのだ。3発撃たれたらそれでこの部屋は火の海。ジ・エンドだ。
「せや!、そいや!」
私は火が鎮火したのを確認した後で再びの接近、そして今度はドラゴンの腕、そしてちょうど火炎ブレス攻撃をした後で下の方にやってきていたドラゴンの頭、顔を正面から斬りつけた。
結果は腕の方は足と一緒でダメージはほぼ0。そして顔の方は尻尾ほどではないがダメージといったところ。
やはりドラゴンの弱点は尻尾で間違いなさそうだ。
私は返すドラゴンの腕による引っかき攻撃を身をかがめて回避すると念のために追撃で腹部を斬りつけてみたが、まあ結果は……あれ、意外と効いてるんじゃないか?
どうやらドラゴンは腹部も弱点というか、耐久の値は低いようだった。
ああでも、下界でもだいたいの生き物がそうだけどお腹ってやわらかいんだよね。
それは特に亀とか見てたらよくわかると思うけど。亀って背中は甲羅でがっちりガードされてるんだけどお腹は意外とやわらかかったりね。
まあ、種類にもよるんだけど。
「ええい!」
そして私は最後にドラゴンの背中を斬りつけるが、ここは足と腕同様にほぼ無傷。
なので、まあこれで私の攻撃方針というか、ドラゴンの攻撃箇所は決まった。
ドラゴンの正面にいる時は腹部、側面または背面にいる時は尻尾をねらっていく作戦で行こう。
さて、お次は弱点の確認だけど。
口から火炎ブレスを吐いたということはまず間違いなくこいつに火属性の攻撃は効かないだろう。
「ウォーターボール!」
私はドラゴンの右側面に回り込むと尻尾に向けて魔法を放った。
のだけど、私の放った魔法は驚くべきことにドラゴンが尻尾で叩き落としてしまった。
しかも直撃したはずなのにダメージはそれほどでもない。
この場合、考えられる可能性は2つ。
1つは、ドラゴンには水属性の攻撃にもある程度の耐性があるという場合。
もしそうであるなら、別の属性の魔法で再度尻尾を攻撃して反応を見ることである程度わかるはずだ。
そしてもう1つは、ドラゴンの尻尾には魔法攻撃は効かないという場合。
いや、あるいは尻尾は耐久は低いけど賢さが高いのかもしれない。
こちらの場合は、水属性の攻撃を別の個所にぶつけて見ることで実証できそうだ。
「どっちから確認しよう……かぁ!!」
再びの尻尾攻撃を再びのスライディングで回避する私。
ああ、この戦闘が終わる時には私、スライディングのしすぎでお尻痛めてるかもしれないな。
「アイスボール!」
私は、昔下界の文化について学んでいる時にたしか何かの本でちらっとだけ読んだことがある。
曰く、ドラゴンも冬眠する生き物で寒さには弱いのだとか。
と、思っての氷属性チョイスだったのだがどうやらそれは正解だったみたい。
でも、同時に不正解でもあったみたい。
私が再び尻尾へ向けて放った魔法はまた叩き落とされてしまった。
ただ、水属性のウォーターボールよりも、氷属性のアイスボールの方が若干効いている気がする。
いや、私も常にドラゴンのHPケージに目を向けている余裕なんてないけど、でもアイスボールは叩き落とされはしたもののそれでも一定のダメージはあったような。
「なるほどね。とりあえずはまあ氷属性で攻めていくか」
そして私は、接近し尻尾に攻撃をくらわす。
ただ今度は魔法ではなく物理攻撃で、だ。
「氷結斬り!」
結果からいうとそれは大成功だった。
元から耐久が低く物理攻撃が効きやすかった尻尾にさらに弱点属性での攻撃。
それでドラゴンのHPケージは一気に大ケージ1本の2割ほど削れた。
この時点で、ドラゴンのHPケージはまだ1本目の半分ほど残っている。
私は氷結斬りをくらわせた後ですぐにドラゴンから距離を置いた。
たしかにドラゴンは巨体ではあるが、腕での引っかき攻撃は正面に接近しない限り当たらないし、尻尾攻撃も離れていればよけるのはそう難しくない。
問題は火炎ブレスだ。
ドラゴンは基本的にプレイヤーが正面にいる場合は腕による引っかき。
側面および背面のプレイヤーには尻尾振り回し攻撃。
そして遠距離にいるプレイヤーには火炎ブレス攻撃と、プレイヤーとの位置関係によって攻撃方法を分けているとみて間違いない。
そして今、私がドラゴンから距離を取ったのにはわけがある。
もう少しで、ウィンドステップの効果が切れる。
そうなった場合に、私はドラゴンの近くにいると連続で攻撃を受ける可能性が高かった。
その点、火炎ブレスの方は広範囲に攻撃が及ぶ代わりに攻撃速度は遅い。
だから3分間ならなんとか避け続けることが出来ると踏んだのだけど。
どうやら私の考えは甘かったみたいだ。
ドラゴンがなんかさっきよりも速めに息をため込み終わったのを見て嫌な予感がした。
あれ、もしかしてドラゴンさん。口から吐き出せるのは炎だけじゃない?
