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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
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ニートな女神と初めての戦闘

 ゲームを始めた時にまず最初にいたこの街を始まりの街というらしい。

 うん、安直だけど実にわかりやすい名前で結構なことである。


 そして始まりの街の外にはフィールドエリアが広がっている。

 フィールドエリアでは時折モンスターが出現してプレイヤーに襲い来るので、プレイヤーはそれを退治してレベルを上げて行く。

 と、ここまでは普通のRPGゲームと同じである。

 ただゴッドワールド・オンラインに限らずこうしたVRMMOの世界ではそれまでのゲームにありがちなあるシステムが導入されていないことが多い。

 そのシステムとはずばりターン制である。


 ターン制というのはつまり自分が何かしらの行動、たとえば攻撃やら防御をするとそれで自分のターンが終わり今度は相手のターンへ。

 そして相手ターンでは相手がこちらに対して何らかの行動をしてきてまた次の自分のターンというように、ようは行動の順番が明確に決められた戦闘をこなしていくシステムのことだ。


 だがこのゲームはターン制ではなくフィールドワーク制のゲームだ。

 フィールドワーク制というのは簡単でプレイヤーがフィールドを自由に動き回り、そして敵も自由に動いてこちらに攻撃をしかけてくる。

 だから周囲を敵に囲まれたりすると危険になったりもするわけだがおおむねそんな感じである。


 そして始まりの街からは東西南北の4つの門から4つのフィールドエリアに出ることができて私が選んだのは南にあるフィールド、平原だった。


<第1階層:平原>


「ふんふ、ふんふ、ふっふっふー」


 私は鼻歌交じりに平原の真ん中を歩いていく。

 この平原というフィールド、つまりはゲームを始めたばかりの初心者が訪れる場所であり特に何の変哲ない道が続いていくだけで危険はほとんどなく出現するモンスターも弱い。

 なので私は余裕な顔で歩いていたのだがそこでこのゲーム初めての戦闘を経験した。


「お、あれは間違いなくモンスター。よーし」


 私の眼前に現れたのは青い色をした不定形の液体のようなモンスター。

 そう、RPGではもはやおなじみのザコモンスター、スライムである。

 このゲームの中での名前はブルースライムだったけれど、まあ同じだろう。

 私の前に現れたそのブルースライムには名前の他に緑色のケージ、HPケージが見えていた。

 こちらから攻撃してあのケージを削っていき全部削りきるとモンスターを倒せる。

 私は手に持った初期装備の剣を構えながら慎重にブルースライムに近づいてく。


 ちなみに今の私の装備などについてはこんな感じだ。


 頭:なし

 体:皮の服

 右手:鉄の剣

 左手:なし

 足:皮の靴

 装飾品1:なし

 装飾品2:なし


 もちろんこれは初期装備のままである。

 別にいいのだ。最初ちょっとだけモンスターとの戦いを経験したらすぐに街に戻るつもりだったし。


 本来であれば最初にプレイヤーがもっている所持金1000Gの中から、武器やら防具やらを買って装備しておくべきなのだがそれはまた今度でもいいかと思って私はそのままフィールドへと繰り出し現在にいたる。

 ああ、Gはゴールドの略ね。このゲーム内のお金の単位。


「よーし、とりあえず攻撃してみるか。んーと、とりゃ!」


 私はとりあえず剣を思いっきり上から下へと振り下ろしブルースライムに攻撃してみた。

 すると私の攻撃を受けたブルースライムは一撃で真っ二つになり光の粒子となって消えた。


「おお、さすが最弱のモンスター。とくに攻撃されることもなく一撃で」


 私がそのことに感慨にふけっていると突然目の前に何かの画面が出てきた。

 これはリザルト画面というやつか。


『倒したモンスター』

 ブルースライム×1


 獲得経験値:1ポイント 獲得ゴールド:5G

 次のレベルまで残り9ポイント


 という内容だった。

 なるほど、ブルースライムは1体で経験値1ポイントなのか。まあそうだろうな。

 そしてレベルアップまでには最低あとスライムを9匹倒せと。面倒くさいな。


 だけども私が驚かされたのはその直後だった。

 リザルト画面の終わった後でさらに別の画面が開いて出てきたのだ。


『新しいスキルを入手しました』

 スキル:水魔法耐性(微小)