「グオォォォォォォォォン!」
「うげ、衝撃波とか!!、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
私は予期せぬ攻撃もといすさまじい突風にあおられて弾き飛ばされた。
この衝撃波自体のダメージはそれほど高くはなかったけども、問題は部屋の壁に衝突した時だった。
そこでもの凄い痛みと共に大ダメージが発生したのだ。
「ぐぎゃん!!」
私は壁に激突した衝撃で、女の子が普段絶対に出さないような声を上げた。
なにより今の衝撃波。攻撃モーションが短く回避が間に合わない。
火炎ブレスの時は深呼吸のようにゆっくりと大きく息を吸い込むような動きの後で攻撃がくるためにあらかじめ安全地帯へ逃げておくことが出来る。
ただ、衝撃波の方はまるで突発的に巻き起こるくしゃみのようなものでそれを前兆を見てからかわすというのは至難の極みだと私は思った。
衝撃波の方は直線的で、ドラゴンの首、頭の斜線上にいなければ当たらなそうだったのがせめてもの救いといったところだろうか。
「く、あ~!、どうすっかな。めんどいな~」
私はすぐに壁から離れると考える。
遠距離でしてくる攻撃はおそらく今の衝撃波と火炎ブレスの2種類だろう。
火炎ブレスはよけるのはたやすい。問題は衝撃波をどうよけるかだが。
「いや、逆か。むしろ走り続けてれば当たらないんじゃね?」
私はそこで閃いた。
題して円形の部屋をひたすらぐるぐると回り続ける作戦!
ようは、あの衝撃波が直線的な攻撃であるなら常に移動し続けることであいつがいつ衝撃波を放ってきても回避できるという。
そしてあいつが火炎ブレスの方を放ってきそうになったら安全地帯で一時停止して攻撃が終わるまで休憩。よし、とりあえずこれで行こう。
「ただ、この作戦。……私のスタミナが持つかどうか」
問題はその1点だけに尽きる。
そしてそれから3分後。回復したウィンドステップを再び使用した私だったがすでにばてていた。
途中で休憩があるとはいえ基本は長距離走となんら変わらない。
しかも円形にぐるぐると回っていたせいで酔ってしまったのか今絶賛吐きそう。
まあ、このゲーム。食事は出来るけど排泄の必要はないし、嘔吐もしないんだけど。
なぜかしら吐き気は再現されている。そういえば走った時の息切れも再現してやがったな、このゲーム。
本当にリアリティー追求のしどころを間違えている気がしてならない。
「あー、でもこの調子だとまだ全然時間かかりそうだな。もっとなんかあいつにダメージを……」
私はそこでふと、とある魔法を思い出した。
そういや私、戦闘でモンスターに向かってまだあの魔法一度も試してないんじゃね?
でも、だけど果たしてあの魔法はボスモンスター、さらにはドラゴンに効くだろうか?
いや、ダメもとで試してみる価値はある、か?
私はドラゴンに接近して頭部に向けてその魔法を放ってみた。
「ポイズン!」
そう、それはあのビッグポイズンスパイダーからもらった相手を毒状態にする魔法。
覚えたものの私は結局モンスターにこの魔法を使ったことはなかった。他の魔法や剣で攻撃した方が速く倒せたし、それに毒でモンスターを倒すのはなんかちょっとね。あんまり好きじゃない。
でも、今はそんなこと言ってる場合じゃない。少しでもあいつにダメージを与えられるなら私は使えるものはなんでも使うつもりだ。
「お、おおー。効いたみたいだ」
そして私が使ったポイズンの魔法で放たれた毒液はドラゴンの顔に直撃した。
いや、顔をわざわざ狙ったのにももちろん理由はある。たぶんだけど、体とか尻尾に当てても皮膚に弾かれてそれで終わりな気がするんだよね。
それでまあ顔ならね。ドラゴンさんのお口の中に毒液がしゃっと入って飲み込んで。
ドラゴンさんはめでたく毒の状態異常になりましたとさ。
……ちゃん、ちゃん。……いや、これで終わりじゃないからね!?
「アイスボール!」
私はドラゴンのHPケージ上部、モンスター名の横に紫色のドクロマーク(毒状態を示す表示)を確認するとさらにドラゴンの腹部に魔法を撃ち込んだ。
そう、今度は尻尾ではなく腹部に、だ。
結果はこれまた大成功。どうやら腹部には魔法攻撃も普通にダメージとして通るみたいだ。
ドラゴンのHPケージはさらに2割削れて1本目は残り3割弱といったところ。
私は腕でのひっかきこうげきを華麗にかわすと脇の下を通り抜けて背面へ。
そこで尻尾に氷結斬りを食らわせたあとですぐさま退避。
その間もドラゴンのHPは毒の効果で本当に徐々にではあるが減ってきている。
私がドラゴンから少し距離を置き、本日何度目かのスライディングによってせまりくる尻尾攻撃をギリギリで回避したところで私はさらに距離を置く。
見ればドラゴンのHPケージは1本目が残り1割もないくらい。このまま毒のダメージで1本目のケージが空になったとしたらきっと攻撃方法を変えてくるに違いない。
ビッグポイズンスパイダーやヤタガラス戦でもそのことは学習済みだった。
そして私がドラゴンの衝撃波をまた円周ぐるぐる走りで2度ほど回避したところでドラゴンのHPケージはついに1本目が空に。
ただ、毒の効果はまだ続いているようで続けて2本目のHPケージへダメージが始まっていたけど。
私の予想通りというか、ドラゴンはそこで攻撃方法というか場所を変えてきた。
それまで登場した時からまだ一度も使う様子がなかった翼をはばたかせると、ドラゴンは空中へと浮遊した。
巨体が地面から上空へと20メートルほど浮き上がったところでドラゴンは姿勢を変えて首と、頭部を下にしてきた。
「それ本気で言ってるの?」
私はすぐにこのドラゴン第2形態の攻撃方法と、その恐ろしさを理解した。
つまりは……上空からの火炎ブレス!!
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
地上にいた時と違って上空から襲い掛かる火炎ブレスは、もはやブレスいうより火の雨に近かった。
地上の3分の2ほどを焼き尽くす炎。唯一安全なのは上空にいるドラゴン、その真下のみ。
私は回避が間に合わず火炎ブレス攻撃をもろにくらってしまう。
そのダメージ実に56。私のHPの3分の1が今の一撃で消し飛んだわけだ。
いや、正確にいうなら地上にいた時もくらっていたらそれだけのダメージになっていたんだろうけど。
そして何よりも問題だったのは今の私には上空にいるあのドラゴンに攻撃を与える手段がないということだった。
たぶん、弓とか銃とか、あとは李ちゃんの槍投げスキルとかないとあそこには攻撃出来ない。
きっと、その場合は一定時間が経てばまた地上に降りてくるか、あるいは遠隔攻撃できないプレイヤーにも攻撃するチャンスがくるはず……だと信じたいね。
もしもそれがこなかったらここで私は終わりだ。そう、だってもうしょうがないし。
ラフィアちゃんが使ってたあの、〇〇アロー系の魔法なら届くんだろうけども私のボール系魔法はきっと届かないに違いない。
今の私に上空のドラゴンを攻撃する手段なんて…………あ!