「うん?、新しいスキルって、まさか今ので?」


 どういうことだろうか。私はまだスライムを1体倒しただけのはずなのだが。

 だけどもとりあえず気になったのでその新しく獲得したスキルとやらを確認してみた。


 〇水魔法耐性(微小)

 水属性の魔法攻撃によって受けるダメージを1%減少させる。


「いやいや、たったの1%かよ。……でもまあ、ないよりはましかな」


 何よりも初めてゲットしたスキルだし、まあまさかこんなスキルを覚えるとは思っても見なかったけど。

 だけどどういうことだろうか。もしかしてブルースライムを倒すと皆このスキルを覚えられるのだろうか。

 はたまた私の運が良かったのか。


「うーん、まあ考えてもわかんないし次に行こう。……ん?」


 私が気持ちを切り替えて道を進もうと思ったら先ほど倒したブルースライムのいた場所で何かが光って落ちているのを見つけた。

 それは小さなガラス製の容器に入った青い液体で私がその容器に触れるとそれは光になって消えた。

 そしてすぐにアイテムを手に入れたという通知画面が開かれた。


『アイテムを入手しました』

 スライムの雫(青)×1


「ああ、これがドロップアイテムというやつか。モンスターを倒すと確率で落とすっていう」


 私は先ほどコルトから聞かされていた話を思い出した。

 モンスターを倒すと稀にそのモンスター由来のアイテムを落とすことがある。

 それはドロップアイテムといわれており街にあるお店で売ったり、あるいは生産系の職業で物を作るための材料になったりもするのだとか。

 拾ったアイテムはアイテムボックスという場所に保管され、プレイヤーはいつでもアイテムを取り出し、または収納することが出来る。


「ふふふ、ラッキー」


 私は初回の戦闘でドロップアイテムをゲットできたことに喜びを感じながらまた平原を進み始めた。

 だけどもこの時私は気づくべきだった。私の操るキャラクターの異常な性能に。


「……おかしい、おかしいよね多分これ」


 私がそのことに気づいたのはそれから何度かの戦闘を終えた(すべてブルースライム)後のこと。

 9匹目のブルースライムを倒した私は、そこでもまた同じドロップアイテムをゲットした。


「これ、こんなに高確率で落ちるものなの?」


 そう、モンスターを倒した時にそのモンスターがアイテムを落とすかどうかというのはそのモンスターごとによって決められている。

 あとはそれにスターテスのLUX、つまり運の値が加味された数値でアイテムのドロップ率が決まるらしいのだけど。

 これまで9匹のブルースライムを倒してきてその9匹ともアイテムをドロップした。

 私のLUXの値が10という初期値のままなのでつまりこれはブルースライムがすごくアイテムをドロップしやすいモンスターということなのだろうか。


「でも、にしたって9連続で落とす?、うーん、謎だ」


 私が考え事をしながら歩いていくとそこで10匹目のスライムが現れた。

 どうでもいいけどこの平原、もしかしてブルースライムしか出現しないのだろうか?