「あるじゃん。今の私にも。私にしか使えないスキルであいつを攻撃する方法が」
私はただ、それをするにはまずMPの回復をしなければいけないと上空のドラゴンを見合った。
「おっとぉ!、衝撃波来たー!」
ただ、衝撃波の方はむしろ上空に行ったことで避けやすくなった。
これは直線的な攻撃がさらに上から下へという角度がついたことによる。
そしてドラゴン第2形態の攻撃方法は火炎ブレスと衝撃波の他にもう1つ。
ドラゴンがそれまで規則的にバサバサと羽ばたかせていた羽を思いっきり広げるとそこからヤタガラスも使ってきたあの技を使用してきた。
「げぇ!!、大竜巻!」
大竜巻は、くらうと大ダメージを受ける上に上空へと突き上げられる。
さらに地面に落ちた時の着地の時にもダメージを受けるまさに竜巻。
あ、今気づいたんだけど竜巻って竜、ドラゴンの字が入ってんじゃん。
そういやなんで竜巻っていうんだろう。ただの風の渦とかじゃダメだったのか。
うん、もちろん食らったよ。当然でしょ。
ヤタガラス戦の時は屋外でフィールドも広かったんでよけれたの。
たしかにこのボス部屋はダンジョン内で一番広いけどそれでも屋内だ。少なくとも大竜巻を軽く回避できるほどの余裕はない。
ただ、私は地面へたたきつけられた時にしかとこの目で見た。
ドラゴンが大竜巻攻撃をするとき、ドラゴンの高度は下がり尻尾が地面についている。
つまりはそここそが私のような近接攻撃主体のプレイヤーの攻撃チャンス。
おまけに、そこはドラゴンの真下でもあるため大竜巻攻撃は絶対にこない安元地帯。
つまりは、あいつが翼を大きく広げたらあいつの真下に全力で駆けていくと。
「くそ。また面倒だな」
ただ、ドラゴン第2形態は第1形態よりはおとなしかった。
おとなしいというのは、つまり攻撃と攻撃の間がやや長いということ。
そして私は、そのそれでもわずかしかないドラゴンの休憩時間で急いでポーションと聖水を飲んだ。
ポーションは☆を1本だけ飲めば私のHPは80回復してほぼ全快に。
そして聖水は完全に回復するまで飲んだ。
正直慌ててたからもしかしたら何本か余分に飲んだかもしれないけど。
ああ、聖水の味?、そういや言ってなかったっけ?
ていうかそれ聞いてどうしたいんだよって。いや、ただの水の味だよ。
自販機で売ってるミネラルウォーターの味っていえば人間には分かるかな。
私は、自販機の飲み物って高いから滅多に買わないんだけどね。
と、まあそこでMPを完全回復させた私。
ただそこで2回目のウィンドステップの効果が切れてしまった。
え、そういえばガードアップの方はかけなおさなくてもいいのかって?
君さあ、じゃあ聞くけど今までの戦闘で私がいつ盾を使ったと言うんだ。
そんな余裕ないよ、こっちは必死なんだ、わかるだろう?
「はぁ~。できればこれあんまり使いたくなかったけども、仕方ない」
私は続くドラゴンの再びの大竜巻攻撃の前兆を見切ると一気にドラゴンの真下へ駆けていく。
そして大竜巻が放たれたタイミングで地面に近づいてきた尻尾に氷結斬りを打ち込んだ。
ああ、ドラゴンの毒の効果はさすがにもう消えてたよ。でも、毒も結構頑張ってくれたおかげで2本目のHPケージの2割は削ってくれてた。
そして今の一撃でさらに2割ほど削って残りは6割。
私はそれを確認してすぐにあのスキルを使った。いや、あいつを呼び出した。
「召喚:ヤタガラス!」
ボス部屋の中央の地面に描かれる黒い魔法陣。そして吹き出る黒い煙と共にその魔法陣から呼び出されたのはもうおなじみのヤタガラスだ。
私はこいつにも名前をつけようかななんて思っていたりするのだけど、それをするとアストがすねてしまいそうだからやめておいた。
「ガァァァァァァ!」
「グギャァァァァァァ!」
私が呼び出したヤタガラスはすぐに羽ばたいて空中に場所を移すと、なんかめっちゃドラゴンに向かって雄たけびをあげて威嚇してるみたい。
ドラゴンの方も、なんかいきなり現れたでっかいカラスに驚きつつも張り合うように鳴き声を轟かせる。
そしてボス部屋の空中でお互いがお互いの顔をにらみつけて2体の間には火花のようなものが見えた。
……え?、ナニコレ?