 まあいいや、あいつを倒せばレベルアップするみたいだし今日はそこでやめよう。


 私はもはや作業となりつつあるブルースライム斬りを実行した。

 ブルースライムは時折グネグネと動くだけで後は基本的に出現した場所から動かず特に攻撃らしい攻撃もしてこない。

 1回だけ素手で触ってみたらそこでようやく1ダメージを受けたくらいだ。

 つまりは完全にただの的だった。


 私が10匹目のブルースライムを倒すといつものリザルト画面の後にレベルアップの通知画面も開かれた。

 それにより私の能力値も少しだけ上がったようで。


『レベルが上がりました』


 レベル1→2

 HP:100→105 MP:50→54

 STR:10→12

 VIT:10→12

 AGI:10→11

 ING:10→11

 DEX:10

 LUX:10→11


 DEX、器用さの値に変化はなかったもののとりあえず全体的に成長したようで何よりだ。

 そしてさらに自由に能力値に割り振れるスキルポイントも2ポイント手に入った。

 だけども今はまだ割り振らないでおく。


 そして10匹目のブルースライムからもスライムの雫(青)がドロップした。

 まあ拾いますけど、でもやっぱりこれおかしいよね。うん、おかしいと思うんだけど。


「まあ、いいや。今日はとりあえずレベルアップしたし、街まで帰ってログアウトしようっと」


 ゲームからのログアウトは実はフィールドでも出来るのだけどなんとなく私は気分的に街まで戻ろうと思った。

 なんていうか、キャラクターをフィールドに置き去りにしていくみたいでちょっと嫌だったのだ。

 そして今まで来た道を歩き返そうと思ったところでまた戦闘になった。

 けれども今度はブルースライムではなかった。


「む、狼だ」


 モンスター名もそのままウルフであり見た目も茶色の狼であった。

 ただ狼にしては小柄というか、サイズはむしろ犬だった。

 ウルフは私に気づくと一気に駆け出してきて爪でひっかいてきた。

 おお、初めてまともにモンスターの攻撃をくらった。

 ダメージは5。中々の攻撃だったな。


 そして今度は私の番だ。私はウルフに向かって走り出しそして胴体を剣で斬り裂いた。

 しかしウルフの体力ケージはそれで6割ほど削れたもののまだ4割残っていた。

 むむむ、さすがにブルースライムほど簡単には倒せないか。

 ウルフは斬られたことで逆上したのか、今度はなにやらうなり声を上げながら飛びかかってきたけど、私はそれをギリギリのところでかわすとすれ違いざまにウルフをもう1回剣で斬りつけた。

 すると今度こそウルフの体力ケージは0になったようでウルフは光の粒子となって砕け散った。


『倒したモンスター』

 ウルフ×1


 獲得経験値:合計3ポイント 獲得ゴールド:8G

 次のレベルまで残り27ポイント


 なるほど。ウルフは1体で経験値が3ポイントなのか。お金もスライムよりちょっとだけ多めにもらえたようだし。

 でもどうして行きの道では一匹も現れなかったのだろうか。


「……あ、もしかしてレベルが上がったせい?」


 コルトから聞いた話だと、自分のレベルが上がるとそれまでフィールドに出現していたモンスターのレベルも上がったり、新たなモンスターに遭遇したりすることもある。だから冒険を進めてレベルが上がったら少し前のフィールドに行ってみたりすると新たな発見があったりすると。


 つまり私のレベルが2に上がったことで私がこのフィールドを探索してる時にはウルフが出現するようになったということなのだろう。


「ふうん、まあ別にそれは構わないんだけど」


 そう、それは別にいいのだ。問題は……


『新しいスキルを入手しました』

 スキル:俊敏Ⅰ


 ……なんか、また新しいスキルを覚えたみたいなんだが。


 〇俊敏Ⅰ

 AGIが5%アップする。


 うん、まあ効果はそんなでもなさそうだったけど。

 そして倒したウルフのいた場所には小さな動物の爪のようなものが落ちていた。

 私がそれに触れるとそれもスライムの雫(青)と同じように消えてなくなった。


『アイテムを入手しました』

 獣の爪×1


 ウルフからもドロップアイテムが手に入ったようだけど。

 けれどもこれってもしかすると……


「私、モンスターを倒すほどに何かしらの幸運に恵まれてる?」


 その事実をさらに確信的にさせたのは先に手に入れていたスキルをもう1度確認した時だった。


 〇水魔法耐性(微小)

 水属性の魔法攻撃によって受けるダメージを10%減少させる。


「ん、あれ。え、10%って、でもたしかさっきは……」


 そう、さっきはたしかにそのスキルで減少させられるダメージ量は1%だったはず。

 それが今ではなんとその10倍の10%減少になっていた。


「もしかして、スライムを10体倒したから?」


 私はそんなまさかと思いながらも街までの道を急ぎ、そして本日11体目のスライムに遭遇した。

 なので私はそのスライムを倒した後でもう1度同じスキルの詳細画面を開いて見ることにした。

 するとそこには……


 〇水魔法耐性(微小)

 水属性の魔法攻撃によって受けるダメージを11%減少させる。


「………えー、まじか」


 もしもそれが本当なのだとしたら、私はスライムをあと89匹倒せば水属性の魔法攻撃によって受けるダメージを100%減少させられるようになるのではないか?