「ヤタガラス。ダークボール、連射!、撃て~撃て撃て撃て~!!」
私はなんかはりあってる様子の2体は無視してヤタガラスに指示を出した。
そうだよ、あのボスゴキブリさんを一瞬にして文字通り虫の息にした例のあれだよ。
私が、あまりにも残虐すぎるから出来ればもう2度と使いたくはないなって思ってたあれ。
ズダダダダダダダダダダダッ
「……ああ、可哀そうに」
間髪なく腹に叩き込まれる無数のダークボールにドラゴンの方は反撃する余裕すらない。
ダークボールは闇属性の魔法だったけど、もしもヤタガラスが撃ち込んだのが氷属性のアイスボールだったとしたらたぶんそれだけできっと戦闘開始直後に使ってもHP全部削れたんじゃないかな。
それほどまでに連射され撃ち込まれ続けるダークボールは苛烈にして強力だった。
ドラゴンさん、いやまじで同情します。
そうしてまた私のMPが尽きた時、ドラゴンの2本目のHPケージも尽きた。
私がものすごいどや顔でどうだこの野郎みたいな感じで送還されていくヤタガラスを尻目に、今がチャンスとばかりにすかさす減った分のMPを回復させようと聖水を飲んでいたら、空中にいたドラゴンがゆっくりとまた地上、ボス部屋の中央に降りてきた。
その顔はなんだがぐったりしてるようで、きっとそれは体力が減ったからという理由だけではないだろう。
私はその様子を見て心の中で少しだけ謝った。
……いや、本当にごめんね。
<モンスター辞典>
〇ドラゴン
竜族。第1階層、始まりの地の迷宮のボスモンスター。
名前の通りです。ドラゴンです。竜です。
容姿については本編内で触れましたが詳しく知りたいという人は、まあ、ファンタジー小説の挿絵とか探してみて下さい。
強いです。それはもう本当に強いです。
が、玲愛と戦ってみるとこいつそこまで強くないんじゃねと思ってしまう不思議。
HPケージが大ケージ3本分あり、減り具合によって攻撃方法が変化します。
また、ドラゴンは体の各部によってそれぞれ能力値にばらつきがあります。
首および頭:賢さ、耐久が高く力、敏捷は低い。
腕および足:耐久、賢さ、力が高く敏捷は低い。
腹部:耐久は普通、賢さが低い。
背面および翼:耐久と敏捷は高い、賢さは普通。
尻尾:賢さ、敏捷、力は高いが耐久が低い。
↑こんな感じです。
それでまあ、今回はドラゴンの第1、第2形態までをご紹介。
ドラゴン(第1形態)
戦闘開始直後からHPケージ1本分減るまで。
近接の敵に対しては正面のプレイヤーには爪による引っかき、側面および背面のプレイヤーに対しては尻尾による振り回し攻撃。
遠距離のプレイヤーに対しては火属性のファイアーブレス、そして風属性の衝撃波。
それぞれの技については本編内にて詳しく説明しているのでそちらを参照のこと。
ドラゴン(第2形態)
HPがケージ1本分減ってからケージ2本分減るまで。
場所を地上から空中に変えて遠距離攻撃主体で戦う。
第1形態時にも使用したファイアーブレス、衝撃波の他に新たに大竜巻攻撃を使用。
基本は空中にいるため剣などの接近物理攻撃は当てることができないが、大竜巻攻撃をしてくる時に高度を下げてドラゴンの尻尾が地上付近にまでやってくるのでそこが攻撃のチャンス。
もちろん、そこを攻撃しなくても遠距離用の攻撃手段があればそれでも普通にダメージを与えることは出来るが、この第2形態は敏捷が高めなのでかわされることもしばしば。
なお、ドラゴン最終形態については次回の後書きにてご紹介。
はたして玲愛はドラゴンに勝つことができるのか、できないのか。