 つまり今後私は水属性の魔法攻撃では一切のダメージを受けなくなると。


「これは、どうやらログアウトできなくなっちゃったみたいだな」


 どうやら私にはもう少しこの場でやらなくてはいけない使命ができたようなので。


 ――それから約1時間後――


「うーむ、だいたい5回に1回くらいの割合でウルフに出くわすけど、これレベルが上がったらもっと会う頻度増すのかな。嫌だな」


 私はそれからも平原を歩き回ってはブルースライムとウルフを退治して回っていた。

 レベルが2のうちはモンスターも1回の戦闘で1体ずつしか出てこなかったけどこれもきっといつかは複数で出てくる時がくるのだろう。それがいつなのかはわからないけど。

 そうして狩りを進めて行くうちに私のレベルは3に上がった。


『レベルが上がりました』


 レベル2→3

 HP:105→110 MP:54→58

 STR:12→14

 VIT:12→14

 AGI:12→13

 ING:11→12

 DEX:10→11

 LUX:11


「お、今度は器用さが上がってるけど運はそのままだ。別に何かの能力値が上がらないというわけではないのか。力と耐久は順調に伸びているようだけど」


 そして今回のレベルアップでまたスキルポイントは2ポイント手に入ったがまだ保留。

 というか、今の段階で何に割り振ればいいのかまるでわからないので怖くて使えないのだ。

 勘だけどこういうのって1度割り振っちゃうとやり直しはきかないんだろうし。


「次のレベルまで必要な経験値は60ポイントか。まあレベルが上がっていくに連れて必要な経験値の量が増えて行くのは当然だろう」


 60ポイントというと、つまりウルフをあと20体倒さなければいけないということ。

 考えただけで先が長そうな道のりに少しうんざりしながらも私は歩き始めたが、次の戦闘でまた驚くべき変化が起きた。


「お、スライムが同時に2体出てきた。なるほど、ここからか」


 それまで1体ずつで出てきていたモンスターが複数同時に出現するようになった。

 倒すのが大変になった分1回の戦闘で手に入る経験値やお金も増えるのでプラマイはゼロというところ。

 私がその2体のスライムをさくっと片づけるとリザルト画面の後で新たに画面が開かれた。


『スキルが成長しました』

 スキル:水魔法耐性(微小)→水魔法耐性(小)


 〇水魔法耐性(小)

 水属性の魔法攻撃によって受けるダメージを25%減少させる。


 ……なんだ、名前が変わっただけで性能は今まで通りなのか。

 あ、でも25%で小になったってことは次は50%で中に変わるのだろうか。

 私は画面に出された表示とにらめっこしながら少し考え込む。

 でもまあ、それはこの先またわかってくるだろう。

 私は画面を閉じてまた平原を散策する。うーん、ちょっと飽きてきたかも。


 それから戦闘をこなしていくうちに、ウルフの方はまだ1体ずつでしか出てこないことが明らかになった。

 スライムの方は1回の戦闘で少ないと1体、基本が2体、多いと3体同時に出てくるようになりスキルの性能を上げるのには楽になった。

 たまににウルフとスライムが1体という組み合わせで出てくることもあったけど、なるほど違う種類のモンスターたちが同時に出てくることもあるのかというくらいでさほど気にはしなかった。

 そうして私は気がつけば平原に出てから2時間ほど経過していた。



〈モンスター辞典〉

〇ブルースライム

その名の通り青い色をしたスライムでゴッドワールド・オンラインに登場するモンスターの中では最弱のモンスターである。

一切の移動と攻撃をしないのでプレイヤーの間では的と呼ばれて親しまれている。

ドロップ:スライムの雫(青)


〇ウルフ

狼のモンスターだが狼というよりは野犬に近く体躯も小さめ。

相手に飛びかかって爪でひっかく攻撃をしてくるが噛みついてははこないため割と安全。

ただゲームを始めたばかりのプレイヤーからするとそれなりに素早いモンスターである。

ドロップ:獣の爪

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